
わが子が突然事件を起こしたらどうすればいいのか、経験したくないことだとしても、親なら誰しも疑問に思うことだと思います。
未成年の場合には「少年事件」として取り扱われ、20歳以上に適用される刑事事件(以下当記事では「通常の刑事事件」といいます)とは処分内容や手続きが異なります。
「少年事件」とはいったいどういうものなのか、通常の刑事事件とどう違うのか。
そして、子供にはどんな処分の可能性があり、その処分を軽くするためにはどうすればいいのか。
本記事をお読みいただければ、もし愛するわが子が突然事件を起こしてしまった際に親がすべきことが分かります。
「未成年」表記について
当記事では、未成年(少年)とは20歳未満の者を意味しています。民法上の成人(民法第4条)とは異なります。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
少年事件とは何か|弁護士が解説する少年の定義、通常の刑事事件との違い
少年事件とはどんな事件?
少年事件とは、20歳に満たない未成年者が犯した事件をいいます(少年法2条)。通常、20歳以上の者が犯罪をしてしまった場合、その者は刑事手続きに付されることになります。しかし未成年者の場合、基本的には少年事件として扱われ、少年を更生するためにどれほど国が保護すべきかという観点で処分がされます。
すなわち、通常の刑事事件では、罪に対する罰として刑事処分が下されることになるものの、少年事件の場合には、ただ罪の内容だけで処分内容が下されるのではなく、他にも家庭環境や学校内の環境、本人の反省の度合など、国がどれだけ手をかければ更生できるのか、という点などを考慮して処分内容が決められます。
少年事件の対象となる3種類の「少年」
少年事件の「少年」は、①「犯罪少年」②「触法少年」③「虞犯(ぐはん)少年」の3種類となります(少年法第3条)。
①「犯罪少年」
14歳以上で罪を犯した少年をいいます。
②「触法少年」
14歳未満で①と同様の行為をした少年をいいます。刑事未成年として刑事責任を問われることはなく、必要に応じて児童相談所に送られるなどの処分がなされます。
③「虞犯(ぐはん)少年」
保護者の監督に服しない、正当の理由がなく家庭に寄り付かない、犯罪傾向のある人や不道徳な人と交際していかがわしい場所に出入する、自己又は他人を害する行為をする癖があるいずれかの事情があり、性格又は環境に照らして、将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年をいいます。
通常の刑事事件と少年事件との違い(1)最終処分までの手続・流れが異なる
通常の刑事事件では、捜査→検察官の起訴処分→刑事裁判→最終処分となりますが、少年事件では、捜査→家庭裁判所送致→観護措置・調査官の調査→少年審判→最終処分となります。
少年事件では、本人の更生に目的が置かれているため、手続きが通常の刑事事件と大きく異なります。
通常の刑事事件では起訴の裁量が広く認められている検察官ですが、少年事件では検察官に少年審判に付する裁量はなくすべての事件を家庭裁判所に送らなければなりません。
また、少年事件では、手続きの過程で裁判所による観護措置決定がとられる場合があり審判前に一定期間鑑別所に収容されることがあります。
通常の刑事と少年事件との違い(2)少年審判では前科は付かない
家庭裁判所で行われる少年審判では、刑が科されることはなく保護処分がされることになります。そのため、少年審判で前科が付くことはありません。
もっとも、少年審判に付された記録は「前歴」として残るため、再び犯罪行為をしてしまった場合に「前歴」が影響することはあります。
なお、少年犯罪であっても、事件によっては家庭裁判所から検察官へ事件が送致(「逆送」)され、20歳以上の者と同じく通常の刑事裁判を受けることがあります。この場合は有罪となれば刑罰を科されて前科もつくことになります。
少年事件と成年事件
少年事件 | 成年の事件 | |
---|---|---|
年齢 | 20歳未満 | 20歳以上 |
逮捕 | 逮捕の可能性あり | 逮捕の可能性あり |
刑罰 | 原則として刑罰なし | 刑罰が科される |
前科 | 原則つかない | つく |
検察官送致|少年事件の「逆送」とは?
