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逮捕されても不起訴になる?前科をつけない4つのポイント

逮捕されても不起訴

刑事事件で逮捕されてしまった場合、重い処分となる可能性があるのではないかと不安になることと思います。そして、できれば不起訴になりたい、前科はつけたくないと考えるのが通常でしょう。しかし、不起訴になるのかどうかといった刑事手続きの処分の見通しや、どうすれば良いのかということについてはは刑事手続きに不慣れな一般の方にはなかなかわからないことです。

逮捕はあくまで捜査手段であるため、逮捕されてしまった場合でも不起訴になる可能性は十分にあります。そこで以下では、そもそも不起訴処分はどういうものでどういうときに下されるのか、どういう流れで不起訴処分を得ることができるのか、不起訴処分を得るためにはどのような方策があるのかを見ていきましょう。

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不起訴とは?逮捕されても不起訴なら前科はつかない

起訴・不起訴処分とは?

起訴・不起訴処分とは、その人に刑罰を科すべきかどうか、裁判をすべきかどうかを検察官が決める処分のことです。起訴処分はその人に何かしらの刑罰を科すべきと考えて裁判を請求するという処分、不起訴処分はその人に刑罰を科すべきではないとして裁判を行わず、「前科」も付けずに終了させるという処分です。

不起訴とは?逮捕されても不起訴なら前科はつかない

起訴処分の中には、正式な裁判をする起訴処分(公判請求)と、争いのない事件で罰金相当の刑罰を正式な裁判なく簡略な方法で科す略式起訴処分があります。
一方、不起訴処分になれば、何らの手続もなく刑事事件が終了し、その時点で罪に問われる可能性がなくなり「前科」もつかないことになります。

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「前科」がつくのは起訴されて有罪となったとき

いわゆる前科が付くのは、起訴をされた上で裁判を受け、その裁判の内容で有罪判決を受けた後、その裁判が確定した時となります。逮捕や起訴をされただけではまだ「前科」はつきません。

もっとも、起訴処分がなされた場合には、日本の刑事司法では有罪率が99%ですので、ほとんどのケースで結果的に「前科」がついてしまいます。起訴処分はその人を刑罰に付した方がいいという場合にする処分であり、無罪の人を起訴しないように慎重に判断がなされるため、起訴された者は当然有罪であることが前提とされるためです。

前科がつく場合

起訴不起訴
裁判ありなし
前科つく可能性大つかない

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嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予…不起訴処分の種類を解説

不起訴処分には、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3種類があります。

「嫌疑なし」「嫌疑不十分」は、刑罰を科す事実がない場合や刑罰を科すことができるほどの証拠がないため起訴できない場合にする処分です。
「起訴猶予」は、起訴しようと思えばできるけれども、検察官の判断で不起訴とするものとなります。

嫌疑なしや嫌疑不十分の場合にはそもそも送検されないことも多いため、検察官が不起訴処分を下す場合は起訴猶予であるケースが多く、不起訴処分のうち89%が起訴猶予となっています。示談ができている場合や事案が軽微な場合など、検察官が刑罰を科すまでもないと判断した場合に起訴猶予処分がなされることになります。

起訴猶予と嫌疑なし・嫌疑不十分の違い

起訴猶予嫌疑なし・嫌疑不十分
処分不起訴不起訴
主なケース示談締結済み犯罪の証拠なし

逮捕されても不起訴となる確率は〇%

逮捕されたとしても、不起訴処分となる可能性は十分にあります。送検された事案で、最終的に不起訴処分となる確率が63.5%(90万件中57万件)であるという犯罪白書の統計があります。逮捕される事案は起訴されやすいというイメージがありがちですが、送検された全事件は半分以上の確率で不起訴処分となります。

逮捕されるかどうかは証拠隠滅の可能性や逃亡のおそれの有無で決まります。逮捕はあくまで捜査に支障を及ぼさないためにされる処分であり、捜査の手法上の問題です。確かに重い処分になりやすい事件の方が逃亡のおそれが大きいという理由で逮捕されることはありますが、最終的な刑事処分の内容と逮捕の有無には関係がありません

書類送検なら不起訴になりやすい?

逮捕の有無が最終的な刑事処分と関係がない以上、書類送検される事案(在宅事件)と不起訴になりやすいかどうかにも直接の関係はありません

書類送検とは、身柄拘束のない事案で警察署から検察庁に警察官調書などの記録が送られることを指します。その記録を検察官が見て処分を判断しますが、被疑者の身体拘束をするか在宅での書類送検とするかはあくまで捜査手法の問題にすぎません。

しかし、身柄拘束がなく在宅で書類送検される事案は、逃亡のおそれがないと判断されているわけですから、重い処分が見込まれていないような既に解決済みな事案や軽微な事案が多く、結果的に不起訴となるケースが多くなります

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逮捕された「前歴」がつく影響は?

