2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
医師・歯科医師が逮捕された場合、逮捕されただけでは医師免許・歯科医師免許の欠格事由には該当せず、直ちに免許を失うわけではありません。
しかし、罰金以上の刑が確定した場合などには、医道審議会の意見を踏まえ、戒告・医業停止・免許取消し等の行政処分が検討される可能性があります。
免許を守り、医師・歯科医師としてのキャリアを継続するためには、逮捕後できる限り早い段階で弁護士に相談し、不起訴処分の獲得を目指すことが極めて重要です。
この記事では、医師・歯科医師が逮捕された後の刑事手続きの流れ、免許や仕事への影響、そして免許を失わないために取るべき具体的な対処法について、詳しく解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
医師・歯科医師が逮捕された後の流れは?
医師・歯科医師が逮捕された場合、一般の方と同様の刑事手続きが進行します。逮捕後は限られた時間の中で重要な判断が求められるため、手続きの全体像を把握しておくことが大切です。
通常逮捕と現行犯逮捕の違い
そもそも逮捕には主に「通常逮捕」と「現行犯逮捕」の2つの種類があります。
通常逮捕(後日逮捕)は、裁判官が発付した逮捕令状に基づいて行われる逮捕です。刑事訴訟法に基づき、一定階級以上の警察官や検察官が逮捕状を請求し、裁判官が逮捕の理由と必要性を認めた場合に限り逮捕令状が発行されます。
現行犯逮捕は、犯行中または犯行直後の犯人を逮捕するもので、犯人を取り違える可能性が低いことから、逮捕状なしに一般人でも行うことができます(私人逮捕)。ただし、逮捕後は速やかに警察官に引き渡す必要があります。
いずれの場合も、逮捕後は最寄りの警察署に連行され、取り調べを受けることになります。
逮捕から起訴・不起訴の決定までの流れ

逮捕後の手続きは、法律で厳格な時間制限が定められています。
逮捕されてから48時間以内に、警察は事件を検察官に送致(送検)しなければなりません。事件を受けた検察官は、24時間以内に勾留請求を行うかどうかを判断します。
勾留が認められた場合、原則として10日間の身体拘束が行われ、やむを得ない事情がある場合にはさらに最長10日間の延長が可能です。
つまり、逮捕から事件が起訴されるかどうか決まるまでに、最長23日間の身体拘束が続く可能性があるということです。
起訴・不起訴の決定とその後
捜査の結果を踏まえ、検察官が起訴・不起訴を判断します。
不起訴処分となった場合はその時点で釈放され、前科がつくことはありません。一方、起訴された場合は、略式裁判(罰金刑など)または正式裁判が行われ、有罪判決が確定すると前科がつきます。
日本の刑事裁判では、起訴後の有罪率は約99%以上と非常に高い水準にあるため、起訴される前の段階で不起訴処分を獲得することが極めて重要です。
逮捕されると医師・歯科医師の免許や仕事を失う?
医師・歯科医師が逮捕された場合、免許や仕事を失うかどうかは最も大きな不安材料です。
逮捕だけで直ちに免許を失うことはありませんが、起訴されて罰金以上の有罪判決が確定すると、医道審議会の審議を経て免許取消しや医業停止などの行政処分を受ける可能性があります。
医師法・歯科医師法が定める欠格事由と行政処分
医師法4条3号・4号は、次のいずれかに該当する者には「免許を与えないことがある」と規定しています。
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
医師法4条
つまり、罰金以上の刑に処せられて前科がついた場合、医師免許の欠格事由に該当する可能性があります。
さらに、医師法7条は、上記の欠格事由に該当する場合や医師としての品位を損なう行為があった場合に、厚生労働大臣が次のような行政処分を下すことができると定めています。
一 戒告
二 三年以内の医業の停止
三 免許の取消し
医師法7条
歯科医師についても、歯科医師法4条および7条に全く同様の欠格事由と処分が定められています。
医道審議会による行政処分の仕組み
医師・歯科医師に対する行政処分は、厚生労働省に設置された医道審議会の医道分科会で審議されます。医道分科会は年に3回程度開催され、刑事事件で有罪が確定した医師・歯科医師に対する処分内容を検討します。
処分の程度は、刑事裁判の量刑を参考にしつつ、犯罪の種類・悪質性、医師としての適格性、反省の程度などを総合的に考慮して決定されます。
医師・歯科医師の前科による行政処分の種類
医師・歯科医師に前科がついた場合に受ける行政処分は、「戒告」「3年以内の医業の停止」「免許の取消し」の3種類です。処分の内容は、医道審議会の審議を経て厚生労働大臣が決定します。
(1)戒告
戒告は「注意を促す処分」です。単に注意されるだけなので、免許に対する直接の制限はありません。 そのまま医業を継続できます。
ただし、戒告を受けた事実は記録として残るため、今後再び問題を起こした場合にはより重い処分を受ける可能性が高まります。
(2)3年以内の医業の停止
3年の範囲内で医業の停止を命じられる処分です。医業を停止されている間は、医師や歯科医師としての診療行為やクリニック開業ができません。
ただし、免許自体が取り消されるわけではないので、医業停止の期間が経過したらまた医業を再開できる可能性があります。停止期間後には再教育研修の受講が必要です。
(3)免許の取消し
前科がついたときの最も重い処分は、医師免許や歯科医師免許の取消です。一旦取り消されると、再取得しない限り医業を再開できません。
免許を取り消されると「欠格期間」が発生し、その間は医師免許や歯科医師免許の再取得ができなくなります。欠格期間は前科の内容によって異なります。
医師・歯科医師が関わりやすい犯罪類型は?
