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略式起訴とは?前科はつく?要件と罰金相場、起訴・不起訴との違いを解説

略式起訴

略式起訴とは、通常の起訴よりも簡単に被疑者の刑事処分を決める手続きのことです。

略式起訴の目的は軽微な事件を早期に終結することであり、被疑者(被告人)にとって早期の事件終結はメリットともいえます。

しかし、略式起訴は有罪判決を受けることになるため、前科がつきます。前科をつけたくない人にはデメリットも大きいでしょう。

略式起訴で罰金を支払うよう命令が出てから弁護士に相談をするのは手遅れになるケースがほとんどです。さらにいえば、検察から呼び出しを受ける時点で、すでに被疑者の処分方針が近い可能性があります。できるだけ早急に弁護士への依頼を検討してください。

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略式起訴とは?|略式起訴されるとどうなる?

略式起訴とは、通常の起訴よりも簡単に被疑者の刑事処分を決める手続きのことです。検察官が判断した比較的軽微な事件のみを対象とされ、略式起訴されると簡易裁判所から科料または罰金刑が言い渡されます。いずれにせよ、前科がつくことになります。

略式起訴の要件は4つ

略式手続きにできる要件

検察官が略式起訴できる事件とは、(1)簡易裁判所の管轄に該当する軽微な事件であるもの、(2)刑罰は100万円以下の罰金または科料相当であるもの、(3)被疑者が同意しているもの、(4)簡易裁判所が相当だと判断したものの4つの要件を満たすものです。

4つの要件を1つでも満たさない場合は、略式起訴されることはありません。

略式起訴でも前科がつく

略式起訴でも前科がつきます。前科は有罪判決の確定によってつくものなので、略式手続きによる罰金刑でも前科となるのです。職業によっては罰金刑がつくことで資格がはく奪されたり、仕事が続けられないという事態になりかねません。

略式起訴に対する不服申立ての道も用意されていますので、無罪を争う場合には正式裁判に挑むことも可能です。

しかし、正式裁判で無罪を主張することは簡単ではありません。日本では、起訴された刑事事件の99.9%が有罪判決となっています。

前科をつけないためには刑事事件の取り扱い実績が豊富な弁護士事務所へ相談して、不起訴獲得に向けた方法を探りましょう。

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略式起訴と通常の起訴の違いは法廷での裁判の有無

略式起訴と通常の起訴では、法廷での裁判が開廷されるかどうかが違います。

略式起訴では法廷での裁判が開廷されずに、非公開で事件の処理が行われます。法廷での裁判のように被疑者(被告人)が主張を述べる機会はなく、検察が提出する書類のみで判決が言い渡されます。

一方、通常の起訴では裁判が開廷され、検察と被告人が証拠を示しながら各々の主張を展開して進行します。そして裁判所の審理を経て判決が言い渡されることになります。裁判はすべて公開されており傍聴者には事件の内容を知られることになります。

対象となる事件の範囲も違う

また、略式起訴と通常の起訴による手続きでは、対象となる事件の範囲にも違いがあります。

略式起訴にできる犯罪行為は比較的軽微なものに限定されます。道路交通法違反、暴行罪、窃盗罪、迷惑防止条例違反などは法定刑に100万円以下の罰金刑があるため、略式起訴となる可能性があります。一方で詐欺罪、強盗罪、殺人罪などは罰金刑とはなりえないのですべて通常の起訴となります。

通常の起訴手続きには対象事件に条件はありません。

略式起訴と通常の起訴の主な違い

略式起訴通常の起訴
法廷での裁判なしあり
被疑者の同意必要不要
対象となる事件限定的限定なし
前科つくつく

なお、令和4年版の犯罪白書によると検察庁による終局処分のうち、略式起訴の割合は21.9%でした。公判請求の割合は9.9%、家庭裁判所へ送致された割合は4.9%です。残りは起訴猶予またはその他の不起訴となっています。

つまり、公判請求の倍以上が略式起訴による終局処分になっているということです。

略式起訴と不起訴の違いは前科の有無

略式起訴と不起訴の主な違いは、前科の有無にあります。

不起訴処分では刑罰に問われず前科もつきませんが、略式起訴されると科料や罰金刑がほぼ確定的です。つまり前科をつけないためには、略式起訴ではなく、不起訴処分を目指すことが重要です。

不起訴処分には、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予の3種類があります。どの処分であっても不起訴に変わりはなく、前科はつきません。実際に犯罪の事実があったとしても起訴猶予となれば、前科をつけずに済むのです。

もっとも、検察官が被疑者を呼び出したり、検察官が略式手続きなど何らかの処分の心証を示す頃には、時間の猶予はありません。略式手続きを拒否すると、通常起訴による正式裁判を起こされる可能性は十分にあります。

一度起訴されて公判手続きがとられると取下げはまずされません。略式起訴を回避して不起訴を目指すには、起訴されるまでの活動が重要です。早急に弁護士に相談をして、被害者との示談をとりまとめてもらったり、被害者から許しをもらえるように交渉したり、犯行に至った経緯や被疑者の状況に関する情状を説明するなど不起訴獲得に向けた弁護活動を依頼しましょう。

