2024(令和6)年12月12日から、医療目的以外で大麻を使用(摂取)することが違法になり、大麻使用罪で処罰されます。
大麻使用罪の刑罰は、1ヶ月以上7年以下の懲役です(麻薬取締法66条の2第1項)。
また、今回の法改正では、大麻について使用以外の罪も厳罰化されました。
この記事では、大麻取締法や麻薬及び向精神薬取締法の改正内容、大麻使用罪の刑罰などを解説します。
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目次
大麻使用罪はいつから施行?刑罰は?
施行日は2024年12月12日
2024(令和6)年12月12日から、大麻使用罪が施行されます。
2024年12月12日以降、大麻の不正な使用は、刑事罰の対象になります。
法改正の流れ
- 2023(令和5)年12月6日
大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法(以下「麻薬取締法」といいます。)の改正が成立 - 2024(令和6)年12月12日
改正法の施行(適用)が開始
大麻の使用は「麻薬取締法」の違反になる
いわゆる「大麻使用罪」は、大麻取締法違反ではなく、麻薬取締法違反の罪になります。
今回の改正では、大麻と、その有害成分テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC、Δ8-THC)、政令で定められる基準値以上のΔ9-THCを含む製品等が、麻薬取締法の「麻薬」に位置付けられます(麻薬取締法2条1項1号、同2号、別表第一第42号、同43号、同78号ロ・ハ)。
一 麻薬 別表第一に掲げる物及び大麻をいう。
e-Gov 麻薬及び向精神薬取締法2条1項1号
(令和6年12月12日施行 令和五年法律第八十四号)
この法律で「大麻」とは、大麻草(その種子及び成熟した茎を除く。)及びその製品(大麻草としての形状を有しないものを除く。)をいう。
e-Gov 大麻草の栽培の規制に関する法律2条2項
(令和6年12月12日施行 令和五年法律第八十四号)
e-Gov 麻薬及び向精神薬取締法別表第一(第二条関係)別表第一(第二条関係)
四十二 六a・七・八・十a―テトラヒドロ―六・六・九―トリメチル―三―ペンチル―六H―ジベンゾ〔b・d〕ピラン―一―オール(別名デルタ九テトラヒドロカンナビノール)及びその塩類
四十三 六a・七・十・十a―テトラヒドロ―六・六・九―トリメチル―三―ペンチル―六H―ジベンゾ〔b・d〕ピラン―一―オール(別名デルタ八テトラヒドロカンナビノール)及びその塩類
七十八 前各号に掲げる物又は大麻のいずれかを含有する物であつて、あへん以外のもの。ただし、次に掲げるものを除く。
イ (略)
ロ その濫用による保健衛生上の危害が発生しない量として政令で定める量以下の第四十二号に掲げる物(大麻草としての形状を有しないものに限る。)を含有する物であつて、前各号(同号を除く。)に掲げる物又は大麻を含有しないもの
ハ 第四十二号又は第四十三号に掲げる物を含有する大麻草の種子若しくは成熟した茎又はそれらの製品(大麻草の種子又は成熟した茎としての形状を有しないもの及び前各号に掲げる物又は大麻を人為的に含有させたものを除く。)
(令和6年12月12日施行 令和五年法律第八十四号)
「麻薬」として規制されるΔ9-THCの残留限度値については、以下のとおりです。
例 | 残留限度値 | |
---|---|---|
油脂*¹(常温*²で液体であるものに限る。) | CBDオイル、ヘンプシードオイル、化粧オイル | 百万分中十分の量 (10ppm、10mg/kg、0.001%) |
粉末*³ | CBDパウダー、プロテイン | 百万分中十分の量 (10ppm、10mg/kg、0.001%) |
水溶液*⁴ | 清涼飲料水、アルコール飲料、化粧水、牛乳 | 一億分中十分の量(0.1ppm、0.1mg/kg、0.00001%) |
その他*⁵ | 固形物全般(菓子類、錠剤)、電子タバコ、乳液、ゼリー | 百万分中一分の量 (1ppm、1mg/kg、0.0001%) |
厚生労働省「令和6年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されます」、「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬、麻薬向精神薬原料等を指定する政令第2条の解釈と具体例」より抜粋のうえ、整理しました。
