
警察から呼び出しを受けた! 呼び出しに応じた後は何をするのか、そのまま逮捕されてしまうのではないか、素直に出向いた方がよいのか、様々な不安や疑問が浮かぶと思います。
本記事では、警察からの呼び出しに関する様々な疑問を解消し、適切な対応を解説します。 警察からの呼び出しがあった段階で弁護士にご相談すれば、その後の刑事手続を有利に進めることができます。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
警察が呼び出しをする理由
被疑者としての呼び出し
「被疑者」とは、捜査機関から犯罪の疑いを受けている者をいいます。 刑事事件を起こした場合、事件の被疑者として警察から呼び出しを受けることになります。 この場合、捜査のための取り調べが行われることが多いです。 被疑者としての呼び出しの場合、取り調べの後にそのまま逮捕されてしまうこともあります。
参考人としての呼び出し
「参考人」とは、事件について参考となりうる情報を持っている人を言います。 例えば、刑事事件の目撃者や、被疑者の家族・知人がこれにあたります。 取り調べの目的は、捜査をする上で必要な情報を得ることにあります。 参考人としての呼び出しの場合、これに応じたとしても逮捕される可能性は通常ありません。
重要参考人としての呼び出し
「重要参考人」とは、参考人のうち、まだ被疑者といえるほどの嫌疑は固まっていないが、犯人の可能性がある人のことを指します。 「重要参考人」として取り調べを受けると、捜査の状況や供述内容によっては「被疑者」となる場合もあります。
身元引受人としての呼び出し
「身元引受人」とは、被疑者の身体を拘束しない場合に被疑者を監督する者をいいます。 「身元引受人」には、通常、被疑者の家族や上司がなります。 「身元引受人」が呼び出しに応じることで、被疑者は逮捕を回避できる可能性が高まるため、呼び出しには早期に応じましょう。
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被疑者 | 参考人 | |
---|---|---|
定義 | 事件への関与を疑われている者 | 事件について参考となる情報を持っている者 |
呼び出し後の手続き | 取り調べ | 取り調べ |
逮捕の可能性 | ある | ほとんどない (ただし重要参考人は別) |
弁護士への相談 | したほうがよい | 必要性は低い |
警察の呼び出しに応じると取り調べが行われる
被疑者として警察に呼び出されて出頭した後は、取調室に案内されて警察官から取り調べを受けることになります。 取り調べに関する基本的な情報を解説します。
取り調べとはなにか
「取り調べ」とは、捜査機関が被疑者や参考人に対して問いを発し、これに応答する被疑者・参考人の供述を得て、その内容を記録することをいいます。 「取り調べ」の最大の目的は、被疑者の供述を供述調書という書面に警察官が記録して、後の裁判における証拠として利用することにあります。 そのため、取り調べ時における供述は細心の注意が必要となります。
呼び出し後の取り調べに応じるかはあくまで任意である
取り調べには、応じる義務がある場合と義務がない場合があります。 応じる義務がある場合とは、すでに逮捕されてしまった後の取り調べです。 これに対して、警察からの呼び出しを受けてされる取り調べは、応じる義務はありません。 あくまで取り調べを受けるかどうかは本人の意思に任せられているのです。
ただし、任意だからといって正当な理由なく取り調べを拒否することはおすすめしません。 警察により逮捕される可能性が上がってしまうことになるからです。
被疑者の取り調べの流れ
取り調べが開始されると、まず「黙秘権」の告知があります(刑事訴訟法198条2項)。 「黙秘権」は、『自己に不利益な供述を強要されない権利』(憲法38条1項・刑事訴訟法311条1項)と規定されており、要するに、取り調べにおいて話したいことだけ話し、話したくないことは話さなくてもいい権利です。
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「黙秘権」の告知後は、警察が被疑者に対して問いを発して、被疑者は応答もしくは黙秘をする形で進行していきます。 被疑者の供述内容は、供述調書にまとめられます。 取り調べの最後に、被疑者は供述調書の内容に誤りがないことを確認し、供述調書にサインをします。
被疑者の取り調べの時間
取り調べの時間は、通常2~3時間程度の場合が多いです。 しかし、被疑者が頑なに犯行を黙秘・否認している場合や、重大事件・事実関係が複雑な組織犯罪の場合には、取り調べの時間も長くなります。 ただし、取り調べの時間にも制限はあり、特別な許可がない限り、1日8時間以内、基本的に午前5時から午後10時までの日中のみという形で運用されています。
被疑者の取り調べを受ける際の注意点
黙秘権は適宜行使する
取り調べ時の供述は、後の裁判で証拠となるため、自身に不利な供述をしないことが大切です。 例えば、冤罪事件や事件当時の記憶があいまいな事件では、話をしない方がいいこともあります。 少しでも『やったかもしれない』という話をすれば自白とみなされ、犯人だと断定して捜査がすすめられていくからです。
