1. »
  2. »
  3. 刑事事件の身元引受人になれる人|条件や責任、必要な場面の解説

刑事事件の身元引受人になれる人|条件や責任、必要な場面の解説

身元引受人

刑事事件では「身元引受人」が必要になることがあります。身元引受人は、釈放された人の身元を引き受け、逃亡や証拠隠滅がなされないよう監督する者になります。そのため、すべての人が当然に身元引受人になれるわけではございません。

身柄の解放には、身元引受人が必要となる場面も多くございますが、どういうときに必要なのか、どうすれば身元引受人になれるのか、わからないことも多いと思います。そこで、身元引受人の役割何かしらの責任を負うのかどのような場面に必要になるのかを、以下で見ていきましょう。

身元引受人になれる人の条件

身元引受人の役割|逃亡や証拠隠滅の防止と監督

身元引受人の役割は、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが生じないように防止、監督をすることになります。逮捕や勾留は逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがある人を拘束して捜査を行う手続になり、身元引受人は逮捕や勾留をしなくても逃亡や証拠隠滅がされないようにする役割を担う者になります。

捜査中や裁判中に逃亡したり証拠を隠滅されたりすれば、捜査や裁判の遂行がうまくできず支障が出ることになり、身体拘束はそれらを避けるためのものになります。身元引受人が身元を引き受け、逃亡や証拠隠滅のおそれを防止する代わりに本人が釈放されるということになります。

身元引受人と保証人・後見人は何が違うのか

身元引受人は保証人や後見人とは異なるものです。

保証人とは、本人に代わって債務の支払いをする人のことを指します。借金をした人が返済できなくなったり、施設の賃料などを滞納した際、本人の代わりに支払いをします。

後見人とは、判断能力が不十分な人の代わりに契約や財産の管理などを行う人のことを指します。認知症や精神障害などで判断能力が衰えた人の後見人を成年後見人といい、親権者がいない未成年者の後見人を未成年後見人といいます。

【家族、親族】は身元引受人の条件を満たす?

家族や親族は身元引受人の条件を満たすことが多いでしょう。家族や親族の場合、同居の上で本人の身元を引き受けることも多く、より本人が逃亡したり証拠隠滅したりできる可能性が高いと判断されることになります。また、家族や親族は、本人が逃亡や証拠隠滅をしないよう強い監督をしやすく、相応しいといえるでしょう。

本人の家族や親族とはいえ、もちろん遠い親戚よりは近しい親戚の方が身元引受人に相応しいことになるでしょう。ただ、本人の住居地より遠くに住む近い親族よりは近くに住み本人と交流のある遠い親族の方が、本人の逃亡や証拠隠滅を防ぎやすく、身元引受人の条件を満たしやすいため、状況によるでしょう。

【会社の上司や雇い主】は身元引受人の条件を満たす?

会社の上司や雇い主は身元引受人の条件を満たす場合もあります。本人が仕事をする時間が長かったり住み込みで働いたりなど、会社の上司や雇い主といることが多い場合などは、本人が逃亡をしたり証拠隠滅をしたりしないよう監督をする立場にあるといえ、身元引受人の条件を満たすことがあります。

会社の上司や雇い主であっても、本人が日中仕事に出るだけで仕事での拘束時間が短かったり拘束力の小さいパート勤務などの場合には逃亡や証拠隠滅を防げる身元引受人とは言い難いでしょう。会社の上司や雇い主がしっかり本人を日常的にも監督できる立場にあるかどうかによるでしょう。

【友人・恋人】は身元引受人の条件を満たす?

本人の友人や恋人は身元引受人の条件を満たすことがあります。友人や恋人で本人の近くに住み連絡を頻繁に取ったり、同居などをしたりするなど本人の監督を十分に行い、逃亡や証拠隠滅のおそれを防ぐことができるのであれば、友人や恋人も身元引受人の条件を満たすと言えるでしょう。

友人や恋人という立場の場合、家族や親族の場合と異なって本人との繋がりが薄く、監督できない場合も想定されやすいでしょう。しかし、本人との連携を密に取れる状況で、本人が逃亡したり証拠隠滅したりすることを防ぐことができる立場なのであれば、身元引受人となり得るでしょう。

【弁護士】は身元引受人の条件を満たす?

弁護士は、身元引受人の条件を満たすことになり得るでしょう。弁護士が本人に付いているということにより、本人が弁護士の指導監督のもと逃亡したり証拠隠滅したりするおそれがないことを示すことができます。そのため、弁護士は身元引受人の条件を満たすということになります。

弁護士は一緒に生活を共にして監督をするということはできかねますが、弁護士が付いている者であれば本人の逃亡や証拠隠滅を防止できるという可能性から身元引受人の条件を満たすことになります。そのため、まずは身近な者が身元引受人となり、他の適任者がいない場合に弁護士が引受人となるのが一般的でしょう。

身元引受人になったら責任はある?

