
「迷惑防止条例の名前は知ってるけど、どんな行為が違反になる?」
「痴漢や盗撮が迷惑防止条例違反になるのは知ってるけど、他にも違反になる行為はある?」
迷惑防止条例は、東京都では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」といいます。全国47すべての都道府県で同様の条例が制定されていて、各都道府県によって条例の名称は異なるのですが、これら全ての条例を総称して「迷惑防止条例」と呼んでいます。
この記事では、迷惑防止条例違反になる行為、違反したときの刑罰、迷惑防止条例違反で検挙されたときの対処法などを解説します。

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目次
迷惑防止条例で禁止される行為とは?
公共の場所での迷惑行為を規制するのが迷惑防止条例
迷惑防止条例は「公衆」に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止することを目的とするものです(1条)。このことから、基本的には、迷惑防止条例の規制は公共の場所又は公共の乗物で行われる迷惑行為が対象です。
「公共の場所」とは、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場などを意味し、「公共の乗物」とは、汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機などを意味します。
迷惑防止条例で禁止される典型行為
痴漢行為や盗撮行為が迷惑防止条例違反になるということはご存じの方も多いかと思いますが、これ以外にも、迷惑防止条例違反になる行為が複数定められています。
まずは、東京都の迷惑防止条例を例に、禁止される代表的な行為とその内容を紹介します。
ダフ屋行為
チケットを転売目的で購入したり転売したりすることをいいます。「ダフ」という言葉は、「チケット」=「フダ」を逆に読むことに由来するといわれています。
痴漢行為
衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れることをいいます。
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盗撮行為
人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置することをいいます。
撮影を終えてデータが残っている場合に迷惑防止条例違反になるのはもちろんですが、データが残っていなくとも、撮影機器を設置したり盗撮するためにスマホなどをスカート内に差し向ける行為をすること自体が迷惑防止条例違反とされています。
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つきまとい行為
特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で、次のいずれかを行うことをいいます。
- つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
- その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
不当な客引き行為
公共の場所において、不特定の者に対し、異性による接待をして酒類を伴う飲食をさせる行為の提供について、客引きをすることなどをいいます。いわゆる「キャッチ」行為がこれに該当します。
迷惑防止条例で禁止されるその他の行為
上記で紹介したもののほか、次のような行為も迷惑防止条例で禁止されています。
- ショバヤ行為(3条)
- 覗き行為(5条1項3号)
- 粗暴行為・ぐれん隊行為(5条2~4項)
- 押売行為(6条)
- ピンクビラ等配布行為(7条の2)
迷惑防止条例で禁止される行為の範囲は広いということがお分かりいただけるかと思います。
迷惑防止条例違反以外の罪で処罰される可能性に注意
迷惑防止条例で禁止される行為であっても、別の罪名で処罰される可能性があります。行為の態様や行為を行った場所などによっては、条例違反にとどまらず、より重い犯罪となることも考えられます。
適用される法律を正確に知ることは容易ではありませんので、不安がある場合にはご自身で判断するよりも法律の専門家である弁護士の相談することおおすすめします。
良くある疑問1
電車の中で痴漢や盗撮を行えば迷惑防止条例違反になるけれども、ホテルの客室などで痴漢や盗撮を行った場合、公共の場所でも公共の乗物でもないから処罰されない?
公共の場所・乗物以外での痴漢行為であっても、強制わいせつ罪が適用される可能性があります。
一方、盗撮については、近年公共の場所以外の空間における盗撮行為も規制対象に加える自治体が増加しています。
迷惑防止条例本来の趣旨や目的からは若干の乖離があるようにも思えますが、技術の進歩に伴い盗撮行為が巧妙化し多発している現状では、公共の場のみを規制するのでは実情にそぐわなくなってしまっているということが背景にあります。
現在は住居やホテル内などでの盗撮行為も迷惑防止条例で処罰されるケースが多いでしょう。
また、仮に盗撮行為が迷惑防止条例に問えない場合でも、軽犯罪法違反や偽計業務妨害罪で処罰される可能性があります。
良くある疑問2
転売が禁止されているチケットをインターネット上で転売したけれども、インターネットは公共の場所でも公共の乗物でもないから、ダフ屋行為に当たらない?
別途、チケット不正転売禁止法違反で処罰される可能性があります。
良くある疑問3
刑法の強制わいせつ罪に当たる痴漢行為をしても、電車の中であれば、法律違反よりも軽い条例違反としてしか処罰されない?
