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横領/背任の有名裁判例

横領罪や背任罪においては、その区別がしばしば問題となります。
基本的には、自己の名義・計算で行われた場合は横領罪、被害者側の名義・計算で行われた場合は背任罪となります。
ここでは横領罪と背任罪のいずれが成立するか問題となった判例を2つ紹介します。

背任罪でなく業務上横領罪が成立すると判示した判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和31年(あ)第1324号 判決年月日: 昭和33年10月10日

判決文抜粋

「(金員を)組合から支出を受けて、被告人等が自由に処分し得る状態に置き、これを被告人等が預金謝礼金として支払いまたは融資希望者に貸付けていたものであることが窺われるから(略)組合の計算においてなされた行為ではなく、被告人等の計算においてなされた行為であると認むるを相当とする。(略)従つて原判決が本件につき業務上横領罪の成立を認めたのは正当(である)」

弁護士の解説

勤務する信組支店の預金成績の向上を装うため、預金者に謝礼金として組合の金員を交付し、これを補填するため、貸付を受ける資格のない者に金員を貸し付けたという事案において、業務上横領罪の成立を認めた判例です。
実質的な経済的利益の帰属は組合でなく、被告人にあるため、背任罪でなく業務上横領罪が成立するとされました。

背任罪が成立し、横領罪は成立しないとした判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和39年(あ)第2013号 判決年月日: 昭和40年5月27日

判決文抜粋

「(農業協同組合の組合長による組合の当座預金の)払出は、被告人が先に任務に背いて組合名義をもつて振出した所論各約束手形の支払のためであつた」
「先に被告人が約束手形を振出したこと自体が背任罪を構成するものであり、その手形を組合の当座預金から払出して支払つた行為もまた右背任罪の一部であつて(横領罪は成立しない)」

弁護士の解説

農業協同組合の組合長が組合長の資格を悪用し、組合名義の約束手形を振出交付し、これを取得した第三者から支払請求を受けて、組合の当座預金から、金員を引出してこれを支払ったという事案において、一連の行為は背任罪を構成すると判示した裁判例です。
約束手形の振出交付・支払を全体として実質的に捉え、約束手形の振出交付は組合の名義・計算で行われるため背任罪を構成し、その支払行為は背任罪の一部であって、業務上横領罪を構成しないとされています。

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