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大麻東京

東京地方裁判所立川支部判決/平成22年(わ)第686号

主文

 被告人は無罪。

理由

1 公訴事実の要旨
 被告人は,営利の目的でみだりに,平成21年11月下旬ころ,東京都新宿区(以下略)A方において,同人に対し,大麻を含有する乾燥植物細片約50グラムを代金10万円で譲り渡した。
2 審理経過
 検察官は,本件立証として,Aの証人尋問を請求し,実施した。
 Aは,本件大麻は,被告人ではなく,名前は知らないが実在する日本人から,平成21年9月終わりころか10月に譲り受けたと述べた。
 そこで,検察官は,相反供述であるとして,Aの平成22年5月17日付け検察官に対する供述調書(甲14,以下,単に「検察官調書」という。)を刑訴法321条1項2号後段により証拠請求した。
 当裁判所は,検察官調書は,特に信用すべき状況を認めるに足りないとして,これを却下した。以下,その理由を述べる。
3 Aの公判供述
 被告人とは平成21年9月ころに電話番号を交換して知り合いとなり,被告人は自分のことを「お父さん」と呼んでいた。自分の名前を「A」と教えた。被告人は,4,5回自宅に来て,大麻を買って吸引した。被告人をBと呼び,本名は知らない。
 捜査段階で,被告人から同年11月下旬ころ本件大麻を買ったと詳しく述べた。それは,名前を知らない人物から譲り受けたと言っても信憑性が低く,信じてもらえないので,誰か警察に捕まらない人物の名前を出せばよいと考えたからである。逮捕翌日(平成21年12月15日)に,被告人の名前「B」を出した。被告人は,外国人で住所も職業もよく知らないし,被告人のいる歌舞伎町にはもう一人Bと呼ばれる人物もいたので,被告人が警察に捕まることはないだろうと思った。同年11月19日から23日にかけての通話記録(甲19)は,捜査官が調べて,買った時期の電話ではないかと聞かれたと思う。事実は違うが,大麻の取引に関する通話かもしれないと述べた。その後もBの名前をいったん出したからには,訂正することもできず,同様の供述を続けた。
 検察官調書は,自分の判決が出て,控訴した後,拘置所にいるときに検察官が来て作成した。これまでと同じ供述をした。検察官は,帰りしなに,被告人の裁判に出て貰うかもしれないと言った。被告人が逮捕されたことは,警察官から既に聞いて知っていたが,1対1のことだから,まさか自分の供述だけで被告人が起訴されるとは思わなかった。
 今回証人となるに当たって,初めて検察官に本当のことを言った。
 被告人には申し訳ない。
4 経緯
 本件証拠によれば,以下の経緯が認められる。
(1) Aは,逮捕翌日,警察官に対し,平成21年11月20日ころ,大麻50グラムをBから10万円で仕入れたと述べ,以後,平成22年5月17日に至るまで,警察官,検察官いずれに対しても,被告人の顔写真,電話番号を始めとして詳しく供述し,特に取引状況等については,交信した通話を特定して具体的に供述している。
(2) Aには,薬物犯罪の服役前科が多数あり,本件大麻及び覚せい剤の営利目的所持で逮捕勾留された後,同年1月4日に起訴され,追起訴,訴因変更等を経て,同年4月27日,懲役5年及び罰金50万円の有罪判決を受けた。これに対しAは控訴したが,同年6月16日に控訴を取り下げて服役した。
(3) 被告人は,本件公訴事実で同年5月6日に逮捕され,同月27日に起訴された。被告人は,捜査段階において,「Aという名前を知りません。」と述べ,公判の罪状認否では,「誰に対しても大麻を売った事実はない,以前にAから大麻をもらったことはあるが,売ったことはない。」旨述べて争っている。
5 検察官調書却下の理由
 まず,Aの公判供述に当たり,被告人との身分等特別な関係,被告人側の買収,誘惑,威迫等の圧力により,Aが意識的に被告人に対する不利益な供述を回避するに至ったとか,Aが被告人と口裏を合わせるに至ったなどの事情は,本件からは全くうかがわれない。
 検察官は,Aが被告人からの報復等に不安を感じるとともに,周辺者から密告者扱いされるなど出所後の不利益を考慮して,真実を証言していないと主張する。Aも,今回拘束中に,自分が密告したと誤解した人から文句を言われたなどと述べる。しかし,そのような事情は,捜査段階から既に存在したことであって,公判段階に至って,やおら生じた事情ともいえない。
 Aは,自身の公判において,「薬物の入手先は分かる範囲ですべて話した,薬物関係者と今後付き合いができなくなるようにしようと思ったからである。」などと述べている。しかし,それが真実であれば,その後供述を変える必要もない。
 そもそも,Aは,被告人の名前を出した理由について,名前の分からない人物から買ったと言っても,捜査官から信用してもらえないので,捜査官の追及をかわすために,簡単には逮捕されそうもない,外国人である被告人の名前を出したというのである。この供述態度は,はなはだ安易で,無責任であり,傲慢ともいえる。しかし,前記のとおり,薬物犯での服役前科が多数あるAの思考方法として,これはむしろあり得ることであって,虚偽として簡単に排斥することができない。
 Aには,自己の裁判において,何としても重い刑を免れようとして,深い反省悔悟を装った可能性が十分にある。そうすると,Aが,単に心境の変化により公判で供述を変えたともいえないことになる。
 検察官調書の特信性は,供述した際の外部的な付随事情を基準として,供述内容をも加味して判断しなければならない。本件において,内容についての検討は前記のとおりであるものの,その外部的な付随事情たり得るものは,Aが,捜査段階において,同一の具体的な供述を継続したということ以外には存在しない。しかし,A自身が,公判で,前記のとおり,虚偽供述をした動機として,排斥しがたい理由を述べている以上,本件において,その一貫した供述態度をもって,検察官調書の信用性の情況的保障があるということはできない。
5 結論
 以上の次第で,検察官調書の証拠請求を却下したので,本件公訴事実は,これを認めるに足りる証拠がない。よって,刑訴法336条により,被告人に対し無罪の言渡しをする。
 よって,主文のとおり判決する。
平成22年10月27日
東京地方裁判所立川支部刑事第3部
裁判官 池本壽美子

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