強制わいせつ罪で処罰される可能性があります。 痴漢と強制わいせつ罪の区別は明確な基準はありませんが、服の中に手を入れるなど悪質な態様の場合に強制わいせつとされることが多いようです。
迷惑防止条例に違反したときの刑罰を解説
迷惑防止条例違反の罰則
迷惑防止条例に違反すれば、最も重い場合、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(常習として盗撮行為を行ったような場合が該当します)。
このほか、痴漢行為・盗撮行為(撮影を終えなかった場合)・覗き行為などの場合には6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科され、つきまとい行為などの場合には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。
主な迷惑防止条例違反の刑罰(東京都)
違反行為 | 法定刑 |
---|---|
盗撮(常習) | 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
盗撮(撮影した場合) | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
盗撮(撮影を終えなかった場合) | 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
痴漢(常習) | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
痴漢 | 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
卑わいな言動 | 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
つきまとい行為 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
※都道府県ごとに異なる場合があります
拘留:1日以上30日未満の間、身体を拘束する刑罰
科料:千円以上1万円未満の金銭を支払わされる刑罰
迷惑防止条例違反以外の犯罪が成立する場合の刑罰
すでにお伝えしたとおり、迷惑防止条例違反を超えてより重い犯罪が成立する場合には、科される刑罰も重くなります。
ここでは、より重い犯罪が成立する可能性のある行為と、重い犯罪が成立した場合の罰則を紹介します。
盗撮行為・痴漢行為
軽犯罪法 | 拘留又は科料 |
住居侵入・建造物侵入罪 | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
偽計業務妨害罪 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
児童ポルノ禁止法 | 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 |
強制わいせつ罪 | 6ヶ月以上10年以下の懲役 |
ダフ屋行為
チケット不正転売禁止法違反 | 1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金またはその両方 |
つきまとい行為
ストーカー規制法違反 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 ( 禁止命令が出ているのに違反してストーカーをした場合、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金 ) |
迷惑防止条例違反で検挙されたときの対処法
初犯なら不起訴も期待できる
迷惑防止条例違反で検挙された場合、初犯であれば、適切な弁護活動を行うことによって不起訴処分の獲得を期待することができます。他方、何ら弁護活動を行わなければ、逮捕勾留によって最大23日間身柄を拘束され、仕事を失ったり学校を退学になったりするおそれもあります。
盗撮行為・痴漢行為・つきまとい行為といった被害者がいる犯罪の場合には、何よりも被害弁償(示談)を行うことが重要です。そして、示談を行う際には、事案に応じた適正な示談金額を提示するとともに、加害者の刑事責任を許すという宥恕文言を示談書に盛り込んでもらうことも必要となります。
ダフ屋行為・客引き行為といった被害者がいない犯罪の場合であっても、弁護活動をしなくてよいわけではありません。被疑者自身が謝罪文を作成したり、家族などに身元引受書を作成してもらったりして、検察官に提出して不起訴を求めなければなりません。
日本の裁判の有罪率は99.9%ですから、起訴されてしまうと、ほぼ間違いなく前科が付いてしまいます。罰金刑や執行猶予付きの判決であれば、ひとまずは刑務所に入らなくても済みますが、有罪判決である以上、前科が付くことには変わりありません。また、裁判は平日の日中に行われますので、裁判を受けるために仕事や学校を休む必要も出てきます。
逮捕・勾留・起訴を回避して不起訴処分を獲得する可能性を上げるためにも、迷惑防止条例違反で検挙された場合、弁護士への速やかな相談をお勧めします。
起訴されても罰金刑を期待できる
被害者が示談に応じてくれず起訴されてしまったような場合であっても、罰金刑や執行猶予付きの判決を獲得する(懲役刑で刑務所に入ることを回避する)ために公判弁護活動を行わなければなりません。
そのためには、家族などの身元引受人に情状証人として裁判所に出廷してもらったり、示談金として支払う予定であった金銭を供託したりするなどして、反省していることや再び犯罪に手を染めないことなどを裁判官に理解してもらう必要があります。
警察からの呼出しがあれば弁護士に相談を
痴漢行為・盗撮行為・覗き行為・客引き行為など、迷惑防止条例で禁止される行為からもお分かりかと思いますが、迷惑防止条例違反で検挙される場合には現行犯逮捕されるケースが多いです。
しかし、そうではなく、自分の知らないうちに捜査が進んでいて、突然、警察から呼出しを受けたり後日逮捕されるケースもあり得ます。
自分がいつ逮捕されるのかを知ることはできないのが原則です。しかし、警察などから呼出しを受けている場合には、逮捕を阻止する猶予があるともいえます。
この段階で弁護士が介入できれば、呼出しの用件は何か、被疑者と参考人どちらの立場で呼び出されているのか、出頭から逮捕に移行する可能性はあるのかなどを聞き出し、本当に出頭する必要があるのかどうかを判断することができます。
出頭する必要がある場合でも、示談や被害弁償の必要を行う予定であることを伝え、逮捕せずに在宅のままで捜査をするように交渉することが可能です。
また、指定された呼出しの日時に仕事などで出頭できない場合でも、弁護士から出頭できない理由と別の候補日時を連絡し、指定日時に出頭しないことを理由に逮捕しないよう申し入れ、不当な逮捕を阻止することもできます。
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