仮に、自白を『強制』されたり『任意にされたものでない疑い』がある場合には証拠とすることはできませんが(刑事訴訟法319条1項)、その立証には困難を伴い、嘘の自白であっても証拠となってしまう恐れがあります。 さらに、供述を後から撤回しても、信用してもらえる可能性は低くなります。 そのため、黙秘権を適宜行使して、自己に不利な供述をしないように注意しましょう。
供述調書をよく確認してからサインする
一度供述調書にサインをしてしまうと、間違った内容であっても撤回することが困難になります。そのため、最後にサインする前に、供述調書の内容をよく確認してください。
供述調書は警察官が作成するため、話した内容がそのまま反映されるとはかぎりません。 文章の書き方によっては、自分が意図した内容と違うニュアンスで書かれることもよくあります。 例えば、自白ととれるような書き方だったり、あたかも罪を認めるような形で供述調書に記載されることもあります。 そのため、供述調書の内容をよく確認してから、供述調書へサインをしましょう。
取り調べの録音は可能
警察の取り調べを携帯で録音することは違法ではありません。 しかし、警察は録音することを良しとはしないため、録音することを告げた場合にはやめるように言われるでしょう。 録音をしたいという場合には、隠れて行うことになりますが、見つかった場合にはもめる可能性があります。 ご自身で録音すると警察とトラブルになる可能性があるため、違法な取り調べの不安があるという場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
警察からの呼び出しに応じたらそのまま逮捕されてしまうのか
警察からの呼び出しに応じたらそのまま逮捕されてしまうのではないかと不安を覚える方も多いですが、必ずしも逮捕されるわけではありません。
必ず逮捕されるわけではない
警察からの呼び出しに応じても、必ず逮捕されるわけではありません。 むしろ逮捕するときは逮捕状を持っていきなり自宅に来ることが多いので、呼び出しに従ったことで逮捕されるというケースは実は少ないです。
呼び出し後に逮捕されるかどうかは、捜査の進展度合いと被疑者に逃亡や証拠隠滅の恐れがあるかどうかを基準に決定されます。 例えば犯罪を犯した疑いは強いが逃亡の恐れがないので逮捕はせず、在宅で刑事手続を進めて行くケースもあります。
ただし、逮捕されてしまう場合もある
警察からの呼び出しに応じてそのまま逮捕されてしまう場合もあります。 例えば、逮捕状発付の決め手になるような情報を引き出すために呼び出す場合です。 この場合、不用意に発言してしまい容疑が固まると逮捕されてしまう可能性もあります。
また、警察が時間稼ぎのために呼び出しをしている場合もあります。 被疑者を警察が逮捕した場合、警察は逮捕後48時間以内に事件を検察へ送らなければなりません。 そこで、逮捕前に任意で呼び出すことで、時間制限を避けて取り調べを行うのです。 この場合、被疑者の発言次第では容疑が固まり、そのまま逮捕されてしまう場合もあります。
呼び出し後に逮捕されてしまった場合はどうなるのか
仮に呼び出し後にそのまま逮捕されてしまった場合、次のような形で刑事手続が進んでいきます。
まず逮捕後48時間以内に警察は事件を検察官へ送らなければなりません。 事件を受けた検察官は、24時間以内に勾留請求の要否を判断します。 「勾留」とは、被疑者を刑事施設に拘束する処分のことです。 勾留請求が認められると、被疑者は10日間刑事施設に拘束されることになり、さらに10日間勾留が延長されることもあります。 ここまで最長23日間の身体拘束をされる可能性があるのです。 最終的に、検察官は起訴不起訴の判断し、起訴の判断をした場合は、事件が法廷で審理されることになります。
逮捕後の刑事手続きの流れについて詳しくは以下のページをご覧ください。
呼び出し後の見通しを知りたい方は弁護士にご相談を
警察からの呼び出し後、そのまま逮捕されるかは判断が難しい部分があります。 仮に逮捕されてしまった場合、起訴不起訴の判断がされるまで最長で23日間の身体拘束がされる可能性があり、社会生活に大きな影響を及ぼしかねません。
警察からの呼び出しを受けた時点で弁護士にご相談頂ければ、呼び出し後の見通しをつけたり、逮捕を回避するための弁護活動をすることができます。 呼び出しを受けてご自身の今後にご不安を感じられている方は、弁護士にご相談されることがおすすめです。
警察からの呼び出しを拒否することができるのか
警察からの呼び出しには応じる義務はありません。 しかし、義務がないからといって呼び出しに応じないと、逮捕される場合があります。
拒否することはできるがおすすめしない
被疑者として警察から呼び出しを受けている場合、呼び出しを拒否したら、最悪の場合、逮捕されるおそれがあります。
合理的な理由なく呼び出しを拒否すると、逮捕の要件の一つである、『逃亡または証拠隠滅のおそれ』が高いと判断されてしまうからです。
そのため、合理的な理由もなく呼び出しを拒否し続けるのはおすすめできません。
