5年以下の拘禁刑
第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
他人から預かったり、保管を任されたりしている物を横領した場合、横領罪により処罰されます。
業務の関係で預かっていたり保管していたりしている物を横領した場合は、業務上横領罪でより重く処罰されます。
横領罪にあたらない場合でも、任務に背いて損害を加える等した場合、背任罪として処罰される可能性があります。
第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
横領とは「他人から預かる」「保管を頼まれる」等、財物の委託を受けている状態で、委託の任務に背いてその財物を自分の物のように処分する意思を持って手に入れることを言います。
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
「業務」とは、人がその社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務で、他人の物を占有保管することを内容とするものをいいます。
そのため、必ずしも職業として行われる必要はなく、法令、契約、慣例によるとを問いません。
第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
自分や第三者を得させたり相手に害を与える目的で任務に背く行為を行い、相手に財産上の損害を加えたときには本罪に問われます。
「会社に損害を与えるために社外秘の秘密を外部に漏らした」といった行為が典型例です。
横領や背任の被害者は会社である場合が大半です。
横領や背任が被害会社に発覚すると、事実調査が行われ、被害届や告訴状が出されて刑事事件化する場合があります。
民事上は、被害会社から損害賠償請求を受ける可能性もあるでしょう。
横領や背任の犯行は、税務署調査や担当者交代の際に発覚することが多いです。
犯行発覚後は被害会社から事実調査を受け、被害届提出や告訴により刑事事件化することがあります。
その場合、取調べや家宅捜索を受け、場合によっては逮捕されることもあるでしょう。
横領罪や背任罪においては、その区別がしばしば問題となります。
基本的には、自己の名義・計算で行われた場合は横領罪、被害者側の名義・計算で行われた場合は背任罪となります。
ここでは横領罪と背任罪のいずれが成立するか問題となった判例を2つ紹介します。
「(金員を)組合から支出を受けて、被告人等が自由に処分し得る状態に置き、これを被告人等が預金謝礼金として支払いまたは融資希望者に貸付けていたものであることが窺われるから(略)組合の計算においてなされた行為ではなく、被告人等の計算においてなされた行為であると認むるを相当とする。(略)従つて原判決が本件につき業務上横領罪の成立を認めたのは正当(である)」
勤務する信組支店の預金成績の向上を装うため、預金者に謝礼金として組合の金員を交付し、これを補填するため、貸付を受ける資格のない者に金員を貸し付けたという事案において、業務上横領罪の成立を認めた判例です。
実質的な経済的利益の帰属は組合でなく、被告人にあるため、背任罪でなく業務上横領罪が成立するとされました。
「(農業協同組合の組合長による組合の当座預金の)払出は、被告人が先に任務に背いて組合名義をもつて振出した所論各約束手形の支払のためであつた」
「先に被告人が約束手形を振出したこと自体が背任罪を構成するものであり、その手形を組合の当座預金から払出して支払つた行為もまた右背任罪の一部であつて(横領罪は成立しない)」
農業協同組合の組合長が組合長の資格を悪用し、組合名義の約束手形を振出交付し、これを取得した第三者から支払請求を受けて、組合の当座預金から、金員を引出してこれを支払ったという事案において、一連の行為は背任罪を構成すると判示した裁判例です。
約束手形の振出交付・支払を全体として実質的に捉え、約束手形の振出交付は組合の名義・計算で行われるため背任罪を構成し、その支払行為は背任罪の一部であって、業務上横領罪を構成しないとされています。
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