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看護師に前科がついたら免許はどうなる?早期に弁護士に相談しよう

看護師の前科

「看護師の仕事をしているが、事件を起こし逮捕されてしまった。もしも前科がついた場合、看護師免許を剝奪されることはあるのか」「看護師を目指しているが、過去に前科がある。試験を受けて看護師免許を取得することはできるのか」

こちらの記事では、現在看護師として働かれている方や、これから看護師を目指している方の前科と免許・資格に関するこのような疑問に詳しくお答えしていくほか、不起訴処分を得て前科を回避するためにすべきことについても解説します。

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看護師は前科がついたら免許を剥奪される?

刑事事件を起こして前科がついてしまった場合、看護師免許を取り消されたり新たに取得できなくなることがあります。

看護師は罰金以上の前科がつくと免許を取り消される場合がある

看護師が何らかの罪を犯し、罰金以上の刑に処せられて前科がついた場合、免許を取り消される可能性があります。

保健師・助産師および看護師の資質向上を目指す法律である「保健師助産師看護師法(保助看法、ほじょかんぽう)」は、9条において、以下に該当する者には免許を与えないことがあると定めています。

一 罰金以上の刑に処せられた者

二 前号に該当する者を除くほか、保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者

保健師助産師看護師法9条

このように、一定の業務などに就く場合の資質を欠いているとみなされる事柄のことを、欠格事由(けっかくじゆう)と呼びます。

看護師が上に紹介した同法9条の欠格事由のいずれかに該当した、あるいは職務の品位を損するような行為があった場合、同法第14条にのっとり、厚生労働大臣によって以下の処分が下ることがあります。

一 戒告

二 三年以内の業務の停止

三 免許の取消し

保健師助産師看護師法14条

どのような処分が下るかは罪の程度によりますが、深刻と判断された場合には免許の取り消しなどの重い処分が下される可能性があります。

処分は厚生労働省が設置する医道審議会のうち、保健師助産師看護師分科会看護倫理部会が行います。

2021年1月に行われた同部会では、22名の看護師に対する処分などの審議が行われ、その結果、うち16名に以下のような行政処分が下り、ほか6名に対しては行政指導(厳重注意)とする旨の決定がありました。

免許取消:2件(窃盗1件、準強制わいせつ及び窃盗1件)

業務停止3年:1件(大麻取締法違反1件)

業務停止2年:2件(窃盗2件)

業務停止1年6月:1件(過失運転致傷及び道路交通法違反1件)

業務停止6月:1件(過失運転致傷及び道路交通法違反1件)

業務停止3月:7件(道路交通法違反6件、徳島県迷惑行為防止条例違反1件)

業務停止2月:1件(保健師助産師看護師法違反1件)

戒告:1件(窃盗1件)

厚生労働省「2021年1月25日 医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会議事要旨」

2016年から2020年までの過去5年間で、最も重い免許取消の処分を受けたのは合計で18名でした。内訳は業務上過失致死、準強制わいせつ、覚せい剤取締法違反、傷害などとなっています。

逮捕は前科ではないので看護師の欠格事由に該当しない

前科とは、過去に有罪判決を受けた事実のことを指します。

一般的には「逮捕=前科」と思われがちですが、単に逮捕されただけでは前科がつくことはありません。捜査機関から捜査を受けた履歴のことは「前歴」と呼ばれ、捜査機関にのみ残るものです。

したがって、逮捕されたのみでは看護師免許に直接影響することはないといえます。

ただし、もし逮捕が長引いたりした場合、風評によって看護師の仕事を失ったりするリスクはあります。そのため、早期に弁護士に相談して釈放に向けた対応をすることが重要です。

前科があっても看護師試験を受験すること自体は可能

これから看護師になろうとする人が欠格事由に該当する場合、看護師国家試験を受験して看護師になることはできるのでしょうか。

結論から言えば、試験を受験すること自体は可能ですが、合格しても最終的に免許が発行されないことがあります。

試験受験者は試験に合格した後、保健所に免許の申請に行く際、過去の賞罰について申告する義務があります。その後審議などが行われ、免許を発行するかどうかの判断が下されます。

また、日本看護協会のホームページ「看護に関するよくあるご質問」では、「罰金刑などの刑罰を受けたのですが、看護師(准看護師)免許は取得できないのでしょうか」という質問に対し、以下のように回答をしています。

「罰金以上の刑に処せられた者」には免許が与えられないことがあります。(保健師助産師看護師法 第9条の一参照)。
看護師免許の付与については厚生労働省が判断しますので、厚生労働省医政局医事課試験免許室(03-3595-2204)にお問い合わせください。

公益社団法人日本看護協会「看護に関するよくあるご質問」

自分が欠格事由に当てはまるかどうか不安な方は、厚生労働省に問い合わせてみるのがよいでしょう。

交通違反で看護師免許を取り消されることはある?

