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不法就労助長罪の初犯はどうなる?不起訴と罰金の分かれ目を解説

不法就労助長罪

2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。

不法就労助長罪の初犯で捜査を受けている場合、不起訴(起訴猶予)や略式起訴による罰金にとどまる可能性は十分にあります

一方で、多数の外国人を働かせていた、偽造の在留カードだと気づきながら雇っていたといった事情があれば、初犯でも実刑判決を受けることがあります

分かれ目になるのは、雇用の人数や期間、悪質性、在留カードの確認をしていたか、そして摘発後に再犯防止の体制を整えられたかどうかです。

「本人が働けると言っていた」「在留カードが偽物だとは思わなかった」という言い分だけでは、処罰を免れないおそれがあります

入管法は、不法就労であることを知らなかったとしても、確認を怠った過失があれば処罰すると定めているからです。

この記事では、初犯で想定される処分の4パターン、逮捕や報道・会社への影響、裁判例、弁護士ができる対応などを解説します。

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目次

不法就労助長罪の初犯はどうなる?処分の4パターン

不法就労助長罪の刑罰は罰金?

不法就労助長罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金のいずれか、または両方です。

実際に科される刑罰は、犯行態様の悪質性、被害の重大性、不法就労させた人数や期間、本人の反省状況、更生可能性などを考慮して、上記の範囲内で言い渡されます。

初犯であっても多数の外国人に不法就労をさせていた場合は、犯行態様の悪質性が高いとして拘禁刑が科される可能性があるでしょう。

初犯で想定される処分の4パターン

不法就労助長罪の初犯では、次の4つの処分が想定されます。

(1)不起訴(起訴猶予)

起訴されないため、裁判も刑罰もなく、前科もつきません

雇用していた人数が少ない、期間も短い、在留カードの確認自体は行っていた、摘発後すぐに雇用管理体制を是正したといった事情が揃えば、目指せる処分です。

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起訴猶予になりやすい人の特徴は?起訴猶予処分と不起訴の違いを解説

(2)略式起訴による罰金

検察官の請求により、公開の法廷を開かずに書面審理だけで罰金を科す手続きです。

裁判所が出す処分は「略式命令」と呼ばれます。身柄拘束が長引かず、短期間で終わる点がメリットですが、有罪である以上、前科がつきます

(3)執行猶予付き判決

正式な裁判を経て拘禁刑が言い渡されるものの、一定期間、何事もなく過ごせば刑の執行を受けずに済む判決です。

(4)実刑判決

猶予が付かず、刑事施設に収容される判決です。

初犯でも、多数の外国人を組織的に働かせていた、あっせんを事業として行っていたといったケースでは、実刑の可能性があります。

どのパターンになるかは、主に以下の事情で判断されます。

不法就労助長罪の処分を分ける事情

  • 不法就労させた外国人の人数と期間
  • 不法就労であることを知っていたか、どの程度疑いを持っていたか
  • 在留カードの確認をどこまで行っていたか(原本確認・期限管理の有無)
  • あっせんや支配といった悪質な類型にあたるか
  • 摘発後に雇用管理体制を是正したか
  • 前科・前歴の有無

罰金でも前科はつく?

略式起訴による罰金であっても、有罪判決である以上、前科として記録に残ります。「裁判を受けていないから前科にならない」ということはありません。

一方、不起訴(起訴猶予)であれば有罪と判断されたわけではないため、前科はつきません。前科を避けたい場合、目指すべきは「軽い罰金」ではなく「不起訴処分」ということになります

不法就労助長罪の初犯で逮捕される?在宅捜査・報道・会社への影響

初犯なら逮捕されない?在宅捜査になるケース

不法就労助長罪の捜査は、必ず逮捕から始まるわけではありません

事業の実態がはっきりしていて逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいと判断されれば、在宅のまま取り調べを受ける形(在宅事件)で進むこともあります。

反対に、帳簿や雇用記録の隠匿が疑われる、関係者と口裏を合わせるおそれがあるといった事情があれば、逮捕・勾留され、経営から離れざるを得ない事態もあり得ます

不法就労助長罪で逮捕されるきっかけのひとつとして、就労していた外国人の逮捕が挙げられるでしょう。

不法残留であったり、ほかの犯罪であったりと、逮捕の理由は様々ですが、逮捕された外国人の身元が判明する過程で、不法就労させていた側も捜査対象になるというケースです。

