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痴漢福岡

福岡高等裁判所判決/平成22年(う)第264号

主文

1審判決を破棄する。
被告人を罰金30万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
1審及び控訴審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

第1 検察官の控訴理由(事実誤認)
 1審判決は,3件の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反の罪からなる本件各公訴事実につき,被害者らの1審公判供述は全面的に信用することができず,被告人の各実行行為を認定するに足りる証拠がないから,本件各公訴事実についていずれも犯罪の証明がないとして無罪を言い渡したが,被害者らの1審公判供述は信用性十分であるのに対して,被告人の供述は全く信用できず,被告人に本件各条例違反の罪が成立することは明らかであるから,1審判決には明らかな事実誤認があり,その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかである。
第2 弁護人の答弁
 1審判決の各被害者及び被告人の供述の信用性判断は妥当であり,検察官の控訴趣意には理由がない。
第3 当裁判所の判断
 1審記録及び証拠物を調査し,控訴審における事実取調べの結果をも併せて検討した結果,当裁判所は,1審判決が,被害者らの1審公判供述の信用性をいずれも否定し,本件各公訴事実について被告人を無罪とした点は是認できず,1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があり,破棄を免れないと判断した。以下,理由を説明する。
1 本件事案及び1審判決の概要
(1) 本件公訴事実及び争点
 本件公訴事実(訴因変更後のもの)は,次のとおりである。
「被告人は,正当な理由がないのに
第1 平成19年7月14日午前1時16分ころ,福岡市(以下略)の△△店において,A(当時19年。以下「被害者A」という)とすれ違う際に,同人に対し,その臀部を着衣の上から手で触り
第2 同日午前1時22分ころ,上記△△店において,B(当時20年。以下「被害者B」という)とすれ違う際に,同人に対し,その臀部を着衣の上から手で触り
第3 同日午前1時17分ころ,上記△△店において,C(当時20年。以下「被害者C」という)とすれ違う際に,同人に対し,その臀部を着衣の上から手で触り,さらに,同日午前1時21分ころ,同所において,同人とすれ違う際に,同人に対し,その陰部付近を着衣の上から指で触り
もって公共の場所において,人を著しくしゅう恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような方法で他人の身体に衣服の上から触れる行為をしたものである。」
 本件は期日間整理手続に付され,争点は,①被告人による実行行為(痴漢行為)の有無,②被告人と各被害者が接触したか否か及び故意の有無,③各被害者の供述の信用性であると整理された。
(2) 1審判決の概要
 1審判決は,「本件の成否は,被害者らが被告人から公訴事実記載の痴漢の被害にあったという公判供述の信用性にかかっている」と指摘した上,次のように説示して,各被害者の1審公判供述の信用性をいずれも否定した。
ア 被害者Aの1審公判供述
(ア) 被害者Aは,痴漢被害に遭う前,気持ちの悪い被告人とすれ違い,被告人に悪感情を抱いていたことが端緒となって,被告人を痴漢の犯人と断定していることなどからすれば,すれ違いの有無・回数・場所に関する事実は本件における重要な構成要素であり,この点の事実の把握が正確であったか,その記憶が明確であったかは,被害者Aの公判供述の信用性を左右することになるとした上,この点に関する被害者Aの供述は,捜査段階から変遷がみられ,変遷の理由も判然としないこと,防犯カメラの映像とも符合しないことなどからすると,すれ違いの有無・回数・場所に関する被害者Aの事実の把握は不正確で,かつ,その記憶も不明確であったといえる。
(イ) 被害者Aは,捜査段階から一貫して,右手の平で臀部の右側部分を下から上に撫でるように触られた旨を,犯人の手が動く様子も交えつつ具体的に供述するが,被害者Aは,比較的外からの刺激に鈍感な臀部を,着衣の上から,わずか1秒にも満たない短時間,1回だけ触られたのであるから,手の平で触られたと断定するのは即断に過ぎ,例えば,手の甲,ショルダーバッグなど手の平以外の物が接触した可能性を払拭できないし,触られ方も,捜査段階で指示した仕草とは符合しないから,被害者Aの痴漢被害に関する状況説明の信用性には疑問がある。
(ウ) 被害者Aは,痴漢被害直後に振り向き,被告人を視認して,被告人が痴漢犯人であると認めた旨を供述するが,これは事実に反しており,そもそも被告人を痴漢犯人と断定した理由には疑問がある。
