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傷害致死東京

東京地方裁判所判決/平成22年(合わ)第25号

主文

被告人を懲役9年に処する。
未決勾留日数中180日をその刑に算入する。

理由

(罪となるべき事実)
 被告人は,Aと共謀の上,平成21年7月22日から同月23日までの間,東京都葛飾区(以下略)被告人方において,Aの長女であるB(当時1歳)に対し,被告人において,数回にわたって,その頭部を浴槽やその付近に打ちつけ,その体を強く揺さぶるなどし,Aにおいて,その頭部等をヘアブラシで殴打するなどの暴行をそれぞれ加えて同女に脳腫脹等の傷害を負わせ,よって,同年8月2日午後10時35分ころ,東京都文京区本郷2丁目1番1号順天堂大学医学部附属順天堂医院において,上記脳腫脹等に起因する低酸素脳症により同女を死亡するに至らしめたものである。
(証拠の標目)
※ 以下,括弧内の甲乙の番号は,証拠等関係カードにおける検察官請求証拠のそれである。
・ 被告人の検察官に対する供述調書(乙2)
・ 証人A,同C及び同Dの当公判廷における各供述
・ E(抄本,甲8),F(甲9),G(抄本,甲41)及びH(抄本,甲51)の検察官に対する各供述調書
・ 検察官作成の捜査報告書(6通,甲42,44ないし46,57及び58)
・ 司法警察員作成の証拠品写真撮影報告書(甲15)
・ 押収してあるヘアブラシ1本(平成22年押第276号の1)及び布団たたき1本(同押号の2)
・ 被告人の当公判廷における供述
(事実認定に関する補足説明)
第1 争いのない事実
 本件においては,以下の事実については,当事者間に争いはなく,証拠によっても認めることができる。
1 A(以下「A」という。)は,Iと結婚し,長女Bをもうけたが,その後Iと離婚し,Bを連れて,長野県飯田市にある実家に帰っていた。
2 Aは,平成21年5月ころ携帯サイトを通じて被告人と知り合い,6月6日にはBを連れてJR飯田駅で被告人と会い,ラブホテルに宿泊して肉体関係を持った。さらに,被告人に惹かれたAは,6月8日,Bとともに被告人方に転がり込み,22日までそこに滞在したが,実家から警察に捜索願が提出されるという話を聞いて,実家に帰ることにした。
3 Aは,飯田市の実家に戻り,Bとともに,両親,姉妹らと同居することになった。その間,被告人とは,携帯メールを通じて連絡を取り合っており,その間のメールは,証拠として提出されている。
4 7月21日,父親との口論がきっかけとなり,AはBを連れて実家を出て,再び被告人方で同棲を開始した。本件の公訴事実は,このときに起きたとされている出来事である。
5 7月23日午後10時ころ,Bは被告人方でけいれんを起こし,体温が約38度に上昇した。翌24日昼ころ,Bの体温が約40度に達し,呼びかけにも応じなかったことから,二人はBを東京都保健医療公社東部地域病院に連れて行ったところ,Bはそのまま入院することになった。
6 Bは,その後順天堂大学医学部附属順天堂医院に転院したが,回復せず,8月2日午後10時35分ころ,脳腫脹等に起因する低酸素脳症によって死亡した。
第2 本件の争点
 公訴事実について,被告人は,当公判廷で,「Aと共謀したことはないし,Bに対して公訴事実記載の暴行を加えたこともない。」旨主張し,弁護人も,本件は,AのBに対する日常的な暴行によりBが死亡した事件であり,被告人がAと共謀したことは一切なく,被告人が,ユニットバス内でBに対して頭部を浴槽等に打ちつけたり,その体を揺さぶるなどの暴行を加えたことはないし,仮に被告人がBに対して,検察官が主張するような暴行行為に及んでいたとしても,Aは同時並行的に虐待行為を繰り返していたものであるから,被告人の暴行行為とBの死亡との間に因果関係は存在せず,被告人は無罪であると主張している。
 そこで,本件の争点は,①被告人とA間の共謀の成否,②被告人による暴行の存否及び程度,③被告人の暴行とBの死亡結果との間の因果関係の存否の3点となるので,以下検討する。
第3 Aの証言について