*¹ グリセリンと脂肪酸が結合した化合物を90%以上含むもの
*² 15~25℃
*³ 粉末とは、日本薬局方における粗末以下の粒度のもの
*⁴ 水に物質を溶解させた液又は分散させた液(粘度100mPa・s未満かつグリセリンと脂肪酸が結合した化合物の含有率10.0 %未満のものに限る。)
*⁵ 油脂、粉末、水溶液に分類されないもの
Δ9-THCの含有量が限度値以下の製品は、麻薬規制の対象にならず、麻薬使用罪には問われません。
なお、改正前は、大麻の不正な所持、譲渡、譲受、輸入等は大麻取締法で規制されていました。
改正後は、これらの行為も、麻薬取締法の規制を受けることになります。
改正前 R6.12.11まで | 改正後 R6.12.12から | |
---|---|---|
使用(施用) | なし* | 麻薬取締法 |
所持・譲受・譲渡・輸出入・製造 | 大麻取締法 | 麻薬取締法 |
栽培 | 大麻取締法 | 大麻取締法 |
* 大麻の自己使用を処罰する法律はない。ただし、大麻取締法では、大麻取扱者でない者が大麻を使用すること、大麻取扱者が大麻を目的外使用することは禁じられている。
大麻使用罪の刑罰
大麻使用罪の刑罰は「1ヶ月以上7年以下の懲役」です(麻薬取締法66条の2第1項)。
営利目的で大麻を使用した場合は「1年以上10年以下の懲役」になります。情状により「300万円以下の罰金」も科されることがあります(麻薬取締法66条の2第2項)。
大麻使用罪以外は刑罰が重くなる?
大麻は、不正な所持、譲受、譲渡、輸出入、製造などでも罰せられます。
これらの行為は、今までは大麻取締法違反の罪でしたが、2024年12月12日以降は麻薬取締法で処罰されます。
麻薬取締法の刑罰は、大麻取締法で規制されていた時よりも、重たくなります。
改正前 (大麻取締法) | 改正後 (麻薬取締法) | |
---|---|---|
使用 | ー | 懲役1ヶ月~7年 |
使用 (営利目的) | ー | 懲役1年~10年 情状により300万円以下の罰金も追加 |
所持・譲受・譲渡 | 懲役1ヶ月~5年 | 懲役1ヶ月~7年 |
所持・譲受・譲渡 (営利目的) | 懲役1ヶ月~7年 情状により200万円以下の罰金も追加 | 懲役1年~10年 情状により300万円以下の罰金も追加 |
輸出入・製造 | 懲役1ヶ月~10年 | 懲役1年~10年 |
輸出入・製造 (営利目的) | 懲役1ヶ月~10年 情状により300万円以下罰金も追加 | 懲役1年~20年 情状により500万円以下の罰金も追加 |
大麻取締法の改正内容のポイント
ここまでは、改正のメインである、新設された大麻使用罪や、大麻の所持、譲渡、輸出入などの刑罰の変更点について、整理してきました。
ここからは、大麻取締法についてその他の改正内容のポイントを解説します。
法律の名前が「大麻取締法」ではなくなった
今回の改正で、大麻取締法は「大麻草の栽培の規制に関する法律」に名称が変わりました。
大麻取締法は、大麻草の栽培を規制する法律に生まれ変わります。
大麻草の栽培については、第一種大麻草採取栽培者免許、又は第二種大麻草採取栽培者免許が必要になります。
- 第一種大麻草採取栽培者免許
産業用途で大麻を栽培する場合に、都道府県知事からうける免許。
有効期間は3年(免許の日からその翌々年の12月31日まで)。 - 第二種大麻草採取栽培者免許
医薬品の原料として大麻を栽培する場合に、厚生労働大臣からうける免許。
有効期間は1年(免許の日からその年の12月31日まで)。
これらの免許なくして大麻を栽培した場合などは、違法になり、刑罰が科されます。
罰せられる行為の例 | 刑罰 |
---|---|
大麻草を栽培*¹ | 1年以上10年以下の懲役。 |
営利目的で大麻草を栽培*² | 1年以上20年以下の懲役。 情状により500万円以下の罰金を追加。 |
大麻草栽培の準備をした*³ | 1ヶ月以上5年以下の懲役。 |
e-Gov法令検索「大麻草の栽培の規制に関する法律」より抜粋のうえ、編集。
*¹ 大麻草の栽培の規制に関する法律24条1項
*² 同条2項
*³ 予備罪の罰則規定。同24条の3
法律の目的が明記された
大麻草の栽培の規制に関する法律では、法律の目的が明記されるようになりました。
新法では「麻薬取締法とともに、大麻の濫用による危害を防止し、公共の福祉に寄与すること」が法律の目的であると明記されています。
医療用大麻の使用が解禁された
