2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
「医師・歯科医師として働いているが、万引きをしたら免許を剥奪される?」
医師・歯科医師が万引きにより罰金以上の前科がついた場合、医師法・歯科医師法に基づき、免許取消を含む行政処分を受ける可能性があります。
しかし、不起訴処分を獲得できれば前科はつかず、免許への影響を回避することが可能です。
この記事では、医師・歯科医師が万引きで逮捕された場合の免許への影響、逮捕後の流れ、刑罰の相場、そして免許を失わないために取るべき対処法について、法律の専門家が詳しく解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
医師・歯科医師が万引きで逮捕されたら免許を剥奪される?
医師・歯科医師が万引き事件を起こして前科がついた場合、医師免許・歯科医師免許を剥奪されたり、新たに取得できなくなったりする可能性があります。
ここでは、免許に影響が出る法的根拠と、行政処分の仕組みについて詳しく解説します。
罰金以上の前科がつくと免許を取り消されることがある
医師・歯科医師が万引きをして、罰金以上の刑に処せられて前科がついた場合、免許を取り消される可能性があります。
医師法4条3号は「罰金以上の刑に処せられた者」には免許を与えないことがあると定めています。また同条4号は「医事に関し犯罪又は不正の行為のあった者」も欠格事由としています。
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
医師法4条
さらに医師法7条では、医師が第4条のいずれかに該当する、または「医師としての品位を損するような行為」があった場合に、厚生労働大臣が以下の行政処分を行うことができると規定しています。
一 戒告
二 三年以内の医業の停止
三 免許の取消し
医師法7条
歯科医師についても、歯科医師法4条および7条に全く同じ欠格事由と処分内容が定められています。
つまり、医師・歯科医師が万引きで有罪判決を受けて罰金以上の刑が確定すれば、行政処分の対象となる可能性があるということです。
実際の処分事例|窃盗で医業停止も
医道審議会の議事要旨は厚生労働省のホームページで公開されており、窃盗罪で処分を受けた事例も複数確認できます。
直近の事例としては、2026年2月の医道審議会において、窃盗・住居侵入で医業停止1年6月の処分を受けた医師の事例もあります(参照:厚生労働省「医道審議会医道分科会議事要旨」)。
このように、窃盗罪は業務と直接関わらない犯罪であっても、数か月から数年の医業停止、場合によっては免許取消という重い処分が下されることがあります。
医師・歯科医師が万引きで逮捕された後の流れ
万引きで逮捕された場合、刑事手続きはどのように進むのでしょうか。逮捕されてから起訴・不起訴の決定が行われるまでは、最大で23日間の身体拘束が続く可能性があります。この間に適切な弁護活動を行えるかどうかが、その後の処分に大きく影響します。

逮捕から起訴・不起訴の流れ
逮捕後の手続きは、法律で厳格な時間制限が定められています。
逮捕されてから48時間以内に、警察は事件を検察官に送致(送検)しなければなりません。事件を受けた検察官は、24時間以内に勾留請求を行うかどうかを判断します。
勾留が認められた場合、原則として10日間の身体拘束が行われ、やむを得ない事情がある場合にはさらに最長10日間の延長が可能です。
つまり、逮捕から事件が起訴されるかどうか決まるまでに、最長23日間の身体拘束が続く可能性があるということです。
逮捕=前科ではない——不起訴なら前科はつかない
ここで重要なのは、逮捕されただけでは前科はつかないという点です。前科とは、起訴されて刑事裁判で有罪判決が確定した場合に生じるものです。
日本の刑事裁判における有罪率は99%以上であるため、一度起訴されてしまうと有罪判決を避けることは極めて困難です。前科を回避し免許を守るためには、起訴される前の段階で不起訴処分を獲得することが最も現実的な手段となります。
万引きの刑罰は?初犯より再犯の方が罪は重くなる?
