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児童ポルノ札幌

札幌高等裁判所判決/平成18年(う)第339号

理由

1 管轄違い及び法令適用の誤りの控訴趣意について(控訴理由第4)
 論旨は,要するに,本件児童ポルノ製造罪と本件児童淫行罪とは併合罪であって,本件児童ポルノ製造罪の管轄は地方裁判所であるのに,これを観念的競合であるとして本件児童ポルノ製造罪について家庭裁判所に管轄を認めた原判決には不法に管轄を認めた違法があり,また,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 そこで,検討するに,原判決別紙一覧表番号8ないし20の各行為は,児童に淫行させながら,その児童の姿態を撮影したというものであり,児童淫行罪であるとともに児童ポルノ製造罪に該当する。これらの児童に淫行させる行為とその姿態を撮影する行為は,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で,行為者の動態が社会見解上一個のものと評価されるものであるから,一個の行為で二個の罪名に触れる場合に当たり,観念的競合の関係にあると解される。原判決は,これと同旨の判断に基づき,児童淫行罪を専属管轄とする家庭裁判所として本件を処理したものであって,不法に管轄を認めた違法ないし法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。
2 児童ポルノの種類・個数の特定に関する控訴趣意について(控訴理由第9)
 論旨は,要するに,本件児童ポルノ製造罪の訴因は,児童ポルノの種類・個数を特定する必要があるにもかかわらず,本件起訴状の公訴事実には「ミニデジタルビデオカセットに描写し」と記載されているのみであり,各撮影行為により何個の児童ポルノが製造されたか,どの児童ポルノが製造されたのかが明らかでなく,本件公訴は訴因不特定の違法があるのに,公訴を棄却せず実体判断をし,また,製造された児童ポルノの個数を「罪となるべき事実」に判示していない原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,という。
 しかし,本件児童ポルノ製造罪は,被告人が同一児童に対し反復継続したものであるから,包括一罪と評価され,その場合には,訴因を特定するために製造された児童ポルノの個数を明示することは必要でなく,行為の始期及び終期,行為の回数,児童の氏名・年齢,児童ポルノの種類及び描写媒体の種類を明示すれば訴因は特定されていると解されるから,本件起訴に訴因不特定の違法はなく,また,原判決が児童ポルノの個数を「罪となるべき事実」に判示していない点も違法とは認められない。なお,製造された児童ポルノの個数やビデオカセットテープは証拠上明らかにされている。
 その他,児童ポルノ製造罪は製造された児童ポルノの記録媒体毎に成立すると考えるべきであるとの点を含め,所論がるる主張する点を考慮検討しても,論旨は理由がない。
3 違法収集証拠を証拠採用したとの控訴趣意について(控訴理由第7)
 論旨は,要するに,本件児童淫行罪と本件児童ポルノ製造罪が一罪であるとすると,上記条例違反罪と本件児童淫行罪とは一罪であるから,被告人が上記条例違反罪により逮捕・勾留された後になされた本件児童ポルノ製造罪での逮捕・勾留は,一罪一逮捕一勾留の原則に反する違法なものであって,この違法な逮捕勾留期間に作成された被告人の供述調書(原審乙7ないし9,12)はいずれも違法収集証拠として証拠能力がないのに,これを証拠として採用した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 なるほど,平成18年6月21日勾留が執行された上記条例違反罪の被疑事実は「平成18年2月18日午後4時36分ころから同日午後6時35分ころまでの間,千歳市…に所在するホテル『P』において,V(当16歳)が満18歳に満たない青少年であることを知りながら,単に自己の性的欲望を満たす目的で同女と性交し,もって満18歳に満たない青少年に対し淫行したものである。」というものであり,また,その後の同年7月11日勾留が執行された児童ポルノ製造罪の被疑事実は「平成16年7月24日午後6時50分ころから平成17年5月29日午後4時56分ころまでの間,別表記載のとおり15回にわたり,北海道内において,Vが満18歳に満たない児童であることを知りながら,デジタルビデオカメラを使用し,同児童の被疑者との性交場面,同児童をして被疑者に口淫させた場面,同児童の陰部を露出させた姿態などを撮影して,児童を相手とする性交,性交類似行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激する動画を電磁的記録媒体であるミニデジタルビデオカセット3本に描写し,もって同児童に係る児童ポルノを製造したものである。」というものである。そして,関係証拠によれば,被告人と児童との交際は,平成15年10月ころから同18年3月ころまで続いていたと認められ,本件児童淫行罪は上記条例違反罪の行為の日を含む期間における同一児童への児童淫行罪であることからすると,上記のとおり,本件児童淫行罪と後の逮捕勾留事実である本件児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあり,また,本件児童淫行罪は先の逮捕勾留事実である上記条例違反罪とも一罪となり,結局,以上は実体法上一罪と解される余地がある。
