
SNSでのなりすましやメールの盗み見は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(以下「不正アクセス禁止法」)違反になる可能性があります。
不正ログインしてしまったら警察は動くのか、逮捕されてしまうのか不安に感じている方はいるでしょう。
この記事では、不正アクセス禁止法違反になる行為・刑罰や、警察が事件を認知した場合どうなるのかを詳しく解説します。
不正アクセスに強い弁護士の選び方や弁護士の弁護活動もご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
不正アクセス禁止法違反になる行為・刑罰
不正アクセス行為
不正アクセス行為をすると、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
不正アクセス行為の内容
①不正ログイン(不正アクセス禁止法2条4項1号)
他人の識別符号(IDやパスワードなど)を無断で入力する行為は、不正アクセス行為に該当します。
不正ログイン型の不正アクセス行為に該当する可能性がある行為
- 他人のID・パスワードを入力してSNSを盗み見た
- LINEやX(旧Twitter)等のSNSで他人のID・パスワードを入力してアカウントを乗っ取った
- インターネットバンキングで他人のID・パスワードを入力して不正に操作した
不正ログインに関する犯罪は、民事上の問題に発展するおそれもあります。
たとえば、本人のアカウントを乗っ取った上で第三者を誹謗中傷したり、わざと炎上させるような書き込みをしたりすれば、損害賠償請求されるおそれがあります。
また、本人に無断で顔写真や住まい等の個人情報を投稿すれば、プライバシーの権利を侵害したことを理由に賠償責任を負う可能性もあります。
実際、インターネット上の掲示板において他人の顔写真やアカウント名を利用して他人になりすまし、第三者を誹謗中傷する投稿をした者に対し、名誉権及び肖像権侵害を理由に損害賠償を認めた民事訴訟が存在します(大阪地判平成29年8月30日)。
この裁判例は不正ログインした事例ではありませんが、不正ログインして本人になりすましたケースでも同様の訴訟を提起される可能性があるでしょう。
不正ログインによって刑事・民事両方の責任を負うおそれがあるのです。
②セキュリティ・ホール攻撃(同法2条4項2号、3号)
プログラムの脆弱性をつく攻撃をする行為も不正アクセス行為に該当します。
2号はアクセス制御機能を有する認証サーバを攻撃する場合、3号はアクセス制御機能を有する認証サーバとは別の利用対象サーバを攻撃する場合を規定しています。
不正アクセス禁止法第三条(不正アクセス行為の禁止)
何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
不正アクセス禁止法第十一条(罰則)
第三条の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
不正アクセス禁止法第二条(定義)
4 この法律において「不正アクセス行為」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)
二 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。)
三 電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為
不正取得行為
自己または第三者が不正アクセス行為を行う意思があることを認識しつつ自己利用または第三者に提供する目的で、他人の識別符号を取得した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
実際に不正アクセス行為をしなくても、不正アクセスする目的で他人のID・パスワードを入手するだけで処罰対象になります。
不正アクセス禁止法第四条(他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止)
何人も、不正アクセス行為(第二条第四項第一号に該当するものに限る。第六条及び第十二条第二号において同じ。)の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。
不正アクセス禁止法第十二条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第四条の規定に違反した者
不正助長行為
正当な理由による場合を除いて、相手方に不正アクセスに悪用する目的があると知りつつ他人の識別符号を提供した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
相手方に不正アクセスに悪用する目的があると知らずに提供した場合は、30万円以下の罰金に処せられます。
「提供」とは、ID・パスワードなどを第三者が利用できる状態に置くことをいいます。たとえば、インターネットの掲示板(爆サイなど)に他人のID・パスワードを公開する行為も不正助長行為に該当します。
「正当な理由」とは、社会生活上、正当と認められるような場合を意味します。たとえば、インターネット上に他人のID・パスワードが流出しているのを発見した場合、不正アクセスを防止する目的で公的機関等に届け出るケースが該当します。
不正アクセス禁止法第五条(不正アクセス行為を助長する行為の禁止)
何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を、当該アクセス制御機能に係るアクセス管理者及び当該識別符号に係る利用権者以外の者に提供してはならない。
