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大麻大阪

大阪高等裁判所判決/平成5年(う)第611号

主文

 原判決を破棄する。
 被告人を懲役一年に処する。
 この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

 本件控訴の趣意は、検察官竹内俊一作成の控訴趣意書に、これに対する答弁は、弁護人小泉伸夫作成の答弁書にそれぞれ記載したとおりであるから、これらを引用する。
 論旨は、要するに、原判決は、「被告人は、法定の除外事由がないのに、平成四年四月二九日ころの午後九時ころ、大阪市福島区《番地略》の当時のA子方及び同所付近において、A子から大麻樹脂約一〇グラムを無償で譲り受けたものである。」との公訴事実に対し、「被告人は、同日時ころ、右A子方の玄関先で同女から右大麻樹脂入りの封筒を中身を知らされないままズボンの前ポケットに差し入れられ、そのまま約三〇メートル離れたところに駐車していた自動車まで戻り、その運転席ではじめて封筒の中を見て、中身が大麻樹脂であることが分かったが、自己のものとする意思で、これを自宅に持ち帰ったという事実を認めながら、被告人は、右封筒を譲り受けた際には、その中身が大麻樹脂その他これに類する薬物であることを未必的にさえ認識していなかったのであるから、被告人には本件大麻譲受けの故意に欠ける」旨判示して無罪を言い渡したが、右の判断は、大麻取締法三条一項所定の譲受罪における譲受けは、譲受人が譲渡人から大麻を手交されたその一瞬をもって完了するとの限定解釈を前提にした独自の見解に基づくものであり、本件のように、被告人が当初大麻を手交されたその瞬間において大麻であることを認識しなくとも、その後短時間のうちに極めて近接した場所でそれが大麻であることを認識して自己のものとして領得した場合には、社会通念上その一連の行為を包括して大麻の譲受けと認定すべきであるのに、前記見解の下に無罪を言い渡した原判決は、大麻取締法の譲受罪における譲受けの解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したもので、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。
 所論にかんがみ記録を調査して検討するに、原審において取り調べた関係証拠を総合すれぱ、本件公訴事実記載の日時、場所において、被告人がA子から本件大麻樹脂を譲り受けた事実を優に認定することができ、被告人に譲受けの故意が欠けるとして無罪を言い渡した原判決は失当であり、当審における事実取調べの結果を参酌してもその結論は変わらない。
 記録によると、原判決は、その「判断」の1項において、所論指摘どおりの事実関係を証拠によって認めながら(右認定自体は正当である。)、被告人は、A子方の玄関先でその封筒を受け取った時点では中身が大麻であることの認識がなかったから、その封筒を譲り受けた際に大麻譲受けの故意を欠くものとして無罪を言い渡しているが、同「判断」の2、3項で説示するところによると、その根拠は、本件大麻の譲受けは、被告人に大麻であることの認識がなくとも、当初のA子方の玄関先において大麻入り封筒が授受された時点ですべて完了しており、その後被告人が自動車内で受け取った封筒を確かめ、中身が大麻であることを知って、これを自分のものとして領得した行為は、もはや譲受け行為には含まれない別個の所持の問題とみるべきであるとの見解に基づくものであることも明らかである。
 ところで、大麻取締法が犯罪として処罰の対象とする大麻の譲受けは、相手方からその物の法律上または事実上の処分権限を付与されて所持の移転を受けることをいうのであるから、客観的に相手方からその所持の移転を受けるばかりでなく、主観的に譲受人において授受の目的物が大麻であることを認識してこれを自己のものにすることが必要であることはいうまでもない。
 してみると、大麻の譲受けの成否は、単に外形的にその物が授受によって所持が移転した時点だけに限定して決められるべきものではなく、その後において譲受人の側で授受された物が大麻であることを知ってこれを領得したような場合も、それが全体として相手方の譲渡行為に対応してその処分権限の付与を受けたと認められるかどうかを判断しなければならないものである。
 この点原判決は、被告人がその中身を知らないで封筒を受け取った時点での行為でもってすでに本件大麻の譲受けは終わったものとし、被告人がその時点においては封筒の中身が大麻であると知らなかったから譲受けの故意に欠けるとして無罪であると結論するが、被告人が譲渡人の意向に対していつどこでどのような決断をしたかを確かめもしない段階ですでに譲受けが終わってしまっているとする解釈に賛同することはできない。(原判決の解釈によれば、被告人が玄関先で封筒を受け取った直後その数メートル先で中身を確かめて大麻が入っていることを知り、そのまま自己のものとして領得したような場合でも譲受罪にはならないことになるが、これが不合理な判断であることは論をまたない。)
 本件のように、封筒に入った大麻を黙って手渡された受取人において、その授受の時点ではいまた大麻を受け取ったことの認識はなくとも、その後渡された物が大麻であることを知り、その譲渡の意向に応じてあえてこれを自分の物にしたような場合、すなわち、時間的、場所的関係から当初の授受に当然随伴するとみなされるような所持(占有)が継続している間にその大麻の認識と領得行為があれば、これらを包括的に観察し、前後の行為を一体視して大麻を譲り受けたものと認めることは社会通念に照らしても相当と考える。
 本件についてみるのに、原判決が確定した事実関係に加え、証拠上認められる被告人とA子との親密な交際関係、A子の無償譲渡の意思、思惑や譲渡の方法、被告人が大麻と知ったときの理解の内容とその後の処置等を総合すると、被告人がA子から本件封筒を受け取った直後ころ、至近距離ともいえる場所に駐車中の自動車内で封筒の中身が大麻であることを知りながら、これを返却することなく自分の物とした一連の行為は、まさにA子の譲渡行為に対応する大麻の譲受け行為と認めるに足り、本件公訴事実に沿い後記(罪となるべき事実)記載のとおり、大麻譲受罪が成立するというべきである。
 これに反する見解のもとに本件について無罪を言い渡した原判決は、法令の解釈、適用を誤り、ひいては事実を誤認したものというべく、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、破棄を免れない。論旨は理由がある。
 よって、刑訴法三九七条一項、三八〇条、三八二条により原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条ただし書により、当裁判所において、更に次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
 被告人は、法定の除外事由がないのに、平成四年四月二九日ころの午後九時ころ、大阪市福島区《番地略》の当時のA子方玄関先で同女から大麻樹脂約一〇グラム入りの封筒を渡され、その直後同所付近に駐車中の自動車内においてその封筒の中身が大麻であることを知ったが、ただちにこれを自己の物として領得し、もってそのころ右大麻樹脂を無償で譲り受けたものである。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
 判示所為は、平成三年法律第九三号による改正前の大麻取締法二四条の二第一項一号、三条一項に該当するので、その刑期範囲内で被告人を懲役一年に処するが、被告人には前科前歴はないこと、本件犯行の経緯、態様はそれほどに悪質ではないこと、反省の情も認められることなどに徴し、刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
 よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 重富純和 裁判官 濱田武律 出田孝一)

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