少年事件はすべての事件が家庭裁判所に送られます。しかし、家庭裁判所が20歳以上の者と同じ刑事処分を受けるべき事件であると判断した場合、事件は検察官に戻され、通常の刑事事件の扱いとなって検察官によって起訴の判断がされることとなります。一度検察から家庭裁判所に送られた事件を検察に送り返すため、「逆送」といわれます。
なお、2022年4月の改正少年法では原則「逆送」とする事件の対象も拡大され、18歳、19歳の少年(「特定少年」)が犯した法定刑が1年以上の懲役である犯罪(強盗や強制性交など)も原則逆送されることになりました。この改正により、逆送決定後は20歳以上の者と原則同様に扱われ、17歳以下とは異なる手続きがなされます。
年齢切迫事件
少年時に犯した犯罪であっても、審判の時に20歳に達している場合には、少年審判を開始することができず検察官に送致されて通常の刑事手続きを受けることなるので注意が必要です(少年法19条2項)。
このように、少年事件のうち、家庭裁判所に事件が送致された時点で20歳の誕生日が迫っており、十分な調査を行う時間がないため逆送されて通常の刑事手続に付される可能性がある事件を「年齢切迫事件」といいます。
少年審判は、少年の更生・成長を目的としており、行為時の責任を問うものではないため、審判の時の年齢が基準とされるのです。言い換えれば、「若い時の過ちだからセーフ」なのではなく、「処分の時の観点として、若い場合には更生・成長を促す処分が特に必要」ということです。
通常の刑事事件と少年事件との違い(3)保釈制度がない
少年事件では通常の事件と違って、保釈金を支払い、身体拘束から解放されて自宅に帰ることができるという保釈制度のようなものはありません。したがって、少年が身体拘束を受けてしまった、という場合に少年を身体拘束から解放するためには、保釈制度以外の方法を取らなければいけません。
少年を身体拘束から解放するために、たとえば、勾留されてしまった場合には、勾留自体の取消や準抗告の申立てをする必要があります。また、鑑別所での観護措置に対しては、そもそも観護措置決定がされないようにしたり、観護措置決定の取消や観護措置決定に対する異議申し立てをしたりする必要があります。
通常の刑事事件 と少年事件との違い(4)裁判が公開されない
公開が原則となっている通常の刑事事件と異なり、少年事件の審判の場合には公開されることはありません。そのため、少年事件は関係のない第三者に傍聴をされることはなく、少年とその保護者、裁判官、書記官、調査官、場合によって付添人(主に弁護士)、検察官のみで行うことになります。
少年審判では、少年やその保護者の生活状況などプライバシーに関わる事項も出てくるため、少年審判は非公開とされています。つまり、少年審判は少年の今後の更生を目的としているため、更生の妨げになる情報が公になることを防止し、更生を円滑に進めるために公開されないということになります。
通常の刑事事件 と少年事件との違い(5)実名報道がされない
通常の刑事事件の場合、実名報道がなされるリスクがありますが、少年の場合は今後の更生への影響という観点から実名等の本人が特定できる情報の報道が禁止されています(少年法61条)。
もっとも、実名報道の禁止には罰則がないため、社会的な影響の極めて大きい重大犯罪の場合はマスコミの判断で少年事件の実名報道がなされた例もあります。
2022年4月より施行予定の改正少年法では、18歳、19歳の少年が「特定少年」と位置付けられ、検察官送致(「逆送」)されて起訴された場合には実名報道が認められるようになります。逮捕された段階や、通常の少年審判の手続を受ける場合には「特定少年」であっても実名報道が認められない点には変わりありません。
少年事件の流れ|未成年者が逮捕されたらどうなる?
少年事件では手続きの流れが通常の刑事事件とは大きく異なりますのでここで詳しく確認します。

1.警察・検察による少年事件の捜査(逮捕~勾留)
14歳以上の少年は刑事責任能力がありますので、犯罪行為をした場合「犯罪少年」として逮捕される可能性があります。
他方、14歳未満の「触法少年」の場合は、刑事責任を問えませんので逮捕されることはなく、必要に応じて児童相談所に送るなどの対応がとられます。
少年が逮捕をされた場合、警察で取調べを受け、比較的重い犯罪であれば48時間以内に検察庁へ送致(送検)されます。送致を受けた検察は24時間以内に勾留の必要性があれば裁判所に勾留請求をします。勾留請求が認められれば、その後10日間(最大20日間)の勾留を受けることになります。
通常の刑事事件(20歳以上の者に適用)との違いは?