不正アクセス禁止法第十二条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
二 第五条の規定に違反して、相手方に不正アクセス行為の用に供する目的があることの情を知ってアクセス制御機能に係る他人の識別符号を提供した者
不正アクセス禁止法第十三条(罰則)
第五条の規定に違反した者(前条第二号に該当する者を除く。)は、三十万円以下の罰金に処する。
不正保管行為
不正アクセス行為に利用する目的で、正当な権限なく取得された他人の識別符号を保管した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
不正アクセス禁止法第六条(他人の識別符号を不正に保管する行為の禁止)
何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、不正に取得されたアクセス制御機能に係る他人の識別符号を保管してはならない。
不正アクセス禁止法第十二条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
三 第六条の規定に違反した者
不正要求行為(フィッシング)
アクセス管理者が公開したウェブサイトまたはアクセス管理者が送信した電子メールであると利用権者に誤認させて、識別符号を入力させだまし取ろうとする行為(いわゆるフィッシング行為)をした場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
不正アクセス禁止法第七条(識別符号の入力を不正に要求する行為の禁止)
何人も、アクセス制御機能を特定電子計算機に付加したアクセス管理者になりすまし、その他当該アクセス管理者であると誤認させて、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、当該アクセス管理者の承諾を得てする場合は、この限りでない。
一 当該アクセス管理者が当該アクセス制御機能に係る識別符号を付された利用権者に対し当該識別符号を特定電子計算機に入力することを求める旨の情報を、電気通信回線に接続して行う自動公衆送信(公衆によって直接受信されることを目的として公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことをいい、放送又は有線放送に該当するものを除く。)を利用して公衆が閲覧することができる状態に置く行為
二 当該アクセス管理者が当該アクセス制御機能に係る識別符号を付された利用権者に対し当該識別符号を特定電子計算機に入力することを求める旨の情報を、電子メール(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成十四年法律第二十六号)第二条第一号に規定する電子メールをいう。)により当該利用権者に送信する行為
不正アクセス禁止法第十二条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
四 第七条の規定に違反した者
警察が不正アクセスを認知したら逮捕される?逮捕後の流れは?
不正アクセス行為の認知件数
令和4年版犯罪白書によれば、令和3年の不正アクセス行為の認知件数は以下のとおりです。
被害を受けたコンピュータのアクセス管理者別内訳
被害を受けたコンピュータのアクセス管理者 | 件数 |
---|---|
一般企業 | 1,492件 |
行政機関等 | 15件 |
プロバイダ | 5件 |
大学、研究機関等 | 4件 |
不正アクセス後の行為
不正アクセス後の行為 | 件数 |
---|---|
インターネットバンキングでの不正送金等 | 693件(45.7%) |
インターネットショッピングでの不正購入 | 349件(23.0%) |
メールの盗み見等の情報の不正入手 | 175件(11.5%) |
知人になりすましての情報発信 | 71件(4.7%) |
不正アクセスの後、他人の費用負担の下にインターネットショッピング等をすると不正アクセス禁止法違反に加え、電子計算機使用詐欺罪が成立します。
また、不正アクセスによってメールを盗み見た上、他人のパスワードを変更して自分だけが利用できる状態にすれば、電磁的記録不正作出罪・同供用罪が成立します。
いずれの場合も、不正アクセス禁止法違反のみの場合より刑罰が重くなるおそれが高いです。
「起訴を避けたい」「処罰を軽くしたい」とご希望の場合、できる限り早く弁護士に相談することをおすすめします。
警察が不正アクセスを認知したら逮捕される?
逮捕は被疑者として認められる十分な証拠があり、「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」があるときに行われる手続きです。
不正アクセスにより被害を受けた利用権者やアクセス管理者から被害届が出されるなどして、捜査機関で捜査が進められれば、逮捕される可能性はあるでしょう。
たとえ匿名で投稿したとしても、捜査の結果、逮捕される可能性もあります。警察は発信者情報を確認し、犯人を特定することが可能だからです。
不正アクセスの逮捕後の流れ

逮捕されると72時間以内に、「勾留」請求されるかどうか判断されます。逮捕後に勾留されると、起訴・不起訴が決まるまで最長で23日間、警察の留置場で身柄拘束をされます。
逮捕後は、警察官や検察官による取調べを受けます。取調べでの供述は重要な証拠になります。取調べで適切な対応ができるかどうかが刑事処分を左右すると言っても過言ではありません。
