相手の同意なくわいせつな行為を行い、けがをさせてしまった場合は不同意わいせつ致傷罪が成立します。
不同意わいせつ致傷罪は適切な対応を早い段階で取れば、不起訴処分(前科がつかないこと)や執行猶予付き判決を得られる可能性があります。
この記事では、法律の専門家である弁護士が、以下の点について分かりやすく解説します。
- どのような行為が「不同意わいせつ致傷罪」になるのか
- 不同意わいせつ致傷罪に問われた際の対処法
- 逮捕された後の手続きの流れ
正しい知識を身につけ、ご自身や大切なご家族の未来を守るためにも最後までご覧ください。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
不同意わいせつ致傷罪とは?
不同意わいせつ致傷罪は、相手の同意がない中でわいせつな行為を行った結果、けがをさせてしまった場合に成立する犯罪です。2023年の法改正で強制わいせつ致傷罪から名称が変わりました。
主な変更点は、「暴行や脅迫」がなくても罪が成立するようになったことです。
| 旧:強制わいせつ致傷罪 | 新:不同意わいせつ致傷罪 | |
| 成立のポイント | 相手に暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をし、けがをさせた場合に成立 | 相手の「同意がない」状態でわいせつな行為をし、けがをさせた場合に成立 |
これまでは、相手を押さえつけたり、「騒いだらひどい目にあうぞ」と脅したりといった行為がなければ、犯罪の成立が難しいケースがありました。
しかし今回の改正で、「相手が本当は同意していない状態」でわいせつな行為を行えば、罪に問われる可能性が明確になったのです。
相手にけががなかった場合は不同意わいせつ罪として捜査が進みます。不同意わいせつ罪についてはこちらの記事で詳細に解説しているのでご覧ください。
不同意わいせつ致傷罪の成立要件
不同意わいせつ致傷罪の成立要件は以下の3つです。
成立要件
- 同意がないこと
- わいせつな行為を行ったこと
- けがをさせたこと(致傷)
同意がないこと
法改正により、以下の8つのような状況が「同意しない意思」を形成、表明、実現することが難しい状態であると具体的に定められました。
同意がないとみなされる8つの状況
- 暴行または脅迫を用いる
- 心身の障害を生じさせる
- アルコールまたは薬物を摂取させる
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる
- 同意しない意思を表明するいとまを与えない
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させる
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせる
- 経済的・社会的な関係上の地位を利用する
例えば、「お酒に酔って意識がはっきりしない相手に」「上司という立場を利用して部下に」わいせつな行為をした場合などが、これにあたります。
わいせつな行為を行ったこと
わいせつな行為とは、相手の性的羞恥心を害する行為全般を指します。具体的には、胸や下半身を触る、服の中に手を入れるといった行為が典型例です。
他にも、裸の写真を取ったりすることもわいせつ行為とされています。
けがをさせたこと(致傷)
法律におけるけがは多くの人が考えるような骨折などの大けがだけではありません。
けが(致傷)の詳細
- 身体的なけが:抵抗した際にできた擦り傷、打撲、引っかき傷など
- 精神的な苦痛:事件が原因で発症したPTSD(心的外傷後ストレス障害)、急性ストレス障害、うつ病など
特に注意すべきは、PTSDなどの精神的な疾患も「けが」に含まれるという点です。「少し腕を掴んだだけだから大丈夫」といった安易な考えは、非常に危険です。
刑罰の重さは?初犯でも実刑の可能性はある?
不同意わいせつ致傷罪の刑罰は、法律で無期または3年以上の拘禁刑と定められています。
裁判員裁判の対象事件でもあり、初犯であっても実刑判決(刑務所へ行くこと)になる可能性がある犯罪です。
裁判員裁判とは?
くじで選ばれた一般国民が裁判官と共に、殺人などの重大な刑事事件で有罪か無罪か、刑の重さを決める制度。 専門的な視点に国民の社会常識を加えることで、より納得感のある判決を目指すことを目的としている。
不同意わいせつ致傷罪の量刑相場は拘禁刑6年~12年程度とされていますが、示談が成立しているなどの事情があれば、執行猶予が付く可能性もゼロではありません。
不同意わいせつ致傷で逮捕された後の流れは?