 しかし,一罪一逮捕一勾留の原則といえども例外を認めないものではなく,本件においては,上記条例違反罪の被疑事実は平成18年2月18日の行為であり,後の児童ポルノ製造罪の被疑事実は平成16年7月24日から同17年5月29日ころまでの行為であり,その間には半年以上の時間的間隔がある別個の行為であり,しかも,児童ポルノ製造罪は異なる日あるいは時刻における15回の行為であり,各行為についての証拠の収集が必要であることなどに鑑みると,上記児童ポルノ製造罪の被疑事実による再逮捕・勾留は,一罪一逮捕一勾留の原則の例外として許容されるものと解される。したがって,この逮捕・勾留期間中に作成された被告人供述調書は,いずれも違法収集証拠に該当しないから,これらを証拠に用いた原判決に違法はなく,論旨は理由がない。
4 被告人は本件児童ポルノ製造罪に関して「姿態をとらせ」ていないとの控訴趣意について(控訴理由第1及び第2)
 論旨は,要するに,被告人は,児童との口淫等の性交類似行為ないし性交(以下,「性交等」という)の姿態を撮影しているが,児童に姿態をとらせておらず,児童ポルノ製造罪は無罪であるのに,姿態をとらせたと認めて有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認ないし法令適用の誤りがある,というのである。
 そこで,検討するに,児童ポルノ法7条3項の「姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により,当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい,強制を要しないと解されるところ,関係証拠によれば,被告人は,児童と性交等を行っているが,これらの行為は通常当事者双方の言動により行為に至るものであって,本件においても,被告人が警察官に対し,「(ビデオに撮影した)これらの場面はセックスの一連の行為の一場面であります」と述べているように,被告人は,自ら積極的に児童に性交等の行為を行い,あるいは,児童の性交等の行為に応じる言動をしているのであって,この被告人の言動等により児童は性交等の姿態をとるに至ったと認められる。被告人が児童に「姿態をとらせ」たことは明らかである。
 なお,所論は,姿態をとらせる行為は,児童ポルノ製造に向けられた行為であるから,その時点において児童ポルノ製造の目的を要するが,被告人には,その時点において児童ポルノ製造の目的がない,という。しかし,被告人は,児童に性交等の姿態をとらせ,それを録画しているのであるから,正に,児童ポルノ製造行為に向けて姿態をとらせたというべきである。所論は採用できない。
 その他所論がるる主張する点を考慮検討しても,姿態をとらせたことを認めた原判決に事実の誤認ないし法令適用の誤りはなく,論旨は理由がない。
5 違法性が阻却されるとの控訴趣意について(控訴理由第10及び第11)
 論旨は,要するに,児童の真しな承諾があり,かつ,被告人と児童が本件当時結婚を前提に相思相愛の関係で交際していたのであって,児童淫行罪及び児童ポルノ製造罪は,いずれも違法性を阻却するのに,両罪を認定した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 そこで,検討するに,なるほど,児童との真しな交際が社会的に相当とされる場合に,その交際をしている者が児童の承諾のもとで性交しあるいはその裸体の写真を撮影するなど,児童の承諾があり,かつ,この承諾が社会的にみて相当であると認められる場合には,違法性が阻却され,犯罪が成立しない場合もあり得ると解される。しかし,本件においては,児童は当時14歳ないし15歳である上,被告人と児童の交際は,児童の保護者に知らされず,その許可を得ていないこと,被告人は中学教師で児童はその教え子であるが,被告人は,平成15年3月ころ,同僚の教師から教え子と性交等することが問題である旨注意され,さらに,同年5月には,児童の母親から学校に対し児童と被告人との関係につき抗議が来て,上司から改めて教え子との私的交際を禁ずる旨の注意を受けながら,その後本件交際を本格的に開始し,交際中の平成16年11月に交際の噂が出て問い質された際には,当該児童の虚言であると交際を否定する弁解をしていたこと等に照らすと,被告人の児童との交際は真しなものとはいえず,いかに相思相愛の関係であっても,また,児童の承諾があってもそれが社会的にみて相当とは到底いえない。したがって,本件においては違法性は阻却されない。
 その他所論がるる述べる点を考慮検討しても,論旨は理由がない。

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