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医師・歯科医師が大麻・薬物で逮捕されたら?免許を剥奪される?

医師が大麻

「医師・歯科医師として仕事をしているが、大麻・薬物事件を起こし逮捕されてしまった。医師・歯科医師免許を剝奪されることはあるのか」

こちらの記事では、現在医師・歯科医師として働かれている方が大麻・薬物の罪を犯してしまった場合、医師・歯科医師免許を剝奪される可能性について、また逮捕後の流れや、免許を失わないためにすべきことなどについても解説します。

医師・歯科医師が大麻・薬物により免許を失わないためには、早期に弁護士に相談することが重要です。

医師・歯科医師が大麻で逮捕されたら免許を剥奪される?

医師・歯科医師が大麻・薬物事件を起こして前科がついてしまった場合、医師・歯科医師免許を剝奪されたり、新たに取得できなくなることがあります。

医師・歯科医師は禁錮以上の前科がつくと免許剥奪などの処分を受ける

医師・歯科医師が何らかの罪を犯し、罰金以上の刑に処せられて前科がついた場合、免許を取り消される可能性があります。

医師に関する諸制度を定めた法律である医師法4条は、以下に該当する者には「免許を与えないことがある」と定めています。

二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

三 罰金以上の刑に処せられた者

四 前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者

医師法4条

また同法7条は、4条のいずれかに該当する、もしくは医師としての品位を損するような行為があった場合、厚生労働大臣は以下のような行政処分が下すことができると定めています。

一 戒告

二 三年以内の医業の停止

三 免許の取消し

医師法7条

また歯科医師についても、歯科医師法4条・7条において医師と同様の規定が定められています。

処分は医師・歯科医師ともに、厚生労働省が設置する医道審議会のうち、医道分科会が行います。

処分を行うにあたっては、厚生労働省が2002年に発布した「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」の「4)麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反(麻薬、向精神薬、覚せい剤及び大麻の不法譲渡、不法譲受、不法所持、自己施用等)」において、以下のような指針が示されています。

麻薬、覚醒剤等に関する犯罪に対する司法処分は、一般的には懲役刑となる場合が多く、その量刑は、不法譲渡した場合や不法所持した麻薬等の量、施用期間の長さ等を勘案して決定され、累犯者については、更に重い処分となっている。

行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する任務を負う医師、歯科医師として、麻薬等の薬効の知識を有し、その害の大きさを十分認識しているにも関わらず、自ら違反したということに対しては、重い処分とする。

厚生労働省「「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」の改正について」

国民の健康を担う医療従事者である医師・歯科医師は、麻薬の害についての知識を十分に持っているはずであり、それに反して薬物に関する罪を犯すということは重大で、重い処分を下すべきであるという考え方が明示されています。

医師・歯科医師が大麻・薬物で逮捕された後の流れ

大麻・薬物で逮捕された後は、どのような流れで刑が確定するのでしょうか。

大麻は初犯であっても逮捕が行われます。通常の犯罪であれば微罪処分として釈放し事件を終了することも多いですが、大麻の場合は困難であるケースが多いです。

また大麻・薬物は証拠隠滅を疑われやすい罪であるため、逮捕後は原則として勾留が行われます。アトム弁護士事務所の統計でも、勾留率は大麻で83%、覚醒剤では100%に上ります。勾留されると起訴・不起訴の判断が下るまで最長で20日間の身柄拘束が続き、家族との面会も不可能となる接見禁止がつく場合も多いです。

勾留の後は検察官により起訴・不起訴の決定がなされ、裁判により罪が確定します。

大麻事件の逮捕の流れの詳細は、こちらの記事『大麻で逮捕されたら|逮捕の条件とその後の流れ』もご参照ください。

医師・歯科医師が大麻・薬物で免許を失わないための正しい対処法

前科とは起訴され刑事裁判で有罪が確定することをいいます。日本においては、起訴された場合の有罪率はほぼ99.9%に上るため、前科がつくことを避けるためには刑事裁判が開かれなくなる不起訴処分を得ることが重要です。

通常の犯罪の場合、被害者と示談を締結することで不起訴処分を目指しますが、大麻・薬物事件はその性質上被害者は存在しません。そのため、不起訴を目指すためには職場・家族からの陳情を得る、薬物依存の治療、贖罪寄付などといった活動を行い、早期の釈放と前科の回避を目指すことになります。

このような活動を単独で行うのは困難であるため、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。

大麻・薬物の刑罰は?初犯より再犯の方が罪は重くなる?

大麻・薬物に関する罪で逮捕された場合、刑罰はどのようなものになるでしょうか。また再犯の場合、罪は重くなるのでしょうか。

大麻の所持・譲渡・譲受の刑罰

まずは大麻について見てみましょう。警察庁が公開している統計「令和元年における組織犯罪の情勢」によると、令和元年の薬物事犯検挙人員13,364人のうち、大麻による事犯は4,321人であり、全体の32.3%を占めています。

大麻に関する犯罪は、その犯行様態によって刑罰のパターンが変わることが特徴です。

免許等を持たずに個人で使用する目的で大麻を所持した場合や、大麻を売ったり買ったりした(譲渡・譲受)場合、以下の処罰が下ることが大麻取締法24条の2で定められています。

第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。

大麻取締法24条の2

また所持・譲渡・譲受の中でも、個人使用ではなく営利目的が認められた場合、刑罰は重くなることが同法同条2項に規定されています。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。

