
刑事事件とは、犯人と疑われる人に、国が刑罰を科すかどうかを問題とする事件のことです。
刑事事件には、身柄事件と在宅事件の2種類あり、どちらも刑法犯や特別法犯の処罰は問題になります。
刑法犯とは「刑法」で処罰される犯罪のことです。刑法犯は、凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯、その他の刑法犯の6種類に分類されたりします。
特別法犯とは「刑法」以外の法律で処罰される犯罪のことです。特別法犯には、覚醒剤取締法違反、大麻取締法違反、軽犯罪法違反、性的姿態撮影等処罰法違反などがあります。
昨今、特別法犯の処罰規定は年々増加し、刑法犯の改正も頻繁です。
この記事では、刑事事件の種類について解説します。
目次
刑事事件の種類(1)身柄事件と在宅事件
刑事事件は、身柄事件と在宅事件の2種類です。
ここでは、刑事事件とは何か、捜査の流れによる分類について説明します。
刑事事件とは?
刑事事件とは、罪を犯したと疑われている人の捜査や処罰が問題になる事件のことです。
刑事事件 | 民事事件 | |
---|---|---|
内容 | 犯人の処罰が問題になる事件 | 私人間の権利義務が問題になる事件 |
当事者 | 国家 vs 容疑者 | 私人 vs 私人 例)加害者 vs 被害者 例)債権者 vs 債務者 |
刑事事件では、逮捕すべきか、有罪か無罪か、刑罰の重さはどのくらいかなどが問題になります。
民事事件とは違って、誰にどんな権利があるかなどは問題になりません。
刑事事件は、捜査の流れによって、在宅事件と身柄事件の2種類に分類できます。

刑事事件のおおまかな流れは、捜査された後、起訴か不起訴かが決まり、起訴された場合は、裁判において有罪か無罪かが決まるというものです。
ただし、刑事事件の種類によって、細かい流れに違いが出てきます。
身柄事件の場合
身柄事件(みがらじけん)とは、逮捕や勾留(こうりゅう)されながら、捜査を受ける刑事事件のことです。

逮捕とは、留置場所に連れて行かれる処分のことです。拘束期間は、最大72時間です。
勾留とは、逮捕された後に、留置される処分です。拘束期間は、最大20日間です。
逮捕と勾留あわせて、最長23日間、身体拘束が続く可能性があります。その間に、起訴が決まってしまうことも多いです。
起訴されてしまった場合は、刑事裁判となり、裁判官の判決を待つことになります。
身柄事件の流れをもっと詳しく知りたい方は『逮捕されたら?逮捕の種類と手続きの流れ、釈放のタイミングを解説』の記事もご覧ください。
在宅事件の場合
在宅事件(ざいたくじけん)とは、逮捕・勾留されず、自宅にいながら捜査を受ける刑事事件のことです。

