判決文抜粋
「たとえ名義人として表示された者の氏名が被告人の氏名と同一であったとしても、本件各文書が弁護士としての業務に関連して弁護士資格を有する者が作成した形式、内容のものである以上、本件各文書に表示された名義人は、第二東京弁護士会に所属する弁護士(略)であって、弁護士資格を有しない被告人とは別人格の者であることが明らかである」
文書偽造罪においては、「偽造」にあたるか否かがしばしば争われます。
ここでは、同姓同名の弁護士の名義で文書を作成した行為が偽造にあたるとされた判例をご紹介します。
また、郵便送達報告書の受領者の署名押印欄に他人の氏名を署名する行為が私文書偽造罪にあたるとした判例もご紹介します。
「たとえ名義人として表示された者の氏名が被告人の氏名と同一であったとしても、本件各文書が弁護士としての業務に関連して弁護士資格を有する者が作成した形式、内容のものである以上、本件各文書に表示された名義人は、第二東京弁護士会に所属する弁護士(略)であって、弁護士資格を有しない被告人とは別人格の者であることが明らかである」
私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあるとされています。
そのため、たとえ自己の氏名と同じ氏名で文書を作成しても、文書の性質上、名義人が弁護士資格を有する者である場合、弁護士資格のない別人が作成者となることは、文書の名義人と作成者の人格的同一性を偽るものとして偽造にあたるとされました。
同姓同名であっても、別人が作成したと判断される文書を作成すれば罪は成立し得るというわけです。
「郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は,同人名義の受領書を偽造したものとして,有印私文書偽造罪を構成すると解するのが相当である」
支払督促制度を悪用して叔父の財産を差し押さえようとして、虚偽の支払督促を申し立て、支払督促正本等の送達に赴いた郵便配達員に対して、叔父を騙って押印署名をしたという事案です。
「文書」を偽造したのか、「署名」を偽造したのかが争われましたが、文書を偽造したものとされました。
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