(エ) 被告人を犯人であると特定した経過に関する被害者Aの1審公判供述は,捜査段階の供述から変遷しているが,供述変遷のきっかけは,防犯カメラの映像を見たことによるものであるから,被害者Aの1審公判供述の信用性は減殺されている。
イ 被害者Bの1審公判供述
(ア) 被害者Bは,捜査段階の供述等からすると,痴漢被害に関する記憶が不確かで,かつ,不確かな記憶であったがゆえに捜査機関に情報を正確に伝えることができなかったことが窺える。
(イ) 被害者Bは,捜査段階では,店に入って直ぐに被告人とすれ違い,悪印象を持った旨を述べているので,被害者Bが初めて被告人を見た時点を特定することは,その1審公判供述の信用性を判断する上で重要であるが,被害者Bの公判供述は防犯カメラの映像と整合せず,被告人を初めて見た時の被害者Bの記憶が不確かだったことは明白で,1審公判供述は信用性に欠ける。
(ウ) 被害者Bは,お尻に沿って上から下になでられるように触られたことやぬくもりを感じたことなどから,痴漢被害に遭ったというのであるが,極めて短時間触られただけなのに,衣服を通して手のぬくもりを感じることは,手を上下に素早く動かした旨の供述とも相俟って,科学的には考えられず,一般観念からも極めて不自然であるし,触られた状況についての供述も捜査段階から変遷している。なお,被告人が,買い物カゴを左手に持っていた被害者Bの臀部左側を上から下に撫でるように触るとすれば,被告人は,一度,身体全体を沈めなければ不可能であろうと思われるところ,防犯カメラによれば,被告人の身体の沈み込みを認職(ママ)することはできない。
(エ) 被害者Bは,被告人とぶつかったこともあると述べているのであるが,事件直後から,ぶつかった場所や痴漢被害との前後関係を覚えていないというのは極めて不合理で,不自然である。
ウ 被害者Cの1審公判供述
(ア) 被害者Cは,被告人から陰部と臀部を触られる痴漢被害に遭ったと述べているが,その前後関係や場所についての記憶があいまいであったのに,防犯カメラの映像を見た後,これと整合させるために供述を変遷させている。
(イ) 陰部を触られる痴漢被害に遭った状況に関する被害者Cの供述は,捜査段階の明確なものからあいまいなものへと変遷するに至っているのみならず,近づいてきた時の様子を詳細に記憶しているのに,どのようにすれ違ったのか,どちらの手で触られたのかといった点については忽然と記憶があいまいになっている点で極めて不合理・不自然である。
(ウ) 被害者Cは,陰部の触り方について,当初は,漠然とした供述しかしていなかったのに,1審公判供述では,微に入り細を穿った詳細なものに変遷しており,恣意性がみられる。
(エ) 被害者Cは,陰部を触られたのを「見た」と明確に供述しているから,被害者Cが触られ方も含めて,はっきりと視認したのかが重要となるところ,防犯カメラの映像によると,被害者Cは,接触するまで被告人の動向をつぶさに観察しているわけではない。
 その結果,1審判決は,「弾劾証拠として取り調べた被害者らの捜査段階での各供述や防犯カメラの映像と,被害者らの公判供述とを対比してみると,被害状況が防犯カメラの映像とは明らかに異なる点や,多くの矛盾点があり,供述の不合理・不自然な変遷や,記憶の不確かさに起因する供述のあいまいさ・食い違いがあることは明らかであり,当該供述を全面的に信用することができ」ない,と結論し,「結局,被告人の各実行行為を認定するに足りる証拠がない」と判断した。
2 当裁判所の判断
 被告人は,本件当時店内にいたことは認めつつ,本件各犯行を一貫して否認しているので,本件の判断の分岐点は,1審判決が指摘するとおり,被害者らの1審公判供述の信用性であるが,1審判決が,被害者らの1審公判供述の信用性をいずれも否定した点は是認することができない。以下,説明する。
(1) 本件の争点と証拠構造,防犯カメラの映像について
 被害者らは,いずれも被告人から痴漢被害に遭ったと述べており,これらが本件における最も重視すべき直接証拠ということになるが,被害者Cを除いて,痴漢被害を自ら直接見たわけではなく,触られたと感じたというものであり,また,まさに痴漢被害に遭った際に触っている手を掴んで犯人を特定したといった事案でもなく,被害の後に店内の被告人を犯人であるとして捕捉したというのであるから,被害者ら3名の1審公判供述のうち,被害状況及び犯人特定経緯に関する供述の信用性については,慎重に吟味する必要がある。
 また,本件各犯行が行われたとされる△△店(以下「店」という)には,11台の防犯カメラが設置され,店内の様子を1秒ごとに撮影した静止画像が,デジタルデータとして記録されている(1審甲25。以下「防犯カメラの映像」といい,各カメラに番号1ないし11を付し,「防犯カメラ1の映像」などともいう。各カメラの配置及び通路の呼称については,捜査報告書(1審甲24)添付の店内見取図に従う)。しかし,弁護人も指摘するとおり,これら防犯カメラの映像は解像度がかなり低く,撮影された人物については,その位置,進行方向などの大まかな情報を確認することはできるけれども,表情や細かな仕草までは確認することがかなり難しく,まして,その人物の視線の向く先などを確認することはできず,また,動画ではないために,各静止画像の間に生起した出来事についても,これを確認することができない。本件についても,これらの防犯カメラが,痴漢被害に遭遇したとされる瞬間の各被害者及び被告人の様子を明瞭に撮影した映像は存しないから,各防犯カメラの映像は,本件における最も客観的な証拠ではあるが,本件の直接証拠にはなり得ず,それらによって認定し,又は推認することのできる事実は,かなり限定された事実関係に止まるといわざるを得ない。