不同意わいせつ致傷で逮捕される場合、現行犯逮捕、後日逮捕の両方が考えられます。
現行犯逮捕、後日逮捕いずれにしても、警察に逮捕された後は、48時間以内に検察官に事件が引き継がれることになります(検察官送致)。
そして検察官によって留置の必要性があると判断された場合は、勾留が請求されます。
その後、裁判官によって勾留が決定された場合は、原則10日間身体拘束が続きます。勾留延長の場合は、さらに10日間以内の身体拘束手続きが実施され、逮捕から数えると最長で23日間留置場などで生活しなければなりません。
その後、検察官によって起訴/不起訴が決定され、起訴された場合は刑事裁判を受けることになり、有罪/無罪が確定します。
不同意わいせつ致傷で逮捕されないためにすること
不同意わいせつ致傷でトラブルになった場合、逮捕を防ぐためには、「被害者との示談を迅速に完了させて被害届を取り下げてもらう方法」が効果的です。
不同意わいせつ致傷について被害者と示談をするには、弁護士を仲介させる必要があるでしょう。
性犯罪の被害者の場合、加害者本人と連絡をとってくれないことも多いため、第三者である弁護士の存在が非常に重要となります。
また被害者の連絡先を知らない場合、捜査機関が被害者との仲介をしてくれるときもありますが、そのようなときでも「弁護士にのみ被害者の連絡先を教える」という条件がつくことが多いものです。
まずは不同意わいせつ致傷罪の示談交渉について、安心して任せられる弁護士を見つけてください。
なお、警察が事件を認知する前であれば、自首することで逮捕を回避し、最終的な刑事処分を軽くすることができる場合もあります。
不同意わいせつ致傷罪における示談のメリット
示談とは、加害者が被害者に対して謝罪し、示談金(慰謝料)を支払うことで、当事者間で事件を解決する話し合いのことです。
検察官や裁判官は処分を決めるときに、被害者の「加害者を許す」という気持ち(宥恕感情)を重視するため、示談が成立していると事件化の回避や不起訴処分になる可能性があります。
示談成立の具体的なメリット
示談成立のメリットはタイミングによって異なりますが、以下のとおりです。
タイミング別による示談成立のメリット
| タイミング | メリット |
|---|---|
| 逮捕前 | 警察沙汰になるのを防ぎ、事件化を回避できる可能性がある。 |
| 逮捕後〜起訴前 | 検察官が「当事者間で解決済み」と判断し、不起訴処分(前科がつかない)となる可能性がある。 |
| 起訴後 | 裁判になった場合でも、執行猶予付き判決や刑の軽減など、有利な判決を得られる可能性がある。 |
示談交渉は弁護士に依頼
注意点として、加害者本人やその家族が被害者に直接連絡を取ろうとすることは、避けるべきです。被害者の感情を逆なでし、事態をさらに悪化させる危険性があるためです。
示談交渉は、被害者の心情に細やかに配慮しながら冷静に進める必要があるため、弁護士を代理人として立てることをおすすめします。
アトム弁護士が対応した不同意わいせつ致傷罪の解決事例
不同意わいせつ致傷罪(不起訴処分)
マッチングアプリで出会った女性とホテルに入ったのち明確に「やらないよ」と言われたにもかかわらず腰に抱き着き押し倒してしまったケース。不同意わいせつ致傷の事案。
弁護活動の成果
示談交渉は相手方の要求が強かったが、粘り強く交渉。示談書郵送の際に宥恕を翻したらお金を返してもらう条件で示談を締結。その結果、不起訴処分となった。
不同意わいせつ致傷罪のお悩みは弁護士に相談を
刑事事件は時間が経てば経つほど、取れる選択肢は少なくなっていきます。
不同意わいせつ致傷罪に問われる可能性がある、あるいはご家族が逮捕されてしまったのなら、一日も早く、刑事事件に強い弁護士に相談してください。
アトム法律事務所では24時間365日相談を受け付けています。警察介入事件では初回30分無料相談もありますので、ぜひご活用ください。




