昨今、SNSで知り合った未成年者を連れ回した結果、未成年者誘拐罪等の犯罪に問われるケースが増加しています。
この記事では、未成年者の連れ回しが犯罪になるケースをわかりやすく解説します。併せて、淫行した場合の罰則もご紹介します。
刑事事件の加害者にならないために知っていただきたいポイントをまとめましたので、ぜひ参考になさってください。
すでに心当たりのある行為をして今後が不安な方は、刑事事件に強いアトム法律事務所にお気軽にご相談ください。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
未成年者の連れ回しで成立する犯罪とは?
①未成年者略取及び誘拐罪
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処せられます(刑法224条)。
この法律に言う『未成年者』『略取』『誘拐』の意味はそれぞれ下記の通りです。
『未成年者』の意味
未成年者とは、18歳未満の者を意味します。未成年者と聞くと、20歳未満の者をイメージする方がまだ多いと思います。しかし、令和4年4月1日以降、民法上の成人年齢引き下げに伴い、刑法の未成年者の年齢も変更されましたので注意してください。
『略取』の意味
略取とは、暴行・脅迫を手段として、他人を従来の生活環境から離脱させ自己又は第三者の事実的支配下に置くことを意味します。
『誘拐』の意味
誘拐とは、欺罔・誘惑を手段として、他人を従来の生活環境から離脱させ自己又は第三者の事実的支配下に置くことを意味します。
本記事でも未成年者略取及び誘拐罪について解説を進めますが、関連記事『未成年者略取・誘拐罪とは?家出少女の保護は犯罪?刑罰や示談金も解説』もお読みいただくことでより理解が深まるでしょう。あわせてご確認ください。
未成年者の同意があっても誘拐罪になるか
家出願望のある未成年者を自宅に連れ込み、未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されたケースでは「相手が自宅に来ることに同意していた」という被疑者の言い分をよく耳にします。
では、未成年者が同意していれば未成年者誘拐罪は成立しないのでしょうか?
結論から言うと、たとえ未成年者が同意していても、親権者等の保護者や監督者が同意していなければ未成年者誘拐罪は成立します。
なぜなら、本罪は未成年者の自由だけでなく、保護・監督者の監護権も保護しているからです。
したがって、SNSで家出願望のある未成年者の書き込みを見つけても安易に誘い出すのは絶対にやめましょう。
親権者にも本罪が成立するか
未成年者略取・誘拐罪は、離婚協議中に別居している親権者が一方の親のもとで養育されている子供を連れ去った場合にも問題になります。
判例は、このような行為に出ることにつき、①子供の監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情がある場合や、②家族間における行為として社会通念上許容される枠内にとどまる場合は、違法性が阻却されると判示しています(最決平成17年12月16日)。
①の例として、監護している親が子供を虐待しているケースが考えられます。②の例としては、連れ去りの態様が粗暴なものではない、監護養育環境をしっかり整備しているなどのケースが考えられます。
もちろん、個々の具体的事情により結論は異なります。犯罪になる可能性がある以上、安易な行動は避けましょう。
もしすでに該当する可能性のある行為をしてしまった方は、今すぐ弁護士に相談することをおすすめします。
②青少年健全育成条例違反
未成年者の連れ回しは、各都道府県が規定する青少年健全育成条例に違反する可能性があります。ここでは、東京都の場合を例に挙げてご説明します。
東京都健全育成条例は、「何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない」と規定しています(同条例15条の4第2項)。
「深夜」とは、午後11時から翌日午前4時までの時間をいいます(同条例15条の4第1項)。
この規定に違反して、深夜に16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者は、30万円以下の罰金に処せられます(同条例26条5号)。
なお、東京都の場合、青少年の年齢を知らなかったとしても処罰されます。ただし、年齢を知らなかったことに過失がないときは処罰されません(同条例28条)。
過失の有無は、相手の外見、言動だけでなく、年齢確認の方法(本人に聞いただけか、身分証明書を確認したか等)などを総合的に考慮して判断されます。
未成年者との淫行で成立する犯罪とは?
淫行の意味
未成年者を連れ回した事案では、淫行に関する罪もよく問題になります。
判例(最判昭和60年10月23日)による「淫行」の定義は、以下のとおりです。
判例上の淫行の定義
- 青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為
- 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為
もっとも、結婚を約束している青少年や、これに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等は「淫行」に当たらないとされています。
以下では、未成年者と淫行した場合に成立しうる罪として、①青少年健全育成条例違反と、②児童買春防止法違反の場合を解説します。
①青少年健全育成条例違反
東京都青少年健全育成条例の場合、青少年(18歳未満)と性交又は性交類似行為を行うと、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(同条例18条の6、24条の3)。対価を支払わなくても処罰対象になります。
なお、淫行の場合は、深夜の連れ回しと異なり、青少年の年齢を知らなくても処罰されるという規定は置かれていません。
では「相手の年齢を知らなかった」と言えば処罰されないかというと、そうではありません。
相手の外見や言動などから18歳未満だとわかっていただろうと判断されれば、逮捕・起訴される可能性はあります。
関連記事
・淫行で逮捕されたら弁護士に相談を|刑事事件のアトム法律事務所
②児童買春防止法違反
児童(18歳未満)に対価を渡して性交等をすると、児童買春防止法違反になる可能性があります。
違反した場合、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます(児童買春防止法4条)。
この法律に言う『性交等』『対価』の意味はそれぞれ以下の通りです。
『性交等』の意味
- 性交
- 性交類似行為
- 性的好奇心を満たす目的で、児童の性器、肛門又は乳首を触ること
- 性的好奇心を満たす目的で、児童に自己の性器、肛門又は乳首を触らせること
『対価』の意味
対価は金銭に限りません。また、名目を問わないので、例えば「タクシー代に使って」と言ってお金を渡し性交した場合も「対価」に当たります。
実際に対価を渡した場合に限らず、渡す約束をした上で児童と性交等をした場合も処罰されます。
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・児童買春してしまったら弁護士に相談を
・児童買春で逮捕されたら|5つの逮捕事例とその後の対応
未成年者を連れ回すと逮捕される?