 なお,この点につき,弁護人は,1審において,検察官が,防犯カメラの映像を過度に重視し,防犯カメラの映像に合わせて訴因変更をしている上,被害者らの1審公判供述は,各防犯カメラの映像を詳細に分析した検察官により,それらの映像との矛盾がないよう入念に準備されたものに過ぎない,被害者らの1審公判供述は被害直後の捜査官に対する供述と様々な点で矛盾し,より詳細に変遷しているが,その理由は,検察官が防犯カメラの映像に沿うものになるよう被害者らを誘導したとしか考えられない,それゆえ,そのような供述変遷はいわゆる「記憶喚起」とは全く異なるなどと主張し,1審判決も,被害者らが,防犯カメラの映像に合わせて供述を変遷させたことを,被害者らの1審公判供述の信用性が乏しい理由の一つの柱と位置付けているようである(上記被害者Aの(エ),被害者Bの(イ),被害者Cの(ア)など)。
 確かに,本件防犯カメラの映像の証明力を過大にみることはできないが,一方で,防犯カメラの映像は,本件における最も客観的な証拠ではあるから,これと整合するよう訴因を構成することには何の問題もない。また,1審判決も指摘するとおり,被害者らの1審公判供述には,防犯カメラの映像とは整合しないように思われる部分も含まれており(例えば,被害者Aが痴漢被害に遭う前に被告人とすれ違ったとする状況など),被害者らが,防犯カメラの映像に沿うように検察官によって誘導された結果,その供述を変遷させたということはできないから,弁護人の主張や1審判決は,その前提を誤っているというべきである。被害者らは,基本的には,捜査段階から1審公判に至るまで,自らの記憶しているとおりに供述しているものの,防犯カメラの映像を見たことにより記憶が喚起されるなどして供述を変えた部分があるとみるのが妥当である。その結果,防犯カメラの映像に沿う供述になるのはむしろ当然であるから,そのことが供述の信用性を否定する根拠になるとはいえない。
(2) 1審判決の判断について
 1審判決は,被害者らの1審公判供述につき,上記1(2)アないしウの諸点を指摘し,その信用性に疑問があるというが,いずれも是認できない。
ア 被害者Aの1審公判供述について
 上記1(2)ア(ア)については,友人とスーパーで買い物をするという一般的,日常的な出来事については,その間に起こった痴漢被害など特に印象深い出来事のほかには明確な記憶が残るとは考えにくい上,被害者Aの1審公判供述によると,同人が被告人を痴漢犯人であると特定したのは,被害直後に振り返って被告人を確認したからにほかならないのであるから,痴漢被害に遭う前の被害者Aと被告人のすれ違いの有無・回数・場所に関する事実が,本件における重要な構成要素であるとする1審判決は,事実の重要性の評価を誤っているといわざるを得ず,それらの事実の把握の正確さ,記憶の明確さが,被害者Aの1審公判供述全体の信用性まで左右するというのも,その評価の誤りに起因する特異な見解であって妥当ではない。また,確かに,被害者Aは捜査段階から供述を変遷させているが,その理由は,上記のとおり,一般的には明確な記憶がなくても不思議ではない出来事について,当初防犯カメラの映像を見ないまま供述していたところ,後にその映像を見ることによって明確ではなかった記憶が喚起された結果とみられるのであるから,その変遷には合理的な理由があるというべきであって,これが被害者Aの1審公判供述の信用性を損なうものとはいえない。
 上記1(2)ア(イ)については,確かに,臀部は比較的外からの刺激に鈍感であるとされ,被害者Aは,臀部を,着衣の上から,極短時間,1回だけ触られたものではあるが,被害者Aは,臀部を「下から上に撫でるように触られた」と述べているのであり,一般的にいうと,臀部の形状に沿って,下から上に向かい,おおむね一定の圧力を加えつつ移動していく様子を述べたものと理解するのが合理的であって,例えば,かばんや手の甲など想定可能な手の平以外の物が,すれ違う際に偶々接触したような場合には,そのような動きを感じることは常識的に考えてあり得ないから,これらの物が接触したという可能性は十分に払拭できると思われる。また,被害者Aの述べる触られた際の犯人の手が動く様子は,直接目撃したものではなく,被害者Aの推測を述べたものであるから,この点に関する被害者Aの供述等が,捜査段階と公判段階とで完全に一致していないからといって,それが被害者Aの1審公判供述全体の信用性に疑問が生じるなどとはいえない。
