判決文抜粋
「刑法第一七七條にいわゆる暴行又は脅迫は相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることを以て足りる。」
不同意性交等罪は施行されてまだ間もないため、ここでは旧強制性交等罪・旧準強制性交等罪の判例を掲載します。
旧強制性交等罪・旧準強制性交等罪は、基本的には旧強姦罪・旧準強姦罪の裁判例が適用されます。
「刑法第一七七條にいわゆる暴行又は脅迫は相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることを以て足りる。」
暴行又は脅迫について、「相手方の抵抗が著しく困難になる程度」で足りると判示された裁判例です。
抵抗が困難であったかどうかは、時間的・場所的状況、被害者の年齢、精神状態など諸般の事情を考慮して客観的に判断されます。
「部屋が施錠されていた」「体格差があった」「周囲に人影がなかった」など、抵抗が困難だったと認められるような理由があれば、殴る蹴る、弱みにつけこむといった行為がなくても強制性交等罪が成立し得ます。
「被告人ノ豫審調書ニ依レハ被告人ハ陰莖ノ半部ヨリ少シ深ク入レタル處被害者カ泣キ出セシ爲メ直チニ摘出セリ云云ノ意味ノ陳述アリ」
「強姦罪ノ既遂ハ交接作用即チ陰莖ノ沒入ヲ以テ標準ト爲スヘキモノニシテ生殖作用ヲ遂ケタルヲ必要トセス(略)既遂ノ事實ヲ認定シタルハ相當」
未遂と既遂の分かれ目について「陰茎の没入で既遂に達し射精を要しない」と判示された裁判例です。
昭和30年にも、性器の一部没入で既遂に達するという高裁の判決がでています。
また、強制性交等罪についてもこの基準が準用されるとみられ、肛門、口腔性交においても性器の一部没入で既遂になると思われます。
「有形力の行使による暴行や畏怖せしむる言辞を弄するの手段に出でた事実がないとしても、欺罔等の巧妙な手段によつて機会を作り、相手方の性的無知ないしは性的所作事に起因する驚愕による前後の辨(わきまえ)を失した抗拒不能に乗じて姦淫を遂げた事実あるにおいては、強姦の罪の成立あるを免がれない。」
被害者が性交等の行われることについて認識できない状況(睡眠、泥酔状態など)では、心神喪失・抗拒不能だったと認められるのが通常です。
また被害者が性交等が行われることについて認識していた場合でも、自由意思に従って行動する精神的余裕が失われており、抗拒を期待できないと客観的に認められれば、準強制性交等罪成立の余地はあります。
この裁判例では、被害者は性的無知ないし驚愕によって抗拒不能だったとされ、被告人は有罪となりました。
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