判決文抜粋
「職務は,動く歩道を設置するため,本件通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得し,これらの者が自主的に退去した後,本件通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事であって,強制力を行使する権力的公務ではないから,刑法234条にいう「業務」に当たると解するのが相当であ(る)」
ここでは、公務が威力業務妨害罪における「業務」にあたるとした判例をご紹介します。
また、公務執行妨害における「暴行」の意義や、威力業務妨害罪における「威力」の意義について参考となる判例もご紹介します。
「職務は,動く歩道を設置するため,本件通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得し,これらの者が自主的に退去した後,本件通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事であって,強制力を行使する権力的公務ではないから,刑法234条にいう「業務」に当たると解するのが相当であ(る)」
当時新宿の地下通路で生活していた路上生活者が、動く歩道の設置工事に反対して小屋等の撤去に応じず、バリケードを設置し居座ったという事案です。
路上生活者のうち、被告人2名について威力業務妨害罪にあたるとして有罪となりました。
公務についても業務にあたり得るということが判示されたわけです。
「原判決が認定した被告人両名の右各行為は、被告人らが罵声を浴びせながら一方的に抗議する過程でなされたものであることをも考慮すれば、いずれも公務執行妨害罪にいう暴行に当たるものというべきであるから、これらが同罪にいう暴行に当たらないとした原判断は、刑法九五条一項の解釈適用を誤つたものといわざるを得ない」
県の職員に抗議する過程で、丸めた紙を顔面付近に突きつけたり、相手方の座っているいすを揺さぶったり、相手方がいすから立ち上がるのを阻止するため手首を握ったりした行為について、いずれも公務執行妨害罪にいう「暴行」にあたるとした判例です。
公務執行妨害罪の「暴行」は、公務員に向けられた有形力の行使であればよく、間接的なものもこれにあたるとされています。
「被害者が執務に際して目にすることが予想される場所に猫の死がいなどを入れておき、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為は、被害者の行為を利用する形態でその意思を制圧するような勢力を用いたものということができるから、刑法二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」た場合に当たると解するのが相当であ(る)」
ひそかに猫の死がい等を被害者の執務机引き出し内などに入れておき、これを発見させて畏怖させ、執務を不可能にさせた行為が、威力業務妨害罪に当たるとされた事案です。
「威力」とは、被害者の自由意思を制圧するような勢力を行使することとされており、暴行や脅迫に限らないのです。
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