1 Aは,当公判廷において,本件公訴事実を巡り,概要,平成21年7月22日,被告人が,Bが被告人の足を踏んだときなどに,Bをユニットバスに連れて行ってドンドンと音を立てる暴行を行ったこと,他方,Aは,空のペットボトルでBの頭を叩いたり,外出した際にその足を蹴ったりしたこと,また,22日または23日かはっきりしないが,Bの腹部にあざがあったので被告人に尋ねると,「布団叩きで床を叩いていたらBが転がってきて当たった。」と言っていたこと,翌23日になって,Bが被告人の右足に触れたことなどに怒り,Bの両腕を両手でつかみ,その体を前後に強く数回揺さぶり,Aもヘアブラシでその頭や背中等を殴りつけたりしたほか,被告人がBをユニットバスに連れて行って,上記同様にドンドンと音を立てる暴行を行ったこと,最後の暴行の際,Bの泣き方はいつもとは全く異なり「ぎゃー」という悲鳴のような声を出しており,しばらくして様子を見に行くと,Bはユニットバス浴槽の壁面に寄りかかって手をぶらんとさせて下を向き,明らかにいつもとは異なる様子でぐったりとしていたこと,同日夜10時ころ体温が38度くらいに上昇し,けいれんを起こしたこと,翌24日昼ころには体温がさらに40度ほどに達したことから,病院に連れて行ったことなどの事実を証言している。
2 このA証言について,検察官は,①Bが7月23日ころ頭に複数回の強い暴行を受けたことが原因で死亡したなどとする医学的所見に合致し,又はこれらと矛盾しない,②Aは平成21年10月から今回の証言までほぼ一貫した内容を供述しており,自らの刑事事件においても責任を認め,懲役6年の実刑判決にも不服申立てをしておらず,本証言でも,自己に不利益な事実を率直に証言している,③被告人が「怒り役」であったこと,Bが被告人を恐れていたことなどメールの内容から認められる状況にも合致しているなどとして,信用できると主張している。
 確かに,検察官の主張する各点は,当公判廷で取り調べられた関係証拠によって裏付けられており,こうした事情をもってA証言を信用できるとする検察官の主張には,理由があるものと認められる。
 これに対し,弁護人は,①Aは,7月22日及び23日に,被告人が多数回にわたってBをユニットバスに連れて行ったと証言する一方で,Aが一度もユニットバス内の状況を見たことがないというのは不自然である,②Aは被告人に好かれたい一心で暴行を繰り返し行っていたものであるから,自分だけ服役することは許せないという心情が強く,虚偽供述の動機がある旨主張する。
 そこで検討すると,①の点については,Aは,ユニットバスに行こうとしても被告人から,「来るな」と言われていたと証言しており,両名の間では被告人の方が力関係において上であったと認められることや,被告人に「怒り役」を任せていたという経緯からして,Aが,あえて被告人に逆らってまでしてユニットバス内の状況を確認しなかったという行動は理解できるところである。また,②の点については,上記のとおり証言時点でAの実刑判決は確定していたという事情に加え,証言の内容をみても,自ら行った暴行など自分に不利益な事実を認め,また,被告人の行動でも自分が目撃していないこと,分からないことについては率直にその旨証言するなどしており,殊更被告人に罪を着せようとする証言態度を示していないことからして,あえて虚偽供述をしているとは思われない。
 ただし,Aには,細かな事実関係になると証言内容が前後で異なるなど,それをそのまま受け取ることのできない部分があるし,反対尋問にしばらく黙り込むなどする部分もある。その大部分は証言に伴う緊張によるものとは思われるが,同時にAは,依然として元の夫Iや被告人に対し複雑な感情を抱いていることがうかがわれ,例えば彼らに対する見栄などが原因で,証言において真実でないことを述べている部分があるという可能性も否定できない。当裁判所も,証言のすべてに全面的に依拠することができると考えているわけではない。しかし,本件公訴事実に関する限り,Aの証言はその根幹においては信用に値すると考えたものである。
3 以上のとおり,A証言の信用性は基本的に高いということができる。
第4 被告人供述について
1 被告人は,当公判廷において,Bをしつけるという意図で,Bが何かいたずらをした際には,その手を軽くつねったり,叩くなどしたりしたことや,被告人の右足の傷口をBが踏んだ際に,激痛のあまり咄嵯に布団叩きでBの服の上から腹部を1回軽い力で叩いたことはあるとした上で,何回かBをユニットバスに連れて行ったことはあるが,それは,AがBに暴力を振るった際にその暴力からBを守るためであり,その際被告人は,Aには来ないように言った上で,ユニットバスの壁面やドアの木枠,床をドンドンと叩いてBに恐怖感を与えてしつけを行ったものであって,ユニットバスで暴行を加えたことは一度もないなどと供述している。