新法では、大麻の使用が解禁されました。これにより、従来、禁じられていた医療用大麻が、適法に使用できるようになりました。
旧法と新法の違い
旧法では、大麻取扱者のみが大麻を所持、栽培、譲受、譲渡、研究のための使用ができると規定され、「大麻から製造された医薬品」の使用、交付が禁じられていました。
新法では、「大麻草栽培者でなければ大麻草を栽培できない」という定めに変わり、医療用大麻の使用を禁じる規定がなくなりました。
そして、今後は、麻薬取締法の規制にのっとって、医療用大麻を患者が使用することが可能になります。
大麻使用罪との関係
法改正によって大麻使用が違法になるのに、新法で大麻の使用が解禁されるのは、不自然に思えるかもしれません。
しかし、使用が解禁されるのは、あくまでも医薬品としての大麻です。
嗜好品として大麻を吸引するなどの使用は、別途、麻薬取締法で処罰されるものなので、今回の大麻取締法の改正内容と矛盾はありません。
大麻取締法・麻薬取締法の法改正の理由
ここでは、大麻取締法・麻薬取締法が改正された理由についてまとめます。
医療用大麻が解禁された理由
医療や産業の分野における大麻の適正な利用のために、改正法では、医療用大麻が解禁されました。
欧米では、大麻由来成分CBD(カンナビジオール)を含む難治性てんかん治療薬が承認されており、日本でも医療用大麻を望む声が高まっていました。
このような背景から、新法では、医療用大麻の使用が解禁されました。
医療用以外の大麻使用が違法になった理由
大麻の濫用による人体への危害を防止するために、改正法では、医療用以外での大麻の使用が禁止されました。
大麻に含まれるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は、使用者に強い精神的・身体的影響を与え、依存症を引き起こす可能性があります。
従来、大麻の使用罪がなかったことから、若年層の濫用が増加し、昨今、社会問題となっていました。
大麻は「ゲートウエイドラッグ」と呼ばれ、使用した若者がさらに強い薬物へと手を出す例も多く、その点でも、問題視されるものです。
そこで、今回、医療用以外の大麻使用罪が新設されたのです。
参考までに、大麻取締法違反の検挙人数を見てみると10代から20代の若者が圧倒的に多いことが分かります。
20歳未満 | 20~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50歳~ | |
---|---|---|---|---|---|
令和1 | 609 | 1,950 | 1,068 | 502 | 192 |
令和2 | 887 | 2,540 | 1,015 | 459 | 133 |
令和3 | 994 | 2,823 | 984 | 507 | 174 |
単位:人
令和4年度犯罪白書「2大麻取締法違反等」4-2-1-5図「大麻取締法違反 検挙人数の推移(年齢層別)」Excel形式ファイルより抜粋しました。
今まで大麻使用罪がなかった理由
今まで大麻使用罪がなかった理由の一つとして、麻酔い(あさよい)の症状を呈した大麻栽培農家の方を罰しないようにする目的もあったようです。
しかし、実際に調査したところ、大麻栽培農家の方からTHCが検出されることはありませんでした(厚生労働省「令和3年2月25日 第2回 大麻等の薬物対策のあり方検討会」より)。
また、従来、大麻を嗜好品として使用する人は、たいてい大麻を所持しているので、大麻の所持で罰せるケースもありました。
ただし、大麻使用罪がないことで、大麻使用のハードルが下がるという声もあり、昨今は特に、大麻使用罪を新設する必要性が高まっていました。
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まとめ
2024年12月12日から施行される改正法では、大麻と有害な大麻由来成分THCが「麻薬」に位置付けられました。
結果、大麻の不正使用は、麻薬取締法違反で「1ヶ月以上7年以下の懲役」になります。
また、大麻の不正所持や譲渡なども麻薬取締法違反に問われることとなり、結果、刑罰が重くなりました。
依存性があるので大麻使用をやめられない方は多いです。
医薬品以外での大麻使用は2024年12月12日以降、違法になります。そのため、大麻の使用の件で警察から呼び出し、家宅捜索、家族が逮捕された場合などは、早急に弁護士にご連絡ください。
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