 上記1(2)ア(ウ)については,後述するとおり,被害者Aは,痴漢被害に遭ったと思った直後に,犯人を確認するために後ろを振り向いていると認められ,その際,被告人を視認することも不可能ではなかったとみられるのであるから,被告人を犯人だと断定した被害者Aの1審公判供述が事実に反するという1審判決の説示は誤りである(1審判決は,防犯カメラの映像を基礎にしつつ,「被害者Aは,(緑のTシャツに白色スカートを着た)女性と,57秒に,向かって左越しにすれ違い,59秒に被害者Aはこの女性を振り向いて見ている状態で被告人とは背を向けた格好ですれ違っている。16分00秒には被害者Aはこの女性や被告人には目を向けておらず,01秒から08秒までの間も後ろを振り返ることはなく,09秒に被害者Cと2人で後ろを見ているようであるが,仮に後ろを振り返って見たとしても,その場所からは丁度死角になって被告人を見るのは不可能である」などと説示しており,「59秒にこの女性を振り向いて見ている」,「16分00秒にこの女性や被告人には目を向けておらず」といった説示からは,この防犯カメラの映像により,被害者Aの視線の向く先まで認定することができることを前提にしているようである。しかし,既に述べたとおり,これらの防犯カメラの映像から,撮影された人物の視線の向く先などを確認することはできない。1審判決は,客観的証拠の解釈に当たり,都合のよい憶測を交えているようにも思われ,それが誤りの一因になっているとみられる)。
 上記1(2)ア(エ)については,防犯カメラの映像を見て供述を変遷させていることが,供述の信用性を減殺する理由にならないことは,既に述べたとおりである。
イ 被害者Bの1審公判供述について
 上記1(2)イ(ア),(イ),(エ)については,既に説明したとおり,スーパーで買い物をするという一般的,日常的な出来事については,その間に起こった痴漢被害の状況など特に印象深い出来事のほかには,明確な記憶が残るとは考えにくいのであるから,被害者Bが初めて被告人を見た時点を特定することなどが,被害者Bの1審公判供述の信用性を判断する上で重要であるなどとみる1審判決は,被害者Aの1審公判供述について説明したのと同様,供述の信用性を判断する上で重視すべき事実を見誤っている。そして,上記の点や,被告人とぶつかった場所,痴漢被害とぶつかったこととの前後関係など,一般的にいえば,明確な記憶がなくても不思議ではない出来事に関する被害者Bの記憶が不確かであったことを理由に,被害者Bの1審公判供述の信用性が損なわれているとする点もはなはだ不適切である。
 上記1(2)イ(ウ)については,被害者Bの1審公判供述によると,被害者Bが手で触られたと感じたのは,お尻を上から下に撫でるように触られたことや触った物が柔らかい面状のものであったと感じられたこと,引き続き指で持ち上げられたように感じたことを総合判断した結果というべきであり,手のぬくもりが感じられたことはいわば付加的な理由に過ぎず,これを過大に評価している点でも,1審判決は供述の信用性を判断する上で重視すべき事実を見誤っている(なお,短時間の接触で手のぬくもりを感じることはできないともいうが,実際の接触時間や当時の被告人の体温など,前提となるべき事実の中に明らかにはなっていないものが多く,不確実な推論しかできないはずであるから,「手のぬくもりを感じることはできない」と断定することもできないはずである)。また,被害者Bの述べる触られ方は,同人が直接目撃したものではなく推測を述べたものであるから,この点に関する供述に多少の変遷があっても,被害者Bの1審公判供述全体の信用性に疑問を生じさせるような事情とはいえないことについても,既に述べたとおりである。
 なお,「被告人が,被害者Bの臀部左側を上から下に撫でるように触るとすれば,一度,身体全体を沈めなければ不可能であろうと思われる」というのは,証拠に基づかない推測というほかはなく,被告人の身体の沈み込みが確認できなくても,被害者Bの供述の信用性には影響しない。
ウ 被害者Cの1審公判供述について
 上記1(2)ウ(ア)については,防犯カメラの映像を見て供述が変わることが,被害者Cの供述の信用性を否定する理由にならないことは,既に繰り返し述べたとおりである。
 上記1(2)ウ(イ),(ウ)については,被害者Cの1審公判供述を含む一連の供述をみると,犯人が人差し指で被害者Cの陰部を触ったことは,被害者Cにとってひときわ印象深い出来事としてかなり明確に記憶されていることが明らかであり,そのような場合には,それ以外の事実関係についての明確な記憶が残らないことも十分に考えられるのであるから,どのようにすれ違ったのか,どちらの手で触られたのかといった点についての記憶があいまいであることが「極めて不合理・不自然である」とまではいえず,また,公判において,陰部を触った犯人の手の様子を,聞かれるままに記憶している限り詳細に述べたからといってこれも何の不思議もないのであって,そこに「恣意性」などない。
