「刑事事件を起こしたけれど逮捕されずに解放された」
「逮捕されたけれど3日で釈放された」
このような方の中には、もう事件は終了したと安心する方も少なくありません。しかし、水面下では在宅事件として捜査が進んでおり、事件から数か月たって突然、検察庁から呼び出されることになります。
検察庁に呼び出される理由で最も多いのは、事件を起訴するか不起訴にするかを判断するためです。検察庁から呼び出された場合にどのような手続きが取られるのか、不起訴はもう無理なのか、罰金なしで帰れることはあるのかなど、適切な対応方法についてご説明します。
もしも、検察から呼び出しを受けたり、次は検察から呼ばれると言われた場合には迷わず弁護士まで相談をしてください。まずは適切に状況とリスクを判断することが必要です。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
検察庁から呼び出しを受ける理由
(1)検察官による取調べを受けるため
事件捜査の最終段階で、検察官は起訴・不起訴について判断します(刑事訴訟法248条)。そのため、検察官は捜査全体を通して事件を把握し、警察官の捜査への指示や(同法193条)、自ら捜査を行う必要があるのです(同法191条1項)。
検察官が自らの役割を果たすうえで、検察官による取調べが必要だと判断した場合、被疑者として検察庁に呼び出されることになるでしょう。呼び出しに応じるかは、任意です。
(2)起訴・不起訴の判断を受けるため
被疑者として検察庁に呼び出される理由として最も多いのは、検察官が自ら被疑者を取り調べて事件を起訴か不起訴にするか決めるためです。
逮捕なし・逮捕後釈放された在宅事件の場合でも、刑事手続きは進行します。
警察の捜査が一段落すると、証拠書類が検察官に引き継がれます(書類送検)。書類送検を受けた検察官は、証拠を確認し、自らも被疑者を直接取り調べて処分を決定するために、被疑者を検察庁に呼び出します。
検察庁の呼び出しが1回もないまま、不起訴処分で事件処理が終了しているケースもまれにありますが、通常は書類送検後数か月のうちに検察庁から呼び出されるものと考えて良いです。
検察庁から呼び出されたら起訴は確定?
検察庁に呼び出されたら、不起訴になるのは無理というわけでもありません。検察官が最終処分を下すまでに「被害者と示談する」、「反省の情や更生の取組を見える化する」、「家族の支援体制を整える」などの対策を取り、検察官に主張することで、検察庁に呼び出されても不起訴が獲得できる可能性があります。
(3)略式起訴を受けるため
検察庁の呼び出しの目的に、略式罰金の手続きがあります。略式罰金は書面審理で100万円以下の罰金か科料を科す手続きです。
罰金を払えば事件が終了する反面、言い分を主張できないので被疑者の同意が必要になります。検察官が略式起訴が相当と考えた場合、その説明と手続のため検察庁に呼び出されることがあるでしょう。
ですが、検察から呼び出されたとしても、必ず略式起訴になるわけではありません。
事件後の被害者対応を適切に行っていれば、略式起訴を回避して罰金なしで事件が終了することもありえます。
【補足】参考人としての呼び出し|応じる義務は?
事件に直接関与していなくても、検察庁に呼び出され、参考人として取調べを受ける場合があります。
具体的には、「事件を目撃した場合」、「事件に関する知識を有する場合」、「被疑者と関係がある場合」等です。参考人として呼び出しを受けても、被疑者と同様に、出頭にも取調べにも応じる義務はありません。
ただし、犯罪捜査に欠かせない知識を有する参考人が出頭や取調べを拒否した場合は、検察官の請求により裁判に呼び出されて証人尋問を受ける可能性があります(刑事訴訟法226条)。出頭や取調べに応じるのは任意とはいえ、むやみに拒否せず協力した方が負担が少なく済むでしょう。
検察庁からの呼び出しに応える前に知りたいQ&A
警察の呼び出しと検察庁の呼び出しの理由はどう違う?
警察の呼び出しも、検察庁の呼び出しも、取調べを目的とする点で同じです。 基本的に、警察官が証拠を集め、検察官はその再確認や足りない部分の補充捜査を行います。
警察の取調べは検察庁の取調べの準備段階という性質をもつ一方、検察庁の取調べは警察の取調べの結果をまとめて終局処分の判断につなげる面があることや、検察で作成された供述調書の価値がより高いという点に違いがあるのです。
警察の呼び出し | 検察の呼び出し | |
---|---|---|
主な目的 | 取調べの準備 | 終局処分の判断 |
主な内容 | 証拠集め | 補充捜査、略式罰金の手続き |
検察庁の呼び出し後、不起訴はいつわかる?