逮捕・勾留の流れについては基本的には、通常の刑事事件との違いはありませんが、少年事件での勾留は「やむを得ない場合」の例外的な扱いとされており、通常の刑事事件以上に勾留の判断は厳しくなされます。
検察官は勾留請求の代わりに、鑑別所への送致等(後述)を裁判官に請求することもできます。
また、逮捕後は逮捕した警察の留置場に身柄が拘束されていることが通常ですが、少年の場合、少年専用の留置施設に身柄が移動している場合があるので、弁護士に接見を依頼する際や、勾留後の面会・差入れを行う際には若干注意が必要です。
2.家庭裁判所への送致
検察は少年を取調べるなど事件の捜査をした後、どのような処分にすべきかの意見と捜査資料をつけて事件を家庭裁判所に送ります。なお、軽微な事件であれば送検されずに警察から直接家庭裁判所に事件が送られる場合もあります(家裁直送事件)。
捜査機関は、少年事件については一定の嫌疑があると判断した事件はすべて家庭裁判所に送致することとなっており、検察官には送致する・しないの裁量権は認められておりません。これは、検察官の裁量で、起訴・不起訴が判断される通常の刑事事件との大きな違いです。
逆に、犯罪の嫌疑がない場合でも、捜査機関の判断で審判を受けさせるために家裁送致をすることは可能です。
簡易送致
万引きなどの一定の軽微な事件については、毎月一括での簡易な書類の送致のみで処理を済ます場合があり、これを「簡易送致」といいます。簡易送致された事件は、書類上の手続のみで審判不開始の決定がされるため、家庭裁判所に呼び出されたり調査を受けることはありません。
3.観護措置決定(鑑別所への送致・調査官の在宅観護)
事件が家庭裁判所に送られると、裁判官が面接を行い、審判のために観護措置が必要であると判断したときは、少年を鑑別所への送致、もしくは調査官の観護に付することができます。家裁送致から、観護措置決定までは24時間以内です。
調査官の観護になった場合は、身柄は釈放され、在宅で調査官の観護を受けることとなります。
鑑別所送致になった場合は、少年鑑別所に一定期間収容されます。
少年鑑別所で行われる事務は少年鑑別所法3条で定められています。
少年鑑別所は、次に掲げる事務を行う施設とする。
少年鑑別所法3条
一 鑑別対象者の鑑別を行うこと。
二 観護の措置が執られて少年鑑別所に収容される者その他法令の規定により少年鑑別所に収容すべきこととされる者及び収容することができることとされる者を収容し、これらの者に対し必要な観護処遇を行うこと。
三 この法律の定めるところにより、非行及び犯罪の防止に関する援助を行うこと。
「鑑別」とは
「鑑別」とは医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術に基づき、少年が非行に走った原因や更生の方法などを調査することをいいます。鑑別の結果は、その後の少年審判で処分を決めるための判断材料になります。
鑑別所での収容期間は原則2週間ですが、継続の必要がある場合は1回更新されて計4週間収容されます(少年法17条3項)。実際上は1回更新されて4週間収容されるケースが大半です。
加えて、死刑、懲役又は禁錮にあたる重大事件であればさらに2回更新される場合があり、その際は最大で計8週間収容されます(少年法17条4項)。
4.家庭裁判所の調査
家庭裁判所では、調査官による少年事件の調査も行われます。調査内容は、事件の動機・原因や、事件を起こした少年の性格・家庭環境・交友関係などにわたり、少年審判のときに裁判所が適切な処分を決めるための判断材料になります。
調査は少年の更生可能性の現状を見るものなので、少年本人やそのご家族と面談を行うほか、学校に質問を書面で送ることもあります(学校照会)。
5.少年審判
これまでの手続の過程で、保護処分が必要であると判断されると少年審判が開始されます。審判の必要がない場合には、審判不開始で事件が終了することもあります。
少年審判により裁判所が下す処分は4つで、それぞれ①不処分、②保護処分、③知事又は児童相談所長送致、④検察官送致決定となります。
①不処分
文字通り何の処分もせずに事件を終了することをいいます。審判は開かれたものの、審判の過程で処分が必要ないと認められれば不処分となります。
②保護処分
保護処分には少年院送致、保護観察処分、児童自立支援施設等送致があります。
少年院では、少年の健全な育成を図ることを目的として矯正教育や社会復帰支援が行われ、標準的な収容期間は2年程度です。少年院送致はあくまで保護処分ですので、刑罰ではありません。
保護観察となった場合は、一定の期間保護司の指導監督のもとで通常の社会生活をしながら更生を目指していくこととなります。
少年院と少年刑務所の違い
少年院は保護処分として更生と教育を目的に入る施設ですので、少年院に入ったとしても刑罰を受けているわけでも前科が付くわけでもありません。
一方、少年刑務所は、家庭裁判所から逆送されて、通常の刑事事件と同じ通常の刑事裁判で懲役刑などの有罪判決を受けた場合に収監される施設です。少年刑務所では、通常の受刑者と同様に懲役であれば刑務作業をする必要があります。
③知事又は児童相談所長送致
知事や児童相談所長に少年の処遇の判断を委ねることもあります。
④検察官送致決定(「逆送」)
事案の悪質性や少年の様子から、刑事罰相当と判断した場合には、検察官に送致され20歳以上の者と同じ刑事手続を受けなおします。16歳以上の少年が故意行為で被害者を死亡させてしまった場合には原則検察官に送致されます。
少年事件の流れまとめ
少年事件の全体を通した主な流れをまとめると、以下のようになります。
少年事件の流れまとめ
- 逮捕後、72時間以内に検察が勾留請求をするか判断する
- (勾留される場合)最大20日間、警察署の留置場に収容される
- 検察から事件が家庭裁判所に送られる
- 観護措置が決定すると、4週間程度少年鑑別所に収容される
- 家庭裁判所の調査官が少年の調査を行う
- 少年審判で処分が決まる
少年事件で警察から連絡が|わが子が犯罪を犯したら親は何ができる?
