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覚せい剤仙台

仙台高等裁判所/平成17年(う)第255号

理由

 本件においては,被告人が平成17年6月6日(以下,月日は平成17年である。),警察署で任意提出した尿から覚せい剤の成分が検出されたことが明らかである。そうすると,覚せい剤の成分の尿からの検出期間にかんがみれば,故意の点はさておき,被告人が,本件公訴事実記載の5月下旬ころから6月6日までの間に,その体内に覚せい剤を摂取したことは疑いの余地がない。
 しかるところ,原判決は,同旨の事実を認定しながら,このことから直ちに被告人が自分の意思で覚せい剤を使用したとの推認をすることはできず,さらに,被告人の弁解内容を検討しても,被告人が自分の意思で覚せい剤を使用したとは認めることができない,というのである。
 しかしながら,関係証拠に照らせば,原判決のこの点の説示には賛同できず,被告人には覚せい剤使用の犯意が認められるというべきである。以下,説明する。
ア まず,覚せい剤は,違法薬物であって,通常の社会生活の中で体内に摂取されることはあり得ないし,我が国での市販薬に含まれてもおらず,体内で生成されることもないから,被告人の尿から覚せい剤の成分が検出されている以上,特段の事情がない限り,自己の意思で覚せい剤を摂取したことが推認されるというべきである。
イ しかるところ,被告人は,捜査段階及び原審公判では,一貫して覚せい剤の使用を否定し,5月下旬以降,体内に覚せい剤が入ったような心当たりは全くなく,何故尿から覚せい剤が検出されたのか全く分からない旨供述し,自ら使用したことはもとより,第三者に使用させられたとかで思い当たる点は全くない旨供述している。
 そして,原判決は,覚せい剤を使用した際の感覚については,その使用量によって異なると考えられ,本件では,本件尿につき,その鑑定に先立って行われた予備簡易試験において,覚せい剤が検出されていないことを指摘し,体内に摂取された覚せい剤の量が極めて少なかった可能性を否定できないとし,また,感覚自体について個人差があると考えられるから,体内に覚せい剤が摂取されながら,その自覚が全くなかったことが不自然で経験則に反するとまではいえない,としている。
 しかしながら,覚せい剤は微量でも薬理作用を発現させる薬物である。予備簡易試験で検出されなかったからといって,覚せい剤の薬理効果が生じないほどに微量であるとは当然にはいえない。また,感覚自体に個人差があるとはいえ,薬理効果を全く感じなかったというのも不自然である。そもそも,自ら使用したにせよ,第三者に使用させられたにせよ,被告人が全く体内に摂取した点に思い当たらないということ自体が不自然である。さらに,当審事実取調べの結果によれば,本件尿の鑑定が示すガスクロマトグラムのフェニルメチルアミノプロパンのピークの高さからは,同種事案に比し,被告人が摂取した覚せい剤の量が微量とは認められない。
 次に,被告人は,平成15年春ころからA方でAと同居していたものであるが,AはX会系の暴力団幹部である。そして,前記覚せい剤の体内摂取期間中は,6月5日午後6時ころ出張先から帰宅したAと接触し,外出した時間を除いて共に過ごしている。さらに,被告人,A両名方に,翌6日午前6時過ぎころ,警察官らがAに対する銃砲刀剣類所持等取締法違反(けん銃所持)被疑事件に係る捜索差押許可状の執行のため訪れ,捜索を開始した際,途中,隙を見てAのみ,その場から逃走しているが,捜索の結果,けん銃は発見されなかったことからみて,Aが他の犯罪の発覚をおそれた可能性が高いところ,上記警察官らは,Aが暴力団幹部で覚せい剤前歴者との交友も認められることから,覚せい剤の使用・所持の疑いを抱き,Aと同居している被告人についても同様の疑いを抱き,警察署で本件尿の任意提出を受けたものである。さらに,本件尿から覚せい剤の成分が検出されたため,同年6月15日,A方の捜索が行われたが,被告人が6月6日の捜索時と変わりはないという1階浴室前の洗濯かごの衣類の中から覚せい剤が付着していた注射器1本,付近のごみ箱の中からプラスチック製袋片10片及び,被告人の血液ではない血液が付着した白色ティッシュペーパーの塊3個,1階茶の間押し入れ内の透明衣装ケース内からプラスチック製袋の束が発見されている。