逮捕・勾留されている身柄事件では厳格な時間制限があるので、逮捕から23日以内には起訴・不起訴の判断が下されます。
一方、在宅事件の場合、事件から起訴・不起訴が決まるまで2~3か月程度の期間がかかることが一般的です。なかには捜査が1年以上の長期に及ぶケースもあります。在宅事件には、厳格な時間制限がないからです。
また、在宅事件では、不起訴処分となっても検察庁から連絡はありません。
逮捕・勾留から処分保留で釈放されたが、その後とくに連絡もなくどうなっているのかわからない、しばらく捜査機関から連絡がこないなどと思っていたら、知らぬ間に不起訴になっていたということもあります。
検察官が最後の取調べで「不起訴の見込みです」「近く不起訴になるでしょう」と言ってくれる場合もありますが、いつ不起訴になったかは、直接検察官に確認しなければわかりません。
弁護士に依頼していれば、検察官に捜査状況を適宜確認し、不起訴が判明した時点で「不起訴処分告知書」を取得して事件終了の確認をしてくれます。
検察庁の呼び出しを無視したらどうなる?
検察庁からの呼び出しは任意なので強制力はありません。出頭に応じるのも、検察官の取調べを受けるのも自由です。しかし、呼び出しを無視すると、後々面倒な事態に発展する可能性が高いです。
被疑者が呼び出しを無視した場合、逃亡・証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕される可能性があります(刑事訴訟法199条2項、同法規則143条の3参照)。また、30万円以下の罰金、拘留または科料にあたる軽微な犯罪でも、逮捕されうることが規定されています(同法199条1項但し書き)。
参考人が呼び出しを無視した場合は、検察官の請求により裁判で証人尋問を受ける可能性があります。
被疑者として呼び出し | 参考人として呼び出し | |
---|---|---|
義務 | なし(任意) | なし(任意) |
無視 | 逮捕の可能性 | 証人尋問の可能性 |
検察庁の呼び出しの日時は変更してもらえる?
検察庁に呼び出された日時に仕事等でどうしても都合がつかない場合は、指定の日に出頭できないことを明確に伝えましょう。その上で都合がつく日時に変更して、改めて指定してもらうことができます。
入院等で長期的に出頭できない場合は、検察官や検察事務官から出張してもらえる場合もあるでしょう。検察の呼び出しを無視したり、理由なく拒否しても良いことはありません。
検察庁の呼び出し前に弁護士に相談すべき?
弁護士への依頼が遅ければ遅いほど、活動できる期間が短くなりますので、弁護士への依頼を検討する場合はできるだけ早く相談することをおすすめします。 検察庁の呼び出しがあった時には終局処分直前まで捜査が進められており、十分な弁護活動をするには遅い場合もあるからです。
検察庁から呼び出しを受けるのは、逮捕されなかったか、逮捕後釈放された在宅事件の場合になります。在宅事件になると、通常の生活を送ることができ、検察庁の呼び出しまで期間が空くため安心してしまう人もいるでしょう。
弁護士に事前に相談すれば、検察官に不起訴処分を下してもらえる可能性が高まります。例えば、被害者に謝罪と賠償を尽くして事件を許してもらう宥恕付示談をしたり、反省の情や再犯防止の取組みを書面にまとめたり、家族のサポート体制を整えたりするなどして、検察官に交渉してもらうことが大きな意味を持つからです。
起訴された後に不起訴にすることはできません。 また、事実上検察官が処分を決定してしまったら、起訴前であっても待ってくれないケースもあります。「検察官に略式罰金にすると言われたががどうにかならないか」という相談を受けることも良くありますが、そうなってしまうと既に手遅れになってしまっていることも残念ながら多いです。
早急に被害者との示談をまとめられそうで、担当検察官にも待ってもらえそうなケースなど、検察から処分方針を告げられた後でもぎりぎり間に合うこともありますが、不起訴を目指すのであれば少なくとも検察の呼び出しに行く前には弁護士に相談した方が良いでしょう。
検察呼び出し前 | 検察呼び出し後 | |
---|---|---|
捜査 | 進んでいない | 進んでいる |
弁護士相談 | 不起訴の可能性高くなる | 手遅れのケースが多い |
関連記事
・在宅事件の流れを解説|起訴率は低い?逮捕される刑事事件との違い
検察庁からの呼び出しを待っている方向けのQ&A
検察庁の呼び出しがあるまでの期間はどのくらい?