少年事件の弁護活動を弁護士に依頼する場合はなるべく早めに行動することをおすすめします。
警察に捜査・逮捕される前に依頼すれば、逮捕を回避するための弁護活動や学校や職場に知られないようにするための働きかけを期待できます。
逮捕後であっても家庭裁判所に送致される前であれば、観護措置を防ぐための弁護活動を期待できます。
観護措置がなされなければ、少年鑑別所に入れられずにそのまま学校や職場に通うことができるため、日常生活に大きな影響を及ぼさずに済みます。
わが子が補導・逮捕されてしまったら、まず何をすべき?
20歳未満のお子様が補導・逮捕をされたという場合、まずは弁護士に相談をしてください。20歳以上が対象となる通常の刑事事件とは違った少年事件にて、起こり得る事態の見込みや今後の対応の助言を弁護士から受けることができます。
少年事件で警察から連絡が|わが子が犯罪を犯したら親は何ができる?
お子様が補導されたあとは、警察の捜査の対象となり、犯罪の疑いがあると判断された場合には少年法の手続に付される可能性があり、その見込みを知る必要があるでしょう。
また逮捕から3日間程度は、弁護士以外は面会をすることができません。突然の逮捕の連絡に、状況もわからず気が動転してしまうケースは多いものです。お子様が逮捕されたという場合には、まずは状況を把握し少年事件への対応に備えるため、弁護士に相談の上、接見を依頼することをおすすめします。
少年事件の勾留期間内|弁護士なら少年に面会できる
少年が勾留された場合、弁護士が警察署にいる少年のもとに行き、接見をすることができます。この態様自体は通常の刑事事件と同様となりますが、少年事件の接見では、弁護士は少年の非行の内容を聴取し把握したうえで、現在の事件の流れや今後少年事件となることなどを伝えることができます。
刑事事件と少年事件では観点が異なることを弁護士が示し、今後の更生のために今どうすればいいのか、を伝えることは非常に重要です。また、なかなか十分な面会時間が取れない家族からの伝言などを伝えることができます。
少年事件の家庭裁判所送致|弁護士が阻止できる?
少年事件は警察や検察の捜査の後、家庭裁判所に送致されることになります。残念ながら、家庭裁判所への送致はすべての少年事件についてなされますので、弁護士が阻止することは難しいものとなります。
通常の刑事事件の場合、被害者と示談ができていたり事案の規模が小さかったりする場合には、捜査機関の裁量によって嫌疑があるとしても微罪処分や不起訴にすることがあります。しかし、少年事件の場合には、罪に対する処分を求めるのではなく少年自身の更生を目的としているため、このような対応をとっています。
少年事件で弁護士を選任するメリットとは?