警察の捜査が終わったら、書類送検され、検察官が起訴するかどうかを決めます。
在宅事件が起訴されることを在宅起訴と呼びます。
在宅起訴された後は、身柄事件と同様に、刑事裁判となり判決がくだされます。
在宅事件の流れをもっと詳しく知りたい方は『在宅事件の流れを解説│起訴率は低い?逮捕される刑事事件との違い』の記事もご覧ください。
刑事事件で刑罰を避けるには
刑事事件で刑罰を避けるには、(1)無罪判決を獲得する、(2)不起訴処分を獲得するという方法が考えられます。
ただし、刑事事件の種類にかかわらず、起訴された場合、99%以上が有罪となります。
したがって、刑事事件の刑罰を避けたい場合、不起訴処分の獲得を目指すほうが現実的な選択肢といえるでしょう。
関連記事
・「刑事事件の有罪率99.9%」はホント!?裁判にならない不起訴処分とは?
・示談すると前科はつかない?不起訴になる?犯罪ごとの示談金相場も解説!
刑事事件の種類(2)刑法犯と特別法犯
ここでは、刑事事件で問題になる犯罪の種類について解説します。
刑法犯
刑法犯とは、主に刑法で処罰される犯罪のことです。
刑法犯の代表例としては、殺人、傷害、不同意性交等、窃盗、横領などが挙げられます。
刑法犯は、性質や内容によって、凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯、その他の刑法犯の6種類に分類することもできます。
刑法犯の種類(包括罪種)
種類 | 例 |
---|---|
凶悪犯 | 殺人、強盗、放火、不同意性交等*¹、監護者性交等*¹ |
粗暴犯 | 暴行、傷害*²、脅迫、恐喝、凶器準備集合 |
窃盗犯 | 窃盗 |
知能犯 | 詐欺、横領*³、偽造、汚職、背任、あっせん利得処罰法違反 |
風俗犯 | 賭博、わいせつ*⁴、性的姿態撮影等処罰法違反 |
その他の刑法犯* | 占有離脱物横領、公務執行妨害、住居侵入、逮捕監禁、略取誘拐・人身売買、盗品、器物損壊 |
令和6年 警察白書 PDF「凡例」等参照。包括罪種とは、刑法犯を被害法益、犯罪態様等の観点から類似性の強い罪種を包括した分類名称のこと。
*¹ 同致死傷を含む。
*² 傷害致死を含む。
*³ 占有離脱物横領を除く。
*⁴ 不同意わいせつ、公然わいせつ、わいせつ物頒布などを指す。
*⁵ 凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯を除く刑法犯のことを指す。
なお、警察庁の分類によれば、「爆発物取締罰則」「暴力行為等処罰ニ関スル法律」などに規定されている各罪に該当する場合も、刑法犯になります。
刑法犯になる罪を定めたその他の法律
- 「決闘罪ニ関スル件」
- 「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」
- 「航空機の強取等の処罰に関する法律」
- 「火炎びんの使用等の処罰に関する法律」
- 「航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律」
- 「人質による強要行為等の処罰に関する法律」
- 「流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法」
- 「サリン等による人身被害の防止に関する法律」
- 「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」
- 「公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律」
- 「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律」
特別法犯
特別法犯とは、「刑法犯」以外で処罰される犯罪のことです。
特別法犯の具体例としては、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反、軽犯罪法違反、出入国管理法違反、銃刀法違反等が挙げられます。
各都道府県における迷惑防止条例違反なども、特別法犯の一つです。
特別法犯は、刑法には規定がなかったものの、社会状況に応じて、新たに設けられた犯罪です。
なお、警察の統計においては、交通事故に係る過失致死傷、ならびに道路交通法および自動車の保管場所の確保等に関する法律に規定される罪は、特別法犯からは除かれます。
刑事事件の種類(3)保護法益による分類
刑事事件は、保護法益による分類もできます。保護法益とは、法律によって守ろうとしている利益のことです。
保護法益は、国家的法益、社会的法益、個人的法益の3種類あります。
国家的法益についての刑事事件
国家的法益を害する刑事事件としては、以下のようなものがあります。
さらに細かい分類 | 罪名 |
---|---|
国家存立 | 内乱など |
国家作用 | 公務執行妨害、逃走、犯人蔵匿、証拠隠滅、偽証、虚偽告訴など |
国交 | 国交など |
公務執行妨害(不起訴処分)
職務質問を受けた際に激高し、警察官に暴言を吐いたり、唾を飛ばしたりするといった行為をした。公務執行妨害の事案。
弁護活動の成果
勾留に対する不服申し立てを行い、早期釈放を実現。再発防止策を主張立証し、被害者に謝罪文を送付するなどしたところ、不起訴処分となった。
示談の有無
ー
最終処分
不起訴処分
社会的法益についての刑事事件
社会的法益を害する刑事事件としては、以下のようなものがあります。
大麻(不起訴処分)
個人使用目的で購入した大麻を、友人に頼まれて2グラムを1万円程度で売ったとされた。大麻取締法違反の事案。
弁護活動の成果
押収された携帯電話の早期還付を交渉し、実現。事件は捜査不十分により、不起訴処分となった。
示談の有無
ー
最終処分
不起訴処分
個人的法益についての刑事事件
個人的法益を害する刑事事件としては、以下のようなものがあります。
さらに細かい分類 | 罪名 |
---|---|
生命身体 | 殺人、傷害、堕胎、遺棄など |
自由 | 逮捕・監禁、脅迫、未成年者略取・誘拐、 不同意性交等罪・不同意わいせつ・児童ポルノなどの性犯罪、 住居侵入、秘密漏示など |
名誉信用 | 名誉毀損など |
財産 | 窃盗、強盗、詐欺、 恐喝、横領、背任、 盗品等関与罪、毀棄隠匿など |
不同意わいせつ(不起訴処分)
電車内で女性の下半身を触るなどしたとして、強制わいせつ容疑で逮捕された。
弁護活動の成果
受任後、裁判官に意見書を提出したところ、勾留請求が却下されて早期釈放が実現。被害者との示談締結により、不起訴処分となった。
示談の有無
あり
最終処分
不起訴処分
刑事事件の種類によって解決策は違う?
刑事事件は、種類によって、解決策が多少違います。
たとえば、個人的法益に関する刑事事件は、示談が早期解決のポイントになることが多いです。
示談とは、加害者が被害者に対して、謝罪をして、和解の合意をすることです。