検察庁から呼び出される期間について決まりはありません。通常は警察の捜査に1~2か月程度かかってから書類送検され、その1~2か月後くらいに検察の呼び出しがあることが一般的です。
また、検察庁が担当する事件数や忙しさで変わる場合があり、年内に事件を終了させるため11月から年末は呼び出しが増えるとも言われます。
書類送検のタイミングでは特に連絡がないため、警察から「次は検察から呼び出しがある」と告げられてから2~3か月程度であれば何の音沙汰もなくても不自然ではありません。
検察庁からの呼び出しに時間がかかる理由は?
検察庁からの呼び出しに時間がかかる理由として考えられる主なケースは以下の通りです。
- 証拠の収集や捜査に時間がかかっている
- 事件が立て込んでいて検察官が多忙
- すでに不起訴処分になっている
警察での取調べから時間が経っているのに、検察庁からなかなか呼び出されないと不安が募るかもしれませんが、理由なく時間がかかっている訳ではないのです。
特に、すでに不起訴処分となっている場合、被疑者本人や弁護士から問い合わせない限り、検察官からわざわざ知らせてくれることはないでしょう。あまりにも呼び出しがないのであれば、検察官に確認を入れてみてください。
検察庁からの呼び出し方法は電話?手紙?
検察庁からの呼び出しは、電話や手紙(呼び出し状と呼ばれる書面)で行われます。
電話で呼び出しを受けた場合、出頭先や日時などが伝えられるので、忘れないようにメモを取りましょう。手紙で呼び出しを受けた場合、出頭先や日時などが記載されているので、手紙をよく確認してください。
検察庁から何回くらい呼び出される?
検察の呼び出しは、通常1~2回です。犯行を素直に認めていたり、証拠も十分にそろっていたりする事件なら、1回の呼び出しで済むことになるでしょう。
一方、犯行を否認していたり、証拠が揃っていない事件なら、入念な取調べが行われるので呼び出しは複数回に及ぶ可能性があります。さらに、犯行を認めていても被害者や参考人などの証言と食い違いがある場合、何度も呼び出されることもあるでしょう。
検察庁の呼び出しまでの準備と当日の流れ
状況に応じて示談書・嘆願書を準備
事件の内容によっては、被害者との示談によって取り交わされた示談書や嘆願書を検察官に提出することで、不起訴の可能性を高められることがあります。検察官は、被害者との示談が成立している点を考慮して、起訴するか不起訴にするかを判断するからです。
検察庁から呼び出される前までに、早急に被害者と示談できるように動いておくことは非常に重要となります。被害者への謝罪や示談金の支払いといった対応が出来ていない場合は、すみやかに弁護士に相談しておきましょう。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
呼び出し当日の持ち物・服装|印鑑は何に使う?
検察官に呼び出された当日の持ち物や服装について決まりはありません。通常は身分証と印鑑の持参を検察側から指示されることが多いです。書面(呼び出し状)で呼び出された場合は呼び出し状を持参し、その他は検察から指示があれば従えば足りるので、気にして準備する必要はありません。
服装について決まりはないものの、むやみに検察官に悪印象を与えて良いことは何もありません。 好感をもたれやすい清潔感ある服装での出頭をおすすめします。 スーツまでいかなくとも、男性であれば襟付きシャツにジャケット・スラックス、女性であれば華美すぎない綺麗めの服装などが無難でしょう。
なお、印鑑は略式起訴に同意する際に使用する目的の可能性もありますが、印鑑の持参を求められたからといって必ず略式起訴されるとは限りません。用途が気になる場合は、検察官に尋ねてみましょう。
検察庁の呼び出し後の流れ|かかる時間は?
検察官に呼び出されると、検察官による取調べは通常個室で行われます。取調べの際は供述調書が作られ、被疑者の目の前で検察官が口述したものを検察事務官がデータに入力します。取調べの最後にプリントアウトして読み上げ、内容に間違いがなければ署名押印(捺印)して、取調べは終了します。
検察庁の呼び出しに要する時間は、事件の態様で異なりますが、一般的には警察の取調べよりも短いことが多いです。略式罰金に応じて署名するだけなら30分程度で終了します。警察の捜査段階から容疑を認め、証拠にも不合理な点がない場合は1~2時間程度で終了します。しかし事件を否認したり検察官が疑問を持った場合は半日~1日かかる場合もあります。
検察庁の呼び出しにおける注意点
検察庁の取調べは真摯に対応|何を聞かれる?
