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窃盗東京

東京高等裁判所判決/平成22年(う)第92号

主文

原判決を破棄する。
被告人を懲役1年2月に処する。
原審における未決勾留日数中120日をその刑に算入する。

理由

第1 控訴の趣意
 本件控訴の趣意は,要するに,第1に,被告人が電車の自動券売機の硬貨釣銭返却口に接着剤を塗り付け,乗客が投入した硬貨の釣銭が接着剤に付着するのを待ち,その釣銭を回収して窃取しようとしたが,駅員に逮捕され,その目的を遂げなかったとの本位的訴因について,原判決は,硬貨釣銭返却口に接着剤を塗布しただけでは,釣銭取得に向けた現実的危険性が発生しておらず,実行行為に着手したとはいえないとして,窃盗未遂の成立を否定したのは,重大な事実の誤認及び法令適用の誤りである,第2に,予備的訴因である偽計業務妨害罪についても,本件の情状に照らすと懲役刑を選択するのが相当であって,簡易裁判所である原審の科刑権の制限を超えるから,裁判所法33条3項及び刑訴法332条により事件を地方裁判所へ移送せねばならないのに,原審が移送をせずに罰金刑を言い渡したのは,訴訟手続の法令違反であるというのである。
第2 事実の誤認等の論旨
1 被告人が逮捕されるに至る経緯等
 原審で取り調べた関係証拠によると,被告人が逮捕されるに至る経緯として,次の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
(1) 被告人は,平成17年から平成19年にかけて,4回にわたり,駅に設置されている自動券売機の硬貨釣銭返却口(以下「釣銭返却口」という。)内部に接着剤を塗布した後,後続の券売機利用客に対し払い出される釣銭用の硬貨を接着剤に付着させて捕捉した上,付着している硬貨を回収して窃取するという手口(以下「本件手口」という。)で窃盗罪を繰り返し,うち2回は起訴され,懲役刑に処せられた経験がある。
(2) 被告人は,平成21年6月17日も昼間から,東日本旅客鉄道株式会社新宿駅構内をブラブラ過ごすうち,顔見知りの者からペーパーセメント(以下「本件接着剤」という。)等を入手し,本件手口で釣銭を盗もうとも考えたが,同駅には縄張りがあると聞いていたので,乗客の多い同社新橋駅(以下「新橋駅」という。)に向かった。被告人は,同日午後2時過ぎころ,東京都港区新橋2丁目17番14号の新橋駅に到着し,烏森口改札口切符売場(以下「本件切符売場」という。)の券売機を利用する客を見て,「これだけ人が自動券売機を利用しているなら,釣銭返却口にボンドを塗って,ひっかかった釣銭が盗める。見つかることもないだろう。」と考えた。
(3) 被告人は,同日午後2時19分ころ,本件切符売場の11番券売機の前に立ち,釣銭返却口などを確認し,一旦本件切符売場を離れ,同日午後2時22分ころには,左手中指の先に本件接着剤を付け,切符を買うような素振りをしながら,11番券売機の右隣に設置されている10番券売機の釣銭返却口にそれを塗り付けた。
(4) 被告人は,何食わぬ顔をして,本件切符売り場を離れ,柱の陰で同様に本件接着剤を左手中指に付け,午後2時23分ころ,再び11番券売機のところへ行き,11番券売機の釣銭返却口に本件接着剤を塗布した。
(5) 烏森口自動券売機室内にいた新橋駅駅員A(以下「駅員A」という。)は,同日午後2時20分ころ,防犯カメラの映像で10番券売機の釣銭返却口に何かを塗っている被告人を発見した。釣銭泥棒と思った駅員Aが,10番券売機に急行したところ,被告人は,今度は,11番券売機に右手で硬貨を投入するような素振りを見せ,左手の中指を釣銭返却口に入れ,何かを塗っていた。駅員Aは,11番の釣銭返却口に接着剤様のものが付着しているのを確認した後,被告人を追求したところ,被告人が犯行を認めたので,窃盗未遂の現行犯人として逮捕した。
2 原判決の論理構造