そのほか不法就労助長罪の逮捕のきっかけとして、不法就労していた外国人による告発や通報が端緒になることも考えられます。

就労環境が過酷だった、急に解雇されたなどの不満が通報につながる可能性も否定できないでしょう。

また、入管による事業所への立入調査や、外国人雇用状況の届出内容との食い違いから発覚することもあります。

社名・実名が報道される可能性

不法就労助長罪は、事業者が摘発される事件であるため、報道される場合には会社名や代表者名が出ることがあります

特に、外国人を多数働かせていた事件や、あっせんが絡む事件は報道価値が高いと判断されやすい傾向があります。

報道の有無を弁護士がコントロールすることはできませんが、逮捕を避けて在宅捜査のまま手続きを進められれば、報道につながる可能性を下げられる場合があります

逮捕・勾留を回避するための働きかけは、捜査の早い段階でなければ間に合いません。

法人にも罰金が科せられる

不法就労助長罪では、実際に不法就労させた個人(代表者・人事担当者・現場責任者など)だけではなく、その法人にも罰金刑が科されることがあります(入管法76条の2)。

両罰規定により、行為者である個人と法人の双方が処罰され得ます。

「現場の判断だった」として経営者が処罰を免れるとは限らず、現場の店長や工場長が個人として立件されると同時に、法人にも罰金が科されることがあります。

特定技能・育成就労の受け入れが止まる可能性

刑事処分の影響は、その事件だけにとどまりません。

特定技能外国人を受け入れる企業には、入管法令・労働法令の遵守が求められており、入管法違反による一定の刑に処せられた場合は欠格事由にあたり、原則として5年間、新たな受け入れが認められなくなります

現在雇用しているほかの外国人についても、雇用の継続が難しくなる場合があります。

また、建設業や運送業など許認可が必要な事業では、一定の刑事罰を受けたことが欠格事由とされていることがあり、許可の取得・更新に影響する可能性があります。

「知らなかった」では済まない?不法就労助長罪と過失の関係

不法就労助長罪とは

不法就労助長罪とは、外国人を不法に就労させたり、不法就労をあっせんした場合に成立する罪です。不法就労した本人ではなく、働かせた側(雇い主など)を処罰するのが不法就労助長罪です。

なお、不法就労をした外国人本人も、別途入管法上の罰則の対象となります。

不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法(入管法)73条の2第1項に規定されています。

第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する

一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者

二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者

三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

出入国管理及び難民認定法73条の2第1項

「不法就労」とは?

そもそも「不法就労」となるのは、どのような就労活動なのでしょうか。

不法就労になるケース

  1. 出入国在留管理庁から働く許可を受けていないのに働く
    ・観光等の短期滞在目的で入国した人が働く
    ・留学生が許可を受けずに働く
    ・難民認定申請中の人が許可を受けずに働く
  2. 出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働く
    ・調理師として働くことを認められた在留資格しかないのに、工場で製造作業に従事する
    ・語学学校の教員として働くことを認められた在留資格しかないのに、工場で労働する
    ・留学生が許可された時間数を超えて働く
  3. 不法滞在者や被退去強制者が働く
    ・密入国した人が働く
    ・在留期限の切れた人(オーバーステイ・不法残留の人)が働く
    ・退去強制されることが既に決まっている人が働く

実務で問題になりやすいのは2つ目の「認められた範囲を超えて働く」ケースです。

たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で採用した外国人を、実際には工場の製造ラインや梱包・仕分けといった現場作業に継続して従事させていたとします。

この場合、肩書きが通訳やマネージャーであっても、業務の実態から不法就労と判断されることがあります

留学生のアルバイトも同様です。資格外活動許可による就労時間は、原則として1週について28時間以内とされており、複数の勤務先がある場合は合計で判断されます。

「自社では週20時間しか働かせていない」という認識でも、他社との合計が上限を超えていれば不法就労にあたる可能性があります。

「知らなかった」で処罰を免れられるか

不法就労であることを知らなかったとしても、確認を怠った過失があれば不法就労助長罪に問われます。

前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
一 当該外国人の活動が当該外国人の在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動であること。
二 (略)
三 (略)

出入国管理及び難民認定法73条の2第2項

ただし書のとおり、過失がなければ処罰されません。つまり、処罰を免れるかどうかは「知っていたか」ではなく「確認を尽くしていたか」で決まることになります。

不法就労助長罪の処罰を回避するべく、「過失がない」と主張するためには、少なくとも「在留カード」の確認をしておく必要があるでしょう

在留資格、在留期間(在留期限)、資格外活動許可の有無などを確認して、雇用できる外国人なのかどうかをチェックする必要があります。

資格外活動許可とは?