ただし、個人的法益以外の刑事事件であっても、被害者的な立場の方がいる場合、示談をおこない、解決につながるケースもあります。
個別の刑事事件でどのような解決方法があるのかは、刑事事件に詳しい弁護士に確かめてみるのが一番です。
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刑事事件の刑罰の種類
刑事事件の刑罰は7種類

刑事事件の刑罰は、基本的に、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料の6種類です。
このほか、他の刑罰と一緒でなければ科すことができない「没収」もあります。
凶器として使用したナイフ、児童ポルノの画像データを保存した記録媒体などが、没収の対象になります。
これらの刑罰は、生命刑、自由刑、財産刑の3種類に分類することもできます。
分類 | 刑種 |
---|---|
生命刑 | 死刑 |
自由刑 | 懲役、禁錮、拘留 |
財産刑 | 罰金、科料、没収 |
なお、2025年6月1日の刑法改正により、懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化される予定です。
拘禁刑について詳しく知りたい方は『拘禁刑とは?拘禁刑の内容、創設の理由を解説』の記事もあわせてご覧ください。
刑事事件の判決は2種類

実際に刑事裁判で言い渡される判決は、実刑判決と執行猶予付き判決のいずれかです。
実刑判決
実刑判決とは、執行猶予付き判決以外の判決のことです。
実刑判決の場合、刑事裁判で言い渡された刑罰は、すぐに執行されます。
執行猶予付き判決
執行猶予付き判決とは、3年以下の懲役・禁錮、または50万円以下の罰金刑について、執行を猶予する判決のことです。
執行猶予付き判決の場合、刑事裁判で言い渡された刑罰は、1年から5年の間、執行が猶予されます。
執行を猶予されている期間中、罪を犯さなければ、結果として刑罰を受ける必要がなくなります。
もっと詳しく知りたい方は『執行猶予とは?懲役実刑との違いは?執行猶予中の逮捕で取り消し?』の記事も合わせてご覧ください。
刑事事件の種類でよくある質問
刑事事件の種類によって、処罰はどのように異なりますか?
刑事事件の種類によって、処罰は異なります。
軽微な犯罪では、罰金や科料が科せられますが、重大な犯罪では、懲役刑などの実刑が科せられることもあります。
また、死刑が科せられる犯罪もあります。
刑事事件を起こしてしまった場合は、早めに弁護士に相談して、適切な対応をすることが重要です。
刑事事件を起こしてしまった場合、どうすればよいですか?
刑事事件を起こした場合には、警察に発覚して逮捕されているケース、警察に発覚したが逮捕されていないケース、警察に発覚していないケースが考えられます。
どのケースであっても、事件直後に弁護士に相談することをおすすめします。
警察が介入している事件であれば、取り調べでの注意点や供述方法などをアドバイス可能です。
警察の介入前でも弁護士であれば状況を適切に判断し、自首をすべきか、示談を積極的に進めるべきかなど、処罰をなるべく軽くするための弁護活動をします。
刑事事件を起こした時に、弁護士に相談するメリットは何ですか?
刑事事件を起こした場合に弁護士に相談するメリットは、「被害者対応の代行」「警察対応のアドバイス」などのメリットがあります。
刑事事件は、人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。
警察の誘導通りに供述してしまい、起訴されて前科がついてしまうこともあるでしょう。また、被害者との示談交渉がうまくいかずに、法外な金額を支払ってしまうケースもあるかもしれません。
しかし弁護士であれば、当事者の権利を守り、最善の解決策を導き出すために全力でサポートすることが可能です。
刑事事件を起こしてしまった場合は、すぐに弁護士に相談してください。
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早急な弁護活動のおかげで社会復帰する事ができました。

今回の件では早急な対応のおかげで社会復帰もする事が出来ました。また相手の方へ出向いて頂き、私の変わりに謝罪をして頂いたおかげで示談になりました。他に色々とアドバイスを頂き今後同じあやまちを起さない為の助言なども頂き助かりました。今回、不起訴になったのも早急な弁護活動のおかげと思っています。ありがとうございました。
「最後まで戦いましょう」と励まし勇気づけて下さいました。

(抜粋)突然被疑者扱いされ、本当につらい日々でした。そんな中、いつも先生には励まし、勇気づけて頂きました。法律事務所の中には実際やっていなくても示談するのがよいとすすめる所や示談しか扱わないという所ばかりでしたが、貴社だけが、示談する必要はない、もし起訴するようなら最後まで戦いましょうとおっしゃって下さいました。警察でも検察でも一方的に被疑者扱いされ被害者(という人の)ことだけが信用されこの先どうなってしまうのか、心が押しつぶされる日々でしたが、先生に色々ご対応頂いたおかげで、不起訴となることができました。
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