また、参考人として警察から呼び出しを受けている場合も、呼び出しを拒否することはおすすめしません。
事件について警察がどうしても証言を取りたいと思っているような場合には、警察官が家にまで押しかけてくる可能性があるからです。
まだ犯人について特定作業を進めている最中であった場合、呼び出しを無視したことで犯罪の嫌疑をかけられる場合もあります。
仕事がある場合はどうすればよいか
呼び出しの日時に外せない仕事がある場合は、呼び出しに応じられない具体的な理由や事情を述べ、日程調整の希望を伝えるべきです。 きちんと警察に説明してお願いすれば、可能な限り日程調整をおこなってくれる可能性があります。 『取り調べに応じる意思はあるがどうしても日程が合わない』という点を伝えることが大切です。
警察に呼び出しを受けたら弁護士に相談した方が良い理由
警察から呼び出しを受けてしまった場合、早い段階で弁護士に相談することで、その後の進展を見通すことができ、刑事手続を有利に進めることができます。
今後の見通しの説明や弁護士の存在を通して安心感を得ることができる
周囲に味方がいない状況で、弁護士は唯一の依頼者の味方であり、安心感を得ることができます。 刑事手続の流れは複雑であり、身体拘束も長期間に渡るため、刑事手続の流れの説明を通じて、今後の不安を和らげることができます。
また、取り調べは長時間にのぼることもある上、時には圧迫的な取り調べを受けることもあるため、精神的に非常に辛いものです。 そのような辛さから逃れたい一心で、自己に不利益な供述をするおそれは否定できません。 弁護士がいることで精神的な支えを得て、このような事態を防止することができます。
取り調べにどのような対応をすればよいかわかる
取り調べに対する適切な対応を弁護士が助言することで、不利益な供述を防止することができます。 具体的に、取り調べにおける受け答えのポイントや適切な黙秘権の行使方法、供述調書へのサインについて助言することができます。 一度供述調書にサインをしてしまった場合、後から撤回することは困難を伴うため、取り調べ時の対応について弁護士の助言を受けた方が安心です。
不当な取り調べを抑制することができる
不当な取り調べが行われた場合に弁護士が抗議することで、取り調べの適正化を図ることができます。 例えば、正当な理由なく8時間を超えた取り調べや、度を越えて圧迫的な態度をとる警察に対しては、弁護士から抗議をすることができます。 抗議を通じて取り調べを適正化することができ、誤った供述をする危険を防止することができるのです。
逮捕されない可能性が高まる
逮捕されること自体を回避できる可能性が高まります。 逮捕は証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合にされるものです。 ご家族の身元引受けや逮捕をしないよう求める意見書の提出、被害者との示談交渉を通じて、弁護士は上記おそれがないことを積極的にアピールすることができます。
逮捕されてしまった場合も早期に釈放される可能性が高まる
逮捕されてしまった場合も、早期釈放や不起訴決定を受ける可能性が高まります。 例えば、示談を成立させ、被疑者の身柄を拘束しておく必要性がないことを弁護士は捜査機関に対して説得的に主張することができます。 弁護活動は早ければ早いほど活動の幅も広がるため、早い段階でのご相談が重要です。
弁護士あり | 弁護士なし | |
---|---|---|
供述内容 | 不利益な供述を防止 | 不利益な供述をするおそれ |
不当な取り調べ | 長時間・威圧的な取り調べを抑制 | 長時間・威圧的な取り調べを受けるおそれ |
逮捕・釈放 | 逮捕回避・早期釈放 の可能性が高まる | 逮捕が長期化するおそれ |
弁護士費用の相場などについては『弁護士費用の相場|逮捕されている場合・逮捕されてない場合は?』をご覧ください。
警察からの呼び出しの時期、期間、方法
警察からの呼び出しにまつわる細かな疑問について解説します。
土日に警察から呼び出されることはあるのか?
土日に警察から呼び出されることもあります。 警察は休みなく365日ずっと捜査稼働をしています。 平日の日中に呼び出されることが多いですが、場合によっては土日に呼び出されることもあります。
いつまで呼び出しは続くのか?
警察が十分に捜査したと判断するまで、呼び出しは続きます。 逮捕前の段階や、逮捕が行われず在宅のまま手続きが進む場合、呼び出しの続く期間についての相場は事件により異なります。 数週間で終わるケースもあれば数か月かかるケースもあります。
どのような方法で呼び出されるのか?
実務上、電話、呼び出し状の送付その他適当な方法で呼び出されます。 警察から電話がかかってきたり、呼び出し状が届いて警察に呼び出されるケースが多いです。
警察からの呼び出しにお悩みの方は弁護士にご相談を
警察からの呼び出しを受けた時点で弁護士にご相談頂ければ、弁護活動の幅も広がります。 刑事手続を有利に進めるためには、早めの弁護士への相談が必要です。 警察から呼び出しを受けてご不安の方は、刑事事件に強いアトム法律事務所までご相談ください。