資格外活動許可とは、就労や留学等の在留資格で在留する外国人が、在留資格に応じた活動以外に、アルバイトなど収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を行うために、あらかじめ受ける許可のことです。

資格外活動を行おうとする場合は「資格外活動許可申請」が必要になります。

在留カードの注意点

そもそも在留カードを持っていない、在留資格に制限がある、在留カードに就労不可との記載があるなどのケースでは、不法就労助長罪になるリスクがあるので注意しましょう

たとえば、就労不可の在留資格で滞在する外国人を雇用する場合、その外国人が資格外活動許可を受けていないのであれば、不法就労となるので注意が必要です。

資格外活動許可のない外国人を就労させた場合、不法就労助長罪に問われる可能性があります。

また在留カードを確認する際は、それが失効していないか、偽造されていないかなどについても注意を払う必要があります。

偽造在留カードは券面を目で見るだけでは見抜けないことがあります。

出入国在留管理庁が提供する在留カード等読取アプリケーションでICチップの情報を券面と照合する、在留カードなど番号失効情報照会で失効の有無を確かめるといった方法をとり、確認した記録を残しておくことが重要です。

捜査を受けた段階では、この「どこまで確認していたか」が過失の有無を判断する材料になります。確認の記録が残っていれば、無過失の主張につながる可能性があります。

在留カードの確認方法が分からない場合は、出入国在留管理庁のホームページが参考になります。

不法就労助長罪の3つの類型|裁判例にみる成立の判断基準

不法就労助長罪の認定ポイント

不法就労助長罪で有罪認定される基準として、以下のような点が重要といえるでしょう。

不法就労助長罪の認定ポイント

  • 外国人が不法に就労していること
  • 事業主が外国人の不法就労を認識・認容していたかどうか
  • 事業主が外国人の不法就労を認識できなかったことに過失があるか

不法就労助長罪で有罪認定される場合は、外国人の在留資格や就労許可の有無、事業主が外国人の在留資格や就労許可について確認したかどうかなどが考慮されます。

上記のほか、不法就労助長罪に問われる場合、入管法に規定された3つの類型のうちいずれに該当するかで弁護方針も変わってきます。各類型の適用事例について、確認をしておきましょう。

不法就労活動を「させた」とは?

「外国人に不法就労活動をさせた」(入管法73条の2第1項1号)というためには、「当該外国人との間で対人関係上優位な立場にあることを利用して、その外国人に対し不法就労活動を行うべく指示等の働きかけをすることが必要である」とされています(東京高判平成5年9月22日高裁刑集46-3-263)。

実際の裁判では、売春スナックの使用者側に立つ者が、優位な立場を利用して、不法残留などにより不法滞在状態にあった外国人女性らに対して「売春婦として働く」ことを指示して、稼働させた事案において、「外国人に不法就労活動をさせた」として有罪認定されています。

「自己の支配下に置いた」とは?

「自己の支配下に置いた」(入管法73条の2第1項2号)とは、「外国人に心理的ないし経済的な影響を及ぼし、その意思を左右しうる状態に置き、自己の影響下から離脱することを困難にさせた場合も含まれる」とされています(東京高判平成5年11月11日高裁刑集46-3-294)。

実際の裁判では、日本語が話せず、所持金も持ち合わせていない外国人女性から旅券等を預かり、借金返済の名目で金員を支払うことを約束させたうえ、就労先のバーのママの住居に連れていって居住させ、借金の返済が終わるまで売春代金をすべて取得していた事案において、「自己の支配下に置いた」として有罪認定されています。

「業として……あっせんした」とは?