2 被告人供述の信用性について
 これに対し,検察官は,①信用できるAの証言と矛盾している,②Bが邪魔である旨のメールの内容や,腹部にあとが残るなど強い暴行を加えていたなどという客観的証拠と矛盾している,③犯行直後から犯跡を隠すようなうそを述べている,④場当たり的で自己矛盾の供述をしているなどとして,全く信用できないと主張している。
 検察官の主張のうち,①の点はさておくとしても,その他の②から④までに指摘する点は,関係証拠に照らし,概ね首肯できるものである。すなわち,被告人の供述を前提にすると,Bは,Aの暴行により判示の傷害を負い死亡したことになるが,被告人が供述するところのAの行った暴行内容をみても,Bの頭部に致命傷を与えるほどの強度の暴行は見当たらないのであって,被告人の供述はBが死亡した事実を合理的に説明するものとはいえない。また,Bには全身に多数のあざや傷等がみられたことは証拠上明らかであるところ,被告人は,Bの体のあざについては全く気付かなかったと供述している。しかし,被告人は,同時に,7月23日の外出から帰宅後におむつ1枚の状態のBを発見したと供述している上,そもそも丸2日以上にわたり狭いマンションの一室で同居しているのであるから,その間Bの体のあざや傷に全く気付かなかったというのはいかにも不自然である。さらに,被告人の供述によれば,Bが度々被告人に近寄って被告人の右足を踏むなどしたことが被告人の言う「しつけ」の理由の1つというのであるが,被告人とAとの間に交わされたメールなど関係証拠によれば,むしろBは被告人のことを恐れ避けていた様子すらうかがわれるのであって,Bが被告人に近寄ろうとしたことがあるという点はともかく,被告人の痛む右足を繰り返し踏むなどの行為を行っていたとは考えにくく,この点も納得できない。
 さらに,被告人が,捜査段階において,7月23日の最後の3回目にBをユニットバスに連れて行った際,5回にわたってその身体を「軽く」ではあるが押した旨を,その理由と共に認めている事実は,被告人の公判供述の信用性を強く疑わせ,同時にA証言を補強するものとして重要である。これに対し,弁護人は,密室で行われた取調べの調書を公開の法廷で行われた供述より信用すべき理由はないと主張し,また,被告人は,取調官から自白しないと長く服役する旨ほのめかされ,自白を急かされたからであるなどと説明している。しかし,供述調書をみると,被告人がその内容について数か所にわたって事細かに訂正を申し立てた様子がうかがわれるのであって(乙2号証),自己の意に沿わない供述をしたという様子はうかがわれない。
 3 このように,被告人の当公判廷における供述には,不自然かつ不合理な点が多数見られ,全体として信用することができない。
第5 被告人の行った暴行の内容及びBの死亡との因果関係
 そこで,以上を前提に,被告人の行った暴行の内容について改めてみると,①A証言によれば,被告人がユニットバス内に両手を差し入れて「ドンドン」と音を立てる行為を行っており,それは浴槽壁面にBがぶつけられているような音であったこと,②Aには死因につながるような強い暴行を加えた形跡が認められないこと,③Bを診療した医師等が,Bの受傷状況等から,7月23日の夕方から夜にかけての暴行が死亡の原因と考えることに矛盾はない旨述べていること,④7月23日の夕方ころまではBに特に異変は認められず,その後の被告人のユニットバスでの暴行以後にBの様子が急変したこと,⑤ユニットバス内の浴槽壁面や洗面台等の形状から,被告人がBに対して,その頭部を打ちつけるなどの暴行を行ったとみても格別疑問はないことなどの事実が認められ,これに,⑥被告人が捜査段階で判示の暴行を概ね認めていたことを総合すれば,被告人がBに対して,ユニットバス内で判示罪となるべき事実記載の暴行を加えた事実は優に認められるというべきである。
 そして,医師らの供述内容やAの暴行内容,ユニットバスでの被告人の暴行後のBの容態の変化等に照らせば,Bの死因は,7月23日に被告人がユニットバス内でBの頭部を浴槽等に打ちつけたことによるものと認められるから,被告人の暴行とBの死亡結果との間に因果関係が認められることも明らかである。
第6 被告人とAとの共謀の成否
