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被害者が示談に応じないとどうなる|刑事処分への影響と対応策

示談に応じない

何らかの罪を犯してしまったことで被害者と示談をしようとしても、被害者が示談に応じてくれない場合があります。被害者が示談に応じない場合には、刑事処分に対してどのような影響があるのかは気になるところかと思われます。また、加害者としては示談決裂への対応策についても気になるのではないでしょうか。

この記事では、被害者が示談に応じない場合にどのように刑事処分に影響するのかということや、どのような対応策をとればいいのかということについて解説を加えます。

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被害者が示談に応じないとどうなる|示談交渉決裂の刑事事件への影響

刑事処分を軽くすることができない

示談を成立させることができれば、被害者から「加害者を許し処罰を求めない」という内容の示談書を書いてもらうことができます。このような示談成立により、不起訴処分を獲得したり刑を軽くしたりすることができます。

しかし、示談交渉が決裂して示談を成立させることができなければ、刑事処分を軽くすることができません。刑事処分を軽くすることができない結果、起訴されてしまったり刑が重くなったりします。示談交渉決裂によって、示談が成立していれば科されないような重い刑を科される場合もあるのです。

民事上の責任が残ることも

刑事事件を起こしてしまったことによって、被害者に対して損害賠償責任という民事上の責任を負うことがあります。示談金を支払って示談を成立させることができれば、示談金の支払によって損害賠償金の支払を兼ねることができます。これにより、民事責任をも果たすことができるのです。

もし示談交渉が決裂して示談を成立させることができなければ、示談金と兼ねて損害賠償金を支払うことができません。これにより、民事責任を果たすことができず、損害賠償義務が残ってしまうこととなります。

被害者の処罰感情を弱めることができない

刑事事件によっては被害者は加害者に対して強い処罰感情を抱いていることも多くあります。被害者の処罰感情が強ければ、起訴・不起訴の処分決定の際や量刑の決定の際に考慮され、刑事処分が重くなります。

示談を成立させることができれば、示談の中で謝罪をしてそれを受け入れてもらうことができます。謝罪を受け入れてもらうことができれば、被害者の処罰感情を弱めることができます。被害者の処罰感情を弱めることができれば、刑事処分の決定の際に考慮され、刑事処分を軽くすることができます。逆に、示談を成立させることができなければ、被害者の処罰感情を弱めることができません。この結果、刑事処分が重くなることがあるのです。

被害者が示談に応じない場合の対応策

示談金を積み増す

示談に応じてもらえない理由として、提示している示談金が足りないという場合もあります。提示している示談金の額が被害者にとって受け入れられる額に届いていなければ、示談を受け入れてもらうことはできません。示談に応じない被害者の意向を確認すると、示談金の額が少ないことが理由だと言われることがあります。この場合には、示談金を積み増して再度提示することにより、示談に応じてもらえる可能性を上げることができます。

示談金を積み増すにあたっては、示談金の相場を把握していることが大切です。最初に提示した示談金の額が相場よりも低い金額であれば、被害者が示談に応じないのも当然です。この場合には、相場に合わせた示談金の額を再度提示することになります。

もしも最初に提示した示談金の額が相場並みの額であったのにそれでも応じてもらえなければ、被害者の処罰感情が非常に強いのかもしれません。この場合には、被害者の意向を確認して、どの程度の額の示談金であれば示談に応じてもらえるのかを確認します。被害者に示談に応じてもらえるまで、可能な限り示談金の額を積み増すと良いでしょう。

示談条件を見直す

示談に応じない理由として、示談の条件が被害者にとって受け入れられないものとなっている場合があります。このような場合には、示談の条件を見直して修正することにより、示談を受け入れてもらえる可能性を上げるべきです。

たとえば「被害者が加害者を許し処罰を望まない」という宥恕条項(ゆうじょじょうこう)付きの示談書は、刑事処分を軽くするための重要な証拠になります。もっとも、被害者の処罰感情が強く、宥恕条項を入れた示談には応じてもらえない場合もあります。この場合、被害者に宥恕条項の記載を押し付けることはできません。宥恕条項を外すことで示談に応じてもらえる可能性を上げた方がいいでしょう。

「被害者が加害者を許し処罰を望まない」という条件を外した示談書に意味があるのかと思われるかもしれません。しかし、このような示談書にも刑事処分を軽くする効果はあります。示談金を支払って被害者が確かに受け取ったという内容の示談書があれば、被害弁償をしたことを証明することができます。被害弁償をすることができれば、被害者に生じた被害を後から埋め合わせたことになります。そのような事情が考慮され、不起訴処分や、刑が軽くなるという結果につながることが期待できます。

供託や贖罪寄付(しょくざいきふ)を活用する

被害者が示談金の金額にかかわらず全く受け取る意思がないことを示している場合には、供託という方法があります。供託は、被害者が示談金を受け取ってくれない場合に取ることができる手段です。被害者に示談金を支払う代わりに、法務局という国の機関にその示談金を預けることによって供託をすることができます。

供託をすれば、被害者が受け取りを拒絶しても、法律上は示談金を支払ったのと同じ効果が得られます。これにより、刑事処分を軽くする効果を期待することができます。

このほか、薬物犯罪などのように被害者がいない犯罪であれば、贖罪寄付を活用することも考えられます。贖罪寄付とは、罪を償う気持ちの表れとして公益的な団体などに寄付をすることを言います。贖罪寄付をすれば、罪を償う気持ちを具体的な形にすることができるため、刑事処分を軽くする効果を期待することができます。

示談交渉を弁護士に依頼する意義

弁護士に依頼すれば示談交渉が進みやすい

加害者やその家族が直接被害者とやり取りをすると、感情的な問題でうまく示談交渉が進まないことがあります。そのため、示談交渉は弁護士に依頼して行うべきです。

弁護士が間に立つことで、当事者同士で行うよりも円滑に示談交渉を進めることができます。

弁護士であれば被害者の連絡先を教えてもらえる

示談交渉をするためには、被害者の連絡先が分からなければなりません。しかし、多くの刑事事件では、加害者が被害者の連絡先を知りません。このような場合には、捜査を担当している検察官に示談のために被害者の連絡先を知りたいと頼んで、被害者の連絡先を教えてもらいます。被害者が連絡先を教えることを承諾していれば、検察官から被害者の連絡先を教えてもらえます。

もっとも、多くの場合、被害者は弁護士限りでなければ連絡先を教えてくれません。加害者に直接連絡先を知られることは怖いと考えるからです。そのような事情から、弁護士に示談交渉を依頼していなければ、被害者の連絡先を知ることもできないという場合が多くあるのです。弁護士に依頼すれば、弁護士限りで被害者の連絡先を教えてくれるため、示談交渉を行うことができるようになります。この意味でも、弁護士に依頼することは欠かせないと言えます。

示談の経験が豊富な弁護士に依頼する

示談交渉を弁護士に依頼する場合、示談の経験が豊富な弁護士に依頼することが重要です。弁護士はそれぞれ得意な分野が異なるため、弁護士によっては示談交渉をあまり取り扱っておらず慣れていないという弁護士もいます。反対に、刑事事件を多く取り扱うことで示談交渉の経験が豊富な弁護士もいます。示談交渉を弁護士に依頼する場合には、刑事事件を多く取り扱うことで示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼をするのが良いでしょう。

被害者が示談に応じないまま刑事手続きが進めば、重い刑事処分が下されてしまう場合もあります。そのため一刻も早く示談を成立させる必要があります。示談の経験が豊富な弁護士であれば、示談に応じない被害者ともスムーズに示談交渉ができ、刑事処分が軽くなることが期待できます。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了