 上記1(2)ウ(エ)については,既に述べたとおり,この防犯カメラの映像から,撮影された人物の視線の向く先などを確認することはできないのであるから,被害者Cが「被告人を注視している気配はない」,「被告人の動向をつぶさに観察していたわけではない」とも認めることはできない。1審判決は,前提事実を見誤っている(ここでも1審判決は,防犯カメラの映像を都合のよいように解釈している)。
エ 以上のとおり,被害者らの1審公判供述が信用できない理由として1審判決が説示するところは,いずれもその信用性に疑問を生じさせるものとはいい難いものばかりである。
 また,被害者らの供述の信用性を判断するに当たっては,痴漢被害に遭ったという被害者らが,それを裏付けるような何らかの行動に出ているかどうかといった点についても検討すべきであると思われるのに,1審判決は,そのような行動等について全く考慮していない点も不適切である。
(3) 被害者らの供述の信用性について
 被害者らは,もともと被告人と面識や利害関係はないから,証人として偽証をすると厳しく処罰されることを理解しながら,架空の事実を捏造してまで被告人を罪に陥れなければならない動機などはなく,基本的には,記憶しているところにしたがって供述しているとは思われる。しかし,本件の核心とはいえず記憶の残りにくい部分についてではあるが,「店内で,被告人とすれ違った際,何度もじろじろ見られているような感じを受け,気持ち悪いと思った,触られる前に2回くらい擦れ違った」(被害者Aの1審公判供述5ないし7,14ないし17項)などと,防犯ビデオの映像によって裏付けることができない状況を供述するなど,痴漢犯人と考えている被告人に対して厳罰を望む余り,若しくは勘違いや思い込み,あるいは弁護人が1審以来指摘しているとおり,何らかの心理学的影響(痴漢スキーマ,社会的影響,フィードバック)を受けている可能性などから,被害者らが自覚しないまま記憶が変容してしまっている可能性を完全に否定することができないのであるから,その信用性については慎重な検討を要する。
 この点,これらの信用性を判断するには,痴漢被害の核心部分に関する供述,すなわち,触られたときの具体的状況の説明に合理性が認められるかどうかという点のみならず,被害後の状況,すなわち,痴漢被害に遭った被害者らが,それを裏付けるような何らかの行動に出ているかどうかといった点についても検討を加える必要がある。そして,被害者らの1審公判供述に,客観的な裏付けと評価できるものが存在する場合に限って,その信用性があるとの判断をすることができると考えるべきである。
ア 被害者Aについて
 被害者Aは,痴漢犯人が自分の右側を擦れ違ったとき,右のお尻を下から上に撫でるような感じで触られた,傘など硬い物とかが当たった感触ではなく,手の平か何か柔らかい物で触られた感触だった,撫でるように触られたので,偶然手が当たった可能性はないと思う,触られた直後に後ろを振り向き,痴漢犯人を確認したところ,お尻を触ることのできる場所には,被告人しかいなかった,その後,一緒にいた被害者Cに,「さっきスーツの男からお尻を触られたかも」などと伝えた,旨を供述している。
 被害者Aが痴漢被害に遭った際の状況は非常に具体的であるところ,当時,被告人がたすき掛けにしていたかばんが被告人の右腰付近にあったのであるから,これが偶々当たった可能性も一応考えられるとはいえ,被害者Aは,お尻を下から上になでられたと述べているのであるから,そもそも擦れ違いざまに偶々かばんなどが当たったのを勘違いした結果であるとは考えにくい上,既に説明したとおり,撫でるように触られたことから,触った物は手の平以外に考えられない旨の説明も非常に合理的である。なお,痴漢被害の核心部分に関する供述は,捜査段階からおおむね一貫していると評価できる。
 そして,痴漢被害とされる場面の防犯カメラの映像は存在しないが,防犯カメラ11の映像によると,痴漢被害に遭ったとされる場面の後,被告人が被害者Aの後ろから現れていること,また,同じ場面で,被害者Aは,顔を進行方向の反対方向に向け,体を進行方向の左側に向けていることが確認できるほか(1:15:59),その後,被害者Cに何事か話している様子もうかがえる(1:16:05以下)。これらの映像によると,被告人は,少なくとも痴漢行為を行うことのできる場所にいたことは間違いがないと認められ,被害者Aが,左から大きく振り返っているのも,他に振り返る切っ掛けとなるような事情を確認することはできないから,痴漢被害に遭ったと思ったことを契機としているとしか考えられない(なお,右側のお尻を触られたのであれば,右から振り返るはずであるなどとはいえない)。また,防犯カメラの映像からはその視線を確認することはできないとはいえ,進行方向とは正反対の方向まで顔を向けていることは確認できるのであるから,経験則に照らしてみても,被告人を視界の左端で視認することは十分可能であると思われる。痴漢被害に遭い,その直後犯人を確認するために後ろを振り返り,被告人を確認したという被害者Aの供述は,これらの映像によって客観的に裏付けられているといえる。
