「強盗をしてしまったのに、なかなか捜査機関に捕まらない。」
そんなときは強盗罪の時効が気になるかもしれません。実は強盗罪の時効は刑事の時効(公訴時効)だけでなく、民事の時効もあるのです。
この記事では、強盗罪の刑事と民事それぞれの時効について、時効期間や時効成立の効果などについて解説しています。また、強盗罪で時効を待つのが現実的な方法なのかということや、強盗罪への弁護士の関わり方についても詳しく説明しています。強盗罪の時効について知りたい方は、ぜひご参照ください。
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目次
強盗罪の公訴時効は強盗の種類で違う?
公訴時効が成立すると逮捕や起訴はできない?
公訴時効とは、犯罪が発生してから一定期間が経過すると、公訴の提起(起訴)ができなくなる制度です。つまり、公訴時効が成立すると検察官は起訴できなくなります。また、逮捕は犯人を起訴し、刑事裁判を受けさせるためのものでもあります。そのため、公訴時効が成立し、起訴ができなくなれば結果として逮捕されないといえるでしょう。
公訴時効が成立している犯罪について、逮捕・起訴されることは可能性としてはあります。しかし、その場合でも免訴判決(刑訴法337条4号)が出され有罪となることはありません。
強盗罪の公訴時効は何年?
強盗罪の公訴時効は10年です。公訴時効は犯罪の法定刑によって具体的な年数が定められています(刑事訴訟法250条)。強盗罪の法定刑は5年以上20年以下の懲役です(刑法236条)。
つまり、強盗罪は刑事訴訟法250条2項3号の「長期15年以上の懲役」に当たる罪といえるため、公訴時効は10年です。
強盗殺人や強盗致死は公訴時効がない?
強盗殺人罪や強盗致死罪の法定刑は死刑又は無期懲役です(刑法240条)。死刑又は無期懲役というように、2つ以上の主刑のうちその1つを科すべき罪については「重い刑」を基準にします(刑訴法251条)。
強盗殺人罪や強盗致死罪は法定刑の重い刑が「死刑」となっています。そのため、強盗殺人罪や強盗致死罪に公訴時効はありません(刑訴法250条1項柱書き括弧書き)。
公訴時効は停止する
公訴時効の停止とは、刑事訴訟法上、なんらかの客観的事由によって、時効の進行をストップさせる制度です。民事における時効の更新と異なり、リセットされるわけではありません。停止した時効は、停止となった原因が消滅すれば、あらためて進行をはじめます。
たとえば、国外にいる間は時効が停止します。強盗をしたあと海外に逃亡した場合には、海外に滞在している間は時効が停止するということですね。帰国した際には、時効停止の原因が消滅したといえるので、あらためて時効が進行することになります。
強盗罪には民事上の時効もある
強盗罪は民法の不法行為|時効は何年?
強盗は民法の不法行為(民法709条)にあたります。そのため、強盗の被害者は不法行為に基づく損害賠償請求ができます。では、この損害賠償請求はいつまでできるのでしょうか。
不法行為に基づく損害賠償請求権の時効については、主観的時効と客観的時効があります。
主観的時効は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年(民法724条1号)です。ただし、不法行為が生命又は身体を害するものである場合、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年(民法724条の2)です。
客観的時効は、不法行為から20年となっています(民法724条2号)。
強盗罪は相手側の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫をくわえて財物を奪取する犯罪です。そのため、生命又は身体を害する不法行為といえる場合があります。したがって、強盗罪による不法行為の損害賠償請求権について主観的時効は5年になることが多いです。強盗致死傷罪の場合、必ず生命・身体を害する不法行為となるので、常に主観的時効が5年になるでしょう。客観的時効は20年です。
民事上の時効は更新されることがある
時効の更新とは、一定の事由が生じたときに時効の進行がリセットされることです。リセットされた時効はまたゼロから進行します。一定の事由として債務の承認があります。強盗の加害者が債務を承認した場合、時効の更新となるのです。
一方、刑事の時効(公訴時効)について、このような制度はありません。また刑事の時効における停止の制度は民事の時効にありません。刑事の時効と民事の時効は、それぞれで分けて考えることが必要です。
民事の時効が成立しても刑事事件に影響はない?
強盗罪で民事の時効が成立すると、被害者は強盗の加害者に損害賠償請求ができなくなります。ただし時効の成立は、加害者が被害弁償したことを意味しません。
民事の時効が成立したからといって、刑事事件における刑が軽くなるようなことは無いと考えておきましょう。
もっとも、強盗罪のように被害者がいる犯罪においては、被害者に被害弁償し示談を成立させることで、刑を軽くできる可能性があります。たとえ民事の時効が完成していても、時効利益は放棄することができます。時効成立後でも時効利益を放棄し、被害弁償をすることも考えておきましょう。
強盗事件は弁護士に相談しよう
強盗犯人は時効が成立するまで逃げ切れる?
令和2年度版「犯罪白書」によると、令和元年における強盗罪の検挙率は87.8%と極めて高くなっています。強盗罪は重大犯罪のため、捜査機関も本腰を入れて捜査します。時効が完成するまで逃げ切るという考えは捨てた方がいいでしょう。
また、強盗殺人罪や強盗致死罪は、そもそも時効が存在しないため逃げ切ることは事実上不可能です。
強盗罪で有罪になったら執行猶予はつく?
執行猶予は、言い渡された刑が3年以下の懲役(若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)でなければつけられません(刑法25条1項)。強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役であるため、原則として執行猶予はつかないといえます。
ただし、強盗罪が未遂で減軽(刑法43条)されたり、情状酌量によって減軽(刑法66条)されて、言い渡される刑が3年以下になる場合があります。その場合は強盗罪にも執行猶予がつく可能性もあるでしょう。
強盗で被害者と示談|不起訴や執行猶予を目指す
強盗罪において不起訴や執行猶予を目指すには、まず被害者と示談することが最重要です。被害弁償をした上で、宥恕条項(ゆうじょじょうこう)付きの示談を成立させることができれば、不起訴処分が出る可能性もあります。たとえ民事の時効が成立していても、時効利益を放棄し、被害弁償するべきでしょう。
強盗の示談は弁護士にまかせるべきです。示談をするには被害者の連絡先を知る必要があります。しかし、捜査機関は加害者に被害者の連絡先を教えてはくれません。弁護士であれば、示談のために被害者と連絡をとりたいと説明し、捜査機関から連絡先を教えてもらえる可能性があります。
強盗で時効を待たず自首するメリット
次に、時効の完成を待つくらいなら自首をすることが賢明です。法律上の自首(刑法42条1項)は、捜査機関が犯人を把握していない場合に成立します。自首をすれば、刑が任意的に減刑されます。強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役ですが、減軽されることで執行猶予を獲得できる可能性があるのです。
また、法律上の自首が成立しない場合であっても、自ら捜査機関に出頭することで、プラスの量刑事情として働くこともあります。弁護士が自首や出頭に付き添うこともできるので、弁護士に相談した上で行動を起こすと良いでしょう。その際に弁護士に依頼して、被害者との示談交渉を任せることもできます。