窃盗京都

京都地方裁判所判決/平成22年(わ)第1230号

主文

 被告人は無罪。

理由

1 本件公訴事実は,「被告人は,平成22年8月5日午後11時ころ,京都府南丹市(以下略)A方敷地内において,金品窃取の目的で,同所に駐車中の自動車の無施錠の助手席側ドアを開け,同車助手席に乗り込んだが,家人に発見されたため,その目的を遂げなかったものである。」というのである。
 被告人の当公判廷での供述及びB(以下「B」という。)の警察官調書(甲2(以下,括弧内の甲乙の番号は検察官請求の証拠番号を示す。))によれば,被告人は,公訴事実記載の日時ころ,上記A方に駐車中の軽四輪貨物自動車(以下「本件自動車」という。)の無施錠の助手席側ドアを開け,同車助手席に乗り込んだ後,家人のBに発見されたことが認められるが,被告人は,金品窃取の目的で本件自動車に乗り込んではいないと主張する。
2 そこで検討するが,上記Bの警察官調書(甲2),警察官作成の現行犯人逮捕手続書(甲1),実況見分調書(甲3),写真撮影報告書(甲4),捜査報告書(甲5,6),被告人の検察官調書(乙3),検察事務官作成の前科調書(乙6)等によれば,
① 本件自動車は,A方の母屋の裏手にある,母屋,物置,コンテナに囲まれた裏庭に駐車されており,ドアは無施錠であった。道路と庭との間には柵等は設置されていない。なお,本件当時,裏庭には本件自動車以外に4台の自動車が止められていた。
② 上記裏庭付近は,近くに街灯があるが,ほぼ真っ暗の状態である。
③ Bが本件自動車に乗ろうと運転席に近づき,ドアを半分くらい開けた時,助手席の被告人に気付いたが,その瞬間,被告人が出ていったので追いかけ,その後,Bの父親と協力して,被告人を住居侵入,窃盗未遂の現行犯人として逮捕した。
④ 被告人は,逮捕された時,現金2円,ペンライト1個等を所持していた。なお,ペンライトは,本件当日,被告人が購入したものであった。
⑤ 被告人には,前科が11犯有り,うち10犯は,住居侵入や窃盗等によるものであり,いわゆる空き巣である。
 との各事実が認められるが,これらを総合すると,空き巣の前科を多数有し,所持金が僅かしかない被告人が,深夜,ペンライトを所持して民家の裏庭に駐車されていた無施錠の本件自動車の助手席に乗り込んだというものであり,これらの事実からは,被告人が本件自動車に乗り込んだのは,いわゆる車上荒らしのためと一応合理的に推認することができる。
3 しかし他方で,上記関係各証拠及び現場指掌紋送付(回答)書(甲12)によれば,
① 本件自動車からは,被告人の遺留指紋は発見されなかった。
② 本件自動車の荷台には覆いがかけられているが,荷台に変わったところはなかった。
③ 被告人は,Bに発見された後,その場から逃走しているが,特に走って逃げたりはしておらず,歩いて逃げている。
 との各事実が認められ,本件自動車が物色された様子が一切うかがえないし,被告人があわてて逃走した様子もうかがわれない。
 そして,被告人は,要旨,JR△△△駅に到着後,その晩の寝床とするため公園のベンチなどを探そうと思い,とりあえず人家のある方向に向かって歩いて行ったが,△△△駅から約5キロメートル離れたA方まで来たところ,休憩を取りたいと思い,農作業用の軽トラックなら鍵がかかっていないのではないかと思って本件自動車の助手席側に近づき,ドアを開けて座ったが,すぐに家人が本件自動車にやってきた,本件自動車に乗り込む際にはペンライトはポケットにしまっていたし,本件自動車内ではルームライトを消すためにそれには触ったが,ルームライト以外のものには触っていない旨供述しているが,被告人は,逮捕当時から一貫して休憩目的であったと供述している上,所持していたペンライトも夜道を歩く際に足下を照らす等のために所持していたものであると供述しているが,このような被告人の供述自体,およそ荒唐無稽な弁解とはいうことができず,そのようなことも一応あり得るといえる程度には合理性がある上,物色行為をしていないことといった客観的な裏付けとも合致している。
4 以上によれば,被告人の弁解を完全に排斥することができず,金品窃取の目的があったものと認めることはできないので,結局,本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
(検察官熊田篤,国選弁護人山田豊昭各出席)
(求刑:懲役2年)
平成22年11月30日
京都地方裁判所第1刑事部
裁判官  入江克明

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