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虐待/体罰の刑罰・捜査の流れ・裁判例

虐待/体罰で適用される刑罰

児童虐待は、刑法の暴行や傷害に問われる可能性があり、性的虐待に関しては、児童福祉法のほか、刑法の監護者性交等罪にも問われ得ます。
児童虐待の防止に関する法律(児童虐待防止法)では、児童の親であることを理由として、各犯罪の責めを免れることはできないと規定されています。

刑法208条 暴行

2年以下の拘禁刑
もしくは30万円以下の罰金
または拘留もしくは科料

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

たとえ保護者と子供の間のことであっても、相手を殴る、蹴る、突く、押す、投げ飛ばすなどすれば、暴行罪が成立します。
また、暴行を加えた結果、子どもが怪我をすれば、そのケガがどれだけ軽微でも、後述の傷害罪に問われ得ます。

刑法204条 傷害

15年以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

軽微であったとしても、相手にケガをさせた場合には、傷害罪が成立し得ます。
たとえ親子間のことであったとしても、それを理由に免責されることはありません。

刑法205条 傷害致死

3年以上の有期拘禁刑

第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期拘禁刑に処する。

殺意がなく、虐待の結果として子が死亡した場合には、傷害致死罪に問われ得ます。

児童福祉法34条1項6号、60条1項

10年以下の拘禁刑
または300万円以下の罰金
または併科

第三十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫行をさせる行為
第六十条 第三十四条第一項第六号の規定に違反したときは、当該違反行為をした者は、十年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

18歳未満の者に淫行をする、させるなどした場合は、この罪が適用され得ます。
淫行とは、「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交や性交類似行為」を差し、判例上、性交のみならず手淫や自慰をさせる行為等も含まれます。

刑法179条2項 監護者性交等

5年以上の有期拘禁刑

第百七十九条 
2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は(略:不同意性交等罪)の例による。

※態様がわいせつ行為に留まる場合、刑法179条1項監護者わいせつ罪として6か月以上10年以下の拘禁刑

親や親と同じくらいの条件を持つ養親や継父母等のことを、監護者と言います。
監護者が立場を利用して、被監護者に性交、口腔性交、肛門性交をすると、この罪が成立します。
また、わいせつな行為をした場合には、「監護者わいせつ罪」として不同意わいせつ罪と同じ罰則で処罰されます。

虐待/体罰の捜査の流れ

虐待事案では、近隣住民などの通報を受けて警察が事件を認知し、検挙に至るケースが多いです。
このほか、学校や児童相談所の通報により、事件が認知される場合もあります。

通報された場合

1 通報
2 警察が事件を認知
3 検挙

泣き声や被害者の異変に気付いた近隣住民や学校などが、警察や児童相談所に通報し、虐待が発覚するケースが多いです。
事件を認知した警察は、児童相談所などの機関と連携し、被害者の保護に努めます。
虐待の程度が重大な場合などでは、刑事事件化して逮捕される可能性もあり得ます。

虐待/体罰の有名裁判例

虐待は児童に対してなされる場合が多く、家庭内・学校内などで問題となっています。
ここでは、教員による暴行が懲戒権の範囲内として無罪とされた裁判例をご紹介します。

教員の生徒への暴行が懲戒権の許容限度内であるとした裁判例

裁判所名: 東京高等裁判所 事件番号: 昭和55(う)第292号 判決年月日: 昭和56年4月1日

判決文抜粋

「外形的には(被害者)の身体に対する有形力の行使ではあるけれども、学校教育法一一条、同法施行規則一三条により教師に認められた正当な懲戒権の行使として許容された限度内の行為と解するのが相当である」

弁護士の解説

中学校の教師が、生徒の頭部を数回軽く殴打した事案で、刑法35条の正当行為として違法性が阻却され、暴行罪が不成立となった裁判例です。
教師には、学校教育法で懲戒権が認められており、懲戒権の範囲内か否かは、生徒の年齢、性別、性格、成育過程、身体的状況、非行等の内容、懲戒の趣旨、有形力行使の態様・程度、教育的効果、身体的侵害の大小・結果などを総合して判断されます。

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