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損害賠償命令を申し立てられた場合の対応|申立てを防ぐ方法も解説

刑事事件の加害者になった場合、被害者から損害賠償請求されないか不安ですよね。

被害者が損害賠償請求する場合、民事訴訟を提起するのが一般的です。

民事訴訟の他にも、被害者の簡易迅速な保護を図るために特別にもうけられた制度があります。それが「損害賠償命令制度」です。損害賠償命令制度は、強制性交等や強制わいせつなど一定の犯罪を対象にしています。

この記事では、まず損害賠償命令制度の内容や手続の流れをご説明します。次に、損害賠償命令の申立てを防ぐ方法・申し立てられた場合の対応方法を詳しく解説します。

損害賠償命令制度とは

損害賠償命令制度は、刑事手続の結果を利用して、犯罪被害者の損害を簡易迅速に回復する制度です。刑事裁判の担当裁判官が審理を行い、おおむね4回以内で終結する点に特徴があります。

ここでは、損賠命令制度の対象犯罪や命令の効果について解説します。

損害賠償命令の対象になる犯罪は?

損賠命令制度の対象となる犯罪は、以下の①~⑤です未遂罪も対象になります。

①故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(殺人、傷害、傷害致死、危険運転致死傷など)

②強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ及び準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等の罪

③逮捕及び監禁の罪

④略取・誘拐及び人身売買に関する罪

⑤その犯罪行為に上記②~④の罪の犯罪行為を含む罪(強制わいせつ致死傷など)

損害賠償命令の申立てが多い犯罪は?請求金額は?

令和元年度司法統計年報刑事編によると、令和元年中に申立てのあった損害賠償命令の総数は318件です。最多はわいせつ、強制性交等の罪で153件、2番目に多いのが傷害罪で97件、3番目が殺人罪で45件です。

請求金額の区分で一番多かったのが、「500万円まで」の172件、次が「1000万円まで」の60件です。3番目以降は、「5000万円まで」が47件、「1億円まで」が34件、「1億円を超える」が5件でした。

損害賠償命令の対象にならない犯罪は?

過失犯は損害賠償命令制度の対象になりません。そのため、自動車運転過失致死傷罪など交通事故事案の多くは損害賠償命令の対象外です。

過失犯が対象外とされた理由は、被害者にも落ち度があるという過失相殺の主張によって審理が長期化することを防ぐためです。

その他、暴行、窃盗、盗撮などの犯罪も損害賠償命令の対象外です。

損害賠償命令の効果は?

損害賠償命令の審理が終結すると、決定書が作成されます。この決定書に、加害者が被害者に支払うべき損害額が記載されています。

決定書は当事者のもとに送達されます。送達を受けた日から2週間以内に異議が出なければ、損害賠償命令の裁判は確定判決と同一の効力を有することになります。

具体的な効果は以下の2つです。

①後に損害賠償命令の内容を蒸し返すことはできなくなる(既判力)

②損害賠償金が支払われないときは加害者の財産の差し押さえが可能になる(執行力)

損害賠償命令制度の手続

ここでは、損害賠償命令制度の手続の流れを解説します。

損害賠償命令制度の流れ

損害賠償命令は、原則として刑事裁判の第一審判決言渡しの直後に審理が始まります

申立てができるのは、刑事被告事件の被害者又はその一般承継人です。一般承継人とは、被害者が死亡した場合のその相続人を指すことが通常です。

なお、被害者参加制度による刑事裁判への参加の有無を問わず、損害賠償命令の申立てが可能です。

損害賠償命令制度の流れ

①刑事裁判の第一審の弁論終結までに申し立てる

②有罪判決(※)の言渡し後、すぐに審理が始まる

③審理期日は原則4回で終結する

④決定書が送達される

⑤異議申し立てがなければ、決定が確定する

※ここでいう「有罪判決」とは、損害賠償命令の対象犯罪に限られます。例えば、傷害罪で起訴後、縮小認定されて暴行罪の有罪判決がなされた場合、損害賠償命令の審理は行われることなく却下されます。

申立書の記載事項

①当事者及び法定代理人

②請求の趣旨

③訴因として特定された事実

④その他請求を特定するに足りる事実

損害賠償命令制度の審理とは?

審理の担当者

損害賠償命令の審理は、刑事裁判と同じ裁判官が担当します。

審理の方法

1回目の審理期日に刑事事件記録の取調べが行われます。その後、被害者・加害者双方の主張を出し合って争点を整理します。必要であれば、証拠調べも行って審理を終結します。

審理の回数

審理の回数は、特別な事情がある場合を除き、4回以内とされています。

審理と審理の間は、おおよそ1ヶ月ほど空くことが多いです。したがって、長くて4か月程度で審理が終結するでしょう。

損害賠償命令に不服があるときは異議申立てできる?

決定に不服があるときは、異議申立てすることができます。異議申立てされると、民事訴訟手続に移行します。

地方裁判所の刑事部が出した損害賠償命令に異議があれば、同じ地方裁判所の民事部であらためて審理することになります。担当裁判官が替わり、第一審から民事裁判が始まります。

損害賠償命令が民事訴訟手続へ移行する場合は?

