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名誉毀損の有名裁判例

名誉毀損罪においては「事実の摘示」が必要とされ、この点に侮辱罪との違いがあります。
ここでは、被害者の氏名明示がなくとも名誉毀損罪の成立を認めた判例をご紹介します。
また、摘示した事実が真実であると誤信した場合の名誉毀損罪の成否について判示した判例もご紹介します。

氏名を明示せずとも被害者が特定されているため名誉毀損罪にあたると判示した判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和27年(あ)第3760号 判決年月日: 昭和28年12月15日

判決文抜粋

「被害者の氏名こそ明示してないが、第一審判決挙示の証拠を綜合するとそれが(被害者)に関して為されたものであることが容易にわかる場合であることが認められる。だから該記事は被害者の特定に欠くるところはないというべきである。」

弁護士の解説

町議会議員である被害者について身体的障害と関連させて批判する記事を執筆掲載した事案で、被害者の氏名の明示がなくとも、その特定がされているとして、名誉毀損罪の成立を認めた判例です。
名誉毀損罪は、特定人の社会的名誉が害される危険性のある行為を処罰するものであるため、誰の名誉を棄損したものであるかが明らかになっている必要がありますが、氏名を明示しなかった場合であっても処罰の対象にはなり得るわけです。

事実を真実と誤信したことにつき相当の理由がある場合と名誉毀損罪の成否

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和41年(あ)第2472号 判決年月日: 昭和44年6月25日

判決文抜粋

「たとい刑法二三〇条ノ二第一項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である」

弁護士の解説

刑法230条の2は、専ら公益目的でされた公共の利害に関する事実に関する名誉毀損行為につき、事実が真実であるとの証明がなされた場合には罰しないとしています。
真実の証明がなかった場合、かつての判例は本罪の成立を認めていましたが、この判例によって、真実であるとの誤信につき確実な資料根拠に照らし相当な根拠がある場合には犯罪の故意がなく名誉毀損罪は成立しないと判示されました。

真実と誤信する相当の根拠がないとされた判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和45年(あ)第2524号 判決年月日: 昭和46年10月22日

判決文抜粋

「資料が現に係属中の刑事事件の一方の当事者の主張ないし要求または抗議に偏するなど断片的で客観性のないものと認められるときは、これらの資料に基づく右誤信には相当の理由があるものとはいえない」

弁護士の解説

ある裁判官について「外国の圧力に屈した売国奴」などと記載したビラを配布した事案です。
先にあげた判例のとおり、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは名誉棄損罪は成立しないとされています。
ただこの事案においては、断片的で客観性のない資料に基づく誤信であると判断され、相当の理由がないとして有罪判決が下されました。

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