 ところで,原判決は,次のような論理構造をとって,本位的訴因について,実行の着手があったとは認められず,窃盗未遂罪は無罪である旨結論付けている。
(1) 本件手口と着手時期
① 窃盗罪の実行の着手は,少なくとも他人の占有する財産の占有侵害行為に直接向けられた行為であり,犯人のコントロール下にある一連の行為でなければならない。
② 接着剤を塗布して罠を仕掛けた後,被告人は,利用客が切符を買う行為等を待つことを余儀なくされるが,その客の行為には被告人の影響力は及ばないから,客の行為を含めて被告人のコントロール下にある一連の行為とはいえない。また,被告人の目論む窃盗は,罠にかかった硬貨に対する占有侵害行為がなければ完成しない。
③ 被告人の罠を仕掛ける行為から占有侵害行為に至る経緯には,次のような想定可能な障害があり,被告人自身もその障害を認識していた。
ア 客が券売機で切符を買っても,必ずしも,釣銭が生じ,あるいは接着剤に付着するとは限らず,たとえ,釣銭が罠にかかったとしても,客自身や後続の客が気づくなどして釣銭を取ることがある。
イ 新橋駅では,駅員等が不定期に1日二,三回の割合で,接着剤等の付着の有無を点検しており,気付いた場合には,券売機の使用を停止し,接着剤を除去している。
ウ 15分程度経過すると,接着剤の効力が減退するため,被告人は通常約20分毎に接着剤を上塗りをしなければならない。
(2) 本件への当てはめ
① 被告人の罠を仕掛ける行為と罠にかかった釣銭を盗み取る行為は,被告人の影響の及ばない客の行為によって遮断されているのであって,客の行為を含めて被告人のコントロール下にある一連の行為とはいえない。釣銭が罠にかかったら取るというのが本件窃盗の特徴であって,窃取可能な状態になるかどうかも利用客次第であり,罠を仕掛けた後,被告人の意思次第で速やかに釣銭の占有侵害行為に移行することができない。
② 被告人の犯罪計画遂行上想定された障害を含む客観状況を考えれば,被告人は,客の券売機利用状況を見て釣銭が罠にかかっているか否かを観察しながら,接着剤の効果が減退すれば接着剤を塗り重ねるなどを繰り返す中で,駅員の監視の目をごまかしつつ,罠にかかり,しかも前記の障害を通り抜けた釣銭に対する占有侵害の機会を狙っていたのであり,接着剤塗布行為は,客観的にも,被告人の主観においても,直接占有を侵害する行為でなく,そのための準備行為と評価する。
③ 以上を総合して考えると,罠を仕掛けた段階において,被告人の意思次第で速やかに占有侵害行為の段階に移行することができたとは認められない以上,結果発生の具体的危険が生じたとは解されず,窃取の実行の着手と認めることはできない。
3 原判決の検討
(1) 判断の分水嶺
 原判決の論理構造を仔細に検討すると,第1に,1回の本件接着剤塗布行為のみでは,各券売機から釣銭を取得する可能性が高いとはいえず,取得できるか否かは,むしろ様々な要素により左右されるので,結果発生の具体的危険が生じたとは評価できない,第2に,窃盗罪の成否は,被告人の意思によりコントロールできない事情によって左右されるので,本件接着剤塗布行為は単なる準備行為にすぎない,第3に,本件手口による窃盗罪の財物は,実際罠にかかった硬貨であって,券売機中に存在する釣銭用の硬貨ではないという3点が,原判決の判断の根幹部分と考えられるので,以下これらの点に関する当審の判断を加えながら,事実誤認等の論旨について,検討する。
(2) 釣銭取得の可能性の程度
 原判決は,既述したように,被告人が釣銭を取得するには,①乗客が券売機で切符を買っても,必ずしも釣銭が生じ,あるいは接着剤に付着するとは限らず,たとえ釣銭が罠にかかったとしても,乗客自身や後続の乗客が気づくなどして釣銭を取ることもある(以下,これらの障害をまとめて,「乗客の切符購入等に伴う障害」という。),②新橋駅では,駅員等が1日二,三回接着剤等の付着の有無を点検しており,気付いた場合には,券売機の使用を停止し,接着剤を除去している(以下,この障害を「駅員等の点検による障害」という。),③15分程度経過すると,接着剤の効能が低下するため,被告人は通常約20分毎に接着剤を上塗りしなければならない(以下「接着剤の効能低下による障害」という。)という,大別すると3種類の障害があると論述しているので,これらの障害の程度について検討する。