未成年者を連れ回すと逮捕される可能性がある
逮捕されるかどうかは、逃亡や罪証隠滅のおそれがあるかどうかによって決まります。
未成年者の連れ回し事案では、被害者に接触した上、脅しや口裏合わせによって証拠隠滅を図るおそれが高いと判断されやすいです。
また、未成年者誘拐罪は重い処罰が予想されるため逃亡の可能性があると判断されるケースも多いでしょう。
そのため、被疑者が逮捕される可能性は決して少なくありません。
逮捕のきっかけは様々です。
例えば、未成年者の保護者から被害届が提出されている場合、警察が逮捕状をもって自宅にやってくる可能性があります。これを通常逮捕といいます。
また、深夜に未成年者と一緒にいると、警察官から職務質問を受ける可能性も高いです。職務質問の際、警察署への任意同行を求められる場合もあります。任意同行後の取り調べで容疑が固まれば通常逮捕に至るケースもあります。
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未成年者を連れ回して逮捕された後の流れ
逮捕後は警察署に連行され、以下の流れで手続きが進みます。
逮捕後は、起訴・不起訴が決まるまで最長23日間も拘束される可能性があります。早期釈放のためには弁護士への依頼が欠かせません。また、取り調べで不利な調書をとられないためにも、できる限り早く弁護士のアドバイスを受ける必要があります。
未成年者の連れ回しで弁護士に依頼するメリット
示談交渉
未成年者誘拐罪は告訴がなければ起訴できない親告罪です。したがって、被害者と示談を成立させ、告訴しない旨を約束してもらうことが非常に重要です。起訴されなければ前科は100%つきません。
仮に起訴されても、示談が成立すれば刑罰の減軽につながります。
しかし、示談交渉に応じてもらうには大きなハードルが2つあります。
一つ目のハードルは、実務上、捜査機関は被害者の心情に配慮し、加害者に被害者の連絡先を直接教えるケースはほぼないという点です。
二つ目のハードルは、未成年者誘拐罪では示談交渉の相手が保護者であるケースが多いという点です。保護者は強い処罰感情を有しているのが通常ですので、示談を断られる可能性も高いです。
示談交渉をスムーズに進めるための方法は?
弁護士に被害者対応を代行してもらうことで、示談交渉がスムーズに進みやすくなります。
専門的第三者である弁護士が間に入れば、加害者に連絡先を直接教えないという条件で、捜査機関が被害者の連絡先を教えてくれます。
また、保護者に示談交渉に応じてもらいやすくなるメリットもあります。
示談を成立させるには、刑事弁護の経験豊富な弁護士への依頼が必須です。
アトム法律事務所の弁護士は、示談成立により不起訴を獲得した実績が豊富にあります。示談交渉ならアトム法律事務所の弁護士にぜひお任せください。
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早期釈放
弁護士は、早期釈放の実現に向け、逃亡や証拠隠滅のおそれがない旨の意見書を提出します。検察官や裁判官に直接面談して早期釈放を直接訴える場合もあります。
示談が成立した、定職に就いている、同居家族が監督を誓約している等の事情があると釈放の可能性が高まります。
勾留手続きや早期釈放の詳細については『勾留とは何か。勾留手続きや拘留との違いは?早期釈放を実現する方法』の記事で解説しています。
取り調べアドバイス
不起訴になるには、取り調べ対応も非常に重要です。なぜなら、起訴・不起訴を決める際、被疑者の供述調書が非常に重要な判断資料となるからです。
未成年者の連れ回し事案では、未成年者の年齢の認識について取り調べで詳しく質問されます。これに対し、ご本人が「相手の年齢を知りませんでした」と言うだけで捜査機関が納得して不起訴にすることは、まずありません。
大切なのは、なぜ年齢を知らなかったと言えるのか、それを裏付ける具体的事実を主張することです。
年齢の点だけでなく、取り調べで質問されるあらゆる事項に慎重に答える必要があります。一度調書をとられてしまうと、後でその内容を否定するのは困難だからです。
取り調べに適切に対応するには、できる限り早く弁護士のアドバイスを受けることが重要です。
アトム法律事務所の弁護士は、豊富な刑事事件の経験を有しており、適切な取り調べ対応をアドバイスすることが可能です。突然逮捕されてしまったような場合にも、不安が大きいご本人を精神的にしっかりサポートします。
アトム法律事務所は、弁護士による無料法律相談を24時間365日電話予約可能です。未成年者とのトラブルについて不安な方は、アトム法律事務所までご相談ください。