医道審議会で審議対象となる事件の類型を見ると、医師・歯科医師が関わりやすい犯罪にはいくつかの傾向があります。
長期的には交通事犯(道路交通法違反・過失運転致傷等)が件数として多い傾向にありますが、近年の医道審議会(2025年〜2026年2月議事)では、性犯罪(不同意わいせつ、児童買春、迷惑防止条例違反等)による処分が目立って増加しています。
そのほか、詐欺・診療報酬不正請求、薬物犯罪なども引き続き処分対象となっています。
いずれの犯罪類型でも、有罪が確定すれば行政処分の対象となるため、罪の軽重にかかわらず、早期の弁護士相談が欠かせません。
医師・歯科医師が免許を守るために弁護士へ早期相談すべき理由
医師・歯科医師が逮捕された場合、免許を守り職業を継続するためには、一刻も早い弁護士への相談が何よりも重要です。その理由を具体的に解説します。
逮捕後すぐに面会できるのは弁護士だけ
逮捕されてから検察官が勾留請求を行うまでの最大72時間(3日間)は、被疑者が外部と連絡を取ることは原則としてできません。この間に面会が許されるのは弁護士のみです。
この初回接見(弁護士との最初の面会)は、今後の弁護方針を決定するうえで非常に重要な機会です。
弁護士から取り調べに対する適切なアドバイスを受けることで、不利な供述を防ぎ、その後の処分に大きな影響を与えることができます。
逆に、弁護士の助言なく取り調べに臨んだ場合、不利な自白調書が作成されるなど、後の裁判や処分で不利になる恐れがあります。
不起訴処分の獲得が免許を守る最善の方法
日本の刑事裁判では、起訴された場合の有罪率は99%以上と極めて高い水準です。そのため、起訴を回避し、不起訴処分を得ることが、前科を防ぎ、医師・歯科医師免許を守るための最も確実な方法となります。
不起訴処分には、嫌疑不十分(証拠が足りないケース)や起訴猶予(犯罪の嫌疑はあるが諸事情を考慮して起訴を見送るケース)などがあります。
事件を起こしたことに争点がない場合は、起訴猶予での不起訴を目指していくことになります。被害者との示談成立や、深い反省の態度を示すことが有効です。
示談交渉で不起訴の可能性を高める

被害者のいる犯罪の場合、被害者との示談を成立させることが不起訴獲得の鍵です。
示談では、被害者に対して真摯な謝罪を行い、適切な金額の示談金(賠償金)を支払うことで、被害者の処罰感情を和らげます。
示談が成立し、被害者が加害者の処罰を望まない意思を示した場合、検察官はこの事情を重要な判断材料として考慮し、不起訴の可能性が高まります。
示談交渉には弁護士のサポートが不可欠
示談交渉を成功させるためには、弁護士のサポートが不可欠です。
まず、逮捕されている場合、加害者本人が直接被害者と交渉することは物理的に不可能です。また、在宅捜査の場合であっても、加害者が直接被害者にコンタクトを取ることは、被害者の心情を考えれば適切ではなく、場合によっては証拠隠滅や証人威迫と捉えられるリスクもあります。
さらに、示談は起訴が決定される前に成立させる必要があります。起訴後に示談が成立しても、不起訴に変更することはできないためです。限られた時間の中で示談を成立させるためにも、逮捕後できる限り早い段階で弁護士に依頼することが重要です。
勤務先への対応と職場復帰のサポート
弁護士は刑事弁護だけでなく、勤務先への対応についてもアドバイスを提供できます。
医師・歯科医師が逮捕された場合、勤務先の病院やクリニックとの雇用関係にも影響が生じる可能性があります。早期に弁護士に相談することで、勤務先への説明の仕方、休職・復職の対応、懲戒処分への対策など、職場復帰に向けた総合的なサポートを受けることができます。
医師・歯科医師の逮捕に関するよくある質問
Q.医師が逮捕されたら、すぐに医師免許を失いますか?