① 乗客の切符購入等に伴う障害
ア 新橋駅助役の検察官調書(原審甲14,以下「新橋駅助役の調書」という。)によると,新橋駅は,一日の利用客が約51万人と首都圏で10番以内に入る利用客の多い駅であり,スイカカードのようなICカードも普及しているが,本件切符売場では,1日につき,1台の自動券売機でおおよそ六,七百枚の切符が販売されているとのことであるから,自動券売機を利用する乗客の中には,紙幣や硬貨を投入して釣銭等を受け取る者が相当数存在し,日常かつ頻繁に釣銭等が出現していることは公知の事実といえる。
 この点,原判決は,本件接着剤の塗布行為後,被告人が逮捕されるまでの間に,釣銭の存在がなかったことを自説の根拠として援用するが,被告人が塗布行為の後,ごく短時間で逮捕されていることからして,根拠たり得ない。
イ 司法警察員作成の実験結果報告書(原審甲13)によれば,本件接着剤と同一製品を用いて,被告人供述に則った方法により,11番券売機の釣銭返却口に塗布した上,5分間に7回(1回につき,100円硬貨1枚,50円硬貨1枚,10円硬貨3枚),延べ35枚の硬貨の払戻し操作を行う実験方法1では,1回目から,接着剤塗布後4分22秒経過した6回目まで,全ての回で硬貨の付着が認められた。また,5通りの金種の組合せ(30円から730円まで)を用意した上,各組合せごとに5回ずつ,同様の方法で硬貨の付着状況を調べる実験方法2(各組合せごとに,接着剤を塗り直した。)においては,硬貨が1枚も付着しなかったのは,25回中3回のみで,いずれの金種の組合せの場合も,3回目までは必ず硬貨の付着が認められた。このように,1回の接着剤塗布行為でも,接着剤に硬貨を付着させるに十分な効能を発揮したことが認められる。
 この点,原判決は,「約5分後には硬貨が必ずしも接着しない傾向が見られる」とか,「実験方法1において,釣銭として想定された3個の硬貨のうち,付着するのは一,二個で,全く付着しない場合もある」というが,前者については,当審で取り調べたB株式会社C作成の捜査関係事項照会回答書(当審検5)によると,本件接着剤は,5~15分くらいで接着力が発現したというのであるから,明らかに誤った指摘であり,後者については,3個全てが付着する必要はなく,うち一,二個でも釣銭窃取の目的は達せられるのである。
ウ 乗客は,券売機が機械のため釣銭の計算に間違いがあるとは通常考えず,まして,釣銭の一部が釣銭返却口に塗られた接着剤に付着しているとは思いもせず,払い出された釣銭を正しい額と思い込み,数えることなく,出てきた釣銭を手に取り,立ち去る実態があることは,容易に推測できるところ,新橋駅助役の調書もこの推測を経験則から裏付けている。また,司法警察員作成の硬貨返却実験結果報告書(原審甲18)によれば,付着させる硬貨と払戻しを行う硬貨の組合せを4通り用意した上,それぞれの組合せについて,1分後ないし10分後までの7回,10番券売機を用いて払戻操作を行ったところ,あらかじめ付着していた硬貨が,後続の硬貨の衝突によりはがれたものは1枚もなかったことが認められる。それによると,後続の乗客の釣銭等との衝突により,いったん付着した硬貨がはがれて落下することは,問題視するほど多くはないことは明らかである。
② 駅員等の点検による障害
 新橋駅助役の調書によれば,新橋駅では,確かに駅員等の点検を行うが,その割合は1日に不定期に二,三回であり,しかも,乗客の利用していない券売機につき,確認するにすぎないのであって,他方で,被告人が,接着剤塗布後,2分から10分ぐらいで券売機に戻り,硬貨付着の有無を確かめる旨述べていることからすれば,両者のサイクルは質的に異なり,駅員等の点検は,本件手口による窃盗行為の障害にはなっていないと見るのが相当である。
