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公務執行妨害/業務妨害の刑罰・捜査の流れ・裁判例

公務執行妨害/業務妨害で適用される刑罰

公務員が職務を執行している、しようとしているときに暴行または脅迫を加えたときには、公務執行妨害罪によって処罰され得ます。
また公務員以外に対しても人の業務を妨害すれば、業務妨害、威力業務妨害罪、電子計算機損壊等業務妨害などに問われ得ます。

刑法95条1項 公務執行妨害

3年以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金

第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

公務員に直接暴力をふるう、脅迫をする等に留まらず、たとえば判例上は公務員の補助者への暴行、警察官が押収した証拠物を足で踏みつけ破壊する行為等についても公務執行妨害が成立するとされています。
実務上は、警察官に対する暴行や脅迫について検挙されるケースが多いようです。

刑法233条 信用毀損及び業務妨害

3年以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金

第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

真実と異なった内容の事項を不特定、または多数の人に伝播させる、人を欺いたり人の錯誤や不知を利用するなどして職業や事業を妨害すれば、本罪が成立します。
具体的に業務が妨害されなかったとしても、妨害を発生させるおそれのある行為をした段階で、罪に問われ得ます。

刑法234条 威力業務妨害

3年以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金

威力を用いて人の業務を妨害した者も(略:刑法233条と同じく三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金)に処する。

条文中の「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力を指します。
具体的には殴打する、刃物で脅すといった行為のほか、業務に必要な物を壊す、隠す、部屋の中に悪臭を充満させるなどが挙げられます。

刑法234条の2 電子計算機損壊等業務妨害

5年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金

第二百三十四条の二 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。

電子計算機とは、いわゆるパーソナルコンピューターやオフィスコンピューター等を指します。
物理的に破壊する以外に、データを破壊したり、不正なプログラムを使用して乗っ取るなどすると、本罪が成立し得ます。
電子計算機器への業務妨害行為は、他の業務妨害に比べて重大な被害を生じさせるおそれがあるため、法定刑も重く規定されています。

公務執行妨害/業務妨害の捜査の流れ

公務執行妨害は、警察と揉めて暴行を加え、現行犯逮捕されるケースが多いです。
一方、業務妨害は、通報や被害届が提出されて警察の捜査を受けるケースが多いです。

現場で捕まった場合

1 公務員に暴行
2 現行犯逮捕
3 警察署に連行

公務執行妨害は、警察の職務質問や取調べ等から逃れるために、暴行を加えて現行犯逮捕されるケースが多いです。
殴る蹴るといった行為のほか、突き飛ばす、証拠品を踏みつけて破壊するといった行為も検挙の対象になり得ます。

被害届が提出された場合

1 通報・被害届提出
2 捜査開始
3 検挙

威力業務妨害や偽計業務妨害をすると、被害者が警察に通報したり被害届を提出したりするケースがあります。
これらを受けて警察は捜査を開始し、逮捕や出頭要請、任意同行により、警察署で取調べを受けることとなります。

公務執行妨害/業務妨害の有名裁判例

ここでは、公務が威力業務妨害罪における「業務」にあたるとした判例をご紹介します。
また、公務執行妨害における「暴行」の意義や、威力業務妨害罪における「威力」の意義について参考となる判例もご紹介します。

動く歩道設置のための路上生活者の退去説得・撤去等が威力業務妨害罪にいう「業務」にあたるとした判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 平成10年(あ)第1491号 判決年月日: 平成14年9月30日

判決文抜粋

「職務は,動く歩道を設置するため,本件通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得し,これらの者が自主的に退去した後,本件通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事であって,強制力を行使する権力的公務ではないから,刑法234条にいう「業務」に当たると解するのが相当であ(る)」

弁護士の解説

新宿の地下通路で生活していた路上生活者が、動く歩道の設置工事に反対して小屋等の撤去に応じず、バリケードを設置して居座ったという事案です。
路上生活者のうち、被告人2名については威力業務妨害罪にあたるとして有罪になりました。
つまり、公務も業務にあたり得るということが判示されたのです。

公務執行妨害罪の「暴行」にあたると判示した判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和59年(あ)第1036号 判決年月日: 平成元年3月9日

判決文抜粋

「原判決が認定した被告人両名の右各行為は、被告人らが罵声を浴びせながら一方的に抗議する過程でなされたものであることをも考慮すれば、いずれも公務執行妨害罪にいう暴行に当たるものというべきであるから、これらが同罪にいう暴行に当たらないとした原判断は、刑法九五条一項の解釈適用を誤つたものといわざるを得ない」

弁護士の解説

県の職員に抗議する過程で、丸めた紙を顔面付近に突きつけたり、相手方の座っているいすを揺さぶったり、相手方がいすから立ち上がるのを阻止するため手首を握ったりした行為について、いずれも公務執行妨害罪にいう「暴行」にあたるとした判例です。
公務執行妨害罪の「暴行」は、公務員に向けられた有形力の行使であればよく、間接的なものもこれにあたるとされています。

威力業務妨害罪における「威力」にあたるとした判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 平成4年(あ)第267号 判決年月日: 平成4年11月27日

判決文抜粋

「被害者が執務に際して目にすることが予想される場所に猫の死がいなどを入れておき、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為は、被害者の行為を利用する形態でその意思を制圧するような勢力を用いたものということができるから、刑法二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」た場合に当たると解するのが相当であ(る)」

弁護士の解説

ひそかに猫の死がい等を被害者の執務机引き出し内などに入れておき、これを発見させて畏怖させ、執務を不可能にさせた行為が、威力業務妨害罪に当たるとされた事案です。
「威力」とは、被害者の自由意思を制圧するような勢力を行使することとされており、暴行や脅迫に限らないのです。

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