前科がつく可能性があるケースとして、最も身近なのは交通違反でしょう。交通違反が前科となり、看護師免許が取り消される可能性はあるのでしょうか。

結論から言えば、軽微な交通違反であれば欠格事由とはなりません。

駐車違反や一般道における30km未満の速度超過などの交通違反の青切符により支払う「反則金」は、交通反則通告制度に基づいた制裁金であり、刑事罰における罰金刑とは異なるため、前科がつくことはないのです。また、被害者のいない単独事故の場合でも前科がつくことはありません。

ただし、飲酒運転や無免許運転などの重大な過失があった場合や人身事故の場合は、裁判となり前科がつく可能性が高くなります。

公立病院の看護師には公務員法も適用される

公立病院など、国や自治体が運営する病院で働く看護師に対しては、保助看法に加えて公務員法が適用されます。

地方公務員法16条の2には、職員としての資格を失う事項として「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」が挙げられており、前科がついた場合は看護師免許を取り消される以前に失職する可能性があります。

前科とは?執行猶予でも看護師免許は停止となる?

前科とは、「刑事裁判で有罪判決が確定すること」であり、裁判になっても無罪判決を獲得できれば前科はつきません。ただし、裁判で無罪判決を得るのは実際には非常に難しいのが現状です。

無罪判決以外で前科を回避する方法として、不起訴処分を獲得し、刑事裁判を開くことなく事件を解決に導く、という方法があります。

前科とは懲役刑や罰金刑が裁判で確定すること

前科は、刑事裁判で有罪判決を受け、その判決が確定した際につくものです。

刑事裁判の有罪判決を受けると、禁錮刑・懲役刑・罰金刑・科料・拘留などが言い渡されます。前述のように、交通違反による青切符の反則金は刑事罰ではないので前科にはなりませんが、反則金を払わないと刑事裁判が開かれ罰金刑で前科がつく場合もあります。

逮捕後は、一定の勾留期間を経て、検察官が起訴か不起訴かの判断を下し、起訴されて裁判で有罪判決が確定した場合、前科がつきます。

したがって、検察官が裁判を行わないという「不起訴処分」の判断を下せば、その人が刑罰に問われることはなく、前科はつかないということになります。

執行猶予や略式罰金も前科になる

注意しなければならないのは、裁判において「執行猶予つき判決」や「略式罰金の命令」が出た場合でも前科になるということです。

執行猶予や罰金は懲役刑の実刑に比べると軽微なイメージがありますが、看護師の場合でも「罰金以上の刑」として保助看法の欠格事由に当てはまる前科となります。

一度ついた前科は消えないが、法的な効力は一定期間で消失する

罪を犯し前科がついた場合、事件記録が検察庁や裁判所に保管されます。そのため、前科がついたという事実は消えることはありません。

しかし、前科の事実は消えなくても、その法的な効力は失効することがあります。具体的には、禁固以上の刑の場合は10年、罰金以下の刑の場合は5年の間、刑の執行を終えてからまたは刑の執行免除の判断が下されてから新たに罰金以上の刑に処せられなかった場合、前科としての法的な効力が失効するのです。

前科の効力が失効すれば、保助看法の欠格事由には該当しません。

早期に弁護士に相談し、看護師が前科で免許を失うことを防ぐ

看護師が何らかの罪を犯したことにより前科がついた場合、免許の取り消しなどが行われる可能性があることがわかりました。

前科により免許を失わないためには、早期に弁護士に相談することが重要となります。

不起訴処分を獲得し前科を回避する

検察官により起訴が行われた場合、前科を回避するのは非常に難しくなります。しかし、検察官が不起訴処分の判断を下した場合は、裁判を受けることがなくなるため、前科がつく可能性はゼロになります。

すなわち、前科がつくことを回避するためには、不起訴処分を目指すことが最も現実的な手段となります。

示談で不起訴の可能性を高める

被害者のいる犯罪の場合、早期に被害者対応を行うことが肝要です。真摯に反省して謝罪を行い、示談を締結することで、検察官が再犯の可能性や加害者家族への影響などといった様々な情状を考慮し、最終的に「起訴するほどではない」と判断する「起訴猶予」の可能性が高まります。

被害者と示談するためには弁護士に相談する

被害者との間に示談を締結するためには、弁護士によるサポートが欠かせません。

起訴が決定された後で示談が成立しても、後から不起訴とすることはできないため、示談交渉はその前に行う必要があります。さらに、逮捕されている場合は、起訴される前の身柄拘束が最大23日間続き、検察がその間に起訴を急ぐ恐れがあるため、示談のタイムリミットはより厳しくなります。そのため、できる限り早い段階で弁護士に相談することが大切になってきます。

逮捕されている場合、加害者本人は示談交渉はできません。また、逮捕・勾留後に釈放され、引き続き在宅で捜査が行われる場合や、最初から逮捕なしで在宅捜査が行われる場合もあります。しかし、いずれの場合であっても加害者と被害者が直接示談交渉を行うことは困難です。

どのようなケースであっても、示談を締結するためには、早期に弁護士に相談することが重要です。

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アトム法律事務所 所属弁護士