刑事事件において起訴されると、被疑者から被告人に立場が変わり、刑事裁判の対象となります。
自分や家族が刑事事件の被疑者となってしまった方は、いつ釈放されるのか、前科がついてしまうのかなど、起訴後の流れや今後の見通しに不安を抱えていることと思います。
被疑者となってしまった方が一日でも早く日常生活を取り戻すためには、起訴されないための活動、有罪判決を受けないための活動、刑を軽くするための活動を取っていく必要があります。
この記事では、「起訴されたらどうなるのか」について、起訴の種類や起訴後の流れ、勾留の可能性や弁護士ができる活動など、刑事事件における重要なポイントを詳しく解説します。
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目次
起訴とは?通常の起訴と略式起訴
起訴とは?刑事事件の流れ
「起訴」とは、検察官が裁判所に対して刑事事件の審理を求めることをいいます。事件が起訴されると、裁判によって有罪・無罪の判断を受けることになります。
刑事事件の流れを簡単にご説明します。
事件が発覚すると、警察は被疑者を逮捕・勾留し、または在宅の状態で、捜査を行います。
その後警察は、捜査資料を検察官に引き継ぎます(送検・送致)。被疑者が身柄を拘束されている場合は、身柄も検察に送られます。
事件を受け取った検察官は、被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。
不起訴となれば、身柄は解放され、事件終了となります。前科がつくこともありません。
起訴されると刑事裁判が開かれ、判決で有罪か無罪か決まります。
起訴には、公開の法廷を請求する通常の起訴と、書面のみで裁判官が量刑を判断する略式起訴の2種類があります。この2つの違いやそれぞれの流れについては、この記事の中でさらに詳しく解説します。
通常の起訴とは?
一般に起訴と言って思い浮かべるのが、この通常の起訴です。
通常の起訴とは、検察官が被疑者を正式な刑事裁判の被告人として裁判所に訴えることを指します。公開の法廷で審理が行われる正式な裁判手続きです。
公判は複数回にわたって行われ、最終的に裁判官が判決を下します。有罪判決が出れば前科がつきますが、無罪判決の可能性もあります。
第一審の判決に不服がある場合は、判決日の翌日から2週間以内であれば高等裁判所に対して控訴することができます。さらに上告が認められて最高裁判所まで進めば、最大で3回審理が受けられることになります。
略式起訴とは?略式起訴になるのはどんな場合?
一定の条件を満たす事件では、略式手続というものが行われることがあります。
略式手続とは、通常の裁判と異なり、検察官の提出した書面による審理のみで裁判官が判決を下す簡易な裁判手続です。
略式起訴とは、この略式手続を裁判所に請求することです。略式起訴の対象となるのは以下のような事件です。
略式起訴の対象となる事件
- 簡易裁判所の管轄に属する事件
- 100万円以下の罰金または科料に相当する事件
- 略式手続をとることについて被疑者に異議がない
- 簡易裁判所が相当だと判断した
略式手続では、通常の裁判のように公開の法廷で裁判を行うことはなく、被告人が自己の言い分を述べる機会がありません。そのため、略式起訴をされればほぼ確実に有罪となり、前科がつきます。
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起訴後の流れ
通常の起訴後の流れ
起訴
通常の起訴(公判請求)がされた場合、被疑者の立場は被告人に変わり、正式な裁判手続きが開始されます。
起訴状が検察から裁判所に提出され、第一回公判期日が指定されます。通常、第一回公判期日は起訴から約1~2か月後に設定されます。
この間、被告人は勾留されている場合と、在宅のまま公判を迎える場合があります。勾留中の被告人の身柄を解放したい場合は、裁判所に対して保釈申請を行って身柄の解放を目指します。
公判
第一回公判では起訴状朗読、証拠調べ、被告人質問などが行われます。
被告人が全面的に被疑事実を認めている場合であれば、第一回公判ですべての審理が終わることが多く、その場合も判決は日を改めて次回の公判で言い渡されるケースが多いです。
公判の回数は事件の複雑さによって異なりますが、期間にすると数ヶ月から場合によっては1年以上かかることもあります。
判決
互いの主張が出尽くし、被告人の最終陳述が終了すると、結審となります。
結審後、裁判官は判決の内容を考えて、通常次回の公判において判決を言い渡します。
判決で執行猶予が付されると、すぐに拘束状態は解かれ、釈放されます。実刑判決が出た場合は、服役の準備がはじまります。
判決に不服がある場合は、判決の翌日から2週間以内に控訴することができます。その期間が経過すれば判決が確定します。
略式起訴された後の流れ
略式起訴には、在宅事件のままで行われるケースと、身柄拘束中(主に勾留中)に行われる「在庁略式」の2種類があります。
略式起訴をされる場合には、検察官から罰金刑となる見込みであることを告げられ、略式請書と呼ばれる、略式手続をとることに同意する書面にサインを求められます。
在庁略式の場合、家族などに「罰金を用意して検察庁へ来てください。罰金を納付すれば釈放されます。」などと連絡が来て、罰金の納付後に被疑者が釈放されます。
在宅の場合は、略式請書にサインしてから1週間程度で起訴され、2週間程度で自宅に略式命令書が届きます。命令書に従って罰金を納付すれば事件は終了します。
略式起訴を回避できる?
