判決文抜粋
「第1行為は第2行為に密接な行為であり,実行犯3名が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である」
ここでは、第2行為で殺害するつもりが第1行為で死亡していた可能性がある場合に、第1行為の時点で殺人罪の実行の着手を認めた判例をご紹介します。
また、致死量以下の空気を静脈に注射した行為に殺人未遂罪の成立が認められた判例についてもご紹介します。
「第1行為は第2行為に密接な行為であり,実行犯3名が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である」
被害者を薬品で失神させた上自動車ごと海中に転落させて溺死させようとするも、薬品の吸引時点で被害者が死亡している可能性があったという事案で、失神の時点で殺人罪の実行の着手があるとした判例です。
弁護側は薬品の吸入はあくまで気絶させるためであったから、殺人の故意も実行行為もないため、殺人罪は成立しない旨を主張していました。
「本件のように静脈内に注射された空気の量が致死量以下であつても被注射者の身体的条件その他の事情の如何によつては死の結果発生の危険が絶対にないとはいえないと判示しており、右判断は、原判示挙示の各鑑定書に照らし肯認するに十分である」
本件は、被害者の静脈内に致死量以下の空気を注射した事案ですが、たとえ致死量以下であっても死の結果発生の危険が絶対にないはいえないとされ、殺人罪の実行の着手があったとされました。
犯罪をしようとした際、その行為からは結果の発生は到底不可能だったという場合を「不能犯」と言います。
殺人罪では、弁護側から「不能犯であるため殺人罪は成立しない」という主張がされることが多いですが、実務上、こうした主張が認められるケースは少ないようです。
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