 また,被害者Cは,後述するとおり,自らも痴漢被害に遭い,その後被告人を捕まえるのであるが,被告人を捜し始めるに当たり,被害者Aと話をしている。被害者Cは,その話の内容につき,被害者Cに対して痴漢行為を行った犯人と,被害者Aに対して痴漢行為を行った犯人が同一人物であることを確認したと述べているところ,この事実からは,それ以前に被害者Aが被害者Cに対して,痴漢犯人の特徴や身形(服装)などについて話をしていたことがうかがえるのであり,被害者Aの供述は,これによっても裏付けられているということができる。
イ 被害者Bについて
 被害者Bは,BからFの間の通路のどこかで,立ち止まって,携帯電話をいじりながら陳列棚を見たりしていたところ,何かへらへらしていて,足元がおぼつかないような感じの被告人がJ通路の方から入ってきて,自分の左側をすれ違ったとき,お尻の左側を,お尻に沿って上から下に撫でるように触って,人差し指の親指側のところできゅっと持ち上げられたと感じた,上から下になでられたときはお尻に面(手の平)の感触があったが,下から上に持ち上げられたときは手の平よりはちょっと固いもの(指)の感触があった,そんなに固い物ではなく,横に広い面で撫でるように触られたので,間違いなく手で触られたと感じた,触られた直後に犯人を見たら,周囲に被告人以外の人はいなかった,B通路からF通路の間のどこかで,被告人とぶつかったこともある,買い物かごを持っていた体の左側に衝撃があった,痴漢被害を受けたことを彼氏に電話で伝え,店員に被害申告する前に,今,痴漢っぽいのに遭ったんだけどみたいなメールもしたところ,彼氏からも電話があり,すぐに店に来た,ただし,このことは聞かれなかったので警察官や検察官には話していない,被告人が店員に追いかけられ,取り押さえられるのを見ていたところ,店員がほかに被害者いませんかといった声をかけてくれたので,私もされたと言った,というものである。
 被害者Bが痴漢被害に遭った際の状況は,犯人の手の動き方を含め非常に具体的であり,被害者Aと同様,上から下になでられたのであるから,擦れ違い様に偶々別の物が当たったとは考えにくい上,触られたのが人の手の平にほかならないと判断した理由,犯人が被告人であると判断した理由も,合理的である。また,痴漢被害の核心部分に関する供述は,捜査段階からおおむね一貫していると評価できる。
 他方,痴漢被害とされる場面の防犯カメラの映像は存在しているものの,明瞭に確認できるものではない(防犯カメラ3の1:22:07以下)。しかし,同じ防犯カメラ3の映像によると,被害者Bが,痴漢被害に遭ったとされる場面の後に,しばらくの間携帯電話を操作している様子が確認できるほか(確実なのは1:25:27以下であるが,その前から何らかの操作をしている様子がうかがえる),被告人が店員に追いかけられる様子を目撃し(1:25:00ないし23),その後,店員と何事か話し,店員に促されてついて行く様子も確認できるから(1:25:47以下),被害者Bの供述はこれによって客観的に裏付けられているといえる(なお,被害者Bが,痴漢被害直後に送信したメールの内容等が証拠化されていれば,それは,被害者Bの1審公判供述のより一層確実な裏付けになったと思われる。捜査機関としては,被告人が否認している本件においては,いずれ裁判において,被害者供述の信用性が争点になると予測できるのであるから,その信用性を支える証拠としてどのようなものが考えられるのか,その証拠はどれほどの価値を有しているのかといった点も踏まえつつ,適切に捜査を遂行すべきである)。
ウ 被害者Cについて
 被害者Cは,DかEの通路で,にたにたした感じの被告人が,レジ側からふらふらした感じで歩いてきた,その際,被告人は,どちらの手かはっきりと覚えていないが,人差し指を出した感じ(動作により,人差し指と親指を少し軽く伸ばし,それ以外の指を握ったような状態,かつ,手の平が上を向いたような状態を示した)で近付いてきた,避けたけれども,擦れ違うと同時に倒れかかってきて,その出していた指で陰部をわざと触ったのを見た(動作により,伸ばした右手の人差し指で右から左に線を引くように動かし,最後に人差し指を跳ね上げる様子を示した),被告人は触った後,にこっと笑ったし,指が偶然に当たるところではないので,わざとだと思った,被告人は,その後レジとは逆の方向にそのまま歩いていくのを少し見ていた,その後,後輩に「さっきちんこ(陰部)とお尻触られた,もう捕まえる」旨言って犯人を捜した,また,陰部を触られる前に,アイス売り場の辺りで,擦れ違い様に,右か左かは覚えていないがお尻の上ら辺を,人間の指でなぞるような感じで触られたと思うが,その瞬間は,ちょっと勘違いかなという気もあり,確信は持てなかったし,陰部を触られたことに比べて印象は薄く,詳しく覚えていない,触られたのは,傘,ペットボトル,かばんなどの物の硬さではなく,どちらかというと人間の指のような硬さのものだったので,物が当たったということはない,触られた後,後ろを向いて確認したところ,犯人は被告人だと思われた,なお,BかCの通路の辺りで,被害者Aから,スーツを着た,気持ち悪い人から肉売場のところでお尻を触られたと聞いていたので,陰部を触られた後,被害者Aにも痴漢犯人が同じ人物であることを確認して,捕まえることにした,当初,陰部とお尻を触られた順序を逆に話していたのは,興奮して記憶がごちゃごちゃしていたからだと思う,などと供述している。
