現在、保釈中のご本人や、保釈金を納めたご家族にとって、「保釈の取り消し」は最も恐れている事態ではないでしょうか。
結論からお伝えすると、裁判所で決められたルールさえ守っていれば、普通の生活を送ることに問題はありません。しかし、万が一ルールを破ってしまうと、「再収監」や「保釈金の没収」という非常に重いペナルティが待っています。
この記事では、保釈が取り消される具体的な6つの条件や、保釈中にやってはいけないこと、万が一取り消された場合のリスクについて、わかりやすく解説します。
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目次
保釈が取り消されるとどうなる?2つの重大ペナルティ
まず、もっとも気になる「取り消された後のこと」から解説します。保釈が取り消されると、以下の2つの大きな不利益を被ることになります。
(1)直ちに「再収監」される
保釈の効力が失われるため、すぐに刑事施設(拘置所など)へ戻らなければなりません。判決が出るまで、再び身柄を拘束される生活に戻ることになります。
(2)保釈金(保釈保証金)が「没取(ぼっしゅ)」される
保釈が取り消されると、裁判所に預けていた保釈金の一部、または全額が国に取り上げられてしまいます(これを法律用語で「没取」といいます)。
没収される金額は裁判所の判断によりますが、逃亡や証拠隠滅など悪質な違反の場合は、全額没収されるケースが一般的です。数百万円単位のお金が戻ってこなくなるため、経済的にも甚大なダメージとなります。
何をしたらアウト?保釈取り消しの「6つの要件」
では、具体的にどのような行動をとると保釈が取り消されるのでしょうか。
これは刑事訴訟法96条で明確に決まっています。具体的には、以下6つの要件のいずれかに当てはまると、裁判所は保釈を取り消すことができます。
保釈が取り消される場合
- 正当な理由なく裁判に出頭しない
- 逃げた、もしくは逃げそうな状況がある
- 証拠を消す行為をした、またはしそう
- 被害者や関係者に危害を加えたり脅した
- 必要な報告をせず、または嘘の報告をした
- 住居制限などの保釈条件を破った
(1)正当な理由なく裁判に出頭しない
裁判所からの呼び出しに応じず、欠席を正当化できる事情も示されない状況を指します。結果として、出頭義務を果たしていないと判断され、裁判手続に支障が生じる可能性があります。
(2)逃げた、もしくは逃げそうな状況がある
被告人が実際に逃亡したり、逃走準備や行動など逃亡の危険が客観的に認められる状態です。このような場合、裁判への出頭確保が困難になるおそれがあると判断されます。
(3)証拠を消す行為をした、またはしそう
証拠隠滅に当たる行動が行われた、あるいはその可能性が相当程度認められる状況です。公平な裁判を妨げる危険が高まるため、保釈を維持することが適当でないと判断されます。
(4)被害者や関係者に危害を加えたり脅した
被害者や証人など事件関係者に対し、実際に危害を加えたり、危害を示唆して脅迫する行為があった場合に該当します。裁判の公正や関係者の安全を損なう重大な行為とみなされます。
(5)必要な報告をせず、または嘘の報告をした
裁判所から求められた報告に応じなかったり、虚偽の内容を伝えることで、保釈中の監督が適切に行えなくなる状況です。保釈制度の実効性を損なう行為として扱われます。
(6)住居制限などの保釈条件を破った
裁判所が定めた住居の指定や行動制限などの条件に違反する状態です。条件を遵守しないことで、保釈の前提が崩れ、裁判所が保釈を継続できない理由となります。
保釈中にやってはいけないこと・過ごし方の注意点
条文の内容を踏まえ、日常生活で「やってはいけないこと(NG行動)」と「過ごし方」の注意点を簡潔に説明します。
絶対にやってはいけないNG行動
うっかりであっても、以下の行動は「違反」とみなされるリスクが高いため、厳重な注意が必要です。
保釈中のNG行動
- 共犯者や証人への連絡
電話やメールはもちろん、LINEやSNSを通じた接触もNGです。世間話でも、「口裏合わせの合図」と疑われる可能性があります。 - 被害者への接触
謝罪をしたい気持ちがあっても、直接会いに行ったり、手紙を送ったりすることは脅しと捉えられかねません。 - 無断での引っ越し・長期旅行
保釈中は、裁判所に届け出た住所(制限住居)に住むことが条件です。許可なく引っ越したり、数日間の旅行や出張で家を空けたりすることは「条件違反」になります。 - (GPS装着命令がある場合)GPSの破壊・切断
