大麻は初犯であっても逮捕や実刑の可能性が十分にある犯罪です。特に近年では、大麻の初犯で逮捕される若者が増加しています。
令和4年版「犯罪白書」によると、令和3年に大麻取締法違反で検挙された未成年(少年)は955人であり、この数値は毎年増加傾向にあります。
大麻に関する犯罪では初犯であっても実刑判決となる可能性もあるため、逮捕された場合には適切な弁護活動を行い、早期の身柄拘束の解放や、刑罰の減刑を実現すべきです。
そこで今回は、大麻の初犯における起訴や刑罰の見込み、逮捕された場合にすべきこと、再犯防止の取組などを解説します。
なお、当記事で記載の未成年(少年)とは20歳未満の少年のことであり、民法上の成人(民法第4条)とは異なります。
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目次
大麻の初犯で逮捕…罪になる行為と罰則
所持・譲渡・栽培…大麻で罪になる行為と罰則
大麻で罪になる行為は主に、「栽培、輸出入」と「所持、譲渡・譲受」の2つに分類されます。
大麻をみだりに栽培したり輸出入したりすると、7年以下の懲役刑が科される可能性があります。
特に営利目的での栽培や輸出入になると罪は重くなり、10年以下の懲役が科され、300万円以下の罰金が併科される場合もあるのです。
なお、大麻には未遂罪もあるので、本来なら取締の対象にならない大麻の種でも、栽培道具や栽培マニュアルと一緒に持っていると栽培の未遂として罪になることもあります。
第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
大麻取締法
栽培も輸出も伴わない大麻の所持の場合は、5年以下の懲役刑が科される可能性があります。
特に営利目的での所持になると罪は重くなり、7年以下の懲役が科され、200万円以下の罰金が併科される場合もあるのです。
第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
大麻取締法
営利目的 | 非営利目的 | |
---|---|---|
所持・購入など | 7年以下の懲役 | 5年以下の懲役 |
栽培・輸出入 | 10年以下の懲役 | 7年以下の懲役 |
※営利目的の刑罰は情状により罰金併科
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大麻所持の量刑|初犯・再犯の場合
初犯の大麻所持の量刑の相場は、非営利目的の場合、懲役1年に執行猶予3年程度です。
大麻が微量の場合は不起訴で済んだり、再犯防止のため通院する等の事情があれば短い刑、かつ、執行猶予判決で済むことがあります。
一方、営利目的がある、所持量が多い、成分濃度が高い樹脂を所持していた場合等は実刑になる可能性が高まるでしょう。
大麻所持で初犯の場合における刑罰の考慮要素
大麻所持で初犯の場合には、次の事情が考慮されて刑罰が決められます。
- 個人使用目的か営利目的か
- 犯行の態様
- 前科前歴の有無
- 自白・反省の有無
大麻は、懲役か、懲役と罰金が両方科される刑罰しかないため、罰金刑のみで終わることはありません。
初犯の場合、非営利目的であるなら一般的に懲役1~2年としたうえで、執行猶予3~4年がつくことも多いです。
しかし営利目的の場合は懲役3〜6年に罰金150〜200万円が併科される等、初犯でも実刑になることもあります。
営利目的あり | 営利目的なし | |
---|---|---|
懲役 | 3~6年 | 1~2年 |
執行猶予 | つかない | 3~4年 |
罰金 | 150~200万円 | なし |
再犯の場合は、前回不起訴で終了した場合でも、不起訴になるのは難しいと言わざるを得ません。執行猶予付き判決や、状況により実刑になることも多いです。
また、前回の大麻事件で執行猶予付き判決を受け、5年以内に大麻の再犯をした場合、再度の執行猶予になるのは困難で、実刑の可能性が高いでしょう。
大麻所持の量刑|子供の場合
未成年の子供が大麻を所持すると、成人同様に逮捕されます。しかしその後は更生を図ることが重視され、全件家庭裁判所に送られ、少年審判を受けます。教育的観点から少年審判を開かず釈放されることもあります。少年審判は少年のプライバシー保護のため非公開で行われ、次の処分のどれかが科されます。
- 保護観察処分:保護司等の生活指導のもと家庭で更生を図る
- 更生施設送致:少年院等で更生を図る
- 児童相談所長等送致:18歳未満で妥当と判断された場合
- 検察官送致:重大事件で裁判を受ける場合
- 不処分:処分の必要がない場合
初犯で少量の所持なら、保護観察処分で済むケースは多いです。
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大麻の初犯で逮捕されたときの流れ|不起訴や実刑の可能性
(1)逮捕・勾留による身体拘束|勾留期間は何日?
