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覚せい剤福岡

福岡地方裁判所小倉支部判決/平成22年(わ)第408号

主文

 被告人は無罪。

理由

1 本件公訴事実の要旨は,被告人が,法定の除外事由がないのに,平成22年4月上旬ころから同月23日までの間に,福岡県内又はその周辺において,覚せい剤を使用したというものである。
2 本件の争点は,①本件捜査手続きに,鑑定書(検甲7号証)の証拠能力を否定するような重大な違法があったか否か,②仮に上記鑑定書の証拠能力が認められたとしても,被告人に覚せい剤を使用しているとの認識があったと認められるか否かである。
 上記①については,まず,捜査官において,被告人が携帯電話で外部の者と連絡をとろうとしたのに,これをさせなかった点,特に弁護士との連絡をとらせなかった点について,説得の域を超えた被告人の権利侵害と評価できるか否かが問題となるので検討する。
(1) 本件捜査に従事した福岡県警察本部A警部補(以下,「A警察官」という。)及び同B警部(以下,「B警察官」という。)の上記の点に関する証言は,要旨,次のようなものである。
ア 警察では,被告人を×××組組員として把握していた。平成22年4月23日朝,A警察官ら一二,三名は,被告人に対する覚せい剤取締法違反の嫌疑で,被告人の着衣,車両,住居の捜索差押えに赴いた。被告人の着衣,所持品,車両に対する捜索を実施した後,被告人の住居の捜索を実施した。
イ A警察官は,被告人に尿の任意提出を求めたが,断られ,妻から事情聴取しようとしたところ,被告人は声を荒げて「女房は何も事件と関係なかろうが。」と言って,携帯電話を取り出し,親指でボタンを押すような動作をした。A警察官は,捜索中だから,ほかの者に連絡しないように言うと,被告人は「弁護士ならいいやろ。弁護士に連絡させてくれ。」とそのまま弁護士に連絡しようというような素振りをした。A警察官は,「外部はだめ。弁護士と言いよるけど,そっちが連絡するのが本当の弁護士なのか,こっちは分からんやろうが。弁護士に連絡をつけて弁護士が来たところで,自宅のガサに入れるわけにはいかんよ。」と説明した。被告人は,納得した様子で電話を取り扱うのをやめた。
ウ 強制採尿令状の発付を受けて,被告人を健和会大手町病院まで連れて行くのに捜査車両に乗り込ませた。捜査車両の後部座席に被告人を乗せ,B警察官がその隣の席に乗った。被告人は,2回携帯電話を出して連絡しそうになったので,B警察官は「強制採尿令状の執行中だから電話連絡はできない。」などと注意し,それでも被告人が電話をしようとするので,携帯電話を出させて預かった。
エ 病院に着くと,B警察官は警察本部に連絡するため,小倉北署勤務のC警察官に被告人の携帯電話を預け,C警察官が被告人の右横に座った。被告人は,C警察官に「携帯電話を返せ。」などと興奮して大声を張り上げていたが,B警察官は,強制採尿に着手しているから連絡はできないと説明した。被告人の腕を引っ張って捜査車両から降ろし,診察室に入り,医師が来るのを待っている間,被告人が携帯電話を返してくれと言うので,B警察官は「連絡はできない。電池を外したらいい。」と言い,C警察官から被告人に携帯電話を渡すと,被告人は携帯電話の電池を外した。
 その後,強制採尿によって採取した被告人の尿を簡易検査すると陽性反応を示したので,被告人を緊急逮捕し,逮捕に伴い携帯電話を差し押さえた。
(2) 本件捜査を担当した警察官らは,捜索差押えの執行中に,必要な処分(刑事訴訟法222条1項,111条1項準用)として,被疑者に対し携帯電話で外部の者と連絡をとらせないことができるとの見解に基づいて,上記イないしエの行為に及んだものと認められる。しかし,被告人が,暴力団関係者であり,暴力団関係者が捜索の現場に多数押しかけて捜査の妨害をしたり,証拠を隠滅したりするおそれがあったとしても,警察官らにおいて,被告人がそのような者と連絡しようとしているのか確かめることすらせず,弁護人が捜索場所に立ち入れないからといって,一様に被告人が携帯電話で外部の者と連絡をとってはいけないとした措置は,相当ではない。そして,被告人の携帯電話には,被告人がこれまで弁護人として依頼したことのある湯口義博弁護士の法律事務所の電話番号が登録されており(弁7号証,被告人質問),被告人が湯口弁護士と連絡をとろうとしていた事実は否定できない。しかるに,上記イの段階では,被告人が警察官の説得に応じて自らの意思で弁護士との連絡を取らなかったということができるが,上記ウ及びエのように,被告人が所持していた携帯電話機を警察官に引き渡させ,被告人が返還を求めているのに,そのまま返還することを拒み,電池を外させて誰とも連絡できないようにさせた行為は,捜査官の説得の域を明らかに超えるものであり,被告人のいわば弁護人依頼権を侵害するものである。検察官は,被告人がC警察官に携帯電話の返還を強く求めるようになったのは,採尿を遅らせるための方便に過ぎないというが,必ずしもそのようにはいえない。捜査官としては,これまでの捜査経験や知識から,そのような行為が違法でないという認識を有していたとしても,捜査段階における被疑者の立場に立つ者にとって,資格を有する弁護士に依頼して適切な助言や指導を受けることは,基本的で重要な権利である。捜査官の上記行為は,被告人のそのような権利を侵害した,被疑者という立場に置かれた人の権利に配慮しない重大な違法行為と評価せざるを得ない。被告人は,このような違法な状態のまま意に反して強制採尿を実施され,これに基づいて被告人の尿の鑑定が実施され,鑑定書が作成されたのであるから,違法状態をそのまま利用して鑑定書が作成されたとみることができる。さらに,今後の被疑者の上記権利を蔑ろにした違法捜査抑止の見地からも,手続全体を違法と評価すべきである。
 以上から,本件鑑定書(検甲7号証)は違法収集証拠として,証拠能力を否定し,証拠から排除するのが相当である。
3 そうすると,その余について判断するまでもなく,本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
平成23年3月8日
福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部
裁判官  重富 朗

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