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児童ポルノの刑罰・捜査の流れ・裁判例

児童ポルノで適用される刑罰

児童買春・児童ポルノ禁止法における「児童」は「18歳に満たない者(男女を問わない)」を指します。
「ポルノ」は、写真や電磁的記録のうち「性交又は性交類似行為に係る姿態」のほか、「他人が児童の性器を触ったり児童が他人の性器を触っているもの」「性器や臀部、胸部が露出されたり強調されているもの」で性欲を興奮、または刺激するものを指します。

児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項(所持)

1年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金

第七条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。

いわゆる児童ポルノの単純所持について規制する条文です。
規制の対象は、「自己の意思に基づいて所持するに至った者、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る」とされており、被写体が児童だと知らなかったと認められた場合などは、罪に問われません。

児童買春・児童ポルノ禁止法7条2項、3項(特定個人への提供等)

3年以下の拘禁刑
または300万円以下の罰金

2 児童ポルノを提供した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

児童ポルノを個人に提供したり、提供目的で製造、所持、運搬、日本への輸入と輸出をした人は、この条文により処罰されます。
なお、不特定多数への提供等は、後述のより重い刑罰に科されることになります。

児童買春・児童ポルノ禁止法7条6項、7項、8項(不特定多数への提供等)

5年以下の拘禁刑
または500万円以下の罰金
または併料

6 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
8 第六項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

不特定または多数の人に児童ポルノの提供等をすると、この条文が適用されます。
態様として多いのは、児童ポルノにあたる動画像等をネット上に貼ってしまうといった行為です。
また、外国から輸入したり、外国から輸出したりする行為も規制の対象になります。

児童買春・児童ポルノ禁止法7条4項(製造)

3年以下の拘禁刑
または300万円以下の罰金

4 前項に規定するもののほか、児童に(略:児童ポルノに当たる)姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も(略:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)に処する。

提供目的外の、児童ポルノの製造を禁じる条文です。
「児童買春や淫行において、スマホ等で児童ポルノに当たる動画像を撮影していた」といった態様で、この条文が適用されます。

児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項

3年以下の拘禁刑
または300万円以下の罰金

前二項に規定するもののほか、ひそかに(略:児童ポルノを)写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、(略:3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)とする。

いわゆる盗撮の事案について、被写体が18歳未満の者であった場合も、児童ポルノ禁止法によって処罰される可能性があります。
なお、盗撮で適用され得る罪の中では、最も刑罰が重いです。

児童ポルノの捜査の流れ

児童ポルノ犯罪は、「ネット上に児童ポルノを掲載する」「ネット等を使用し児童ポルノを収集する」といった態様のほか、「児童と淫行等をし、その機会に動画像の撮影なども行う」といった態様も多いです。
後者の態様は、たとえ同意の上であったとしても、児童ポルノ禁止法や淫行条例、児童福祉法違反などにも問われ得ます。

被害届が提出された場合

1 被害届提出・告訴
2 警察が事件を認知
3 捜査

児童ポルノを製造したという態様では、被害者が被害を訴えることで、警察が事件を認知する場合があります。
例えば、淫行に伴い児童ポルノを製造したという態様では、不審に思った両親が被害児童を問いただし、事件が露見するケースなどが典型です。

別犯罪の捜査で検挙される場合

1 他の犯罪で検挙
2 スマホ・PC等が押収
3 解析で児ポが露見

盗撮や不正アクセス関連の犯罪などでは、スマホやPCなどが押収され、中身を解析されることがあります。
そして、児童ポルノにあたる動画像等があった場合、現在進行している事件とは別に、児童ポルノ所持等の容疑についても捜査や刑事手続きが進んでいくことになります。

児ポ業者が摘発された場合

1 児童ポルノ業者摘発
2 顧客リスト等押収
3 児ポ所有等露見

児童ポルノの販売業者などの摘発により、業者から商品を購入していた個人にまで捜査の手が及ぶことがあります。
児童ポルノ業者が摘発されると、警察は業者の顧客リストも押収し、解析します。
顧客リストに名前が載っていた場合、児童ポルノ所持等の疑惑がもたれ、捜査対象になることもあります。

児童ポルノの有名裁判例

児童ポルノにかかる犯罪としては、「ネット上に児ポ動画像等を貼り付けた」「淫行に当たる行為をした際に動画像等を撮影した」といった態様が典型です。
この2つの犯行態様について、最高裁まで争われた裁判例があるのでご紹介します。

児ポ禁止法における「公然と陳列した」の定義について参考となる裁判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 平成21年(あ)第2082号 判決年月日: 平成24年7月9日

判決文抜粋

「(第三者がネット上に掲示していた児童ポルノについて、そのページのURLを掲示した行為)は,(略:児童ポルノ禁止法)7条4項の「公然と陳列した」に該当する」

弁護士の解説

児童ポルノをネット上に掲載する行為は、児童ポルノを不特定多数の者に提供したとされて罪に問われます。
この裁判例は児童ポルノそのものではなく、児童ポルノが掲載されていたwebページのURLについて「bbs」という部分を「ビービーエス」と改変するなどしたうえで掲載した行為について、審理されたものとなります。
結論としては、裁判官2名の反対意見などもありましたが、この行為は児ポ法違反の正犯(主犯)にあたると判断され、被告人は懲役8月執行猶予3年および罰金30万円の有罪となりました。

児ポ法と児童福祉法の淫行の罪とが併合罪になると判示した裁判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 平成19年(あ)第619号 判決年月日: 平成21年10月21日

判決文抜粋

「被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,(略:この行為は)併合罪の関係にあるというべきである。」

弁護士の解説

中学校の教員として勤務していた被告人が淫行をし、かつ、そのときの様子をカメラで撮影をしたという事案について審理された裁判例です。
このケースでは、児童福祉法違反と児童ポルノ禁止法違反の2つの罪が成立するとされましたが、最高裁で、この2つは併合罪の関係にあると示されました。
併合罪となった場合、刑の長期が引き上げられるので、より重い刑を科される可能性が出てきます。

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