大麻は、初犯でも逮捕される可能性が高い犯罪です。大麻の逮捕は、職務質問を受けて大麻の現物が発見されたり、路上で売買する際に現行犯逮捕されたり、ネットのやり取りから捜査が進んで通常逮捕されるケースが多いでしょう。
大麻事件に限らず、逮捕された場合は基本的に以下の流れで手続きが進められていきます。
大麻で逮捕されると、警察で取調べを受け、48時間以内に検察庁に送られます。検察官の勾留請求を裁判官が認めると10日間勾留され、最長10日延長されます。
大麻は、大麻をトイレに流す等の証拠隠滅が容易であることから勾留されやすく、アトムの解決実績でも約88%が勾留されるデータが出ています。
また、証拠隠滅の指示の恐れから接見禁止処分が付きやすく、接見禁止となると家族も面会できません。
しかし、弁護士なら、接見禁止がついても、いつでも、何時間でも面会できます。ご家族が大麻で逮捕されたら、早急に弁護士接見を依頼し、取調べのアドバイスを受けたり伝言を頼むことが大きなプラスになります。
なお、大麻で逮捕された後の詳細な流れは『大麻で逮捕されたら|逮捕の条件とその後の流れ』の記事で解説しているため、こちらもぜひご参考になさってください。大麻で逮捕される典型例や保釈手続きの流れなども解説しています。
(2)起訴・不起訴の決定|大麻は初犯で裁判になる?
令和4年版「犯罪白書」によると、大麻事件の起訴率は49.8%であり、約半数の事案では不起訴処分が出ていると分かります。
その中でも大麻所持の初犯であれば、よほど悪質な犯行でない限り多くのケースで不起訴となるでしょう。
ただ初犯だからといって無条件に不起訴になるわけではありません。
営利目的で所持していた大麻の量が多く、更生が難しいと検察官に判断されたケースであれば、大麻の初犯であっても起訴される可能性が高くなります。
不起訴処分とするためには最適な弁護活動により、悪質性や常習性がないことを検察に主張する必要がありますので、大麻の初犯だとしても、薬物事件に強い弁護士に相談することは欠かせません。
具体的には、大麻所持の認識が低い、微量である、常習性がない、薬物依存を断ち切る通院をしていることなどを、検察官にしっかり説明して伝えてもらいます。
勾留された大麻事件は、逮捕から勾留満期までの最長23日の間に不起訴に向けた弁護活動を行う必要があります。それだけに薬物事件の実績豊富な弁護士に依頼してください。
(3)大麻での裁判|実刑になる可能性は?