身元引受人は具体的に何をすればいいのか

身元引受人は被疑者や被告人を監督することになりますが、24時間常に目が届く範囲で監視を続ける必要は無いため、本人から目を離して買い物や遊びに行っても問題はありません。本人の身元を引き受けている最中に捜査機関から電話がきて様子を聞かれるようなこともありません。

しかし、証拠の隠滅や逃亡を許してしまった場合、捜査機関や裁判所からの信用を失ってしまうことになるのでその後も身元引受人になることは難しくなります。
また、身元引受人が保釈金を出していた場合、本人が証拠の隠滅や逃亡を行ってしまうと、保釈金が没取されて返還されないことがあります。

そのため、身元引受人となった場合は、本人の証拠隠滅や逃亡を防ぐ、警察署や検察といった捜査機関から出頭要請があった際は出頭を促す、公判があるときは出廷を促す、社会的な更生を促す、といった役割をこなすべきでしょう。

身元引受人の役割については『身元引受人の役割とは?逮捕されたら身元引受人は必要?』で詳細に解説しているため、気になる方はぜひご参考になさってください。

身元引受人に法的責任は無い

身元引受人に法的責任はありません。たとえば被疑者や被告人が証拠を隠滅したり逃亡をしたとしても、身元引受人が刑罰を受けたり、損害賠償を請求されるといった法的責任を負うことはありません。

また、身元引受人はあくまで本人の身元を引き受ける者であるという意思を示したものなので仰々しい手続なども不要です。

もちろん、身元引受人は身元をきちんと引き受けられる者である必要はありますが、本人を監督しその身元を引き受けられる人物であればなることができます。もっとも、最終的に本人が身元引受人の手の届かないところで何かあったとしてもそのことで身元引受人が法的責任を負うことはありません

身元引受人は拒否・辞退できない?

身元引受人は拒否や辞退をすることもできます。身元引受人は本人の身元を引き受けるという意思を示すというものですので、たとえ身元引受人の適性があるとしても自身が身元引受人になりたくない場合や、身元引受人を断りたいと思った場合には自由に拒否や辞退をすることができます。

身元引受人は強制的なものではなく、本人の身元を引き受ける者がいた方が本人の釈放に有利な場合に、身元を引き受ける者がいることを示すためのものとなります。そのため、本人の身元を引き受けたくないというのであれば、そのことを強制する理由はなく、拒否や辞退をしても問題ございません。

身元引受人になったら途中でやめられない?

一度身元引受人になったとしても、途中で身元引受人をやめることもできます。身元引受人は本人の身元を引き受けることが前提のため、身元を引き受けることができなくなった場合やその身元を引き受けたくなくなった場合には、自身の意思で自由に身元引受人をやめることができます。

身元引受人は義務ではないので、自身の判断で自由にやめることができます。もっとも、急に身元引受人をやめる場合には身元を引き受けられていた本人に不利益が生じる可能性があるので、後の身元引受人がいないかどうか、辞める前に事実上相談はしたほうがよろしいでしょう。

身元引受人が必要な場面

身元引受人は逮捕後の釈放に必要?

身元引受人は、逮捕後に釈放されるためにいた方が良いでしょう。逮捕後の勾留は、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがある場合になされることになります。身元引受人がいれば、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがなくなるとして、逮捕後釈放されるために有利な事情となります。

身元引受人が存在しているとすれば、逮捕された本人が証拠を隠滅したり逃亡したりして捜査に支障が生じることを防ぐことができます。そのため、逮捕後の釈放のために身元引受人の存在は大きな意味を持つことになります。逮捕後の釈放のために、できるだけ身元引受人は用意するべきでしょう。

身元引受人は起訴後の保釈に必要?

身元引受人は起訴後の保釈の際に基本的にいた方が良いでしょう。保釈されるためには裁判所に釈放されても裁判までに逃亡したり裁判に支障がでるような証拠隠滅をしたりしないことが必要であり、裁判所としても本人がそのような行為をしないように身元引受人がいた方が保釈許可を出しやすいということになります。

保釈とは、起訴された者が裁判の判決を受けるまでの間身柄拘束から解放されるための手続ですので、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがある場合には裁判に支障がある可能性があるとして認められません。そのため、証拠隠滅や逃亡のおそれを抑制できる身元引受人がいればより保釈の許可に有利になるということになります。

身元引受人は判決で執行猶予を得るのに必要?

身元引受人は、判決で執行猶予を得るのにも有益であるといえるでしょう。判決において実刑ではなく、猶予期間を設けて社会内で更生する機会を与える執行猶予が認められるためには、本人を監督する身元引受人の存在がいれば、本人をすぐに刑務所に行かせる必要はないとしてより認められやすくなるといえます。

社会内で更生できるかどうかについて、身元引受人がいれば、本人の身元を引き受けて監督をして再犯防止の可能性を高めることができると考えられます。そのため、身元引受人がいれば、判決の際に実刑を科すよりも身元引受人の監督の下社会内で猶予を与えるという判断がされやすくなります

身元引受人は刑務所からの仮釈放に必要?

身元引受人は、刑務所からの仮釈放の際に必要といえます。法律上は身元引受人は仮釈放に必要とはされていませんが、事実上は仮釈放のためには身元引受人を立て、本人が逃亡などをせず、適格な身元引受人のもとで更生を図ることができるような環境を整えることが必要となります。

刑務所からの仮釈放のためには、「改悛の情」が認められるかどうかが要件となっており、その判断の中で出所後の環境も1つの要素となります。そのため、仮釈放後の身元引受人の存在があれば、出所後もきちんと更生される環境が整っていると考えられるため、身元引受人の存在が必要となります。

刑事事件でお困りの方へ
無料相談予約をご希望される方はこちら
24時間365日いつでも相談予約受付中 0120-204-911

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。

岡野武志弁護士

監修者情報

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

第二東京弁護士会所属。ご相談者のお悩みとお困りごとを解決するために、私たちは、全国体制の弁護士法人を構築し、年中無休24時間体制で活動を続けています。