略式請書にサインを求められた段階になって「検察官に略式起訴にすると言われたががどうにかならないか」というご相談を受けることもありますが、不起訴を目指すためには、起訴される前の弁護活動が重要ですので、既に手遅れになってしまっていることが多いです。
もっとも、早急に被害者との示談をまとめられそうな場合など、このタイミングで弁護士に相談をしてもぎりぎり間に合うこともあります。依頼を受けた弁護士は、検察官に示談が成立しそうであることを伝え、略式起訴を待ってもらえるよう検察官と交渉します。
略式起訴の罰金は減額できる?
略式起訴で言い渡された罰金が減額できるケースはほとんどありません。
罰金の略式命令に不服がある場合、14日以内であれば正式裁判を請求して量刑を争うこともできますが、減額の可能性は低く、むしろ弁護士費用などで追加コストが発生します。さらに、より重い量刑となるリスクもあります。
そのため、起訴前の段階で弁護士に相談することが重要です。
起訴されたら確実に有罪になる?
起訴されたらほぼ確実に有罪となり、前科がつきます。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%とも言われ、起訴後に無罪を獲得することが事実上不可能だからです。
令和元年度の司法統計(裁判所HP)によれば、刑事事件の通常第1審で判断された事件のうち、有罪判決を受けたものが47,444件であるのに対し、無罪判決を受けた事件はわずか104件しかありません。計算すると、およそ99.78%が有罪となっています。
日本では起訴をするかどうかの判断が検察官の裁量にゆだねられており、検察官が証拠等に基づいて公判を維持できる・有罪判決を得られると判断した事件のみが起訴されているのがその一因です。
また、確実に有罪を得られるだろうと考えられる事件であっても、犯罪の軽重や情状、犯人の境遇などを考慮して起訴しないこともあります(起訴便宜主義)。
実際、令和元年度の刑事事件の起訴率は32.9%で、7割近くの刑事事件は不起訴となっているのです(法務省 検察統計より)。
このように、起訴をされてしまうと99%以上の刑事事件は有罪の判決が下される一方、不起訴を獲得することで前科を回避できる可能性も十分にあります。
逮捕・起訴後の勾留と釈放のタイミング
ここでは、逮捕・起訴された方の身柄がどうなるのか、いつまで拘束されるのかについて解説します。
身体拘束されている間は学校や会社に行けませんので、逮捕されたことが周りにバレてしまうリスクが格段に高まります。それぞれの段階で、身柄解放のために弁護士ができる活動についても解説します。
逮捕から勾留までの流れ
被疑者を逮捕した後、警察は48時間以内に事件を検察官に送致するかを判断します。
送致を受けた検察は、被疑者の身柄拘束を続ける必要があるかを、24時間以内に判断します。
この逮捕後の身柄拘束のことを勾留といいます。
検察官から裁判官に被疑者の勾留を請求し、裁判官が必要であると認めれば被疑者の勾留が決定します。この被疑者勾留の間に、検察官は起訴するかしないかを決定します。
被疑者が起訴される前の勾留は、起訴後と区別して被疑者勾留と呼ばれます。
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起訴後の勾留
起訴されると、被疑者は「被告人」という立場に変わります。
被疑者勾留の末に起訴された場合には、被告人勾留といって引き続き身柄を拘束されます。
被疑者勾留中は、警察署の留置場に収容されるのが一般的ですが、起訴され被告人勾留に移った後は身柄は拘置所に移されます。
被告人勾留は2ヶ月間と決められていますが、その後も1ヶ月ごとに更新されるため、保釈されない限り拘束状態が続く可能性があります。
起訴前・起訴後の勾留中は、基本的には誰でも本人と面会することができます。この面会のことを接見といいます。また、一定の条件下で差し入れをすることも可能です。
ただし、接見禁止の処分が下されると、ご家族であっても接見ができなくなってしまいます。接見禁止となるのは、接見に来た共犯者と口裏合わせをするおそれがある場合や、組織的な犯罪である場合などが多いです。
弁護士は、接見禁止がついている期間でも制限なく接見を行うことが許されています。また、準抗告や一部解除申し立てなど、接見禁止を解除するための活動を行うことができます。
アトム法律事務所では初回接見出張サービス(初回1回限り・有料)も実施しています。ご家族の緊急事態に是非お役立てください。
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いつ釈放・保釈される?身柄解放する方法は?