端末を外したり壊したりする行為は禁じられています。
保釈中の正しい過ごし方
基本的には、「裁判所の許可」さえあれば、多くのことが可能です。
仕事や買い物は、日常生活の範囲内であれば自由に行えます。旅行や出張に行く場合も、事前に弁護士を通じて裁判所に「旅行許可の申請」を出し、許可が下りれば可能です。
それ以外に入院や通院など、制限住居を離れることになる場合は、事前に許可が下りれば可能です。
身元引受人(家族)の方へ:知っておくべきリスクと役割
保釈金を納め、身元引受人となったご家族は、被告人の「監督者」としての役割を期待されています。
もっとも、もし本人が逃亡したりルールを破ったりしても、身元引受人が刑罰を科せられたりすることはありません。
しかし、納めた保釈金が没収されてしまうリスクはあります。「全額没収」となれば、保釈金として納付した数百万が戻ってきません。
ご家族ができる最大のサポートは、本人がルールを守るように見守ること、そして「裁判の日には必ず出廷させること」です。
身元引受人の役割について詳しく知りたい方は『身元引受人とは?役割と求められる条件、身元引受人が必要となるケースを徹底解説』の記事をご覧ください。
保釈中の行動についてよくある質問
保釈中の生活について、多くの人が疑問に思うポイントをQ&A形式でまとめました。些細なことでも、自己判断せずに確認することが大切です。
Q.保釈中に仕事をしたり、学校に行ったりしても大丈夫ですか?
基本的には問題ありません。 保釈は、社会生活を送りながら裁判を受けるための制度ですので、仕事や通学は認められます。
むしろ、真面目に勤務・通学している姿は、裁判官に対して「社会更生の意欲がある」という良い印象を与えることもあります。
ただし、事件の内容に関連する職場や、共犯者がいる場所への出入りが禁止されている場合は例外です。
Q.もし被害者の方から連絡が来たら、返信してもいいですか?
絶対に直接返信しないでください。 たとえ相手から連絡があったとしても、直接やり取りをすると「口裏合わせをした」「脅した」と誤解されるリスクが非常に高いです。
無視をするのではなく、すぐに担当の弁護士に「被害者から連絡が来た」と報告し、対応を任せてください。
Q.お酒を飲んだり、スマホを使ったりする制限はありますか?
裁判所から個別に禁止されていない限り、法律上の制限はありません。 スマホやPCの使用も基本的には自由です。
お酒についても禁止はされませんが、泥酔して警察沙汰になったり、トラブルを起こしたりすると「保釈取り消し」のリスクが生じます。泥酔時に起こしたトラブルであれば、避けたほうが無難です。
また、スマホを使って共犯者と連絡を取ることは厳禁ですので、誤解を招くような使い方は控えましょう。
Q.実刑判決が出たら、保釈金は没収されてしまいますか?
実刑判決でもルールを守っていれば全額戻ってきます。
よくある誤解ですが、保釈金は「無罪の人だけが返してもらえるお金」ではありません。「裁判が終わるまで逃げずにルールを守った人」に対して返還されるお金です。
たとえ実刑判決や執行猶予付き判決であっても、保釈中の条件違反がなければ、手数料などを引かれることなく還付されます。
Q.保釈中に別の事件(万引きや喧嘩など)を起こしたらどうなりますか?
保釈が取り消され、再収監される可能性が極めて高いです。
別の罪を犯すことは、保釈の条件違反そのものではありませんが、新たな逮捕に伴い「逃亡や証拠隠滅の恐れが高まった」と判断されやすくなります。
その結果、前の事件の保釈が取り消され、保釈金も没収されるケースが多くあります。
まとめ:保釈取り消しはルールを守れば恐れる必要はありません
保釈の取り消しは、「逃亡」や「証拠隠滅」といった背信行為に対するペナルティです。逆に言えば、正直に生活し、裁判所のルールを守っている限り、過度に恐れる必要はありません。
- 指定された住所で生活する
- 裁判所の呼び出しには必ず応じる
- 事件関係者には絶対に接触しない
- 旅行や転居が必要なときは、事前に弁護士へ相談する
これらを徹底することで、保釈金は裁判終了後に還付され、社会生活を維持しながら裁判に臨むことができます。
もし、現在の生活状況や、特定の行動についての不安がある方は、担当の弁護士にご相談ください。
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