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迷惑防止条例違反の刑罰・捜査の流れ・裁判例

迷惑防止条例違反で適用される刑罰

迷惑防止条例は、各都道府県が制定する法令で、元はぐれん隊による粗暴行為の防止を目的として作られました。
その後は改正を重ね、現在は主に、痴漢行為や盗撮行為で適用されるケースが多いです。

迷惑防止条例(痴漢)

6か月以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金

第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。

※東京都の場合

実務上、「衣服の上から身体に触れる」といった態様の痴漢行為は、迷惑防止条例違反として処罰される傾向があります。
電車内や駅内での痴漢行為のほか、路上痴漢も迷惑防止条例違反に問われる可能性はあります。

迷惑防止条例(盗撮)

1年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金
※常習でない場合

第5条
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(2)次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

※東京都の場合
※常習性がある場合、さらに重い刑罰が科される可能性もある

迷惑防止条例の、とくに盗撮を規制する法令は地域によりかなりの差異があります。
東京都は「公共の場所」「普通人が衣服を身につけない場所」などの撮影、カメラの設置等を禁止しています。
地域により規制の場所が公共の場所のみであったり、カメラの設置等については言及がなかったりする場合もあります。

迷惑防止条例(卑わいな言動)

6か月以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金

第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

※東京都の場合

「身体に触れる」行為以外でも、たとえば「スカートめくりをする」「下品な言葉を投げかける」「執拗ににおいを嗅ぐ」といった行為が、卑わいな言動に当たる可能性があります。
また、服越しに臀部を執拗に撮影し続けた行為をして、迷惑防止条例違反にあたると判示された裁判例などもあります。

迷惑防止条例違反の捜査の流れ

迷惑防止条例違反の典型は、痴漢や盗撮です。
痴漢・盗撮事案では、被害者や目撃者に取り押さえられ、駅員室へ連行後、臨場した警察官と警察署に同行するケースが多いです。
現場を逃走したとしても、被害届提出や告訴により警察が捜査を開始する場合もあります。

現場で捕まった場合

1 現場で拘束
2 駅員室へ連行
3 警察署へ連行

痴漢・盗撮は、現場で被害者や目撃者に拘束されて、駅員室へ連行されるケースが多いです。
その後、通報を受けて警察官が駆けつけ、警察署へ連行され、取調べを受けることになります。

被害届が提出された場合

1 被害届提出・告訴
2 捜査開始
3 取調べを受ける

被害届の提出や告訴を受けて、警察が捜査を開始するケースもあります。
防犯カメラや改札機の入退場記録を解析し、被疑者が特定されると、警察署への出頭や任意同行を求められ、取調べを受けることになるでしょう。

迷惑防止条例違反の有名裁判例

迷惑防止条例には「卑わいな言動」をすることを禁じる条文があります。
ここでは、この「卑わいな言動」の定義について判示された裁判例をご紹介します。
また、痴漢について第一審で有罪判決となった後、控訴審で無罪となった裁判例もご紹介します。

「卑わいな言動」の定義について判示された裁判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 平成19年(あ)第1961号 判決年月日: 平成20年11月10日

判決文抜粋

「「卑わいな言動」とは,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいうと解され(る)」

弁護士の解説

迷惑防止条例違反に当たる行為と言えば痴漢や盗撮が挙げられますが、それ以外にも「社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」をした場合、処罰される可能性があります。
この事例では、被害者の臀部を着衣の上から11回撮影したという行為につき卑わいな言動に当たるとされました。

被害者の供述の信用性を全面的に肯定して被告人を有罪とした原判決の認定判断は不合理であるとして無罪となった判例

裁判所名: 東京高等裁判所 事件番号: 平成25年(う)第1069号 判決年月日: 平成26年7月15日

判決文抜粋

「被告人から痴漢の被害を受けたとする被害者供述の信用性を全面的に肯定した原判断は,証拠評価を誤ったものというほかなく,論理則,経験則等に照らしてみても不合理であるといわざるを得ない」

弁護士の解説

バス内で痴漢行為に及んだとされた事案につき、被害者の供述の信用性を全面的に肯定して被告人を有罪とした第一審の判決は不合理であるとして被告人を無罪とした裁判例です。
車載カメラの映像からすれば、両手が塞がっている被告人が被害者の供述するような痴漢行為に及ぶことは物理的に不可能であると判断されました。
この事件は「三鷹バス痴漢冤罪事件」として有名です。

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