③ 接着剤の効能低下による障害
 1回の本件接着剤塗布行為により,十分な付着力を持つことは前述のとおりであり,窃盗犯人たる被告人が,20分間隔で本件接着剤を重ね塗りするとしても,それは,できる限りの多くの硬貨を確実に得たいと考えるからであって,1回の塗布行為の効能が硬貨を得られないほど低いことを表す証左ではない。
(2) 被告人の意思によるコントロール
 既述のとおり,原判決は,窃盗の実行の着手は,少なくとも他人の占有する財産の占有侵害行為に直接向けられた行為であり,被告人のコントロール下にある一連の行為でなければならないところ,本件接着剤の塗布行為と釣銭取得行為との間には,被告人のコントロールが及ばない乗客の行為が介在し,被告人の意思次第で速やかに釣銭の占有侵害行為に移行することができないので,本件接着剤塗布行為は,窃盗の準備行為にすぎないと解している。しかしながら,被告人の行為により,財物の占有侵害の客観的危険性が高まっているにもかかわらず,被告人の意思により速やかに占有侵害行為に移行できないとの一事をもって,実行の着手を否定するのは,狭きに失する法解釈であり,賛同することはできない。
(3) 本件の財物
 本件手口による窃盗の対象財物は,乗客が券売機に投入する金員自体ではなく,券売機内に既に在中している釣銭用硬貨であり,釣銭が接着剤に付着して,釣銭返却口内に止まったとしても,釣銭の占有は駅管理者に存すること明らかであり,これと見解を異にする原判決の判断に与することはできない。
4 窃盗未遂の成立
(1) 窃盗罪における実行の着手は,構成要件該当行為自体の開始時点に限定されず,これに密接な行為であって,既遂に至る客観的危険性が発生した時点に認められると解されるところ,本件においては,本件接着剤を各券売機の釣銭返却口に塗布した時点において,実行の着手があったというべきである。すなわち,被告人の本件接着剤塗布行為は,券売機の釣銭等を取得するためには,最も重要かつ必要不可欠な行為であり,釣銭の占有取得に密接に結びついた行為である。また,被告人において,本件接着剤塗布行為に1回でも成功すれば,本件接着剤の効能,乗客の乗車券購入行為等による釣銭の出現の頻度,釣銭が接着剤に付着する確率等を踏まえると,券売機の管理者が占有する釣銭用硬貨を十分に取得することができる状態に至った,換言すれば,硬貨の窃取に至る客観的危険性が生じたということができるというべきである。
(2) 原判決は,釣銭の窃取という結果発生に特段障害にならない諸点を殊更取り上げて,本件接着剤塗布行為と釣銭窃取行為との密接性や結果発生への客観的危険性を否定する独自の見解に立脚するもので,到底与することはできない。
5 破棄自判
 以上のとおり,本件において,窃盗罪の実行の着手を否定した原判決には事実の誤認及び法令適用の誤りがあり,その旨をいう論旨は理由がある。
 したがって,その余の論旨について検討するまでもなく,原判決は破棄を免れない。そこで,刑訴法397条1項,382条,380条により原判決を破棄するが,直ちに判決をすることができるので,同法400条ただし書に則り,被告事件について,更に次のとおり判決する
第3 破棄後の自判判決
1 罪となるべき事実
 被告人は,現金窃取の目的で,平成21年6月17日午後2時20分過ぎころ,東京都港区新橋2丁目17番14号所在の東日本旅客鉄道株式会社新橋駅烏森口改札口切符売場において,10番及び11番の2台の自動券売機の硬貨釣銭返却口に接着剤をそれぞれ塗り付け,釣銭を接着させる方法で同駅駅長D管理の現金を窃取しようとしたが,駅員に発見されて現行犯逮捕されたため,その目的を遂げなかったものである。
2 証拠の標目
(括弧内の甲乙の数字は,原審証拠等関係カードの検察官請求番号を指す。)
・被告人の原審公判における供述調書
・被告人の検察官に対する供述調書(乙5)
・被告人の司法警察員に対する供述調書2通(乙2,4)