大麻の初犯で起訴されてしまったとしても、営利目的のない単純所持であれば執行猶予付きの懲役刑が最も可能性の高い処分です。
令和4年版「犯罪白書」によると、大麻取締法違反の罪で全部実刑判決を受けたのは12.2%となっており、ほとんどのケースで全部執行猶予が付いていることが分かります。
このデータは大麻の初犯だけに限ったものではありませんが、大麻所持の事例であっても初犯であれば多くのケースで執行猶予の余地があると予想されます。
ただし営利目的で大量の大麻を所持していたり栽培していたりする場合には、たとえ初犯であっても重い刑罰を受ける可能性が高くなるでしょう。
執行猶予付き判決を得るためには、再犯の可能性が低いこと、刑務所に収監されるよりも通院や薬物回復支援施設などで社会生活を送りながら更生を目指す方が効果的であること、本人が十分反省し家族も社会復帰のための支援を約束していることなどの法廷弁護活動を尽くして裁判官に理解してもらうことが大切です。
執行猶予付きの判決を得て、実刑を避けるためには弁護士による弁護活動が重要となります。アトム法律事務所の解決実績では、約90%の事件で執行猶予付き判決を獲得し、刑務所行きを防いだ統計データが出ています。
大麻の初犯での弁護士活動
大麻で逮捕された子供・家族と面会する
大麻で逮捕された後、最長72時間の逮捕期間中は家族も面会できません。未成年の子どもであっても同じです。
逮捕後、勾留が決定すると、原則としてご家族、友人も面会できますが、接見禁止処分がつくと面会できず、場合によっては手紙のやり取りも制限されます。大麻は接見禁止が付きやすい類型です。
しかし、逮捕期間や接見禁止がついた場合でも、弁護士なら面会できます。
また、弁護士接見は警察の立会いがないため、伝言等も依頼できます。
加えて、不服申立て(準抗告)が認められれば、ご家族との面会等が許されることもあります。準抗告は難しい手続きですが、弁護士に相談してみてください。
弁護士 | 家族 | |
---|---|---|
面会 | できる | できない |
準抗告の手続 | スムーズ | 難しい |
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大麻での逮捕・勾留からの釈放を目指す
大麻は、職務質問で大麻が見つかったり、売買の現場等で現行犯逮捕されたり、ネットの売買記録や税関等で追尾され、ある程度証拠が固まった段階で通常逮捕されやすい類型です。
そして逮捕されると、証拠隠滅の恐れが疑われやすいことから、勾留となることが多いという特徴があります。
早期釈放を目指すためには、証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを検察官や裁判官に主張する弁護活動を依頼することが必要です。
所持の場合は量の少なさや、普段はまじめな会社員で家族が監督することなどを主張します。栽培や譲渡・譲受、輸出入の疑いがある場合は厳しくなりますが、弁護士に相談してみましょう。
不起訴を目指し大麻での前科をつけない
大麻では、全体の約50%が不起訴処分で終了します。日本では、起訴後の有罪率は99.9%と言われているので、前科を避けるには不起訴処分の獲得を目指すことが必要です。
また、大麻は懲役刑か懲役と罰金の併科しかなく、必ず正式裁判になるため早期解決のためにも不起訴を目指すことが重要です。
大麻で不起訴を目指すためには、所持の量が少ないことや、初犯で常習性がないこと、証拠が売人等の証言しかないこと、反省して通院していること、家族のサポートなどを伝えます。
約半数が不起訴になるとはいえ、行為態様で状況は異なります。早急に薬物事件に強い弁護士に相談して、適切な弁護活動を行ってもらいましょう。
起訴となってしまった場合には保釈請求を手伝ってもらおう
不起訴を目指したものの結果として起訴されてしまった場合には、保釈請求により、保釈金を納めることで釈放することができます。
大麻所持の初犯における保釈金の相場は150万円程度です。
保釈金を用意したうえで、弁護士に保釈請求の手続きを行ってもらえば、起訴後に早期の釈放が可能となります。
大麻や薬物の再犯を早めの対処で防止
大麻は、ゲートウェイドラッグともいわれ簡単に手を出す人もいますが、有罪になると必ず懲役刑が科される重い犯罪です。
昨今は若者の大麻事件が増え、令和3年に大麻で検挙された未成年は955人と過去最高を記録しました。再犯で重い罪を重ねることを防ぐには、家族や弁護士が協力して早期対応をすることが必要です。
具体的には、薬物依存を断つための病院や更生施設に通うこと、家族と同居すること等です。
また、取調べや裁判で大麻の入手経路を明らかにするなど大麻への未練や関係を断つ供述をすることで、社会の中での更生が認められやすくなります。逮捕後早急に弁護士に依頼し、対応のアドバイスを受けて下さい。