万引きで逮捕された場合、具体的にどの程度の刑罰が科されるのでしょうか。初犯と再犯での違いも含めて解説します。
万引きの刑罰は窃盗罪と同じ
「万引き」は通称であり、法律上は刑法235条の「窃盗罪」に該当します。万引きという言葉の響きから軽い犯罪に感じるかもしれませんが、窃盗罪の法定刑は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められており、重大な犯罪として位置づけられています。
2024年の刑法犯認知件数73万7,679件のうち、窃盗は50万1,507件と全体の約68%を占めています(法務省「令和7年版犯罪白書」より)。
万引きの初犯と再犯の刑罰の相場
万引きの刑罰は、被害金額や前科の有無によって大きく異なります。
初犯の場合
被害金額が少額であり、弁償や示談が成立している場合は、微罪処分や不起訴処分となる可能性が比較的高くなります。起訴された場合でも、略式起訴による罰金刑(最大30万円程度)にとどまるケースが多い傾向にあります。
再犯(2回目)の場合
再犯でも罰金刑となる可能性はありますが、被害金額が高額な場合は正式裁判(公判請求)となることが増えます。
なお、万引きを繰り返してしまう場合、窃盗症(クレプトマニア)という精神障害が原因となっている可能性があります。窃盗症が認められたからといって無罪となることは基本的にはありませんが、専門医療機関での治療を受けていることが、裁判での量刑に有利に働くことがあります。
執行猶予期間中の再犯
執行猶予期間中に万引きで起訴された場合は、拘禁刑が科される可能性が極めて高くなります。
常習の場合
服役後に万引きを繰り返した場合は、「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」3条により、常習累犯窃盗罪として3年以上の拘禁刑に処される可能性があります。
医師・歯科医師が万引きで免許を失わないために弁護士へ早期相談
免許を守るために最も重要なのは、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、不起訴処分の獲得を目指すことです。
示談交渉で不起訴処分を目指す

万引きのような被害者(店舗)のいる犯罪では、被害者との示談が不起訴処分を獲得するための最も有力な手段です。
検察官は起訴・不起訴を判断する際に、被害弁償の状況、示談の成立、被害者の処罰感情、加害者の反省の態度など、さまざまな事情を総合的に考慮します。
示談が成立し、被害者が処罰を望まない意向を示していれば、「起訴するほどではない」と判断される「起訴猶予」の可能性が高まります。
ただし、チェーン店や大手小売店は組織の方針として示談に応じないケースも多い点に注意が必要です。その場合は、被害金額の弁済や贖罪寄付、反省文の作成など、示談以外の方法で反省の意を示し、不起訴処分の可能性を高める対応が求められます。
逮捕後の弁護士相談は「早さ」が重要
逮捕されてから起訴が決定されるまでの期間は、最大で23日間です。起訴が決定された後では、原則不起訴処分を得ることはできません。そのため、示談交渉を含む弁護活動は、この限られた期間内に行う必要があります。
また、逮捕されている場合、加害者本人が被害者と直接示談交渉を行うことはできません。
逮捕されていない(在宅事件)場合であっても、加害者が被害者に直接連絡を取ることは通常困難であり、場合によっては不利に働くこともあります。そのため、示談交渉には弁護士を間に立てることが不可欠です。
行政処分(医道審議会)への対応も弁護士がサポート
仮に起訴されて有罪判決が確定した場合でも、医道審議会での行政処分に対して弁護士のサポートを受けることが可能です。
行政処分の手続きでは、都道府県の担当課から「行政処分対象事案報告書」の提出を求められたり、「意見の聴取」「弁明の聴取」といった手続きが行われます。
これらの手続きにおいて、弁護士が同席して意見を述べたり、有利な証拠・資料を提出することで、処分を軽減できる可能性があります。
刑事事件における弁護活動の段階から、将来の行政処分を見据えた対応を行うことが、免許を守るためには重要です。
医師の万引きに関するよくある質問
Q.医師・歯科医師が万引きで逮捕されたら、すぐに免許は取り消されますか?
医師・歯科医師が万引きで逮捕されただけでは、免許がすぐに取り消されることはありません。行政処分の対象となるのは、起訴されて有罪判決が確定し、罰金以上の前科がついた場合です。
逮捕の段階では前科はつかないため、不起訴処分を獲得できれば免許への影響は基本的にありません。
Q.万引きの初犯でも医師免許・歯科医師免許を取り消される可能性はありますか?
万引きの初犯で免許取消となるケースは一般的には多くありませんが、可能性がゼロとはいえません。
行政処分の内容は医道審議会で個別に審議され、被害金額・犯行態様・反省の程度・被害弁償の状況などが総合的に考慮されます。
初犯でも罰金以上の刑が確定すれば行政処分の対象となるため、不起訴処分を目指すことが重要です。
Q.万引きで不起訴になった場合、医道審議会の審議対象になりますか?
不起訴処分となった場合、罰金以上の刑に処せられたことにはならないため、医師法4条3号の欠格事由には該当しません。
そのため、不起訴処分を獲得できれば、医道審議会による行政処分の対象となるリスクは大幅に低下します。
まとめ
医師・歯科医師にとって、万引き(窃盗罪)は免許の取消や医業停止といった重大な行政処分に直結し得る深刻な問題です。
万引きは刑法235条の窃盗罪にあたり、法定刑は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められています。
罰金以上の刑が確定すると、医師法4条・歯科医師法4条の欠格事由に該当し、医道審議会での審議を経て、戒告・医業停止・免許取消のいずれかの行政処分が下される可能性があります。
免許を守るためには、起訴される前に不起訴処分を獲得することが最も重要です。不起訴となれば前科はつかず、行政処分の対象となることも基本的にはありません。
逮捕されてから起訴が決まるまでの時間は最大23日間と限られています。示談交渉や弁護活動をこの期間内に行う必要があるため、一刻も早く弁護士に相談されることが、免許とキャリアを守る第一歩となります。
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