逮捕直後の被疑者とは弁護士でなければ面会することができませんが、勾留が決まると一般の方でも面会ができるようになります。ただし、一般人の面会・差し入れには様々な制限もあるので注意が必要です。
この記事では、まず逮捕されてしまった人と面会をするにはどうすれば良いのか、留置場での面会・差し入れの基本的なルールについて解説します。その上で、弁護人以外との接見が禁止される「接見禁止」についてもご説明します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
逮捕後の面会は誰がいつからどこでできるの?
刑事事件で身柄を拘束された人は、その後の刑事手続の段階に応じて以下のように収容施設や状況が変化します。
タイミング | 扱い | 主な収容施設(例外有) |
---|---|---|
逮捕~起訴まで(最大23日間) | 被疑者(未決拘禁者) | 留置場 |
起訴~裁判終了まで(平均3か月程度) | 被告人(未決拘禁者) | 拘置所 |
実刑判決確定後~ | 受刑者 | 刑務所 |
ここでは、主に逮捕後の留置場(警察署)での面会について解説します。拘置所や刑務所での面会について知りたい方は以下の記事をご参照ください。
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・刑務所で面会する方法は?面会できる時間は?誰が面会できる?
逮捕されて何日目から被疑者と面会できる?
逮捕された被疑者と一般の方が面会できるのは、通常勾留決定後(4日目以降)からです。勾留とは、逮捕に続く身体拘束手続きをいいます(刑罰の一種である「拘留」とは異なります)。
勾留された被疑者とは、原則として、家族、友人、恋人、知人など一般の方も面会や差入れができます。
下記の「逮捕後の刑事手続きの流れ」をご覧ください。
逮捕後の刑事手続きの流れ
①逮捕後~警察での取調べ
②逮捕後48時間以内に検察官へ送致
③送致後24時間以内に検察官が勾留請求
④勾留決定が出されると10日間勾留
⑤延長されるとさらに最長10日間勾留
⑥検察官による起訴・不起訴の決定(逮捕から最長23日後)
⑦被告人として勾留が続く
逮捕された被疑者は警察や検察の取り調べを受け、72時間以内に勾留請求されるかどうかが決まります(①~③)。検察官の勾留請求を受けた裁判官が勾留を必要と判断すると勾留決定が出されます(④)。
逮捕直後から、勾留が決まるまでのおよそ3日間(①~③)は原則としてたとえ家族であっても面会することはできません。この間、自由に面会ができるのは弁護士だけです。
なお、国選弁護人をつけることができるのは一般の人が面会できるようになるのと同じく勾留後(④以降)からです。いち早くご本人の状況を知りたい場合、逮捕直後から面会でき、自分で選任できる私選弁護士に依頼するのがおすすめです。
逮捕後の面会場所は警察署内の留置場
逮捕された被疑者は通常、警察署内の留置場に収容されます。事件によっては拘置所が勾留場所になるケースもありますが、実務上、98%以上は留置場に勾留されています。
基本的には、逮捕された警察署の留置場に収容されますが、女性や未成年は例外的に専用の留置施設に身柄が移されることがあります。
また、共犯者がいる場合にも同じ留置場に収容することはしないため、別の留置場に身柄が移されることがあります。
所在が分からない場合には警察署に問い合わせをしてください。ただし、ご家族などであれば教えてもらえることは多いとは思いますが、事案や警察署によって対応はまちまちです。逮捕情報は重大な個人情報ですので容易には教えてもらえない場合もあります。
弁護士が本人と面会をする際には、事前に警察署に確実な所在の確認(在監確認)ができます。
逮捕後に留置場で面会や差し入れをする方法
留置場(警察署)で面会する方法は?