・Eの検察官に対する供述調書(甲14)
・Aの司法警察員に対する供述調書(甲3)
・司法巡査作成の実況見分調書(甲4)
・司法警察員作成の犯行現場写真撮影報告書(甲5),防犯ビデオ画像写真撮影報告書(甲6),画像解析捜査報告書(甲7),証拠品写真撮影報告書(甲8),捜査報告書(2通,甲11,12),実験結果報告書(甲13),再現実験結果報告書(甲15),画像解析プリントアウト報告書(甲6)及び硬貨返却実験結果報告書(甲18)
・東京区検察庁副検事作成の聴取報告書(甲22)
・東日本旅客鉄道株式会社東京支社長作成の回答書(当審検2)
・B株式会社C作成の回答書(当審検5)
3 累犯前科
 被告人は,(1)平成18年8月24日横浜地方裁判所で窃盗罪により懲役1年,3年間執行猶予(平成19年12月18日その猶予取消し)に処せられ,平成21年4月25日その刑の執行を受け終わり,(2)平成19年9月12日東京簡易裁判所で窃盗罪により懲役8月に処せられ,平成20年6月24日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は検察事務官作成の前科調書によって認める。
4 法令の適用
 被告人の行為は,刑法243条,235条に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,被告人には前記累犯前科があるので同法56条1項,57条により再犯の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役1年2月に処し,同法21条を適用して原審における未決勾留日数中120日をその刑に算入し,原審及び当審における訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
5 量刑の理由
 本件は,被告人が,平成21年6月17日,新橋駅切符売場において,券売機の釣銭返却口内部に接着剤を塗り付けて釣銭を窃取しようとしたが,駅員に逮捕されたため,未遂に終わった事案である。
 被告人は,平成21年4月25日最終刑の服役を福岡刑務所で終え,上京したものの,生活保護等を受けられず,浮浪の生活を送っていたが,いよいよ生活費に窮し,本件犯行に及んだもので,動機経緯に酌むべき点は少ない。多くの利用客がいる中で,何食わぬ顔をして短時間のうちに接着剤を塗り付け,怪しまれぬよう一旦その場を離れ,しばらくすると戻ってきて接着剤に付着した釣銭の有無を確認するという,それなりに巧妙で手際のよい犯行である。本件犯行が未遂に終わったのは,同種犯行の横行に悩む鉄道会社が防犯カメラを設置するなどして防犯の努力をしていたからであり,駅助役が厳しい処罰を求めているのは当然である。被告人は,本件と同じ手口による前記累犯前科2犯の刑の執行を受け終えたばかりであったほか,他にも窃盗等の前科4犯を有しているのであって,窃盗の常習性が認められ,規範意識は鈍麻している。
 そうすると,被告人は,区役所や保護観察所を尋ね,何とか生活保護を受給しようと努力したが,定まった住居がないことが支障となり,各役所のたらい回しにあった感があること,原審及び当審において反省の態度を示し,原判決後は,弁護人の努力もあって保護施設に入所することができ,生活保護を受けるとともに,白内障等の治療に努める生活を送り,体調が回復したら就労したいと述べるなど更生への意欲を有していることなどの事情を十分に考慮しても,被告人を罰金刑に処することはできず,本件においては主文掲記の刑を科するのが相当であると判断した。
平成22年4月20日
東京高等裁判所第10刑事部
裁判長裁判官   山崎 学
裁判官   片多 康
裁判官横山泰造は転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官   山崎 学

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