「業として」とは、反復・継続して行う意思をもって行うことをいいます。

複数回にわたり、外国人に不法就労活動を紹介した場合、「業として外国人に不法就労活動をさせることに関し、あっせんした」(入管法73条の2第1項3号)と認定される可能性があるでしょう。

実際の裁判では、日本語学校の経営者が、複数回にわたり、「就学」の在留資格しかない外国人留学生に、不法就労活動を紹介した事案で、不法就労助長罪で有罪になった事案があります。

不法就労活動をさせることになるであろうことを認識・認容して紹介したかどうかも有罪認定のポイントになるでしょう(大阪高判平成9年4月25日判時1620-157)。

不法就労助長罪の裁判例|初犯・前科ありで刑罰はどう変わる?

事例(1)同種前科があると実刑判決になることも

外国人女性をストリッパーとしてストリップ劇場に紹介して雇用させたことが、不法就労助長罪(入管法73条の2第1項3号違反)および有害業務への職業紹介の罪(職業安定法63条2号違反)に問われた事案において、懲役の実刑判決になった裁判例があります(東京地判平成15年3月28日 平成14年(合わ)第651号)。

被告人は、以前にも不法就労助長罪で処罰されたことがあり、その際は罰金刑が科されています。今回は、罰金では済まされず、懲役の実刑判決が出されました。

この裁判では、被告人の「不利な事情」として、不法就労助長罪の罰金前科があること、この種の犯罪に対する規範意識が低いこと、ほかにも罰金前科が2犯あること、犯行後の情状が悪いことなどが着目されました。

その一方で、被告人には懲役前科がないこと、反省の弁を述べていること、父親が監督を誓約したこと等の「有利な事情」もありました。

これらの事情が総合的に考慮され、審理の結果、被告人には「懲役1年10か月」の実刑判決とされました。

なお、検察官の求刑は懲役3年および罰金30万円でしたが、判決はこれよりも軽い刑となりました。

この裁判から分かるのは、同種前科があると、前回よりも重い刑が選択されやすいということです。裏を返せば、前科のない初犯であれば、罰金や執行猶予にとどまる余地が残されているといえます。

事例(2)初犯で執行猶予付き判決

2名の外国人女性を売春婦として不法就労させた事案において、執行猶予付き判決になった裁判例があります(東京高判平成5年11月11日高裁刑集46-3-294)。

この裁判例では、女性らに不法就労活動をさせるために自己の支配下に置いた行為が不法就労助長罪(入管法73条の2第1項2号違反)に問われるとともに、売春婦として「供給」した行為が職安法63条2号違反に問われました。

審理の結果、被告人には「懲役3年執行猶予5年、および罰金200万円」という刑罰が科されました。

被告人に有利な事情

この裁判では「前科前歴がないこと」が被告人に有利な事情になると言及されています。つまり初犯の場合は、刑罰が軽くなる可能性があるということです

この事案では、被告人に有利な事情を考慮した結果、懲役実刑ではなく執行猶予付き判決が出されました。

なお、この判示は被告人側の量刑不当の主張を退ける文脈のものですが、前科・前歴がないことが有利な事情として考慮されたことが読み取れます。

被告人には前科前歴がなく、本件を反省していること、本件の支配が実力的なものではなく比較的緩やかなものであったこと、本件タイ人女性二名は売春目的で来日していたもので、被告人の支配下から脱した後も同様に売春を続けていたこと、被告人の夫が一〇〇万円の贖罪寄付を法律扶助協会にしたこと、同人が今後の被告人の指導監督を誓っていること等の被告人に有利な諸事情を十分に考慮しても、原判決の量刑はまことにやむを得ない(以下略)

東京高判平成5年11月11日高裁刑集46-3-294

2027年4月1日から不法就労助長罪は厳罰化

法定刑は「5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」に

2024年6月24日に公布された改正入管法により、2027年4月1日から不法就労助長罪の法定刑が引き上げられます

  • 改正前:3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金のいずれか、または両方
  • 改正後:5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金のいずれか、または両方

この改正は、在留資格「育成就労」の創設などとあわせて行われたものです。

施行日より前に行われた行為については、行為時の法定刑(3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金)が適用されます。

厳罰化により執行猶予が付かなくなる?