とくに被害者との示談では弁護士が間に入らないと進まないケースが多いだけでなく、弁護士が示談をまとめるにも一定の時間がかかる可能性があります。刑事事件の取り扱い実績が多数ある弁護士事務所への依頼を検討しましょう。

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【まとめ】略式起訴のメリット・デメリット

略式起訴のメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

略式起訴のメリット

  • 正式裁判が開かれずに事件を早期に終結できる
  • 非公開で手続きが進むため第三者に知られる等の社会的ダメージを防ぐことができる

略式起訴のデメリット

  • 詳細な弁明や証拠提出の機会が限られる
  • 誤認や違法に収集された証拠が審理に使われる可能性がある

略式起訴手続きの流れ

略式起訴の手続きがどんな手順で進められるのか説明していきます。

略式起訴から略式命令が出るまでのフロー

略式起訴の流れ

刑事事件は警察や検察官による捜査を経て、最終的に検察官が起訴するか不起訴にするかを決めます。

検察官が略式起訴の心証を固めたとき、被疑者に対して概要を説明して、「略式請書」(通称「略請」)へのサインを求めます。略式請書は検察官の略式起訴に対して異議がないことを示すもので、被疑者がサインをすると略式起訴の手続きが進められます。

これらの手続きを経て検察官が簡易な形で事件を簡易裁判所に起訴し、簡易裁判所の裁判官が書類審査のみで略式命令を出すものです。

略式命令書は、身柄拘束を受けている場合には検察庁へ、在宅捜査の場合は自宅へ送達されます。

いつ略式命令が確定する?

略式起訴で罰金命令が出されると、その告知を受けた日の翌日を1日目として14日間が経過すると刑は確定します。この14日間は罰金処分に納得できない場合は、正式裁判を請求することが可能です。刑が確定すれば、正式裁判の請求はできません。

略式命令への不服申し立てはできる?

一度略式起訴に同意した場合でも「略式起訴で前科がつくと知らなかった」「正式裁判で納得のいく判決を受けたい」などの事情がある場合は、略式命令への不服申し立てをすることができます。

略式起訴は書類審査のみで行われる簡易な手続きです。そのため、検察官の主張に対し反論をしたり自分の意見を裁判官に届けたりすることはできません。公開の法廷で審理を受けたい場合には、略式命令の告知を受けとった日の翌日から14日の間に正式裁判を求めることができます(刑事訴訟法465条)。

ただし、罰金納付後はたとえ14日間経過前であっても、略式起訴から正式裁判にすることは困難になります。

もっとも、正式な刑事裁判をしても、被告人の言い分が認められる保証はなく、罰金の減額が見込める可能性はほとんどありません。むしろ弁護士をつけるために弁護士費用がかかってしまったり、今の罰金刑よりも重い量刑になる可能性すらあるでしょう。

略式命令への不服申し立ては制度としてできるものの、最初から不服申し立てをするつもりで略式起訴を安易に受け入れるのは得策ではありません。検察からの取り調べを受けている時点で、弁護士への早急な相談をおすすめします。

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略式起訴の罰金納付のスケジュール

【身柄事件の場合】在庁略式により罰金を即日納付して釈放

在庁略式とは、とくに身柄拘束中の略式起訴のことをいい、略式起訴の手続きから罰金の納付までを一度に済ませる方式です。在庁略式によって罰金を納付しだい、被告人の身柄は解放(釈放)されます。

在庁略式の流れは以下の通りです。

在庁略式の流れ

  1. 略式請書にサインをする
  2. 検察官が簡易裁判所に対する略式手続きの請求を行う
  3. 裁判所から略式命令が出る
  4. 検察官に略式命令書が届く
  5. 検察に罰金を納付すると釈放される

在庁略式では、被告人本人が罰金額を持ち合わせていないこともあります。事前に検察官から家族に罰金額の準備が促されることが多いでしょう。

【在宅事件の場合】納付書の期限内に罰金を納付する

在宅捜査の場合は、起訴状と略式命令が送達されてきます。検察庁指定の金融口座への納付書が同封されているので、納付期限内に納付しましょう。

納付期限はおおよそ10日ほどであることが多いです。

略式起訴の罰金の相場はいくら?

