3か月以上7年以下の拘禁刑
第二百二十四条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
相手をその生活環境から離脱させて、自身や第三者の管理下におき、そこからの離脱を困難にさせる行為を略取・誘拐と言います。
なお、暴行や脅迫など強制的な手段を使うものを「略取」、騙したり誘惑したりするものを「誘拐」と言います。
ここでは、未成年者の深夜連れ出しについても解説します。
第二百二十四条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
未成年者とは、18歳未満の者を差します。
未成年者を略取または誘拐した場合、身代金やわいせつ等の目的でなかったとしても、この刑罰が適用され得ます。
第二百二十五条 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
営利目的とは、財産上の利益を得たり第三者に利益を得させたりする目的、わいせつ目的は、わいせつ行為をしたりさせたりする目的、結婚は、自身や第三者と結婚させる目的を言います。
これらの目的に加え、暴行や傷害等の目的による略取・誘拐は、この条文が適用され得ます。
第二百二十五条の二 近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。
2 人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。
身代金目的の略取・誘拐は、先述の未成年者略取・誘拐、営利目的等略取・誘拐よりも法定刑が重く規定されています。
第十五条の四 2 何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜(注:午後十一時から翌日午前四時)に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。
第二十六条 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
五 第十五条の四第二項の規定に違反して、深夜に十六歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者
略取・誘拐をせず、同意の上で被害者を連れ出した場合でも、被害者が18歳未満であり、かつ連れ出した時間帯が深夜であった場合には各都道府県の青少年保護育成条例違反として検挙される可能性があります。
なお、何時から何時までを深夜とするのかは、各都道府県によって独自に決められています。
略取・誘拐事件では、行方不明者届や被害届の提出、告訴を受けて警察が捜査を開始することになります。
また、目撃者の通報により、警察が事件を認知する場合もあります。
行方不明者届や被害届の提出、告訴により刑事事件化するケースが考えられます。
それを受けて、警察は聞き込み調査や防犯カメラの解析で被害者の足取りを調べ、被疑者特定に努めます。
被疑者が特定されると、逮捕される場合が多いでしょう。
誘拐・略取の場面を目撃した人に、通報されるケースも考えられます。
通報を受けた警察は、被害者の保護と被疑者の特定に努めます。
略取・誘拐は身代金やわいせつ目的、親権の争いの果てになされることがしばしばあります。
ここでは、親権者による子の略取について未成年者略取罪の成立を認めた判例をご紹介します。
また、被害者の釈放による刑の減軽を定める刑法228条の2の「安全な場所」の意義について参考となる判例もご紹介します。
「被告人が親権者の1人であることは,その行為の違法性が例外的に阻却されるかどうかの判断において考慮されるべき事情である」
「(本件略取行為は)家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することもできない」
本件は別居中の妻の元にいる自身の子を保育園送迎の機会に連れ去った事案につき、未成年者略取罪で有罪となると判示した裁判例です。
本件については「行為態様が粗暴で強引なものである」「被害児童が2歳の幼児であること」等事件態様が検討され、社会通念上許容されないと判断されました。
「「安全ナル場所」というのは、被拐取者が安全に救出されると認められる場所を意味するものであ(る)」
「具体的かつ実質的な危険にさらされるおそれのないことを意味し、漠然とした抽象的な危険や単なる不安感ないし危惧感を伴う(だけで直ちに)安全性に欠けるものがあるとすることはできない」
身の代金目的略取等罪においては、被害者を「安全な場所」に釈放した場合に、刑法228条の2で刑が減刑されます。
「安全」とは、具体的かつ実質的な危険にさらされるおそれのないことを意味すると、判示した判例です。
安全か否かは、場所の位置、状況、解放の時刻、方法、被拐取者を復帰させるため犯人の講じた措置の内容、被拐取者の年齢、知能程度、健康状態など諸般の要素を考慮して判断されます。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。