逮捕では「前科」がつくことはありませんが、刑事事件の被疑者として捜査をされた記録である前歴はついてしまいます。最終的に不起訴となったとしても「前歴」は消えることはありません。

「前歴」は、再度刑事事件の被疑者となった際にどのような処分をするかの判断に影響します。「前歴」がある場合には、前回より重たい刑事処分となる可能性が高まります。

もっとも、「前歴」は警察官や検察官が見ることのできる調書には記載されますが、日常生活では何か大きな影響が生じるということはありません。「前科」と異なり、「前歴」で資格に関する制限がされることもありません。

前科・前歴・逮捕歴の違い

逮捕から不起訴となるまでの流れ

そもそも逮捕されない在宅事件もある

一般的に刑事事件として捜査を受けるというと逮捕されることを想定することが多いかと思いますが、実際には逮捕されないで自宅にいながら必要なときに捜査に呼ばれる在宅事件というものも多くあります。在宅事件の場合、捜査の度に呼び出しを受けますが、普段は日常生活を送りながら起訴不起訴の判断を受けることになります。

刑事事件の流れ(在宅事件)

在宅事件の場合、起訴不起訴の判断がなされるまでの期間制限はありません。起訴された場合には連絡がありますが、不起訴になった場合は何の連絡も来ないということが通例となっています。また、不起訴であることが明らかな場合には、検察官の呼び出しを受けないで不起訴処分がなされることもあります。

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逮捕~不起訴処分の流れ

刑事事件で逮捕になった場合、48時間以内に検察官送致という手続を受け、24時間以内に勾留の請求をするかしないかを検察官が決定します。勾留が請求され、裁判所がその勾留を決定した場合には原則10日間引き続き身柄を警察署にとどめ置かれ、その間に起訴不起訴の判断を検察官が行います。

検察官送致では、検察官の元に事件の書類が行き、勾留をすべきかどうかの判断を行うことになります。勾留期間は原則10日間ですが、争いがあったり余罪があったり必要な捜査が終わらないなどのやむを得ない事由がある場合にはさらに10日間延長した最大20日間勾留されることがあります。

逮捕後の流れについて、詳しくは以下のページをご覧ください。

不起訴になるかは逮捕後23日間が勝負

逮捕された場合、不起訴処分となるかどうかは逮捕後23日間が勝負となります。逮捕されてから勾留まで3日間、勾留されると10日間、延長されると併せて最大20日間の合計23日後には必ず検察官が起訴不起訴の判断を行います。そのため、逮捕から23日以内に不起訴を得るための対策を取ることが必要となります。

逮捕の流れ

たとえば、不起訴を得るために示談をするという場合には、示談は逮捕から23日以内に行わなければならないということになります。しかし、示談交渉には時間がかかる場合も多いです。そのため、不起訴を得るために示談をする場合にはいち早く着手し、検察官が処分するまでの23日以内に終わらせる必要があります

起訴・不起訴を決めるのは誰?

起訴・不起訴の判断をするのは検察官であり、法律上も検察官の専権で決めることとされています。逮捕後勾留されるかどうかは、裁判所の判断となりますが、起訴するか不起訴にするかは裁判所の意見などなく、検察官のみの判断となるため、不起訴を得るためには検察官に対し不起訴が相当であることを示す必要があります。

検察官は犯罪事実自体が立証できない場合はもちろん、事実自体は立証できるけれども起訴がふさわしくないと判断した場合にも不起訴とすることができます。もっとも、検察は決済制度をとっており、事件担当の検察官が起訴・不起訴の処分を決めたとしても、担当の検察官の上官たちがその処分を許可する必要があります。

検察が不起訴を決める理由とは?

検察が逮捕された人を不起訴にする明確な理由は存在しません。

検察官が起訴にするか不起訴にするかの判断材料の一例として考えられるのは、犯罪事実自体の悪質性や被害者の処罰感情、被害者側へのケアの有無、再犯可能性の程度、本人の反省の程度、その他個々の事情などであり、それらの内容を元に総合判断をしていると考えられます。

検察が不起訴を決める理由とは?

しかし、基本的には犯罪事実の嫌疑があること以外明確な理由はありません。そのほか、告訴が必要な事件で告訴がない場合や未成年の場合以外には不起訴にせざるを得ませんが、それ以外に起訴とするか不起訴にするかは、完全に検察官の専権となっています。

なお、上記の未成年(少年)とは20歳未満の少年のことであり、民法上の成人(民法第4条)とは異なります。

逮捕されても不起訴にする方法|弁護士は必要?