 被害者Cは,2度の痴漢被害に遭ったと述べており,いずれも痴漢被害とされる場面の防犯カメラの映像も存在している(臀部については防犯カメラ1の1:17:39前後。なお,防犯カメラ2に,同じ場面を別の角度から撮影した映像がある。陰部については防犯カメラ3の1:21:13前後)ので,それぞれ検討する。
(ア) まず,臀部を触られたという部分については,「なぞるような感じ」で触られたとはいうものの,被害者Aや被害者Bが,一定の大きさの面(手の平)で触られ,それがお尻の形状に沿っておおむね一定の圧力を加えつつ移動した(撫でられた)と述べていることと比べると,やや抽象的であるといわざるを得ず,触られたのがお尻の右か左かも覚えておらず,触られた瞬間は確信が持てなかったというのであるから,具体性にもやや欠ける面があるのは否定できない。また,臀部を「なぞった」のが人の指であると感じた根拠も,どちらかというと人間の指のような硬さのものだったという程度であり,被害者Cの主観的,感覚的なものである。
 そして,防犯カメラ1の映像によると,被害者Cは,痴漢被害に遭ったとされる場面の直後に,右方に顔を向けているようにみえるが(1:17:40),体は右方を向いているとまではいえないから,この映像から,被害者Cが,右から後ろを振り向いたと認めることは難しい。また,防犯カメラ2の映像によると,被害者Cが痴漢被害に遭ったとされる直後の被害者Cと被告人を確認できるが,1審弁護人が主張するように,その際の両名の間隔はやや広いようにもみえる(1:17:39)。そうすると,被告人が右手を伸ばして被害者Cの臀部に触ることも不可能ではないと思われるが,その場合は,被害者Cの直後を追従していた被害者Aや,被告人の直後を追従していた別の男性客からその状況が見えたとも思われ,被害者Aや男性客が特段の反応を示していないのはいささか不自然であると思われる。そうすると,臀部を触られたという被害者Cの供述は,一定の信用性を備えているとはいえるものの,防犯カメラの映像という客観的な証拠による裏付けがあるとまではいい難い。
(イ) 他方,陰部を触られたという部分については,極めて詳細で具体性もあるといえ,陰部を触ったのが被告人の人差し指であることは,直接見ていたというのであるから確実ということができる。
 加えて,防犯カメラ3の映像によると,被害者Cは,痴漢被害に遭ったとされる場面の後,しばらくその場から動かず(1:21:22まで足の動きは確認できない。なお,その間,顔が被告人の方を向いているかどうかは確認できない),同じ通路に姿を見せた被害者Aと少し話しをし(1:21:26ないし52),被害者Aと別れて店内で何かを探すような様子を確認でき(1:21:55以下),防犯カメラ10の映像によると,被害者Aと一緒にいた被害者Cが,被害者Aから離れる様子(1:23:54以下)や,その直後に被告人を捕まえる様子等を確認できる(1:24:08以下。防犯カメラ11の1:24:06以下でもその様子はうかがえる)。被害者Cは,陰部を触られる被害に遭ったとされる場面の後,被害者Aとも話しをした上,店内で被告人を探し回り,発見するや被告人を捕らえているとみられるのであるから,この映像だけをみても,被害者Cは,痴漢被害に遭ったと確信していたとしか考えられないのであって,被害者Cの1審公判供述の信用性は,この映像によって,極めて強力に支持されているということができる。
エ 以上検討したところによると,被害者らの1審公判供述は,基本的に信用できるものである上,被害者Aと被害者Bが臀部を触られた旨いう部分,そして,被害者Cが陰部を触られた旨いう部分については,防犯カメラの映像等によって裏付けられているといえるから,それらはいずれも十分な信用性を備えていると認められる。
 他方,被害者Cの1審公判供述のうち,臀部を触られた旨いう部分については,痴漢被害に遭ったという場面の後に,その事実を推認させるような被害者Cの行動等が防犯カメラの映像などによって確認できず,客観的な証拠による裏付けが不十分であるといわざるを得ないから,十分な信用性を備えているとはいえない。
(4) 弁護人の主張について
 弁護人は,証人Dの1審公判供述及び同人による触知覚に関する実験結果(鑑定意見書(1審弁19))により,衣服の上から受動的に触られる状況では,余程の構えと注意力を動員しない限り,1回だけ,しかもごくわずかの時間しか触れていない物を人間の手であると断定することはできないと判明した,したがって,1秒にも満たない臀部への接触による触知覚だけで,手で触られたと判断することは,鑑定結果からも経験則上も不可能である,などと主張している。