逮捕されたお子様に弁護士をつけることで、捜査機関による身体拘束の回避や、学校を退学しなくても済むよう処分軽減(少年院送致の回避など)を目指した弁護活動を迅速に始めることが可能です。
また、お子様の年齢が処分確定時に20歳を超えていると、刑事裁判を受けることになるおそれもあります。弁護士に依頼することで、速やかな事件処理により刑事手続への移行を防ぐ可能性が高まります。

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(1)少年の勾留請求・観護措置を食い止め、釈放させる
弁護士は、少年の身体を拘束する手続である勾留決定や鑑別所での観護措置決定を食い止めるための活動や、そのような身体拘束から釈放させる活動を行うことができます。弁護士がそのような活動をすることで、保釈手続はできないとしても、少年の身体拘束を解くことができます。
たとえば、勾留決定自体をさせないよう検察官や裁判所に働きかけたり、勾留決定の取消請求や決定に対する準抗告という手続を行います。また、鑑別所での観護措置決定をされないように裁判所に働きかけたり、観護措置決定の取消や観護措置決定に対する異議申立てという手続を行います。
(2)取り調べでの少年への人権侵害を阻止する
取り調べでは、少年が不当な取り調べにより人権が侵害されるおそれがあります。そこで、弁護士は、少年に不当な取り調べを受けないよう警察に働きかけを行い、少年本人の人権が侵害されないように動くことができます。たとえば、不当な取り調べに対する意見書を出したり、取り調べの同行を求めたりします。
少年事件だとしても、まず最初に少年は警察からの捜査を受けることになります。しかし、捜査を担当するのは、20歳以上の犯罪者の対応もしてきた大人の警察官です。そのため、未成年者の少年は高圧的な捜査や自白強要により適正手続により処分を受ける権利を害される危険性があり、弁護士はそのような取り調べを阻止します。
なお、少年の取り調べに際しては、原則として保護者も取り調べに同席することが可能です。
(3)刑事裁判で前科がつくことを阻止する
少年事件による処分では基本的に前科は付きません。しかし、少年事件が「年齢超過」や「検察官送致決定」によってもし刑事手続に移行してしまうと、有罪となれば前科がついてしまいます。そこで、弁護士は、事案を迅速に処理し、刑事裁判に移行することを防ぐことによって前科がつくことを阻止する活動ができます。
すなわち、未成年者が事件を起こしても、処分時に20歳以上に達していれば「年齢超過」として刑事裁判に付されてしまうため、弁護士は速やかな事件処理により刑事手続への移行を防ぎます。また、弁護士は、少年審判で少年が少年法の範囲内で更生できることを示すことによって「検察官送致決定」での刑事手続への移行を防ぎます。
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(4)少年事件被害者との示談交渉を行う
弁護士は、少年事件の被害者との示談交渉を行います。少年事件においても、被害者との示談は最終処分の判断において重要です。しかし、少年自身では示談を締結できませんし、保護者であってもそれは同様でしょう。そこで、弁護士が示談交渉を行い、締結することで処分の軽減を図ることができます。
少年事件は刑事事件とは異なり、少年がいかに自分たちだけで更生できるかを示すことが重要です。そのため、刑事事件のように示談ができれば直ちに不起訴というわけではありませんが、弁護士により被害者と示談をすれば、少年が被害者と向き合っており更生できる環境にあることを示し処分の軽減を図ることができます。
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(5)家庭裁判所の審判で付添人として弁護活動を行う
少年審判では、付添人という少年側をサポートする人を付けることができます。この付添人には通常弁護士がなることが一般的です。そこで、弁護士が付添人となり、審判までに必要な準備をして、審判の場で少年がいかに更生の道をたどっているか、処分を軽減すべきかの弁護活動を行います。
少年審判では、裁判官や書記官、調査官がいますが、少年側の味方としてサポートする役割を持つのは付添人しかいません。そのため刑事事件と異なり、審判において必ず付添人を付けなければいけないわけではありませんが、少年とそのご家族に法的な視点で寄り添う付添人がいれば心強い味方となります。
(6)退学回避のために学校や家庭裁判所に働きかける
弁護士は、事件の存在を知った学校が少年を退学にしないよう働きかけたり、学校が退学にせざるを得ないような身体拘束や処分にしないよう家庭裁判所に働きかけたりする弁護活動を行うこともあります。そうすることで、少年が更生してそれまでの日常生活を送れるようサポートをします。
少年事件では少年の環境を調べる必要があり、そのため警察の捜査や家庭裁判所の調査のなかで事件の存在が学校に知られ退学の危機が生じます。そこで、学校に対し退学とならないよう連絡を取り少年の更生を示し、家庭裁判所に対し学校に知られるような長期の身体拘束や少年院送致等重い処分にしないよう努めます。
または、そもそも学校に事件を知られないようにするための活動をする場合もあります。
少年が警察に逮捕されたとしても、弁護士に依頼すれば警察が学校や職場に連絡しないように交渉することが可能です。もしも連絡をされたとしても、引き続き学校に在籍し続けるための弁護活動を行います。
(7)少年の更生をサポートする
弁護士は法的な弁護活動のみならず、それを超えた全般的な少年の更生をサポートします。少年事件ではいかに少年が更生できるかが処分を決める上で重要となってきます。そのため、弁護士は少年が更生できる状況や環境がそろっていること、現状更生の道をたどっていることを示すため、少年の更生を全力でサポートします。
弁護士の更生のサポートの方法としては、たとえば、少年が更生できるような家庭環境を整えるため家族と協議をしたり、学校や職場での状況を調査して社会的なバックアップの支援をしたり、少年と積極的にコミュニケーションを取って更生を促したり、ボランティアを行うようにしたりなどが考えられます。