法定刑が5年に引き上げられても、執行猶予が付かなくなるわけではありません

「法定刑が5年になると執行猶予が付かなくなる」という説明を見かけることがありますが、正確ではありません。

執行猶予は、法定刑の上限ではなく、実際に言い渡される刑が3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金である場合に付けることができる制度です(刑法25条1項)。

したがって改正後も、言い渡される刑が3年以下にとどまれば、執行猶予の可能性は残ります。

もっとも、法定刑の引き上げは量刑判断全体を重い方向に動かす要因になり得ます。

改正後は、これまでなら罰金で済んでいた事案が正式起訴されるなど、実務の運用が変わる可能性がある点には注意が必要です。

不法就労助長罪と併せて問われる罪

風営法違反|在留資格の確認・記録義務を怠った場合

外国人の不法就労事件では、初犯であっても、不法就労助長罪のほかに、風営法違反の罪にも問われる可能性があります

キャバクラなど接待飲食等営業に該当する店舗で外国人を働かせる場合、風営法36条の2により、外国人の在留資格、在留期間、資格外活動許可の有無等を確認し、その確認の記録を作成・保存しなければなりません。

在留資格等の確認をしない、記録を作成・保存しない、虚偽の記録を作成したなどの場合は、100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(風営法53条)。

(接客従業者の生年月日等の確認)
第三十六条の二 接待飲食等営業を営む風俗営業者(略)は、当該営業に関し客に接する業務に従事させようとする者について次に掲げる事項を(略)確認しなければならない。
一 (略)
二 (略)
三 日本国籍を有しない者にあつては、次のイ又はロのいずれかに掲げる事項
イ 出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格及び同条第三項に規定する在留期間並びに同法第十九条第二項の許可の有無及び当該許可があるときはその内容
ロ (略)
2 接待飲食等営業を営む風俗営業者(略)は、前項の確認をしたときは、(略)当該確認に係る記録を作成し、これを保存しなければならない

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律36条の2

労働施策総合推進法違反|外国人雇用状況の届出を怠った場合

外国人の不法就労事件では、初犯であっても、不法就労助長罪のほかに、労働施策総合推進法違反に問われる可能性もあります

すべての事業主は、外国人労働者(在留資格「外交」及び「公用」並びに「特別永住者」を除く)を雇い入れたとき、または離職した時に、その外国人の氏名、在留資格、在留期間等を、厚生労働大臣への届出(提出先はハローワーク)が義務づけられています。

この義務は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称「労働施策総合推進法」)第28条に規定されています。

違反した場合の罰則は、30万円以下の罰金です(労働施策総合推進法40条)。

これらの罪は、不法就労助長罪とあわせて立件されることで、処分が重くなる方向に働きます。

どの範囲まで問われうるのかは事案によって異なるため、早い段階で弁護士に見通しを確認しておくことをおすすめします。

不法就労助長罪の初犯に対する弁護士の対応

不法就労助長罪を否認する

不法就労をさせたという認識がないケースもあるでしょう。そのような不法就労事件では、不法就労助長罪を否認するという弁護方針が考えられます。

弁護士は、不法就労助長罪の否認を図るために、以下のような弁護活動を行います。

不法就労助長罪の否認

  • 不法就労した外国人が不法に就労していることを知らなかったことを主張する
  • 不法就労を知らなかったことに過失がなかったことを主張する
  • 無過失を裏づける資料の収集・提出

否認の弁護方針が通れば、初犯であれば不起訴処分となる可能性が高まります

ただし、取り調べで一度でも不正確な供述をしてしまうと、後から覆すことは容易ではありません。否認を検討する場合は、取り調べを受ける前に弁護士に相談することが重要です。

不法就労助長罪の量刑軽減

弁護士は、不法就労助長罪の量刑軽減を図るための弁護方針を検討します。たとえば、一例として以下のような弁護活動を提案してくれます。

不法就労助長罪の刑罰を軽くする

  • 在留カードの確認を一定程度は行っていたことなど、悪質性が低いことを主張する
  • 不法就労させた人数や期間が限定的であることを、客観的な資料で示す
  • 前科・前歴がないことを主張する
  • 雇用管理体制を是正し、再犯防止に取り組んでいることを示す
  • 本人および法人として反省していることを、書面で明らかにする

不法就労助長罪の再犯防止

弁護士は、不法就労助長罪の再犯防止を図るための対策を一緒に検討してくれます

不法就労事件では、個人の反省だけでなく、会社として同じことが起きない体制を作れたかどうかが重視されます。

たとえば、以下のような対策が考えられます。

不法就労助長罪の再犯防止

  • 採用時に在留カードの原本を確認し、ICチップの読み取りと失効情報の照会まで行う運用に改める
  • 全外国人従業員の在留期限を一覧で管理し、期限前に更新状況を確認する仕組みを作る
  • 在留資格と実際の業務内容が一致しているかを配置転換のたびに点検する
  • 外国人雇用の判断に迷ったときの相談先(弁護士・行政書士)を定めておく