(1)被害者と示談をする

示談とは

逮捕されたとしても不起訴を目指す方法として、まず被害者との示談が考えられます。被害者がいる事件では、被害者と示談をし、当事者間の解決が得られているということであれば、検察官も刑罰までを科す必要はないと判断する場合も多く、示談がされていれば不起訴となる可能性が高くなります。

被害者がいる事件では、被害者による届出から捜査が始まることも多く、そのため被害者の処罰感情は起訴・不起訴の処分に大きく影響します。そのため、示談により被害者側が既に和解しているということは大きな影響があり、事件によってはその事実だけで不起訴となる事案もあります

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(2)被害者に損害賠償をする

逮捕がされてからも不起訴を目指す方法として、被害者に対し損害賠償をすることが考えられます。被害者との示談が難しいとしても、被害者に対し損害賠償を行ったとすれば、罪に対する相当の反省とケアを行ったとして刑罰を科すまでは必要ないと検察官が判断する場合があります。

損害賠償の内容としては、一番わかりやすいのは財産犯の場合の実際の損害額となります。その他、身体的な損害を受けた場合には治療費などを参考にすることもあり、また精神的な損害に対する賠償として相当のものを賠償することもあります。被害者が受け取らない場合は贖罪寄付を行うこともあります。

(3)反省、謝罪の意を示す

逮捕された場合でも、反省や謝罪の意を明確に示すことによって、事件内容や状況によっては不起訴を目指すことができます。反省や謝罪の意をしっかりと示しているということから、再犯可能性が低いと考えられる場合には、検察官も刑罰を与えて再犯をしないようにする必要はないと判断し不起訴にする場合があります。

反省や謝罪の意思の示し方として、反省文や謝罪文の作成といった方法が考えられます。反省文は検察庁、謝罪文は被害者に宛てて作成することとなります。謝罪文は被害者に送ることを想定しますが、受取拒否により送れなかった場合でも、作成を行なったこと自体が一つの謝罪の示しとなります。

(4)冤罪の場合は否認を貫く

冤罪事件の場合、逮捕されてしまったとしても否認を貫くことによって不起訴となる場合があります。冤罪事件の場合、このままでは起訴のための証拠が足りないとして被疑者の自白が起訴に必要とされる場合も少なくなく、そのため否認を貫くことで証拠不十分による不起訴を目指すことになります。

冤罪事件で逮捕を行う場合、証拠が集まっておらず、証拠隠滅を防ぐために逮捕をしたというケースもあり、その中で否認を貫けば証拠が集まらないとして不起訴を得る可能性が上がります。否認の貫き方として、事実を否定した上で、その他については黙秘を行うという方法があります。

(5)親告罪の告訴を取り消してもらう

親告罪で被害者から刑事告訴されている場合であれば、被害者に告訴を取り消してもらえば検察官から起訴されることはありません。
ただし、告訴の取り消しは起訴される前のみ可能である点にご注意ください(刑事訴訟法237条1項)。

一例として、以下のような犯罪が親告罪として取り扱われています。

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 信書開封罪
  • 信書隠匿罪
  • 器物損壊罪
  • 親族間の窃盗罪
  • 親族間の詐欺罪

なお、2017年7月13日から施行された法改正により、それまでは親告罪だった強制性交等罪(旧強姦罪)と強制わいせつ罪は非親告罪として取り扱われるようになりました。
ストーカー規制法違反も従来は親告罪でしたが、2017年1月3日の法改正により、これも非親告罪となりました。

また、2023年7月の刑法改正で性犯罪規定が見直され、強制性交等罪と強制わいせつ罪はそれぞれ、「不同意性交等罪」、「不同意わいせつ罪」に改正されました。

不起訴を目指すなら早期に弁護士へ相談しよう

不起訴を目指す場合には、早期に弁護士に相談することが必要です。逮捕されてしまった場合、不起訴の処分を得るためには最大23日間という期間制限があり、そのため弁護士に早期に相談し事件を把握して期限に間に合うように迅速に不起訴を目指すための方法を知ることが必要となります。

逮捕後早期に弁護士に相談すれば、まず本人に接見を行い、その事件ごとの特性を把握して、その事件の見込みや、その事件で不起訴を目指すためにはどういった方策を取ることが一番合っているかを知ることができます。時間の制限がある中では速やかに弁護士に相談し方向を定めることが重要となります。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了