身柄解放されるタイミング
- 逮捕後に勾留されず釈放
- 勾留中に準抗告認容・勾留取消しで釈放
- 不起訴で事件が終了し釈放
- 起訴後に保釈が認められ釈放
起訴前に身柄を解放する方法
起訴までの間、被疑者勾留の中で釈放を求めるには、大きく2つの方法を検討することになります。①勾留決定に対する準抗告と②勾留取消し請求です。
①は勾留決定を出した裁判官の判断が誤りであったことを主張して釈放を求める手続きで、②は勾留決定の後、示談が成立するなどの事情の変化があり、勾留の必要性が消滅したとして釈放を求める方法になります。
どちらも、高度な法的判断が必要になるため、早期釈放を目指すにあたっては弁護士のサポートが必須といえます。
起訴後に身柄を解放する方法
起訴されたら被疑者勾留は被告人勾留に移行します。被告人勾留中は、保釈という手続きを用いて身柄解放を求めることができます。
保釈とは、裁判所に保釈保証金(保釈金)を預けることで、被告人を釈放させる手続きです。ただし、罪証隠滅や逃亡のおそれが強い場合などは、保釈が認められないこともあります。
保釈の申請ができるのは被告人本人やその家族、弁護人などに限られており、多くの場合は弁護士が保釈申請を行います。
裁判所が保釈を認めるか検討するにあたっては、検察官の意見を聞く手続きをとります。これを、「求意見」といいます。裁判官は、弁護人と検察官の両方から意見を聞き、保釈の判断をします。
保釈を認める場合には、被告人やその家族などに保釈保証金(保釈金)を納付させます。裁判所の会計課(出納係)に保釈金が納付されると、その通知が検察官にとどき、検察官は釈放指揮をとります。
保釈金は刑事裁判が無事に終われば全額還付されますが、刑事裁判中に逃亡すると、没収(法律上は「没取」)されることがあります。
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起訴されても示談すべき?
示談は起訴される前がベスト
起訴されるまでに示談をすることは、大きなメリットがあります。示談をして被害者対応をすることで、不起訴処分となる可能性を高めることができます。
示談により被害弁償や慰謝料を支払い、被害感情がおさまったと認められると、検察官は起訴猶予とすることがあります。捜査が開始されてから、できるだけ早い段階で被害者との示談を進め、不起訴を獲得することを目指しましょう。
不起訴処分となれば、刑事裁判を受けることはありません。そのため、前科がつくことはなくなります。前科は、刑事裁判を受け、有罪判決となり、それが確定したときにつくものです。刑事裁判を回避することができれば、前科を回避することができます。検察官が処分を決める前に、示談を行うことが大切です。
なお、勾留を受けていない段階では、国選弁護人を付けることができません。そのため、逮捕・勾留される前に示談したい場合は、私選弁護人に任せるのが通常です。
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起訴された後も示談は継続すべき
「起訴されたら裁判は避けられないし、示談をしても無駄」と考える人がいます。しかし、起訴されたからといって、示談をしないというのは危険な考え方です。
起訴後は、裁判に向けての準備を行うことになります。裁判で執行猶予を獲得するために、起訴後でも示談を進めることはとても重要です。
示談ができなかったために実刑判決となってしまう可能性もあるのです。
証拠調べ手続きまでに示談が成立しなかったとしても、その進捗を報告書にして証拠提出することが考えられます。
結審した後に示談が成立した場合でも、弁護人は弁論再開を求め、示談ができたことを示す証拠を裁判所に提出します。少しでも執行猶予獲得に向けた活動ができる以上、起訴された後でも示談をする意味は大きいといえます。被害者が被害回復した事実を裁判所に示すことは、判決の判断材料になりえます。
起訴後の示談で注意すべき点とは?