医師が逮捕されただけでは、医師免許を失うことはありません。医師法の欠格事由に該当するのは「罰金以上の刑に処せられた者」であり、逮捕されたのみでは前科はつかないため、欠格事由には該当しません。
免許を失うリスクが生じるのは、起訴されて有罪判決が確定した場合です。
Q.逮捕されたことは勤務先の病院に知られますか?
逮捕されたことが直ちに勤務先に通知される法的な仕組みはありません。
しかし、勾留期間が長期化すれば無断欠勤状態となるため、事実上、勤務先に知られる可能性は高くなります。
また、実名報道がなされた場合には、広く社会に知られることになります。早期に弁護士に相談し、早期釈放を目指すことが、勤務先への影響を最小限に抑えるために重要です。
Q.不起訴処分になれば、医道審議会の行政処分を受けることはありませんか?
不起訴処分となった場合は前科がつかないため、医師法・歯科医師法の「罰金以上の刑に処せられた者」という欠格事由には該当しません。
したがって、不起訴処分を獲得できれば、行政処分の対象となるリスクを軽減できます。ただし、医事に関する不正行為があった場合には、刑事処分とは別に行政処分の対象となる可能性がゼロではない点にはご留意ください。
アトムの解決事例(医師の逮捕)
公然わいせつ罪|正式裁判回避(略式罰金)
医師が公然わいせつで警察から呼び出された事案(略式罰金)
駅近くの踏切で停車中、股間のかゆみから薬を塗っていた際に陰部が露出し、通りすがりの女性に見られた公然わいせつの事案。依頼者は30代の医師で同種の前科もあり、後日警察から呼出状が届き取調べを受けることとなった。
弁護活動の成果
弁護士が被害者側との示談交渉と検察官への働きかけを進めた結果、示談金30万円で示談が成立し宥恕を得ることに成功。正式裁判(公判請求)は回避され、略式罰金30万円で事件は終結した。
強制わいせつ罪|不起訴処分
医師が誤って交際相手の娘を触ってしまった事案(不起訴処分)
40代男性医師が深夜、自宅で交際相手の娘を交際相手本人と寝ぼけて誤認し、体を触ってしまった強制わいせつの事案。交際相手はすでに警察に相談しており、娘は児童相談所に保護されている状況だった。
弁護活動の成果
受任からわずか2日で示談金100万円の示談が成立し、被害者の母親から処罰を望まない旨の嘆願書も取得・提出。検察への送致後も取調べを受けることなく、最終的に不起訴処分となった。
まとめ
医師・歯科医師が逮捕された場合でも、逮捕だけでは免許の欠格事由には該当せず、直ちに免許を失うことはありません。
免許を失うリスクが生じるのは、起訴されて罰金以上の有罪判決が確定し、医道審議会で行政処分が決定された場合です。
免許を守り、医師・歯科医師としてのキャリアを継続するための最善の方法は、不起訴処分を獲得することです。そのためには、逮捕後できる限り早い段階で弁護士に相談し、適切な弁護活動(取り調べへの助言、被害者との示談交渉、早期釈放に向けた活動など)を開始することが極めて重要です。
日本の刑事裁判では起訴後の有罪率が99%以上と非常に高いため、起訴される前の段階での対応が結果を大きく左右します。逮捕されてしまった場合、あるいはご家族が逮捕された場合は、一刻も早く弁護士にご相談ください。
アトムは24時間365日相談予約受付中
アトム法律事務所は設立当初から刑事事件を専門に扱う事務所として発足し、刑事事件の豊富な解決実績があります。
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