 検察官は,①被告人とAは,Bを邪魔に思い,しつけ名目で暴行を加えていた,②2人で被告人を「怒り役」にすると決め,かねてからAは被告人の暴行を容認していた,③判示犯行時も,被告人がBに暴行を加えると,Aもこれを容認し,呼応するように暴行した,④犯行後,Bを救護せず,虐待を隠すための口裏合わせをしたなどの事実を指摘して,両者の間に共謀があった旨主張している。これに対し,弁護人は,本件は,前夫と離婚して情緒不安定になっていたAがBの存在を疎ましく思うようになり,被告人とは無関係にBに暴行を加え続けたものであり,そもそも被告人にはあくまで「しつけ」を行うという認識しかなかったとして,両者の間に共謀はなかったと主張している。
 しかし,この点もまた,証拠に照らし検討し,検察官の主張に理由があると判断した。付言すると,被告人とAは,同棲していない間に頻繁にメールを交わしているが,その際,被告人は,「(Bが)邪魔だ」というメールを送信している。この事実に,被告人がBに加えた数々の暴行の事実を併せ考えると,被告人が,通常言われるような「しつけ」の意図を有していたとは思われず,むしろ,「しつけ」に名を借りた暴行を意図していたとみるのが自然である。
 また,Aは,被告人との間で,被告人が「怒り役」,Aが「慰め役」となってBにしつけを行うという了解があったと証言しているが,これは,被告人がAに対し,「家に来たらBに教えこむよ!!Aは無理だよ!!」,「オイラが怒る時は隠れてね!!」という内容のメールを送信していることにも裏付けられている。そして,Aと被告人が加えた暴行は,そのほとんどを相互に認識する機会があったはずであるが,二人は,その際相手を止めようとしてはいない。これは,双方が,相手にBに対する暴行の意図があることを認識し,少なくともそれを許容していることを示している。そして,これに前記の役割分担の了解の存在を併せ考えれば,両名は,そうした了解に基づき,意思を相通じて暴行を繰り返していたとみるのが合理的である。さらに,7月23日の夜,Bの容態が急変して以降,被告人とAは,Bを病院に連れて行くのを遅らせたり,Bの受傷原因について口裏合わせをしたり,関係者に虚偽の供述をしたりしている。これらも,被告人とAの間に共謀があったと主張する検察官の主張に沿う事実である。
 これに対し,弁護人は,前記のとおり述べて,共謀の事実を否定するが,被告人が自ら繰り返し暴行をBに加え,それをAが認識していた事実はこれまで検討してきたとおり明らかなのであるから,Aが被告人と無関係にBに暴行を加え続けたという主張は,その前提を欠いているというほかない。
 以上の事実に照らすと,被告人とAは,暗黙のうちに意思を相通じた上,本件暴行行為に及んだことが認められる。
第7 結論
 以上のとおりであるから,被告人がAと共謀してBに対して判示の暴行を加えBを死亡させたことは,合理的な疑いを超えて立証されていると判断したものである。
(累犯前科)
 被告人は,(1)平成13年1月26日東京簡易裁判所で住居侵入,窃盗の罪により懲役1年6月(3年間執行猶予,平成14年7月5日その猶予取消し)に処せられ,平成16年8月12日その刑の執行を受け終わり,(2)その後犯した窃盗罪により平成17年11月2日東京簡易裁判所で懲役1年2月に処せられ,平成18年12月22日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は検察事務官作成の前科調書(乙5)及び(2)の前科に係る判決書謄本(乙7)によって認める。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法60条,205条に該当するところ,前記の各前科があるので同法59条,56条1項,57条により同法14条2項の制限内で3犯の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役9年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中180日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
