1. »
  2. »
  3. 名誉毀損

名誉毀損の刑罰・捜査の流れ・裁判例

名誉毀損で適用される刑罰

不特定、または多数の人に事実を示し、人の社会的評価を害す行為をした場合、名誉棄損罪で処罰され得ます。
また、事実を示さなくとも、人に対して単に軽蔑の意を示す等すれば、侮辱罪が成立し得ます。

刑法230条 名誉棄損

3年以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

人の社会的評価を害するような、ある程度具体的な事実を不特定または多数の人に示した場合、この罪に問われ得ます。
条文にもある通り、事実の真偽は問われず、本当のことを言った場合であっても、その人の社会的評価を害する内容のものであれば、原則として罪は成立します。

刑法231条 侮辱

1年以下の拘禁刑
もしくは30万円以下の罰金
または拘留もしくは科料

第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

事実を摘示せず、人に対して単に侮辱するようなことを言ったり、図画で示したり、動作で示したりすると本罪が成立し得ます。
なお、侮辱罪の法定刑は、刑法の中ではもっとも軽いものでしたが、2022年7月から法定刑が引き上げられました。

名誉毀損の捜査の流れ

名誉毀損においては、被害届の提出や告訴により、警察が捜査を開始して検挙するケースが多いです。
なお、民事上では、被害者から損害賠償請求される可能性もあります。

被害届が提出された場合

1 被害届提出・告訴
2 捜査開始
3 検挙

名誉毀損を被害者が認知したことで告訴され、警察による捜査が開始されるケースがあります。
刑事事件化した場合には、取調べを受けたり家宅捜索を受ける可能性もあります。
なお、名誉毀損は親告罪のため、告訴されなければ起訴されることはありません。

名誉毀損の有名裁判例

名誉毀損罪においては「事実の摘示」が必要とされ、この点に侮辱罪との違いがあります。
ここでは、被害者の氏名明示がなくとも名誉毀損罪の成立を認めた判例をご紹介します。
また、摘示した事実が真実であると誤信した場合の名誉毀損罪の成否について判示した判例もご紹介します。

氏名を明示せずとも被害者が特定されているため名誉毀損罪にあたると判示した判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和27年(あ)第3760号 判決年月日: 昭和28年12月15日

判決文抜粋

「被害者の氏名こそ明示してないが、第一審判決挙示の証拠を綜合するとそれが(被害者)に関して為されたものであることが容易にわかる場合であることが認められる。だから該記事は被害者の特定に欠くるところはないというべきである。」

弁護士の解説

町議会議員である被害者について、身体的障害と関連させて批判する記事を執筆掲載した事案で、被害者の氏名の明示がなくとも、その特定がされているとして、名誉毀損罪の成立を認めた判例です。
名誉毀損罪は、特定人の社会的名誉が害される危険性のある行為を処罰するものであるため、誰の名誉を棄損したものであるかが明らかになっている必要がありますが、氏名を明示しなかった場合であっても、処罰の対象になり得ます。

事実を真実と誤信したことにつき相当の理由がある場合と名誉毀損罪の成否

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和41年(あ)第2472号 判決年月日: 昭和44年6月25日

判決文抜粋

「たとい刑法二三〇条ノ二第一項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である」

弁護士の解説

刑法230条の2は、専ら公益目的でされた公共の利害に関する事実に関する名誉毀損行為につき、事実が真実であるとの証明がなされた場合には罰しないとしています。
真実の証明がなかった場合、かつての判例は本罪の成立を認めていましたが、この判例によって、真実であるとの誤信につき確実な資料根拠に照らし相当な根拠がある場合には犯罪の故意がなく名誉毀損罪は成立しないと判示されました。

真実と誤信する相当の根拠がないとされた判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和45年(あ)第2524号 判決年月日: 昭和46年10月22日

判決文抜粋

「資料が現に係属中の刑事事件の一方の当事者の主張ないし要求または抗議に偏するなど断片的で客観性のないものと認められるときは、これらの資料に基づく右誤信には相当の理由があるものとはいえない」

弁護士の解説

ある裁判官について「外国の圧力に屈した売国奴」などと記載したビラを配布した事案です。
先にあげた判例のとおり、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは名誉棄損罪は成立しないとされています。
ただこの事案においては、断片的で客観性のない資料に基づく誤信であると判断され、相当の理由がないとして有罪判決が下されました。

刑事事件でお困りの方へ
無料相談予約をご希望される方はこちら
24時間365日いつでも相談予約受付中 0120-204-911

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。