刑事事件解説<経済犯総括>

架空請求自体が被害者から金銭を詐取するということで、刑法上の詐欺罪に該当することは間違いありません。では、架空請求するために預金口座を開設したり、預金口座を売買したりすることは犯罪になるのでしょうか?
結論から言うと、

  • 他人名義を用いて他人になりすまして預金口座を開設したり、
  • 本人名義であっても架空請求などに悪用する目的で預金口座を開設したりする行為

は、詐欺罪に該当します。

まず他人になりすまして、他人名義の預金口座を開設する行為ですが、詐欺罪にあたるという判例が出ています。

平成14年10月21日最高裁第二小法廷判決は、不正に入手した他人名義の健康保険証を利用して、同人の名前で「口座開設のお客さま用新規申込書」を作成し、印鑑と共に銀行窓口係員に提出して預金通帳1冊の交付を受けた行為について、名義人となった者本人による口座開設契約であると誤信させて預金通帳をだまし取ったものであるから詐欺罪(1項詐欺)にあたるとの判断を下しました。
※この事件ではそのほかに他人名義の申込書を作成した点につき有印私文書偽造・同行使罪(刑法159条、161条)も認定されました。

次に、自分名義の口座であっても通帳やキャッシュカードを第三者に譲渡する目的をもって口座開設を申し込んで預金通帳等の交付を受ける行為も詐欺罪にあたるとされています。

平成19年7月17日最高裁第三小法廷決定では、銀行の預金口座は自分の預貯金のために開設するものであり、第三者への譲渡などが銀行の約款によって決められているにもかかわらず、第三者に譲渡する意図を秘して、預金口座契約を結んで預金通帳とキャッシュカードを係員から受け取る行為は係員を騙して通帳等を詐取したものとして詐欺罪にあたるとの判断を下しました。

自分の口座を開設する場合であっても、不当な転売目的な下なされたものであれば、預金口座を契約して通帳やキャッシュカードを騙し取ったとして、詐欺罪が成立するということになります。

架空請求詐欺事件などの場合、被害者にお金を振り込ませるための口座が必須ですが、口座番号などからあしがつかないように他人名義の口座を作ったり、他人の口座を買ったりするケースが多くみられます。

軽い気持ちで架空請求詐欺につながる口座売買に加担してしまわないよう、注意する必要があります。

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