 しかし,被害者Cは,触知覚に加えて視覚によっても被害を確認したというのであるから,これが当てはまらないことは明らかであり,また,Dは,実験の際に,①触る位置,触る圧力,触る時間を一定にすること,②動きを交えないことに留意したと述べているところ(Dの1審公判供述50項),被害者AとBは,痴漢被害に遭った際,被害者らを触った物がいずれも動いたと述べているのであって,Dの行った実験とは前提条件が全く異なっている。したがって,被害者AとBにも,Dによる実験結果がそのまま当てはまらないことは明らかである(さらにいえば,Dは,自ら物に触る場合と,物に触られる場合とでは,後者の方が判別する能力が劣るのが一般的な傾向であるというものの,その物が動けば動くほど識別は容易になるともいうのであるから(同54項),Dの鑑定結果を根拠として,本件被害者らが,臀部を触った物が人の手であると識別することが不可能であるなどということはできない)。弁護人は,D鑑定が,本件とは異なる条件下で行われたことを看過し,その結果,D鑑定の結論が本件にも妥当すると誤解している。
3 結論
 その他弁護人がるる主張するところを検討しても,被害者Cの臀部への痴漢被害部分を除き,被害者らの1審公判供述には客観的証拠による裏付けがあって,その信用性を疑うべき事情はなく,被告人が痴漢行為を行ったと認めることができるから,本件公訴事実がいずれも認められないとして,被告人に対して無罪を言い渡した1審判決は,事実を誤認しており,この誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,1審判決は破棄を免れない。
第4 破棄自判
 よって,刑訴法397条1項,382条により1審判決を破棄し,同法400条ただし書に従い,当裁判所において,被告事件について更に判決する。
(罪となるべき事実)
 被告人は,福岡市(以下略)の△△店において,正当な理由がないのに
第1 平成19年7月14日午前1時16分ころ,A(当時19歳)とすれ違う際に,同人に対し,その臀部を着衣の上から手で触り
第2 同日午前1時21分ころ,C(当時20歳)とすれ違う際に,同人に対し,その陰部付近を着衣の上から指で触り
第3 同日午前1時22分ころ,B(当時20歳)とすれ違う際に,同人に対し,その臀部を着衣の上から手で触り
もって,公共の場所において,人を著しくしゅう恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような方法で他人の身体に衣服の上から触れる行為をしたものである。
(証拠の標目)-括弧内は,取り調べた審級及び請求者の別並びにその記号番号判示事実全部について
・ 1審公判調書中の証人A(第3回),C(第3回)及びB(第4回)の各供述部分
・ 現行犯人逮捕手続書抄本(1審甲1)
・ 防犯カメラ設置場所等確認結果報告書(1審甲23)及び捜査報告書(1審甲24)
・ 写真撮影報告書(1審甲20)
・ DVD-Rディスク1枚(福岡高等裁判所平成22年押第12号の1(福岡簡易裁判所平成20年押第3号の1))
判示第1の事実について
・ 証人Aの当公判廷における供述
・ 写真撮影報告書抄本(1審甲5)
・ 捜査報告書抄本(控訴審検12)
判示第2の事実について
・ 写真撮影報告書抄本(1審甲15)
判示第3の事実について
・ 証人Eの当公判廷における供述
・ 写真撮影報告書抄本(1審甲9。なお,証拠等関係カードの公訴事実の別の欄に「第1」とあるのは「第2」の明らかな誤記と認める)
(補足説明)
 既に説明したとおり,本件公訴事実第3(上記判示第2)中,被告人が,正当な理由がないのに,平成19年7月14日午前1時17分ころ,店で,被害者Cと擦れ違う際に,同人に対し,その臀部を着衣の上から手で触」ったとの点については,唯一の直接証拠である被害者Cの供述を裏付ける証拠が乏しく,信用することができないから,結局犯罪の証明がないことになるが,この点は陰部付近を着衣の上から指で触った事実とともに1罪を構成するとして起訴されたものと認められるから,主文において無罪の言渡しはしない。
(法令の適用)
 被告人の判示各所為は,いずれも平成21年福岡県条例第58号附則2号により同条例による改正前の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例10条1項,6条1号に該当するところ,各所定刑中いずれも罰金刑を選択し,以上は,刑法45条前段の併合罪であるから,同法48条2項により各罪所定の罰金の多額を合計した金額の範囲内で被告人を罰金30万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,1審及び控訴審における訴訟費用については,刑訴法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
 よって,主文のとおり判決する。
平成23年5月25日
福岡高等裁判所第3刑事部
裁判長裁判官  陶山博生
裁判官  溝國禎久
裁判官岩田光生は転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官  陶山博生

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