逮捕された被疑者との面会を希望する際は、基本的に面会予約は受け付けていないので警察署の窓口で所定の申込用紙により申し込むことになります。面会時には身分証明書を持参してください。
本人が同日すでに他の人と面会していたり、捜査の都合などで本人不在の場合は面会できないので注意してください。事前に施設に確認してから行くのがポイントです。
留置場で面会する場合の制限
一般の方は自由に面会できるわけではありません。ここでは、留置場で面会する際の一般的な制限についてご説明しますが、細かなルールは各施設で異なります。面会の際は事前に施設に問い合わせるのが確実です。
- 受付時間はおおむね午前9時から11時までと午後1時から4時まで(施設による)
- 面会できるのは平日のみ
- 被疑者が面会できる回数は1日1組1回のみ
- すでに他の人が面会していれえば、その日は次の人は面会不可
- 同時に面会できる人数は最大3人まで
- 1回の面会時間は15分~20分程度
- 面会には警察官が立ち会う
- 会話内容が事件に関係する場合等は面会が打ち切られることもある
【参考】拘置所で面会する場合の制限
- 面会時間はおおむね午前8時30分から午後4時まで(施設による)
- 面会できるのは平日のみ
- 面会できる回数は、1日につき1回以上で各施設が定める回数
- 同時に面会できるのは3人を下回らない範囲で各施設が定める人数
- 1回の面会時間は30分を下らない範囲で各施設が定める時間
- 面会には職員が立ち会う
- 会話内容が事件に関係する場合等は面会が打ち切られることもある
※拘置所での面会について、詳しくは法務省の「刑事施設に収容されている被収容者との面会や手紙の発受等を希望される方へ」をご覧ください。
逮捕後に差し入れをする方法
留置場では差し入れをすることもできますが、直接渡すことはできず、窓口で所定の申込用紙により申し込むことになります。 差し入れをするときも身分証明書は持参してください。
また、警察署まで出向かなくとも、郵送で差し入れをすることや、弁護士に差し入れてもらったり「差し入れ屋」と呼ばれる差し入れ専門の業者を利用することも可能です。
留置場で差し入れする場合の制限
留置場での差し入れには、かなり細かな厳しい制限が存在します。しかも、留置場によってもルールが違うことがあり、せっかく差し入れをしても受け取ってもらえないということも珍しくありません。
以下に一般的なルールをご紹介しますが、ご自身で差し入れをされる際は必ず事前に施設に問い合わせをしてください。
- 差し入れできる時間は一般的に午前9時すぎから午後4時ころまで
- 差し入れできるのは平日のみ
- 現金、書籍、手紙等は差し入れできる(内容はチェックされる)
- フード付きの服、ひも付きの服、ボタン付きの服、ベルト等は差し入れできない
- 食べ物は差し入れできない
【参考】拘置所で差し入れする場合の制限
- 差し入れ受付時間は、おおむね午前8時30分から午後4時まで
- 差し入れできるのは平日のみ
- 現金、書籍等は差し入れできる(内容はチェックされる)
- 手紙は郵送でのみ差し入れできる(内容はチェックされる)
- フード付きの服、ひも付きの服、ボタン付きの服、ベルト等は差し入れできない
- 食べ物の差し入れは、所内か、拘置所の前にある売店で指定して購入すれば2~3日後に本人に渡る
※拘置所での差し入れについて、詳しくは法務省の「刑事施設に収容されている被収容者との面会や手紙の発受等を希望される方へ」をご覧ください。
逮捕後に差し入れされると嬉しいものは?
差し入れされて最も嬉しいものは「現金」です。意外かもしれませんが、留置所や拘置所では、自費で購入が認められているものが多いからです。自費購入のことを「自弁」といいます。
留置場で自弁したいものといえば、何と言っても食べ物です。留置場の食事量は少ないと感じる方が多く、メニューの種類も限られているのが現状です。そんなとき、1食400円~500円程度でカレーライスなどを購入できる自弁制度は、慣れない留置生活で疲弊している方にとって日々を乗り切る力を与えてくれます。食事の他、ジュースやお菓子も購入できるようです。
ただ、自弁できる日時が決まっているなど様々な制限があります。ですので、差し入れる現金は2~3万円程度あれば十分でしょう。
その他、書籍や(家族などの)写真の差し入れも喜ばれます。
留置場(警察署)での面会ができない?接見禁止とは
ご家族であっても、接見禁止がついて面会できないというケースがあります。接見禁止がつくと、弁護人以外との面会が禁止される他、手紙や写真のやりとりもできなくなります。
もし接見禁止がついて途方に暮れている方もご安心ください。弁護士であれば接見禁止中もご本人と接見し、ご家族との架け橋となることができます。
接見禁止がつくのはどのような場合?
接見禁止の目的は、逃亡と罪証隠滅の防止です。したがって、逃亡・罪証隠滅のおそれのある刑事事件では接見禁止がつきやすくなります。
典型的には、否認事件、特殊詐欺などの組織犯罪、覚醒剤等の譲渡・譲受事件、共犯事件、暴力団関係の事件が挙げられます。
接見禁止は、検察官が勾留請求と同時に請求し、それを裁判官が認めてつくことが多いです。
接見禁止が付される期間は?
接見禁止は、勾留決定と同時につき起訴されるまで続くことが多いです。もっとも、起訴後であっても捜査が継続している場合などは数月間、接見禁止がついたままの場合もあります。
接見禁止を解除する方法は?