弁護士は、こうした是正内容を書面にまとめて検察官に提出し、起訴の必要性が低いことを主張します。在宅捜査の段階から動けるかどうかで、結果が変わることがあります。

不法就労助長罪は、外国人労働者の保護と日本の労働市場の秩序維持を目的とする罪です。企業の社会的責任を果たすためにも、法律違反のリスクを下げる取り組みが欠かせません。

再犯防止策は、刑罰の軽減に役立つだけでなく、会社を守るためにも重要です。

アトムの解決事例|初犯で不起訴獲得

過去にアトム法律事務所で扱った不法就労事件について、不起訴になった事案を紹介しておきましょう。

在留資格の範囲を超えて就労させた場合、不法就労助長罪になります。

ある施設では「技術・人文知識・国際業務」の在留資格しかない外国人に、その範囲を超える仕事をさせていました。

そのため、当該施設の理事長が不法就労助長罪で在宅捜査を受けたという事案です。

アトムの解決事例|入管法違反(不起訴処分)

中国国籍を有する外国人を、在留資格にそぐわない活動に従事させ、不法就労活動をさせたとされたケース。不法就労助長罪の事案。


弁護活動の成果

不法就労の事実を知らなかった点を主張し、不法就労助長罪を否認。
取り調べ対応のアドバイスや、意見書などで無過失を主張するなどをした結果、不起訴処分となった。

組織のなかで立場が上になればなるほど、社員個人の事情を把握しづらくなるでしょう。

直属の上司や人事担当者であれば過失が認められやすいといえそうですが、本件では理事長という立場もあいまって無過失を主張しやすい事案でした。

不法就労助長罪に関するよくある質問

Q.不法就労外国人を雇用した場合、雇い主や会社に罰則はありますか?

出入国管理及び難民認定法(入管法)に定められた「不法就労助長罪」に該当する可能性があります。

不法就労助長罪とは、事業活動に関して外国人を雇用するなどして不法就労活動をさせた場合に成立する犯罪です。

不法就労助長罪に該当する場合、雇い主は「3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処せられ、またはこれらを併科される」という罰則が科される可能性があります。

また雇い主個人だけでなく、その法人にも罰金刑が科される可能性があります。

Q.不法就労で本人が受ける罰則は?

資格外活動許可を受けていない外国人が不法就労をした場合、退去強制の対象となるとともに(入管法24条)、1年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

なお、拘禁刑と罰金の両方が科される可能性もあります(入管法73条)。

不法入国、不法残留の外国人が不法就労をした場合、退去強制の対象となるとともに(入管法24条)、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金のいずれか、または両方に処せられる可能性があります。

なお、拘禁刑と罰金の両方が科される可能性もあります(入管法70条)。

Q.不法就労助長罪に時効はある?

公訴時効は3年です。公訴時効の期間は法定刑の重さによって決まり、不法就労助長罪の法定刑は3年以下の拘禁刑だからです(刑事訴訟法250条2項)。

ただし、不法就労させていた状態が続いていた場合、いつを起算点とするかで結論が変わります。

継続して働かせていたときは、最後に不法就労をさせた日を基準に考えるのが一般的ですが、事案ごとの判断になるため、弁護士に確認することをおすすめします

また、2027年4月1日の法定刑の引き上げ後に行われた行為については、時効期間も5年になるため、注意しましょう。

不法就労助長罪の初犯でお悩みなら弁護士相談

不法就労助長罪は、初犯でも起訴され、罰金や拘禁刑になる可能性がある犯罪です。

不法就労助長罪で逮捕されたり、警察から呼び出しを受けたりしたら、すぐに弁護士に相談して、今後の方針を立てる必要があるでしょう

また、自分の知らないうちに、部下が独断で外国人を不法就労させていたというケースもあるかもしれません。

そのような場合、初犯であれば、否認の弁護活動が功を奏して不起訴になる可能性もあるでしょう。

アトム法律事務所では、24時間365日いつでも相談予約を受け付けています。不法就労助長罪の初犯で不起訴を目指したい方、刑罰の軽減を目指したい方はぜひご相談ください。ご連絡お待ちしています。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了