大麻取締法24条

大麻の栽培・輸出・輸入の刑罰

また大麻の栽培や輸出入を行った場合、以下のようなより重い処罰が下ることが定められています。

第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。

大麻取締法24条

大麻の初犯と再犯の刑罰の相場

大麻取締法で禁止されている行為は、上で見たように所持、譲渡・譲受、栽培、輸出入の4つですが、いずれの場合も刑罰は懲役刑以上となっており、罰金刑以下となることはありません。

ただし、懲役刑の判決を受けても、初犯であり悪質性も低いとみなされた場合は執行猶予がつくことも多いです。しかし、逆に再犯となった場合は実刑となる可能性が高くなり、特に執行猶予判決を受けてから5年以内の再犯の場合はほぼ確実に実刑となります。

大麻以外の薬物の刑罰

大麻以外の薬物のうち、ここでは代表的なものである覚醒剤の刑罰をみてみましょう。「令和元年における組織犯罪の情勢」によると、令和元年の薬物事犯検挙人員13,364人のうち、覚醒剤による事犯は8,584人であり、全体の64.2%を占めています。

覚醒剤の刑罰は大麻よりも重く、所持・譲渡・譲受・使用でも10年以下の懲役、営利目的の輸出入・製造が認められた場合は最高で無期懲役となります。

その他の薬物の刑罰に関しては、こちらの記事『薬物事件で弁護士に相談するメリット|覚醒剤・大麻などで逮捕されたら』もご参照ください。

大麻・薬物で有罪になると前科がつき医師・歯科医師免許を失ってしまうことも

医師法および歯科医師法の各4条は「罰金以上の刑に処せられた者」には免許を与えないことがあると定めています。大麻・薬物に関する罪はその多くが懲役刑以上となるため、医師・歯科医師が大麻・薬物により刑に処された場合、免許を失う可能性があります。

厚生労働省は2001年以降の医道審議会医道分科会の議事要旨をホームページ上で公開しています。大麻・薬物に関する例としては、2019年1月、覚醒剤取締法、また麻薬及び向精神薬取締法に違反し、それぞれ医師・歯科医師免許を取り消された例が2件あります。

その他、現在最新の2021年7月1日の医道分科会においては、麻薬及び向精神薬取締法に違反した医師が医業停止2年の処分を受けています。

個別の事例の詳細は公表されていませんが、「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」でみたように、国民の健康を担う医師・歯科医師が大麻・薬物関連の罪を犯した場合の処分は総じて重いと考えられ、実際に重い処分が下されているといえるでしょう。

医師・歯科医師が大麻・薬物で免許を失わないために弁護士へ早期相談

医師・歯科医師が大麻・薬物に関する罪を犯したことにより前科がついた場合、資格の取り消しなどが行われる可能性があることがわかりました。

前科により資格を失わないためには、早期に弁護士に相談することが重要となります。

逮捕を避ける・早期釈放されるためのアドバイスを弁護士から受ける

先に見たように、大麻・薬物は微罪として終えることは困難であり、勾留率も高い犯罪です。そのため、まずは勾留を避け、早期に釈放されることを目指すことになります。

早期釈放のためには、家族の協力なども得ながら、逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを弁護士に伝えることが重要です。

また、同居人や恋人などが大麻・薬物で逮捕され、自分にも嫌疑がかかっているという場合があります。そのような時は逃亡や証拠隠滅の恐れがないことや所持の事実がないことを弁護士を通じて主張し、逮捕の回避を目指します。

大麻所持などの事実関係を争い不起訴を目指す

法務省が作成している令和元年度版「犯罪白書」によると、大麻・薬物取締法違反での起訴率は年による変動が大きいものの、平成30年度においては50.8%となっています。同年の刑法犯全体の起訴率は37.1%(同白書)であるため、大麻・薬物取締法違反での起訴率はやや高いことがうかがえます。

大麻・薬物事件で不起訴処分となるのは、どのような場合が多いのでしょうか。具体的には、所持量が微量、違法性の認識が薄い、初犯である、治療を行っている、などのケースのほか、嫌疑不十分による場合もあります。

大麻・薬物事件において不起訴を目指すためには、犯行が悪質でないことや十分に反省して再犯の恐れがないことなどをしっかりと検察官に示すことが必要となります。

起訴された場合、保釈による釈放を目指して活動を行います。弁護人により保釈請求を行い、逃亡や証拠隠滅の恐れのないことが認められると、保釈決定が下り、保釈金を納付することで釈放されます。

保釈金については、こちらの記事『大麻事件の保釈金の相場はいくら?初犯でも再犯でも釈放される?』もご参照ください。

裁判では執行猶予つき判決を得て実刑を回避することを目指します。初犯で個人使用目的であれば執行猶予がつくことが多いですが、営利目的や常習性が認められた場合は実刑になるケースが多くなります。

大麻・薬物依存を治療して再犯を防ぐ

大麻・薬物は再犯率の高い犯罪です。厚生労働省のホームページ「大麻・薬物をめぐる現状」によると、平成28年度における検挙者に占める再犯者の割合は22.4%となっています。これは10年前の平成18年度に比べて2倍近い数字です。

そのため、罪を少しでも軽くするためには再犯防止のための取り組みをしっかりと行い、それを検察官や裁判官に示すことが必要となります。

具体的には、医療機関で治療を受け、「薬物のダルク」などの回復支援施設に入所して依存から回復するなどの取り組みを行います。弁護士や家族などと協力し、診断書やサポート体制などを証拠として提出することで、再犯防止の取り組みを明示するのです。

不起訴処分や執行猶予付き判決の獲得で早期の社会復帰を目指す

医師・歯科医師が大麻・薬物事件で免許を失うのを防ぎ、一日も早い社会復帰を果たすためには、早期に弁護士に相談し、不起訴処分や執行猶予判決を得て、再犯防止の取り組みをしていくことが大切です。

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