1 本件は,被告人が,当時同棲していた共犯者と共謀の上,被告人方において,共犯者の当時1歳の長女に対し,被告人において,数回にわたって,その頭部を浴槽やその付近に打ちつけ,その身体を強く揺さぶるなどし,共犯者において,その頭部等をヘアブラシで殴打するなどの暴行を加えて脳腫脹等の傷害を負わせ,よって,東京都内の病院で脳腫脹等に起因する低酸素脳症により死亡させた,という傷害致死の事案である。
2 検察官が主張する情状事実のうち,犯した罪に見合った刑を定めるという観点から特に重視した事情は,以下のとおりである。
(1) 被告人らは,密室内において,当時1歳10か月で,抵抗したり逃亡したりできない状態の被害児童に対し,2日間にわたり,複数回にわたって,その頭部を浴槽壁面やその付近に打ちつけたり,ヘアブラシで殴打したり,その身体を強く揺さぶるなどの暴行を加えており,犯行態様は,一方的かつ執拗,凶暴で,しつけとはいえない卑劣なものであり,弱者へのいたわりを欠いた悪質なものである。
(2) 被害児童は,最愛の母親とその交際相手により加えられた暴行により,全身に多数のあざや傷を負ったほか,脳腫脹等に起因する低酸素脳症により,わずか1歳10か月でその尊い命と未来への無限の可能性を奪われたもので,結果は誠に重大であり,被害児童が感じたであろう肉体的苦痛や恐怖,無念さは,察するに余りある。
(3) 被告人らは,被害児童が手づかみで食事をしたとか,カーペットを汚したことなど,1歳児であれば当たり前ともいえる些細な出来事に腹を立て,被害児童に暴行を加えているが,動機は身勝手というほかなく,酌量の余地はない。
 この点に関し,被告人は,足の手術痕に触れられると激痛が走るという事情があり,被害児童が被告人の足を踏んだことが本件のきっかけになったこともうかがわれるが,被害児童が1歳児であることからすれば,仕方のない面があるというべきであり,いずれにしても,本件のような被害児童への一方的な暴行を正当化するものとはなり得ない。
(4) 本件で被告人が果たした役割をみると,被害児童の頭部を数回にわたり浴槽やその付近に打ち付けるという,死亡の結果をもたらした傷害の原因となる暴行を行ったほか,体を揺さぶる暴行を加えるなどしており,積極的に犯行に関与している。また,被告人は,被害児童を邪魔で疎ましい存在と捉えており,共犯者よりも強い立場にあることを背景に,自らが怒り役,共犯者が慰め役と役割分担した上,しつけの程度を越えた暴力を率先して加えて,死亡の直接の原因となる傷害を負わせる暴行を積極的に行うなど,主導的に犯行を行っている。したがって,被告人の刑事責任は,共犯者よりも相当に重いと評価すべきである。
3 また,検察官が主張する情状事実のうち,以下の事情も併せて考慮した。
(1) 被告人は,公判廷において,不合理で場当たり的な虚偽供述に終始し,共犯者に責任を転嫁しようとするなど,本件に真摯に向き合おうとせず,反省の態度はみられない。このような態度に加え,女性や本件被害児童のような弱者に対し粗暴な傾向がうかがわれることも併せ考えると,再犯のおそれも否定できない。
(2) 被告人は,窃盗罪等による累犯前科2犯を含む前科3犯を有しており,法を守る意識に乏しいといわざるを得ない。
(3) 近時,児童虐待が社会的にも大きな問題と認識されており,今後同種の事案が頻発しないためにも,厳しい姿勢を示す必要がある。
4 次に,被告人のために有利に考慮すべきものとして,以下の事情も考慮した。
(1) 被告人の幼少時の家庭環境などの生い立ちには同情の余地がある。
(2) 現在両足を切断しており,障害者として介護を受けて生活している。
5 さらに,本件においては,共犯者に対し懲役6年の刑が確定しているところ,同女の量刑とのバランスも考慮すべきである。
6 そこで,被告人に対しては,2の諸事情を重視し,同種事案の量刑傾向が,懲役3年(付執行猶予)から懲役12年の幅にあることを目安として捉えた量刑の大枠の範囲内で,共犯者との刑のバランスや3,4の諸事情をも考慮し,主文の刑を科すのが相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。
平成22年11月12日
東京地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官  今崎幸彦
裁判官  丸山哲巳
裁判官  豊島栄子

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