
刑事事件を起こし書類送検された場合、前科は付くのでしょうか。
「書類送検」とはニュースなどでよく聞く言葉ではありますが、具体的にどのような処分なのかは知らないまま、「逮捕よりも軽い処分」と思っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、書類送検とはどのようなものなのか、書類送検後の流れ、そして前科を付けないためにはどのようにすべきかなどについて、それぞれ解説しています。
書類送検された場合、前科が付くことを避けるためには、できる限り早期に弁護士に相談をし、適切な対応を行うことが重要です。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
書類送検とは?書類送検の意味について
ニュースなどを見ていると、しばしば「〇〇容疑者が××の容疑で書類送検されました」などと目にすることがあります。
書類送検はその言葉の響きから、また身体拘束も伴わないため、「逮捕より軽い処分なのでは」と思われることがよくあります。しかし、これは全くの誤解であるといえます。
ここでは、書類送検とはどのようなものなのかについて解説していきます。
書類送検と逮捕の違い
書類送検とは、警察が捜査を行った事件の書類を検察に送る手続きのことをいいます。
警察が捜査をした事件は、原則として全て検察に送られ、検察官によって裁判にかけるかどうかが判断されます。
このとき、逮捕されている事件では本人の身柄と書類が検察に送られ、逮捕されない事件は書類のみが検察に送られます。後者の措置を一般に書類送検と呼びます。
逮捕される事件と書類送検される事件の違いは、被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかによります。
逃亡や証拠隠滅のおそれあり | 逃亡や証拠隠滅のおそれなし |
---|---|
逮捕して事件を捜査 | 逮捕しないで事件を捜査(在宅捜査) |
逮捕された場合は留置場に入ることになりますが、書類送検の場合は自ら警察署に出向いて取り調べが行われるため、身体の拘束を伴いません。これを在宅捜査といいます。
書類送検は逮捕より処分が軽くなるわけではない
書類送検は、身体の拘束を伴わないという点のみを見ると軽い処分に見えますが、逮捕が行われるかの判断の違いは主に逃亡や証拠隠滅のおそれの有無によるため、送検された時点ではどちらが重いということはできません。
捕まえておかなければ、逃亡や証拠隠滅の危険があり、捜査や裁判を受けさせることができない場合に逮捕ができるということです。
逆に言えば、どんなに重たい罪であっても、逃亡や証拠隠滅のおそれが一切なく、捜査や裁判を問題なく行うことができるのであれば、逮捕することはできず、在宅捜査となって書類送検されることになります。
そして、書類送検の場合でも逮捕の場合でも、最終的な処分が決まるのはその後の起訴・不起訴の判断や裁判の判決です。
ただし、逮捕され身体拘束を受けたということは、基本的には在宅で捜査の進む書類送検の場合よりも、捜査機関からは厳しい目で見られているということはできます。
また、一般的に重大犯罪ほど、逃亡や証拠隠滅のおそれが高いと評価されるため、軽微な事件よりも逮捕されやすいとはいえるでしょう。
書類送検された後の処分はどうなる?
書類送検が行われた場合、その後の処分はどのようなものになるのでしょうか。書類送検後の流れや、最終的に処分が決定されるまでについて解説します。
在宅捜査中は検察官の呼び出しに答える必要がある
書類送検された場合、在宅で普段通りの生活を送ることができますが、決して無罪となったわけではないため、安心して何もしないというのは明らかに誤りです。
書類送検後は検察官から呼び出されることがあり、その際には検察庁に出頭する必要があります。検察官はその取り調べや警察から送られた書類などを精査し、被疑者を起訴し裁判を行うか、裁判を行わない不起訴処分とするかを決定します。
検察官からの呼び出しへの対応はある程度は融通をきかせることが可能ですが、何度も無視するなどした場合、逃亡のおそれがあるとして逮捕される可能性があります。
書類送検の場合は起訴・不起訴の決定には時間がかかることがある
逮捕された事件では最長23日間以内に起訴・不起訴の決定がなされますが、書類送検された事件では起訴・不起訴の判断までの時間制限がありません。これは逮捕と書類送検の大きな違いといえる部分であり、起訴・不起訴の判断には長ければ1年以上を要することもあります。
そのため、普通の日常生活を送っているうちに事件を忘れてしまい、検察庁への呼び出しが行われた際に焦ることも多いです。
検察官が事件を起訴した場合には、裁判で罪が裁かれることになります。このとき、通常の公開の刑事裁判が開かれる場合と、書類審査のみで罰金刑を下す略式手続となる場合の2パターンがあります。
一方、不起訴処分となればその時点で事件は終了です。なお、このとき特に不起訴の連絡がされることはなく、何の通知もないまま事件が終了していることがあります。
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書類送検されたのみでは前科が付くことはない
書類送検や逮捕をされたのみでは、前科がつくことはありません。前科とは有罪判決が確定した事実のことを指し、裁判で有罪判決を受け、判決が確定した際につくものです。
そのため、書類送検や逮捕をされた場合であっても、裁判を行わないという不起訴処分の判断がなされた場合は前科はつかずに済みます。
一方、起訴されて有罪となった場合には、一般的には軽い処分と思われがちな罰金刑や執行猶予付き判決の場合でも前科になります。
書類送検後、前科を付けないためには早期に弁護士に相談を
何らかの罪を犯して書類送検された場合、最終的な処分を少しでも軽くするためには、早期に弁護士に相談し、示談を締結し不起訴処分を得ることが重要です。
書類送検となったからといって決して安心はせず、身体拘束を受けず普通の生活を送ることができる利点を生かし、できる限り早期に弁護士に相談することが重要です。
不起訴処分で前科回避を目指す
日本においては、起訴され裁判が行われた場合の有罪率はほぼ99.9%に上ります。いっぽう先述の通り、不起訴となった場合は刑事裁判自体が開かれなくなるため、前科がつくことはありません。
不起訴処分を得るためには、検察官が判断を下すまでに、示談を締結するなどの活動を行うことが必要となります。
示談で不起訴の可能性を高める
不起訴による釈放の可能性を高めるためには、被害者のいる犯罪の場合、早期に被害者対応を行うことが肝要です。
真摯に反省して謝罪を行い、示談を締結することで、検察官が再犯の可能性や加害者家族への影響などといった様々な情状を考慮し、不起訴の可能性が高まります。
被害者と示談するためには弁護士に相談する
被害者との間に示談を締結するためには、弁護士によるサポートが欠かせません。
起訴が決定された後で示談が成立しても、後から不起訴とすることはできないため、示談交渉はその前に行う必要があります。しかし、加害者本人が被害者と示談交渉を行うのは、被害感情の点からも連絡先入手の点からも困難です。
そのため、示談を締結するには、早期に弁護士に相談することが重要なのです。