2019年の接見禁止決定率(勾留請求許可人数に占める接見禁止決定数の割合)は38.6%にのぼります(2020年版弁護士白書)。この数字からわかるように、接見禁止は決して珍しいものではありません。
では、接見禁止がついた場合どうしようもないのでしょうか?接見禁止への対処方法は2つあります。1つ目は準抗告・抗告、2つ目は一部解除の申立てです。
①準抗告・抗告
接見禁止がついた場合、1回目の刑事裁判が開かれるまでは「準抗告」、その後は「抗告」を裁判所に申し立てることができます。
この場合、主位的には検察官の接見禁止請求を全面的に却下するよう求めます。例えば、共犯者は全員勾留されているから口裏合わせのおそれはないといった理由を挙げます。しかし、このような主張が認められることは多くありません。
そこで、予備的に、配偶者や両親等の近親者について接見禁止決定を取り消すよう求めます。近親者の場合、事件と無関係であり罪証隠滅のおそれがないと認められることが多いです。
裁判官を説得する資料として、近親者の陳述書、罪証隠滅行為をしない旨の誓約書の他、身分関係を示す戸籍や住民票を添付して裁判所に提出します。
②一部解除の申立て
裁判官は、職権で接見禁止決定を解除することができます。この職権発動を促すために行うのが解除の申立てです。近親者など特定の者と特定の日時に面会することを求めるといった一部解除の申立ては認められることが多いです。
この場合も、裁判官を説得する具体的な事情を説明することが重要です。また、身分関係を示す書類も添付して申立てることが必要です。
逮捕後の面会や差し入れでお困りなら弁護士に相談!
弁護士による接見の場合、一般の方のような制限はありません。ここでは、弁護士に依頼することで得られる様々なメリットについてご紹介します。
刑事事件を取り扱っている弁護士事務所であれば、数万円程で初回の接見のご依頼を受けていることが一般的かと思います。アトム法律事務所では、各支部に複数の弁護士がおりますので当日の接見依頼や相談にも対応できることも多いです。 少しでも気になる方は、ぜひ「接見・面会を弁護士に依頼」から弁護士費用の詳細をご覧ください。
いつでも、時間制限なく、立会人なしで接見できる
弁護士による接見は、土日祝日でも、時間制限なく、立会人なしで可能です。深夜でも早朝でも接見可能なので、緊急を要する接見要請にも対応できます。
逮捕直後の接見でいち早く的確なアドバイスができる
弁護士と一般の方との大きな違いは、逮捕直後から面会可能なことです。
身体拘束されている被疑者・被告人には、弁護人と立会人なしに接見し、または書類・物の授受をすることができるという接見交通権(刑訴法39条1項)が認められています。この権利は、身体拘束を受けた者に対する憲法34条前段の保障の趣意を踏まえたもので大変重要な意味をもっています。接見交通権は、弁護人固有の権利でもあります。
接見交通権を保障するため、特に逮捕後の初回接見は重要とされ、実務上できる限り早く接見を認めるべきという運用が行われています。
弁護士にご依頼いただければ、逮捕されて不安でいっぱいのご本人のもとに迅速にかけつけ捜査機関による取調べへの対応をアドバイスできます。何のアドバイスもないまま取調べを受けると、不用意な発言で後々不利な立場に立たされることになりかねません。
また、ご本人から事情をしっかりお聴きした上、今後の見通しをご本人とご家族に説明することができます。すぐに面会できないご家族に伝言したいこと、会社への対応なども弁護士が窓口となって最大限サポートいたします。
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・弁護士の接見とは|逮捕中の家族のためにできること・やるべきこと
接見禁止がついても面会・差し入れができる
接見禁止がついた場合でも、弁護士に依頼すればすぐに面会や差し入れをすることが可能です。
また、接見禁止の場合でも、①被疑者から弁護人以外の者に対する手紙やメモ等を弁護人が受け取ること、②家族等からの書類を弁護士を通じて差し入れをすることは可能と考えられています。
そのため、ご本人に連絡したい内容を書いた手紙を弁護士が差し入れたり、面会室のアクリル板越しに本人に見せることができます。
ただし、弁護人は、証拠隠滅などの違法行為に結びつくことがないよう書類の中身を事前に確認します。その結果、お伝えできないと判断する可能性もあります。
早期釈放が期待できる
弁護士は、逮捕直後から接見できるので、ご本人が犯行を認めているかどうかもすぐに確認できます。もし犯行を認めているのであれば、被害者との間で示談を成立させることで、早期釈放が期待できます。
具体的には、示談成立によって逃亡・罪証隠滅のおそれはなくなるため、勾留しないよう検察官や裁判官を説得します。もし勾留や勾留延長された場合は、準抗告を申立て釈放を求めます。起訴後であれば、保釈を申し立てます。
示談には時間がかかることも多いので、早期釈放を実現するにはいち早く弁護活動を開始することが不可欠です。逮捕直後に弁護士に接見を依頼することで、迅速に示談交渉を開始できるという大きなメリットがあります。
早期に示談が成立すれば、不起訴処分の可能性が高まり、前科の回避も期待できます。
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