検察の取調べは、改めて事件のことを聞かれるほか、反省しているかどうか、どのようにして再犯防止を図っていくかなど聞かれる可能性があります。取調べ後はその場で処分を告げられることもあれば、少し時間をおいてから連絡が来ることもあります。
認めている事件であれば、そこまで厳しい追及がされることは通常ありません。検察官もある程度は処分を決めてはいますが、揺らぐこともあるので取調べには真摯に対応することをおすすめします。
取調べで黙秘権を行使する場合は慎重に
被疑者には黙秘権があります。警察の取調べと同じく、検察庁の取調べでも黙秘権を行使できます。ただし、黙秘権の行使には注意が必要です。証拠などから被疑者が犯行をしたことが明らかなのに黙秘権を頑なに行使していると、反省の情が見えないと捉えられ、不利に判断されるおそれがあります。
答えたくないことを聞かれた場合にどこまで黙秘権を使うべきか等、取調べ前に弁護士に相談する方が良いでしょう。
ちなみに、参考人の場合は、被疑者と異なり黙秘権という権利はありません。あくまで任意の事情聴取なので、供述を強要されたり、供述しなければ逮捕されたりすることもありません。
関連記事
・黙秘権って何?逮捕後に黙秘すると不利?有利になる場合とは?
供述書へのサインは内容をよく確認してから
検察庁に呼び出され取調べを受けると、その内容が供述調書に記されます。供述調書は検察官か検察事務官が読み上げ、内容に間違いがなければサインし、捺印します。サイン・捺印した供述調書は重要な証拠となり、後から覆すことは困難です。
被疑者でも参考人でも、検察庁に呼び出されて取調べを受けた場合は、供述調書の内容を必ず確認し、間違いがある場合はもちろん、話していない余罪が記載されている場合、表現のニュアンスに納得できない場合等も、サインせずに訂正を求めましょう。納得できない供述書にサインしてはいけません。
検察庁の呼び出しをうけたら弁護士に相談
検察庁の呼び出しに同行してもらえることがある
弁護士に依頼すれば、検察庁に呼び出された場合に同行してもらうことができます。必ずしも検察官の取調べ自体に同席できるわけではありませんが、近くに弁護士がついていることで、不当な取調べが行われにくくなり、トラブルが発生した場合に証拠を保全したり、法的対応を取ってもらうことができます。
ただし、検察官の呼び出しは、終局処分に向けて行われるため、捜査は相当進んでいます。呼び出し直前に弁護士に同行を頼んでも、弁護士も事情が分からず対応できない場合もあります。弁護士はできるだけ早く依頼し、呼び出し同行はもちろん、終局処分までにできる弁護活動を進めてもらいましょう。
呼び出しや取調べ対応のアドバイスがもらえる
弁護士に依頼すれば、検察庁の呼び出しを受けた場合に疑問点を相談したり、取調べの対応のアドバイスを受けることができます。呼び出されて疑問点がある場合、何時にどこに行けばいいのかなどは電話で聞けば教えてもらえますが、当日聞かれる内容や、かけられた容疑の程度などは教えてもらえません。
しかし弁護士なら、過去の経験から当日何が聞かれるか、どの程度の容疑がかかっているか、終局処分の予測等の見通しを立てることができます。見通しに基づいたアドバイスが受けられることで、実際の取調べにも落ち着いて対応できます。また、持ち物や服装もチェックしてもらえるので安心に繋がります。
被害者と示談して不起訴の可能性を上げられる
被害者がいる事件では、被害者と示談をして事件の許しを得ることが終局処分に大きく影響します。弁護士に依頼すれば、被害者と示談してその成果を検察官に伝えられるので、不起訴を獲得できる可能性が高まります。なお、適切な示談を当事者本人が行うことには非常に困難を伴い、事態を悪化させてしまうおそれもありますので、弁護士に任せる方が賢明です。
被害者の中には弁護士なら示談してよいという方は多いですし、被疑者が容疑を認めているけれど示談できていないケースでは、検察官が示談を勧め、被害者の連絡先を教えてくれる場合もあります。このような対応は弁護士しかできないので、不起訴を目指す場合はまず弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士 | 本人 | |
---|---|---|
示談交渉 | 交渉しやすい | 難しい |
示談成立 | 早期成立 | 時間がかかる |
内容 | 不備のない示談が可能 | 不完全になる恐れあり |
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検察庁の呼び出しは、起訴になるか不起訴になるかの最後の分かれ道です。不起訴になって前科が付くのを避けたいのであれば、刑事事件に詳しい弁護士にご相談されることが何より重要です。
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