以下の場合、民事訴訟手続に移行します。

①4回以内の審理期日で終結することが困難であると認めるとき

②刑事裁判の判決前に申立人(被害者)から民事訴訟への移行の求めがあったとき

③損害賠償命令の裁判前に、当事者が民事訴訟で行うことを求め、それに相手方が同意したとき

損害賠償命令を申し立てられない方法|示談が重要

損害賠償命令を申し立てられないためには示談が重要です。なぜ示談が重要なのか、その理由を詳しくご説明します。

示談成立で損害賠償命令を回避

示談とは、民事上の争いについて、当事者間で話し合いによって解決することをいいます。示談の中で、損害賠償金を支払い、これ以上民事上の請求はしないと合意することが多いです。このような合意ができれば、損害賠償命令の回避が期待できます。

もっとも、被害者に「これ以上民事上の請求はしない」と同意していただくことは容易ではありません。被害者は犯罪被害によって身体的・精神的に傷ついている以上、当然です。

被害者の心情に十分配慮しつつ示談を成立させるには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に依頼するのが最適です。弁護士は、まずは加害者の反省の気持ちを丁寧に説明します。その上で、法的に適切な金額で示談がまとまるよう交渉を重ねます。

金額面の交渉だけでなく、被害者が加害者を許す(宥恕する)という条項にも同意していただけるよう最善を尽くします。

もし示談の成立が困難な場合でも、被害弁償の申し出を行うなど誠意ある賠償の努力を続けます。

このような弁護活動によって示談・被害弁償が成立すれば、損害賠償命令を申立てられる可能性はなくなるでしょう。同時に、刑罰の重さを決める際にも有利な事情として考慮されることが期待できます。

民事・刑事両方の問題を一挙に解決するために、示談は非常に有効です。

早期の示談成立なら私選弁護士がおすすめ

示談交渉には時間を要します。特に、損害賠償命令の対象になっている犯罪は、被害感情が強い場合が多く、示談成立まで多くの時間を要することが少なくないでしょう。

こうしたケースでより早期に示談を成立させるポイントは、できる限り早く交渉を開始することです。そこでおすすめなのが、私選弁護士への依頼です。

私選弁護士であれば、逮捕直後に接見して早期に示談交渉を開始できます。さらに私選弁護士は、ご本人やご家族が自ら選任できるメリットもあります。

早期の示談成立によって損害賠償命令を回避したいなら、刑事弁護の経験豊富な私選弁護士へ依頼することが効果的です。

損害賠償命令を申し立てられた場合の対応

損害賠償命令を申し立てられた場合、適切に対応することで賠償額を減らせる可能性があります。ここでは、具体的な対応方法について解説します。

具体的な根拠をもとに適切な反論を行う

損害賠償命令を申し立てられた場合、主張すべきことはきちんと主張することが大切です。ここで大切なのは具体的な根拠を示すことです。

例えば、被害者に傷害を負わせたこと自体は争わないケースでも、傷害の程度については争う場合が考えられます。弁護士に依頼すれば、交通事故の損害賠償額算定基準など明確な根拠を示しつつ傷害の程度を争うことができます

加害者側の主張が認められれば、損害賠償額が減額されます。

刑事裁判の中で加害者に有利な事実を主張する

刑事裁判の中で、被害者にも落ち度あるという過失相殺的な主張をしておくことが有効な場合もあります。

例えば、傷害事件では飲酒の上での喧嘩など被害者にも落ち度(過失)がある事案があります。被害者の落ち度が認められると、被告人の刑罰が軽くなる可能性があります。

このように被告人に有利になる事実を刑事裁判の中で主張立証しておけば、その証拠が損害賠償命令の審理にも引き継がれます。被害者にも落ち度があった分だけ損害賠償額は減額されることになり、結果的に損害賠償命令でも有利になることが期待できます。

もっとも、このような主張は慎重な配慮を重ねた上で行う必要があります。刑事弁護の実績豊富な弁護士とよく話し合った上で適切な主張を行うようにしましょう。

和解を検討する

申し立てられた額を一括で支払うのが困難な場合、一括払い可能な額を加害者の方から提案する方法があります。

このような和解の提案は、被害者側にとってもメリットとなる場合があります。なぜなら、たとえ損害賠償命令が認められても、不払いの場合に強制執行を申し立てる負担や、回収不能のリスクを被害者側が負うことになるからです。

それに比べれば、加害者が支払えると申し出た額で和解して回収可能性を高めた方が良いと被害者が判断する可能性はあります。

もう一つの和解方法として、分割弁済を申し出ることが考えられます。ただし、あまりに長期の分割は本人の社会復帰を困難にする要因になりえます。

和解の提案を行う場合は、弁護士に依頼の上、支払額や弁済期間などを十分に検討してから申し出ることをおすすめします。

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岡野武志弁護士
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代表弁護士岡野武志

監修者情報

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

第二東京弁護士会所属。ご相談者のお悩みとお困りごとを解決するために、私たちは、全国体制の弁護士法人を構築し、年中無休24時間体制で活動を続けています。