起訴後の示談で注意すべきことは、「誠実で、より丁寧な被害者対応をすること」につきます。起訴後での示談は、事件発生からすでに数か月が経過している可能性があります。
時間がたてばたつほど、被害者はもう事件のことを忘れたい、加害者とかかわりたくないと考えていることが予想されます。示談をするタイミングが遅れてしまったことを丁寧に説明するなど、被害者の心情に配慮した示談を心がけることが大切です。
また、もう一つ大切なことは、「裁判の進行状況を意識した示談を行うこと」です。示談を裁判に反映させるためには、裁判が完全に終わるまでに行う必要があります。裁判の期日は容易に変更することはできないため、予め決められた期日とその進行具合を意識して示談を進めるようにします。
起訴された・起訴されそうなら弁護士に相談!
起訴される前に弁護士ができること
ここからは、弁護士の活動について、まとめていきます。まず、逮捕されてから起訴されるまでの中で弁護士が行う活動には、①釈放を求める活動、②被害者との示談交渉、③不起訴獲得に向けた活動、があります。これらは、それぞれ関連していること部分も多く、刑事手続き全体の流れを読みながら戦略的に行動することが求められます。
被害者が存在する事件では示談が重要になりますが、被害者がいない犯罪(無免許運転、薬物事件、賭博事件など)では示談以外の弁護活動を展開します。医療機関や民間のカウンセリング機関と連携し、再犯防止に向けて積極的であることを検察官に報告します。これにより、不起訴処分を得ること、また早期社会復帰を目指すことが、刑事弁護人の仕事になります。
起訴される前の検察官対応が重要
警察が動き出し、被疑者が起訴されるまでの間は「捜査」という段階です。ここでは、基本的に検察官が主導権を握り、警察と協力して捜査を行います。捜査では、被疑者の取調べや事件関係者のヒアリングが行われます。検察官は、被疑者を起訴できるよう証拠を集めるための活動を行います。捜査に必要があるときには被害者を勾留することも考えます。
前科がつく可能性を大きく左右するものであり、検察官の起訴できる権限はとても大きなものといえます。証拠を収集するにあたっても、警察に対する指揮権をもっており、検察官は公権力を駆使して捜査をすすめる役割を担っています。
起訴された後に弁護士ができること
起訴されたら、弁護士は大きく3つの活動を行います。①保釈による釈放を求める活動、②刑事裁判における被告人の防御活動、③執行猶予付き判決の獲得に向けた活動、です。
特に、被疑者段階から身体拘束が継続しているときには、起訴直後に保釈請求を行います。保釈により釈放されれば、普段の生活を送りながら裁判を受けていくことができます。
裁判では、判決の際に執行猶予が付されるか否かが重要です。無罪でなければ、執行猶予付き判決でも有罪であり、前科はつきます。しかし、懲役刑で実刑になるか執行猶予がつくかでは、その後の生活や仕事への影響は大きく変わります。執行猶予が付けば、元の生活を取り戻すことができます。裁判所に指定された過ごし方をしている限り、収監されることはありません。
まとめ
刑事事件の被疑者となってしまったらどうすればよいのか。
それは、一言でいうと、「できるだけ早く、刑事事件に詳しい弁護士に相談し、サポートを受ける」ということです。
前科を回避するためには、不起訴処分を獲得しなければなりません。弁護士は、被害者との示談交渉や検察官・裁判官への働きかけにより、被疑者となってしまった方が一日も早く日常生活を取り戻せるようサポートします。
また、起訴後の刑事裁判における執行猶予付き判決や早期の身柄解放を目指すには、刑事事件の経験を持った弁護士の力が欠かせません。
ご自身やご家族が起訴された・起訴されそうなときには、迷わず弁護士までお問い合わせください。
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