適切に取調べの対応を行うためには、刑事弁護に強い弁護士のアドバイスが不可欠です。
もし身内の方が逮捕されてしまった場合は、身動きのとれないご本人に代わり、ぜひご家族が私選弁護人を選任してあげてください。ご家族が面会できるのは勾留決定後からですが、私選弁護人であれば逮捕直後から接見できます。
アトム法律事務所は初回接見出張サービスを行っています。弁護士が逮捕直後から警察署に駆けつけご本人を法的にも精神的にもしっかりサポートします。大切なご家族のため、ぜひお早めにご相談ください。
関連記事
・逮捕されたら|逮捕の種類と手続の流れ、釈放のタイミングを解説
不正アクセスに強い弁護士の選び方
豊富な解決実績がある弁護士
不正アクセス事件をできるだけ良い形で解決するためには、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士を選びましょう。
弁護士にはそれぞれ、専門的に取り扱っている分野があり、すべての弁護士が刑事事件に精通しているわけではありません。私選弁護士を依頼する際には、刑事弁護に注力している弁護士事務所に依頼をすべきです。
示談という被害者対応を含めると、法律知識だけでなく、示談の実践経験がどれだけあるかが弁護士の力量を示す尺度になるでしょう。とくに不正アクセスは、被害者が個人情報を知られてしまったショックから、示談が難しくなるケースもあります。
被害者感情に寄り添いつつ適切に示談を成立させるためには、弁護士の経験、人柄、交渉力が鍵を握ります。
解決実績が豊富な弁護士を探すためには、事務所HP等で公開されている情報を確認するのが有効です。
信頼できる弁護士
刑事事件では、弁護士と被疑者の間に信頼関係が不可欠です。
警察からの取り調べなどは、被疑者にとって精神的な負担になるでしょう。そんなとき、些細なことでも相談できるような信頼できる弁護士がいれば、大きな支えになります。
信頼できる弁護士かどうかを見極めるためには、実際に面談をして、弁護士の人柄や対応を確かめることが大切です。弁護士の対応が親身で丁寧であれば、信頼できる可能性が高いといえます。
迅速な対応ができる弁護士
弁護士を選ぶ上で、対応の早さは非常に重要です。
とくに身体拘束されている事件では刑事事件は時間の制約も厳しく、迅速に対応してくれることも頼れる弁護士の必須要素だといえます。いくら刑事弁護に精通したベテランでもスケジュールが埋まっていては意味がありません。
依頼するときには、すぐに早期釈放などの活動に動いてくれる弁護士を選ぶべきでしょう。
不正アクセス禁止法違反における弁護士の活動
逮捕の回避
弁護士は、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを主張し、逮捕の回避を目指します。
具体的には、同居家族が監督する旨の誓約書を提出し、逃亡のおそれがないことを説明します。また、示談を成立させて証拠隠滅のおそれがないことも示します。
早期釈放の実現
逮捕・勾留から一刻も早く解放されるには、弁護士に依頼するのが最善策です。
逮捕された場合、弁護士は逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを示す意見書を迅速に作成します。さらに、裁判官に直接面談して早期に釈放されるよう粘り強く説得します。
起訴された場合は保釈を申請します。アトム法律事務所の弁護士が担当した不正アクセス禁止法違反事件で保釈が認められ早期釈放が実現したケースもあります。
アトム法律事務所の弁護士に依頼すれば、会社、家庭、学校生活等への影響を最小限に抑えることが期待できます。
不起訴処分の獲得
不正アクセス禁止法違反で前科をつけたくなければ、不起訴処分を獲得することが最も有効です。
不起訴処分獲得のポイントは、早期の示談成立です。とくに被害者による許し(宥恕)を得られた場合、不起訴処分となる可能性は高くなります。
被害者は不正アクセスによって大きな精神的ダメージを受けているケースも少なくありません。そのような事案で適切な被害者対応をしつつ示談を成立させるには、刑事弁護の豊富な経験が欠かせません。
アトム法律事務所の弁護士は、不正アクセス禁止法違反事件で宥恕付き示談を成立させ不起訴処分を獲得した解決実績があります。
早期の示談成立による不起訴処分をご希望の場合、ぜひアトム法律事務所の弁護士にご相談ください。
不起訴処分に向けた弁護活動は、略式手続による罰金刑や、執行猶予付き判決など刑の軽減にもつながります。
身に覚えがない場合もすぐ弁護士へ
身に覚えのない容疑で検挙された場合もすぐに弁護士にご相談ください。
弁護士は、検察官の主張する犯罪事実が客観的証拠にそぐわない旨を的確に主張します。ご依頼者様に有利な証拠を弁護士が独自に収集するケースもあります。
早期に弁護士に依頼するほどご依頼者様に有利な事情を収集できる可能性が高まります。取調べで不利な供述をとられないよう丁寧なアドバイスも行います。
これらの弁護活動の結果、検察官が嫌疑不十分と判断すれば不起訴処分となり前科がつくのを回避できます。
不正アクセスをしてしまったらアトム法律事務所へ
不正アクセスでお困りの方は、アトム法律事務所にぜひご相談ください。
アトム法律事務所は刑事事件専門の弁護士事務所として開業した沿革があり、不正アクセスに関しても事件を解決した実績があります。
アトム法律事務所は、以下のような充実したサービスを提供しています。突然の逮捕や呼び出しにもスピード対応してご依頼者様の利益を守ります。ぜひお気軽にご相談ください。
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