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不同意わいせつで適用される刑罰
不同意わいせつ罪は、16歳以上の者に対して「同意を得ることなく」わいせつ行為に及んだときに罪が成立します。
15歳以下の者に対するわいせつ行為は、同意があっても不同意わいせつ罪に問われます。
※令和5年7月13日に、不同意わいせつ罪を定めた改正刑法が施行されました。
改正日より前の犯行なのか、改正日以降の犯行なのかに応じて処罰の内容が変わります。
ここでは現行法と旧刑法、それぞれの条文を解説します。
刑法176条 不同意わいせつ
6か月以上10年以下の拘禁刑
次に掲げる行為又は事由(略)により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕(がく)させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
不同意わいせつ罪は相手が同意していないもしくは同意できないような状況でのわいせつ行為を処罰する規定です。
刑法改正前の強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪に該当する行為は、不同意わいせつ罪に問われます。
旧刑法176条 強制わいせつ
6か月以上10年以下の懲役
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
改正前の強制わいせつ罪は、暴行又は脅迫を用いてわいせつ行為をした場合にのみ適用される犯罪でした。
条文中の「暴行又は脅迫」は「相手の意に反して」という程度の行為であれば足りるとされています。
また条文中の「わいせつな行為」とは具体的には接吻、陰部に手を触れる、乳房を弄ぶなどの行為を指します。
旧刑法178条1項 準強制わいせつ
6か月以上10年以下の懲役
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、(略:強制わいせつ罪)の例による。
条文の「心神喪失」「抗拒不能」とは、精神的な傷害により正常な判断力を失っている状態、心理的又は物理的に抵抗ができない状態を指します。
具体的には睡眠、酩酊等の状態や、錯誤などによって抵抗を期待できない状態等を指します。