 以上に照らせば,被告人がAを通じるなどして,容易に覚せい剤を使用し得る状況があると認められる。
 原判決は,上記注射器等については,6月6日以降に,何者か(Aが最も疑わしい)が持ち込み,A方で覚せい剤を注射して使用するなどした後,注射器等を隠し,ティッシュペーパーをゴミ箱に捨てて姿を消した可能性が否定できないが,いずれにしても,これら注射器等の存在は被告人の覚せい剤使用を疑わせる証拠となるものではないとする。
 しかしながら,上記注射器等が6月6日に押収されず,6月15日に発見,押収されたことからみて,原判決指摘のとおり,6月6日以降に何者かがA方に立ち入ってこれらを残した可能性が否定できないとしても,A方の鍵を持っているのは被告人,A以外には,被告人の妹だけであり,被告人の妹が覚せい剤に関与していることはうかがわれないし,Aの知人らが出入りすることもなかったというのであるから,上記注射器等がAにかかわっている可能性が高く,いずれにせよ,以上の状況に照らし,Aと同居している被告人も容易に覚せい剤を使用し得る状況にあることを示す事情となるというべきである。
 さらに,被告人は,原審公判で,6月6日,警察署で本件尿を提出して帰宅後,逃走したAから電話で呼び出しを受け,同日午後8時ころ,Aと仙台駅で会い,その後Aと行動を共にし,同月10日ころまで東京で過ごした後,仙台に戻り,妹方に身を寄せ,この間,Aに逃げた理由を聞くと,何もやっていない,友達のことで来ただけであるとの説明を受けただけで終わったというのであるが,自宅に捜索を受けたり,その途中警察官を前にしてAが逃げ出したり,被告人が採尿されるという大きな出来事を経験しているのに,そのような肝要なことについてそれ以上に聞かないのは不自然であるし,事実聞かなかったとすれば,お互いに事情を承知しており,聞く必要がなかったとの疑いが残るものである。
 また,警察で尿を採られたことを話すと,Aは,ふうんという感じで別に何も話さなかったと答えながら,別のか所では,Aは何もなかったべみたいな話だった,Aに覚せい剤を使っているのかと聞いた感じもするが,余りしつこくは聞かなかった旨述べ,その不自然さを追及されても答えず,更に別のか所では,Aに覚せい剤使ってないかと聞いた,やってないと言っていた旨述べているのであって,その間に不自然な変遷がある。
 原判決は,被告人の供述内容を全体として見ても,一応破綻のない説明になっているということができ,不自然不合理と断定できる根拠は見いだせないというのであるが,以上指摘の点に照らせば,捜査段階の供述を含めて,やはり不自然,不合理な点があるといわざるを得ず,原判決の説示には賛同できない。
 被告人は,原判決の3日後に,自ら捜査当局に出頭し,覚せい剤を使用していないというのは嘘であり,本件公訴事実の期間内に覚せい剤を使用した旨自白をするに至っており,その任意性に疑いがなく,当審公判においても同旨の供述をしているから,相応の信用性が認められるが,これに照らしても,捜査段階や原審公判の供述の信用性がないことは明らかである。
ウ 以上検討したところに照らすと,被告人が自己の意思によらずに覚せい剤を摂取したような特段の事情を合理的にうかがうことはできないから,被告人は,その意思により覚せい剤を摂取したものであるというベきであり,本件公訴事実の証明は十分である。
 したがって,被告人の弁解が排斥できず,疑わしきは被告人の利益になどとして被告人を無罪とした原判決は,事実を誤認したものであって,破棄を免れない。論旨は理由がある。
【本件公訴事実の要旨】
被告人は,法廷の除外事由がないのに,平成17年5月下旬ころから同年6月6日までの間に、福島県内又はその周辺において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン又はその塩類若干量を自己の身体に摂取し、もって覚せい剤を使用したものである。

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