略式起訴で言い渡される罰金刑は1万円以上100万円以下です。犯罪白書(令和4年版)によると165,199人が略式手続きによる罰金刑となっており、約91%は50万円未満の罰金となっています。

略式起訴の罰金相場は50万円未満といえますが、罪名や被害状況などでより高額な罰金刑になる可能性は十分あります。

ここからは犯罪白書を元に略式起訴の罰金相場について罪名ごとにみていきましょう。

道路交通法違反(無免許運転・酒気帯び運転など)

道路交通法違反での罰金刑は、無免許運転のとき50万円以下、酒気帯び運転のとき50万円以下、飲酒運転のとき100万円以下など、内容によって異なります。

犯罪白書(令和4年版)によると、令和3年に道路交通法違反で略式起訴された人は95,977人でした。略式起訴による道路交通法違反の罰金は5万円~50万円程度になることが多いですが、罪名、初犯であるか、被害者の有無、被害者の人数によって決まってくるでしょう。

略式起訴の罰金(道路交通法違反)

罰金人数
5万円未満14,699人(15.3%)
5万円~10万円未満55,465人(57.8%)
10万円~20万円未満2,737人(2.9%)
20万円~30万円未満1,872人(2.0%)
30万円~50万円未満16,855人(17.6%)
50万円~100万円未満4,156人(4.3%)
100万円7人(0.1%以下)

※犯罪白書(令和4年版)を参考

過失運転致死傷罪

過失運転致死傷罪での罰金刑は100万円以下の罰金とされています。

犯罪白書(令和4年版)によると、令和3年に過失運転致傷等で略式起訴された人は34,816人でした。それぞれ罰金額は以下の通りで、過失運転致死傷罪等の罰金は10万円から50万円未満が相場といえますが、初犯かどうか、交通事故であれば被害者はいるか、被害者の人数や怪我の程度によって罰金額が決まるでしょう。

略式起訴の罰金(過失運転致死傷罪)

罰金人数(割合)
5万円未満9人(0.1%以下)
5万円~10万円未満8人(0.1%以下)
10万円~20万円未満8,514人(24.5%)
20万円~30万円未満6,899人(19.8%)
30万円~50万円未満12,819人(36.8%)
50万円~100万円未満6,482人(18.6%)
100万円85人(0.24%)

※犯罪白書(令和4年版)を参考

窃盗罪

窃盗罪での罰金刑は1万円以上50万円以下の罰金とされています。

犯罪白書(令和4年版)によると、令和3年に窃盗罪で略式起訴された人は5,201人でした。略式起訴による窃盗罪の罰金は10万円から30万円未満のケースがもっと多いですが、初犯かどうか、窃盗の手口や悪質性、被害額などで増減します。

略式起訴の罰金(窃盗罪)

罰金人数(割合)
5万円未満2人(0.1%以下)
5万円~10万円未満3人(0.1%以下)
10万円~20万円未満220人(4.2%)
20万円~30万円未満2,486人(47.8%)
30万円~50万円未満2,019人(38.8%)
50万円~100万円未満471人(9.1%)
100万円なし

※犯罪白書(令和4年版)を参考

罰金を支払わない場合は強制執行または労役場留置となる

罰金を支払わない場合は強制執行または労役場留置となります。

任意で罰金に応じないという人に対しては、財産に対して強制執行が行われます。指定期日までに納付しない場合は財産の差し押さえが行われるのです。もし納付が難しい場合には、早めに検察官か弁護人に相談するようにしましょう。

略式起訴後、資力の事情で罰金納付ができない場合には、罰金納付にかえて「労役場留置」における刑務作業が課されます。刑務所内の労役場にて所定の作業を行い、多くの場合で一日の留置を罰金5,000円相当と換算し、罰金分の留置が行われます。

たとえば、罰金30万円の刑が言い渡された場合には、おおよそ60日間の労役場留置が必要になります。

労役場留置の最長期間は2年間です。

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略式起訴を受け入れる前に弁護士に相談してください

略式起訴にはメリットとデメリットがあるので、事案によって「前科のつかない不起訴を目指す」「正式裁判を避けて略式起訴を目指す」など、取るべき方針は異なります。ただし、刑事事件の弁護活動に力を入れている弁護士のサポートが欠かせない点は共通です。

痴漢や暴行事件など、被害者のいる事件の場合、被害者と示談を進めて不起訴処分を目指す弁護活動が展開されます。不起訴になれば、裁判を受けることなく事件は終了し、前科もつきません。そのため、第一に目指すべきは不起訴になります。

しかし、常に示談がうまくいくとは限りません。被害者と連絡がとれなかったり、連絡がとれても被害感情が峻烈で交渉が決裂することもあるのです。このような場合、被害者対応が不十分として不起訴の可能性が低くなります。その場合、弁護士は正式裁判を回避し、略式罰金処分を目指した弁護活動に切り替えます。

検察にて起訴または略式起訴の手続きが開始されてしまうと、十分な弁護活動が行えない可能性があります。

  • 前科がついたら困るので略式起訴から正式裁判にしたい
  • 略式起訴ではなく前科のつかない不起訴を目指したい

ご自身のケースでは前科のつかない不起訴を狙える可能性はあるのか、あるいは略式起訴を戦略的に狙うべきなのか、略式起訴を受け入れる前に弁護士に見解を尋ねてみましょう。

アトム法律事務所では、24時間365日・全国対応の相談予約窓口を開設しています。

警察が介入している事件については、弁護士相談の相談料は初回30分無料です。手遅れになる前に、できるだけ早く弁護士に相談してください。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了