「建築士として仕事をしているが、万引き事件を起こし逮捕されてしまった。建築士免許を剝奪されることはあるのか」
こちらの記事では、建築士として働かれている方が万引きの罪を犯してしまった場合、建築士免許を剝奪される可能性について、また逮捕後の流れや、免許を失わないためにすべきことなどについても解説します。
建築士が万引きにより免許を失わないためには、早期に弁護士に相談することが重要です。
目次
建築士が万引きで逮捕されたら免許を剥奪される?
建築士が万引き事件を起こして前科がついてしまった場合、建築士免許を剝奪されたり、新たに取得できなくなることがあります。
建築士は禁錮以上の前科がつくと免許を与えられないとされる
建築士に関する諸制度を定めた法律である建築士法は、7条2号にて、「絶対的欠格事由」(ぜったいてきけっかくじゆう、その業務に就くのに要求される免許を欠くとされる事柄)として、以下に該当する者には「一級建築士、二級建築士又は木造建築士の免許を与えない」と定めています。
二 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
建築士法7条
また同法8条1号は、「相対的欠格事由」(その業務に就くのに要求される免許を欠くとされるが、場合によっては認められる事柄)として、以下に該当する者には「免許を与えないことができる」と定めています。
一 禁錮以上の刑に処せられた者(前条第二号に該当する者を除く。)
建築士法8条
建築士が万引きで逮捕された後の流れ
万引きで逮捕された後は、どのような流れで刑が確定するのでしょうか。
逮捕されてから起訴・不起訴の決定が行われるまでは、最大で23日間の身体拘束が続く可能性があります。
いったん逮捕されても、警察は微罪処分として釈放し、事件が終了することがあります。微罪処分となるのは、被害額が少なく犯行が悪質でない、弁償が行われ和解が成立している等の場合です。
微罪処分以外の場合は、事件を検察官に引き継ぐ検察官送致(送検)が48時間以内に行われます。検察官の判断により24時間以内に勾留請求が行われ、勾留質問などのあと、原則10日間身柄が拘束されます。必要に応じ、最大10日間の勾留延長が行われます。
捜査の結果、検察官は起訴・不起訴を決定します。
建築士が万引きで免許を失わないための正しい対処法
前科とは起訴され刑事裁判で有罪が確定することをいいます。日本においては、起訴された場合の有罪率はほぼ99.9%に上るため、前科がつくことを避けるためには刑事裁判が開かれなくなる不起訴処分を得ることが重要です。
不起訴処分を得るためには、検察官が判断を下すまでに、示談を締結するなどの活動を行うことが必要となります。
また、逮捕されている場合でも、逮捕されたのみでは前科がつくことはありません。不起訴処分を得るために、まずは早期の釈放を目指すこととなります。
いずれの場合であっても、できるだけ早く弁護士に相談することが大切なのです。
万引きの刑罰は?初犯より再犯の方が罪は重くなる?
万引きで逮捕された場合、刑罰はどのようなものになるでしょうか。また再犯の場合、罪は重くなるのでしょうか。
万引きの刑罰は窃盗罪と同じ
「万引き」という罪名はなく、刑法235条の窃盗罪にあたります。万引きと聞くと軽い印象があるかもしれませんが、刑罰は10年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められており、刑法に定められた正式な犯罪であることはしっかりと認識する必要があります。
万引きの初犯と再犯の刑罰の相場
万引きの刑罰を決定する際は、被害金額が重視されます。初犯で被害金額も少額の場合であれば、弁償や示談が成立していれば微罪処分や不起訴処分になる可能性が高まります。また、起訴されても最大30万円程度の罰金刑となる場合が多いです。
また、再犯(2回目)でも罰金刑になる可能性が高いですが、被害金額が高額な場合は正式裁判になることも多く、執行猶予期間中に万引きで起訴されると原則として懲役刑になります。
さらに、服役後に万引きを繰り返した場合、「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」3条により、常習累犯窃盗罪として3年以上の実刑に処せられます。
万引きで有罪になると前科がつき建築士免許を失ってしまうことも
建築士法7条2号は、建築士が禁錮以上の刑に処せられてから5年以内の場合、「建築士の免許を与えない」としているため、万引きであっても禁錮以上の刑が付くと建築士免許を失う可能性があります。
また第8条1号の規定により、刑の執行から5年を経過しても免許を与えられないことがあります。
ただし、免許を失うことがある刑罰は「禁錮以上の刑」としているため、罰金以下の場合は対象となりません。
建築士が万引きで免許を失わないために弁護士へ早期相談
建築士が万引きの罪を犯したことにより前科がついた場合、免許の取り消しなどが行われる可能性があることがわかりました。
前科により免許を失わないためには、早期に弁護士に相談することが重要となります。
万引き被害者と示談をして釈放と不起訴を目指す
検察官により起訴が行われた場合、裁判で無罪になるのは非常に難しくなります。しかし、検察官が不起訴処分の判断を下した場合は、裁判を受けること自体がなくなるため、前科がつく可能性はゼロになります。
すなわち、前科がつくことを回避するためには、不起訴処分を目指すことが最も現実的な手段となります。
万引きのような被害者のいる犯罪の場合、早期に被害者対応を行うことが肝要です。示談を締結することで、検察官が再犯の可能性や加害者家族への影響などといった様々な情状を考慮し、最終的に「起訴するほどではない」と判断する「起訴猶予」の可能性が高まります。
ただし、チェーン店などは示談には一切応じない方針を取っているところも多く、その場合は被害の弁済を行い、謝罪を尽くすなど、示談とは別の形で反省の意を示すことで、不起訴処分の可能性を高めるケースが多くなります。
万引きがやめられない窃盗症(クレプトマニア)は治療が必要
万引きを繰り返してしまう人の場合は、窃盗症(クレプトマニア)という精神障害が原因となっている場合もしばしばあります。
窃盗症には、必要のないものなのに衝動的に万引きをしてしまう、万引きが成功したことに満足感を覚える、といった特徴があり、繰り返さないためには治療が必要となります。
万引きを行った場合、窃盗症が認められたからといって無罪となることは基本的にはありませんが、刑事責任が軽減される可能性はあります。
示談で早期釈放・不起訴で前科回避を目指すために弁護士に相談する
被害者との間に示談を締結するためには、弁護士によるサポートが欠かせません。
逮捕されてから起訴される前の身柄拘束が続く期間は、最大で23日間となっています。起訴が決定された後で示談が成立しても、後から不起訴とすることはできないため、示談交渉はその間に行う必要があります。そのため、できる限り早い段階で弁護士に相談することが大切になってきます。
逮捕されている場合、加害者本人は示談交渉はできず、また逮捕されていない場合であっても加害者と被害者が直接示談交渉を行うことは困難です。そのため、示談交渉の際は弁護士を間に立てることが必要となります。